「晴蓮様、流石に根を詰めすぎにございます。どうかご自愛くださいませ」
女中の一人、相馬さんが稽古中に声をかけてきた、……確かに始めて三時間ほどたつのか……ふぅ、休憩するか。
「そうですね、確かに長時間やりすぎましたね。相馬さんの言う通り、少し休みます。相馬さん、何か飲み物を持ってきてくださいますか? 少し喉が渇きました」
「畏まりました、直ちにお持ちいたします。それと晴蓮様。先ほど五条様がいらっしゃいましたので客間にお通ししております」
悟君……また来たのかい? ……暇なのかね、彼……止める人も居なさそうだしなぁ、自由人め、少しは自己鍛練に勤しむとかは……考えないよね。
「分かりました、僕は客間に行きますので飲み物は客間に持ってきてくれますか? ……あとは茶菓子も一緒に」
「畏まりました、晴蓮様」
全く、今日は何しに来たのかね。
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「やぁいらっしゃい、悟君。今日も来たんだね、そんなに暇なのかい? 君は」
加茂晴蓮は指を鳴らしながら客間に入ると同時に嫌みを言う。
「オレにだってやることくらいあるつーの、一昨日も依頼こなしてきたし、ま、クソ雑魚だったからすぐ終わったけどな。そう言うハルは依頼こないの?」
依頼ねー何でか知らないけど、こないンだよねー、ナンデカナー。
「僕の所にはあまりこないね、依頼。きたとしても、大抵が準二級程度だし、たまーに二級がくるくらいかな。ホントに……何でだろうねー」
「あぁ、なるほど。上の連中か……ハッ、大事な大事な加茂の跡取りだからな、ヤツら……絞ってんだろーな、ゼッテーによ」
ダロウネー、上層部に加茂の人間がいるからね、俺に死なれたら困るンだろうね、胸クソ悪い……反吐がでる。
ふいに木張り廊下の床面を叩く音が三回響く。
「晴蓮様。お飲み物と茶菓子をお持ち致しました」
晴蓮が「どうぞ」と短く返答すると襖を開け、室内に入る。
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「相馬さん、今日の茶菓子は?」
「本日はカド・カレ・ルーネの生八つ橋と堂福道のきんつばにございます」
「流石ハル、オレの食いたいもん良く分かってンじゃん」
「それはどうも、相馬さんありがとう。手間をかけたね。下がって良いよ」
「畏まりました、失礼いたします」
相馬さんはそう言い部屋を出る、彼女が出たのを確認して机を一定の感覚で叩く、それを悟何も言わずに見てた。
「なぁ、ハル」
「うん? 何だい?」
「明日さ、依頼……きてんだけどさ。一緒に行く?」
「別にいいけど、等級は? 流石の僕も雑魚はイヤだよ」
悟は口角を上げニヤリ意地の悪い笑みを浮かべる。
「特級案件」
「!? へぇ……それは是非ともご一緒したいね、でもどうするの?
「ンなもんどーとでもなるっしょ」
ホント楽観的だよね、君って。
「でも、楽しみだね。特級案件……どんなのが出るンのかな、ホントに楽しみだ」
「ハルもイイ顔で嗤うじゃん、けっこー意外」
「なんたって僕は『呪術師』だからね。それに……今の
「『最優』の呪術師だってコト?」
加茂晴蓮はニコリと笑いながら首肯で答える、可能な限り早く認めさせればこの先の対処が少しは楽になるからだ。
「それしても困ったものだよね、ホントにさ……僕として色んなタイプの呪霊を祓って色々と確認したいのにさぁ全く……ブチコロがしたいよね」
語尾にハートや星マークでも付きそうな声のトーンで事も無げに爆弾発言を言ってのける。
「んー……それはそれでオモシロそーだけどさ、それこそバレたら呪詛師コースまっしぐらじゃん。つか術式使ったら残穢残るし誰がヤったかなんて、一発っしょ、メリットに対してのデメリットデカすぎじゃん」
「あっはは、流石の僕も呪詛師はイヤかなー。呪術師として生きていく事は覚悟決めたけど、呪詛師は論外だよねー。でも……うん。まぁ、過保護に少し腹が立ってるって事で」
おもむろに晴蓮は
「ハルってさ、ソッチもできんの?」
「それなりにはね」
悟の「ズッル」の呟きが部屋にとけて消える。
茶菓子で出てきたお店の名前は実際にあるお店をもじっております。