「ふははは、加茂の小僧……いいや、加茂晴蓮。 礼を言うぞ、お主のおかげでナニか閃きそうだ。
加茂晴蓮。 何でも言うが良い、俺の権限でできる範囲の事であれば叶えてやろう」
「……では、扇様。 甚爾さんの出向のお許しをいただきたく存じ上げます」
「ああ、好きにするが良い、そもあやつの親は関与せんだろうが、俺の方から言っておこう」
「感謝を、では僕はこれで失礼いたします」
ふいに後ろに向きかえりソコにいる二人に頭を下げ、その場を去る。
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我が家に帰り、中庭の縁側で座禅を組み瞑想していると、静かな足音が奥の方から近付いてくる。
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「よお晴蓮。 扇のクソにナニかしたみたいだな」
「おはようございます、甚爾さん。 良く眠れましたか?」
「あぁ、あの家に比べれば天と地の差だな、んで、あのジジイとガキはナニしてんだありゃ」
「まぁ何と言いますか、基礎体力の向上……でしょうか? 術師と言えど体力は必須、特にあのお二方の術式を考えればあって損は無いかと」
「ふーん、そう言うもんかねぇ」
「時に甚爾さん」
「あん、ナンだよ」
「いつになったら僕の稽古を付けていただけるので? 僕としては今すぐにでもして欲しいのですが」
甚爾は少し考えてから晴蓮に
「ダメだ。今は、だがな」
「……何故かお聞きしても?」
甚爾は頭をがりがりと搔き毟りながらため息をつきつつ晴蓮に
「お前さんも気付いてンじゃねぇのか? 今のお前はまだ体が成っちゃいねぇ、んな状態でやってもかえって逆効果だ」
「……ふぅ、やはり……ですか。 では、いつ頃からになりますかね?」
諦めきれない晴蓮はなおも甚爾に食い下がる、高みに立つために。
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「あー。 そう、だな……早くて十二からだな。ソコで一旦体は成るハズだ。 ま、つまりだ、あと二年あぁ、イヤあと一年とちょっとか?……その程度は我慢しろってこった。」
「わかりました。あと二年は我慢します。 ですが、甚爾さん。 直接の稽古が無理でもアドバイス程度はしたくださいますよね?」
「く、ははは、タダでは起きねぇヤツだ。 ああ、それくらいかまやしねぇよ、晴蓮」
そう言うと甚爾は晴蓮の頭を乱暴にしかし優しく撫で回した。
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「はぁはぁはぁ……もーあかん、これ以上は動けへんわ。ナンやねん……ナンやねんアイツは、鬼や……アイツは鬼や、
地面に大の字で倒れ付し晴蓮への怨み節を吐き続ける。
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「だらしねぇな、直哉。 それでも俺の息子か、お前は」
胡座をかきながら、直哉に向かっておちょくる直毘人だが、彼も肩で息をしており疲労がたまっているのは一目瞭然だった。 それでもまだ直哉よりかはマシに見えるソレは当主の意地か、それとも父の意地なのかは誰も分からない。
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「おや?もうお休みですかな? お二方。 まだ高々百周程度でしょうに、だらしのない。 お二方、彼を見習ってはいかかですかな?」
スっ、と。皆が訓練する大きな裏庭に手を向ける。 ソコには内周をヨロヨロと走る五条悟の姿があった。
「ナンや俺と同じやんアレ、まだ生まれたての小鹿の方が走れるんとちゃうか」
「いえいえ、走れている以上お二方よりかはマシかと。 僭越ながら申し上げますが、お二方の術式はご自身の肉体を使うものにございます今は……ですが、ですので最低限、ご自身の身体を思い通りに扱いこなせるようになっていただきます。 それこそ指一本……いいえ筋肉の一筋さえ手に取るようになってください」
「ソコがスタートラインです。僕が言うのは烏滸がましいかもしれませんが、先ずはご自身の術式の理解を、次に自己解釈を、三つに先入観や固定観念から脱するのです。 そして術式の拡大解釈をするのです」
「己の術式に疑問を持ってください、常識に囚われていてはダメなのです。 扇様にも同じコトを言いましたが、もっと自由にもっと柔軟に考えてください」
「直毘人様、直哉君。我々呪術師は凝り固まった思考、観念、常識ではナニかを成すことはできぬのです。 殻を破ってください、今まで積み重ねた常識と言う檻を」
二人に言い終わるとスッと庭に目を向け倒れている悟に声をかける。
「ソコでのびている悟君、貴方もです。 貴方の術式はあまりにも大味すぎる、もう少し小手先の技も覚えた方がいい。
人のいない場所、呪霊等が発生するような場所であれば君の術式による広域破壊もまぁ良いでしょう。 ですが呪詛師との戦闘は必ずしも
「僕は別に非術師を尊重しろ、必ず助けろ……と言っているワケではありません。 人は死ぬ時は死ぬのですから、僕が言いたいのは今の君では人混みの中での戦闘では手段がないと言っているのです。良いですか? 悟君」
庭に突っ伏しながら息も絶え絶えにようやく「はぁはぁはぁ……ハル後で聞く」と呟いた後も地面に倒れたまましばらくの間起き上がれずにいた。
いよいよ直毘人&直哉の強化ターンに突入、するハズ。