その血が歩む道すじ   作:亞忌羅

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まさしく血で血を洗う領域。



三十四話

 

 

 「中に……入った?ハルの領域に?」

 「そーゆーとるやろ、エッグいでぇ蓮クンの領域、アレは地獄や」

 地獄……直哉は晴蓮の領域をそう表現した、見たものにしか分からない恐ろしさを。

 

 その時、ピシリの音と共に領域の外殻に罅が入る。

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 その瞬間、三人がバッと領域を見た。

 「晴蓮くん!? まさか……」

 「んなワケ有るかよ、ハルが勝ったに決まってる」

 「相手は土地神、それに晴蓮くんは三宝荒神って言ってたわ。 それに私も見たの晴蓮くんが荒神殿を破壊した後、出て来た呪霊……三面六臂の夜叉だった」

 「夜叉……だと!?」

 「なんやソレ!上の連中はナニ考えとんのや!!蓮クン殺す気かいな!」

 「それだけじゃないわ、夜叉が叫んだら荒神殿の上に渦巻いていた呪力が呪霊(夜叉神)に吸い込まれて呪胎戴天したの……八面六臂の夜叉に。……幾らなんでも相手が悪すぎる。 そんな相手、例え晴蓮くんであっても……」

 

 三人の間に沈黙が流れる、それを破ったのはもっとも付き合いの長い悟だった。

━━

 

 「心配すんな、ハルは負けねぇ。ハルは『最優』の呪術師だ、堕ちた神ごときに負けやしねぇよ」

 

 悟が発した声とほぼ同時にパキンと高い音と共に領域の外殻が空に解けて消える、そこに立っていたのは晴蓮だけ、服は破れ上半身をさらけ出しながらもその身体にはキズ一つ無かった。

 相手は三宝荒神・呪霊(夜叉神)。激戦のハズだ、なのに晴蓮はキズ一つ無いのだ異様な光景に二人は沈黙、一人はそう言う事かと納得していた。

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 「ハル!!」

 悟が叫び晴蓮に駆け寄り倒れるさなかの晴蓮を受け止めた。

 「悟? 匂い(呪力)で気付いてはいたけど、来てたんだ、それに直哉も来てるんだね」

 息も絶え絶えに二人に声をかける。

 

 

 「当然や。蓮クンのためなら火の中水の中や、すぐに駆け付けるで」

 晴蓮の呼び掛けに応じながらも「そっちが素なん? そっちの方がエエで蓮クン」その問い掛けに「一人称や言葉遣いは人に与える印象を和らげるんだよ、覚えておきなさい」と返した。

 

 「晴蓮くん……大丈夫なの? その呪霊(夜叉神)はどうなって」

 「ええ、問題無く祓いました。ただ流石に疲れましたね、とても強かった、地主神(荒神)なだけはある」

 「そう……それで身体の方は、その」

 「キズは有りません、呪力も問題有りません。その代わり精神的にダイジョバ無いですね」

 

 晴蓮の砕けた物言いに歌姫は破顔する、しかし同時に心配を隠せなて無い表情を『視て』いた晴蓮は「ご心配無く、少し休めば回復しますから」と歌姫に優しく言葉を掛ける。

 その優しいと言葉に歌姫は顔に悔しさを滲ませた、理由は分かりきっている。自分がなにもできなかった事に自責の念と不甲斐なさでいっぱいなのだ。

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 「ごめんね晴蓮くん、私が不甲斐ないばかりにあなたに無茶をさせてしまったわ、私の術式が戦闘向けなら良かったのに」

 「ホンマやで、サポーターがサポートできへんてなんのためにおるんや」

 直哉の物言いに歌姫は下唇を噛み締める、なにも言い返せない、自分はなんのためにここに来たのか、なんのための支援術師なのか、実力不足を痛感していた。

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 「直哉。庵さんを留まらせたのは僕の判断だ、それを言うのなら悪いのは僕の方だ、直哉。 責めるのは庵さんじゃない」

 「蓮クンそれはずるいで、なにも言えへんやんか」

 「はは、君は優しいからね……人の心を分かってあげられる子だ」

 直哉な晴蓮の言葉に「面映ゆいで、蓮クン」と照れた表情をしながらこめかみを掻いていた。

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 「なぁハル、その手にもってンのナニ?」

 「あぁ、これかい? 貰ったのさ彼に」

 「貰った……て、まさか呪霊から!?」

 「はい、呪霊……いいえこの集落を守っていた地主神(じぬしのかみ)にして荒神(あらがみ)

三宝荒神・(さんぽうこうじん・)金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)』領域内で僕との戦闘(殺し愛)で穢れと汚泥が落ちた彼は一時的では有るものの神へと戻れた、その時にこの宝玉を貰っ(授かっ)たんだ。彼曰くこの先必ず必要になるハズだとのことで」

 

 堕ちた神、穢れはらひて(祓いて)神へと還る、それは如何なる奇跡か彼らはまだ分かっていなかった。

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 晴蓮が無事であったことに安堵した三人は喧喧囂囂(けんけんごうごう)としながらも和気藹々(わきあいあい)とした和やかな空気が漂うさなか晴蓮は誰にも聞こえない声で「どこの誰かは知らないけど出歯亀(覗き見)とは良い趣味とは言えないね」と囁き、フィンガースナップ(指パッチン)を鳴らした。

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 「ん? ハル今何かした? 呪力が動いたんだけど」

 「ははは、気のせいじゃないかな、悟。僕は少し眠ることにするよ、後は頼んだよ」

 「……ああ。オレに任せて眠っとけ、起きたときには全部終わってから」

 晴蓮は消え入る声で「助かるよ」と呟きそのまま眠る。

 

 

 

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 荒神殿上空二キロ地点、なにがしかの術式か空に浮く人影が一つ。

 「アレを祓うのかい?流石は加茂の麒麟児か、素晴らしいね、是非とも欲しいくらいだ。 それにしても最初のアレは反則過ぎやしないかい、あんなの避けも防げもできそうにないね」

 誰に言うでもなく独り言を喋りながらウンウン唸っているその時ーー空間が燃えた。

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 「!? まさか気づかれた!?……だとしたら本当に化け物だね、欲しくはあるけど、生かすか殺すか……早めに判断しなきゃ駄目そうだ。いずれ……直接逢おうじゃないか、加茂の麒麟児『加茂晴蓮』」

 何者かの声は誰にも聞かれずに空に消えていった。

 

 




荒御魂・荒神様と真正面からバチクソ殺し愛すればそりゃ気に入られるよねって話。
ちなみに呪霊が呪具持ってるかは知らないので捏造しました。
まあ、神様だし持っててもいいでしょう。
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