その血が歩む道すじ   作:亞忌羅

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 何も浮かばなくてつらい。


六十二話

シン・巌流:捨無量心(しゃむりょうしん)石花疾風双刃(せっかしっぷうそうじん)

 

 呪霊の顔らしき場所へ居合を放ち斬り返しで逆袈裟からの三連撃を繰り出し、間髪いれずに『シン・巌流〈正麟(せいりん)〉』を振るうと刀身から正の呪力を迸らせ呪霊を切り刻む。

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 成った。正の呪力は燃費が悪い、しかしそれを戦闘に用いる事ができれば対呪霊戦においてかなりのアドバンテージだ……とは言えまだ無駄が多いのが課題かな。

 

 

 正の呪力は呪霊にとって天敵、それでも残心は解かない、ナニが起きても対処ができる様にしておく……

 

「お見事。素晴らしい成果だね、でもまだ周りが見えてない」

 

 徐に(おもむろに)晴蓮が術式を家入の奥に放つ、ソコには今祓った呪霊より一回り程大きい呪霊が家入目掛け駆け出す所だった。

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「……無茶言うな、私はね! ココで実戦二回目だっての」

「……次の課題だね、頑張りましょうのスタンプ押してあげる、でも……硝子だけの技を習得したね、おめでとう」

 私だけの技……まだ、実感は無いけど、そっか私にしかできない技を手にいれたんだ。

 

「まあやろうと思えば僕もできるけどね」

 アッハッハとあっけらかんと言ってのける晴蓮にコイツ叩き斬ってやろうかと思いながらも晴れやかな顔をしていた。

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「そしてココで硝子に残念なお知らせです」

「すっげぇイヤな感じがするから聞きたくない」

「アッハッハ、ダ・メ。聞いて貰います、硝子も思っている通り、まだもう一体呪霊が奥にいます、それも特級相当のが」

「マジかー、しかも特級とか私死ぬじゃん」

 

「いやいや。流石に特級とは戦わせないよ? 幾らなんでも危険だからね、僕が対処するから硝子は後ろで見てて」

「そりゃ良かった、安全な場所がどこに有るか分かんないけどね」

「現場にいる以上どこも安全な訳無いじゃん、なに言ってんのさ。

 ま、それでも安心しなよ。僕がいる限り僕より後は安全地帯だ」

「言いきるじゃん、それって慢心ってヤツじゃないの」

 

「あはは、悟君でもあるまいし僕に限って慢心なんかないさ」

 あ、アイツはするんだ。

 

「さ。奥の呪霊、祓いに行こうか」

「うい」と短く返事をし晴蓮の後に付き歩いていく。

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「あー、アレだねぇ、何に対する感情で発生したんだろうね、アレ、キモい」

「うっわキッモ」と言いながら晴蓮から数歩離れ、しかし刀に手を添えいつでも戦える様に準備している。

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 へぇ、感心感心、俺がやるとは言えそれでもナニがおきるのか分からないのが現場、言わなくてもソレができるのなら、花丸の合格点あげちゃう。

 と、アレに集中しますか、相手は推定特級……油断はできないし、しない。

 

「硝子、一つ心得を教えてあげる。

 正体不明且つの強敵には最初から最大火力の攻撃をする、戦力の逐次投入は愚策、つまり……初っぱなから全力でぶっ飛ばす、だ」

 

「〔汗孔噴漿〕〔散漿収斂〕〔金物収斂(ごんぶつしゅうれん)〕鉄血:千手皎金天漿汰炮(せんじゅこうごんてんしょうたいほう)

 

 両手を合わせ血漿を収斂圧縮し手を開くと、爆発的に周囲に拡がり、無数の黄色い光の矢と金属の槍を呪霊に浴びせソコには呪霊は塵一つ残って無かった。

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 コレが特級……一級呪霊で手こずってた私と違ってあんな巫山戯た呪力をした呪霊を一撃で吹き飛ばした。成る程、特級術師が化け物って言われる理由が痛い程分かる、ハハッ、そりゃ化け物って言われるわコレは。

 

「覚えておいて硝子、相手の様子を見ようとか強さを測るだとかを考えずに、真っ先に最大火力で攻める。コレが生き残る秘訣だ」

 昔それでやらかしたからなー、やっぱ初手全ツッパが正義よ。

 

「オッケー。肝に銘じておく、死にたくないし」

 

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「ああ居た居た、朝倉さん。終わりましたので後の事お願いしますね」

「お疲れ様です。加茂特級、家入術師」

 んー、まだ周知されてないのかなぁ……まあいいか。

 

「それじゃあ僕達は帰りますね」

 そう言い残すと肉雫唼を出し現場を後にする。

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「空飛べるって楽で良いよね、遠距離も一飛びだし」

「この分お仕事増えてんじゃないの?」

「大正解、次から次へと僕の所に舞い込んでくるよね、三人の特級の内一人は我が儘で暴れ馬、一人は風来坊……そりゃ僕に依頼寄越すよね」

「だいたいどんぐらいの依頼こなしてんの?」

「んー、多い時で一日四件かなー、当然の様に一級以上のヤツばかり……イヤになるよねーホントに」

 素直にやるの俺しかいないもんね、特級って。

 

「幾らなんでも忙しすぎでしょソレ」

「悟君に言ってくれる? 彼、一級以下の案件しないからさ僕にお鉢が回ってくるんだよね。

 悟君曰く、ハルがやるから良いじゃんだってさ、イヤ良くねぇよ……ま、その代わり特級案件の殆どは彼がしてるけどね」

「なんで?」

「……過保護なんだよ彼。昔にさ珍しく悟君と一緒に特級案件のお仕事してさその時にね、特級呪霊にヤられちゃったんだよ……左上半身が消し飛んだ綺麗さっぱりね」

「は? 消し飛んだ? マジで言ってんの?」

「マジも大マジ、左肩から腰近くまで綺麗に消し飛んでさ、いや~びっくしたよね」

「ソコじゃないでしょ! 体半分無くなってんじゃん! 五条は何してんのマジで」

「彼? スッゴい取り乱してた、ソレはソレはもう凄く、あそこまで取り乱した彼を見たのは初めてだったね」

 

 何でも無いように「二度と拝めないよねーきっと」と言ってのける晴蓮に青筋を立てながらも一度、深呼吸をし気になっていた事を問いただす。

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「……フゥー……アンタはどうやって助かったの?」

「そりゃ反転術式使ったに決まってるじゃん、じゃなきゃココにいないよ」

「誰がやったの? 五条?」

「彼にアウトプットの反転術式は使えないよ」

「は? じゃあ誰が……」

「そりゃ自分でやったけど僕も反転術式使えるし」

「(は? 自分でやった? 体半分無いのに? 体半分消し飛んでるのに!? 自分で!? なんでそんな事できんの!」

「声でてるでてる。あー……んー、まいっか。僕って天与呪縛が有るじゃん? その一つにさ無痛症があるんだよね、だからどんな怪我を負っても気付か無いんだ。

 だからさ悟君に言われて嗅いだら左半身消し飛んでて血がドバドバ出てんのマジでヤバいよね」

 

 他人事の様にアッハッハと笑いながら「イヤー最初は何事かと思ったよね」と悪びれもせず言い切った。

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「無痛……症、体半分消し飛んでも気付かないレベルの?」

「うん、まあそうなるね。自分の肉体状態も嗅覚でちゃんと分かるんだけどさ、痛みを感じないじゃん? だからアレ以降はなるべく怪我しないように気を付けててね、ほら呪霊とドンパチやり合ってる最中にソコまで気を割けないでしょ? だから今は基本的に中遠距離から戦うように心掛けてるんだよね、それに悟君に口を酸っぱくして言われたし。

 ま、とは言え必ず中遠距離でやれる訳じゃないからねぇ、それもあって悟君は僕に特級案件をやらせたがらなくてね、別に問題無いのにさー」

「……よくその状態から反転術式間に合うじゃん、なんで?」

「? 簡単さ、僕は痛みで術式が鈍るとかは無い、怪我が有る事が分かれば冷静に対処できるとも」

「(やっと分かった、ずっとコイツに感じてた違和感、安いんだ……命が……痛みが分から限界値(・・・)が分から無いんだコイツ……成る程、来る前に五条が言ってた事はコレの事か)」

「後一時間くらいかなー、そうそう硝子」

「ん? 何」

「夏がくるまでにもう少し鍛えようか、君達二人ともまとめて僕が相手するつもりだからソコんとこ宜しく」

「(えぇマジで、しかもセイがやるって……あのフィジカルゴリラがああ言ってたからイヤ予感しかしないし、しかも今コイツの問題が分かったしマジで不安過ぎんだけど)」

「……あの爺さんじゃダメなの?」

「ダメって訳じゃ無いよ、あの人はあの人でやる事あるし、それにただ僕が直接見てみたくてね」

「アンタ、目ぇ見えないじゃん」

「アッハッハ、言うねぇ硝子。問題ないとも、モノを見る方法は幾らでもあるからね、それと甚爾さん程スパルタじゃないから安心してね」

「(…………絶対に嘘じゃんコレ)」

「ねぇセイ……イヤやっぱいいや」

「? そう、なら帰ったらじゃんじゃかヤろうか」

「うへ~い。(………何もおきません様に)」




 実際やろうと思えばできるよね、やる必要無いからやらないけど。
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