キヴォトス先生生活記   作:ゆんゆんマル

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お久しぶりです。リアルが忙しかったのです
サオリとテーマが被ってしまっていますが、お許しください

注意!
ここのヒナはゲヘナ条約編で先生の体を見たことがないというていでお願いします……


虐待児先生とヒナ (シリアス)

 ブルアカ 虐待先生とヒナ

 

 

 

 

 

「今日は、シャーレの当番……♪」

「委員長、今日は機嫌がいいですね? もしかして……?」

「!? ……そ、そう……?」

「……いや、いつも通りですね。いつも通りの完璧な委員長です」

「……余計」

「これは、失礼しました」

 

 

 あいにくの雨の日だったが、私には関係なかった。むしろ豪雨が晴れるような気分だった。

 シャーレの当番。生徒によってその価値は違えども、私からするとまるで天国。普段の減るどころか増える書類、鳴り止まない電話、銃撃音、怒号……

 

 そんな悩みから一日だけ解放され、愛しの先生と合法的に隣にいることを許される。そんな日を何週間も前から確認するほど、この日は重要なのだ。

 

「……それじゃ、行ってくるわ」

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 シャーレに到着した。雨で羽が少し濡れてしまい、軽く落としてから入室する。

「(少しでも、よく見られたい……)」

「(……わ、! 私は……何を……)」

 

 

 

 若干のやましい思いを雨粒と一緒に振り払った。

 

 コンコン……

 ガチャ……

 

 

 

 いつも通りの冷静な装いをして、満を持して入室をした。午前10時。到着予定よりきっかり10分前。マナーと礼儀を携えた行動が、きっと良いことにつながると信じている。

 

「……あら? ……?」

 

 

 

 いつもの執務机には先生の姿はなかった。まるで一旦席を外したかのような乱雑さだ。

 

 

「……(休憩中かしら)」

 

 

 シャーレの執務は激務だ。それこそゲヘナの書類にも劣らない。手伝いをする度に書類の山には度肝を抜かれるが、それも信頼をおく先生の隣なら何ともなかった。

 

 ただ先生は違うだろう。毎日毎日あんな量の書類が各所から飛んでくるのだ。少し休まない方が危険だ。

 

 

「……それは私も……か」

 

 

 先生を反面教師に……なんて失礼なことは出来ない。しっかり自戒ということにしておく。

 とりあえず、書類の山がないことを確認する。いない間にできることは無いのかと見渡すが、どうにも無さそうだった。

 外出中かもとも思った、が少し部屋の奥。先に仮眠室によってみることにした。

 

「寝てる……かも……寝顔……」

「」ポフッ

 

 

 

 

 ────────

 

 

 

 

 コツ、コツ……

 

「……先生……いる?」

 

 

 邪な思いは無限に出てくるので、一旦捨てた。

 部屋は電気が着いておらず、ひたすらに無音だ。いなかったのかもしれない。一応ベットも確認するべきだと、静かに暖色の電気をつけた。足元は少し濡れており、滑らないように手すりを掴んだ。

 

 

「……水?」

 

 

 

 まるでものが這いずったかのような、不規則に不吉に濡れていた。その跡は階段の下へ続いており、下って見ることにした。ゆっくりと、音も立てずに降りた。

 

 

 降りてすぐ右にはベットがある。水はそこに続いていた。……そこには這いずった|物ではなく、人がいた。

 

 

「せ、先生ッ!?」

「……」

 

 

 雨に濡れたシーツ、乱雑に置かれたスーツ、靴を履いたままベットに仰向けになる先生。明らかに雨に当たったのだろう。

 だが、様子が変だ。私が来たことになんのは反応もない。寝ている……の? 

 

 

 

「……濡れたまんま寝たゃだめよ……」

 

 

 先生は目を瞑っている。近づいて見えた。目を瞑った先生はどこか神秘的で、儚げだった。

 少し、先生の顔に手を伸ばした。頬にそっと、赤ちゃんに触れるような。羽の先で撫でるように、愛おしい、愛らしい人に触れた。

 

 

 

「……熱い……!」

 

 

 

 

 

 暖色系の照明に照らされた先生の顔は、よく見れば赤く火照っている。気づくのが遅れてしまった……! 

 少し触れただけでも指先に伝わる熱さは、尋常じゃないほど高いのだろう。

 

 

「ね……熱、よね……! な、なにもせず寝ているなんて……!」

 

 

 

 近くにあった水道に置かれているタオルを濡らし、額に載せる。焦ってなかなか頭が回らなかったが、それなりの熱対策をした。

 

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 しばらくして、先生は目を覚ました。苦しみもなく寝る先生が不思議で仕方なかった。

 

 

「……あ」

「……! 先生ッ」

「おはよ……」

 

 

 むくりと上体を起こそうとするが、すぐにふらついて倒れてしまう。ベットのバネが受け止めてくれた。

 

 

「せ、先生! まだ寝ていて……」

「……ごめん」

「謝らないで、ゆっくり休んで……」

 

 

 先生は額のタオルを再びとり頭に乗っけた。

 

 

「……この、タオル。ヒナ?」

 

 

 下が回らない先生。やはり相当熱は高いのだろう。いつもの大きな背中を見せてくれた先生とは違って、弱々しい。

 

 

「え、ええ……そうよ」

「ありがとう」

「あ、当たり前のことを……し、したまで」

 

 

 にっ、と笑った先生。いつもよりも柔らかかった。そんな先生に一瞬でもドキッとしてしまった自分が、ちょっと嫌だった。

 

 

「ちょっと、雨に濡れちゃった」

「……そうね。見てわかるわ」

「だめな、大人だねぇ」

 

 

 先生はタオルで顔を隠す。

 

 

「そんなこと、言わないで。先生」

「そんなこと、ないんだから」

 

「はは」

「そっか」

 

「こういう時、無性に弱音を吐きたくなるんだ」

「すこし、付き合って貰っても、いいかい」

 

 

 息を絶え絶えに先生は喋る。体が呼吸のために大きく揺れていた。無意識に、手をそっと握っていた。

 無理をしないでと、先に言った。

 

 

「嫌だった……?」

 

 

 そう言われてしまったものだから、私はゆっくり、ゆっくり話してと、そう言って先生は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒナは、こんな話を知ってる?」

「豪雨の中、ある家族は、心配そうに、外を眺めてた。やまない雨に、子供たちは、怯えていた」

 

「チャイムが、鳴ったんだ。母親は、インターホンを見たんだ」

 

「ボロボロの服を着た、子供が、豪雨の中、インターホンに映っていたんだ」

 

「母親は、すぐに中に入れてあげようとしたんだ。でも、父親はそれを絶対にしては、いけないと、言ったんだ」

 

「なんでだと、思う?」

 

 

 脈絡もなく先生は話し始めた。何度も何度も呼吸を繰り返して、話を終えた。私は咳混じりの先生の言葉をビクビクしながら聞いていた。いつでもやめていいと、思った。

 

 先生はそうして私の言葉を待った。私は数秒間の沈黙を貰った。考えても、心理には辿り着けなさそうで、何度も頭を巡らせた。

 

 

 

「……子供が、あまりにも濡れていたから……かしら」

 

 捻り出したみっともない答えだ。あまりにも間違ってる気がしてやまない。

 

「それも、あるかもね」

 

 私はこう思う、そうして先生は話す。

 その答えに、私は絶句した。何も声が出なかった。息が荒くなるような、そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「……絶対にそのドアを開けちゃいけない。それは確かだ。ひねくれてるかもしれないけど、その理由を話すよ」

 

 

「ボロボロの服を着た子、きっと、虐待する親、から、逃げてきたんだ。雨の日にそんな服で、普通、出ないしね」

 

「ただ、雨をしのぐために、インターホンを押したわけじゃない、優しい家庭を、望んでいたんだ」

 

「子供の、愛を求める力って言うのはさ、何よりも強いんだ。わがままでも、なんでも、愛を感じれるなら、何でもする。何でも。

 雨の日、にその子を家に入れてしまったら。その家族は、その子供に、狂わされてたと思うよ」

 

 

「ボロボロの子供は、ただ、濡れたくないんじゃない、愛が欲しかったんだ」

 

 

 虚しく、終わった。先生の話は、惨たらしく、なんとも生々しい語りで終えた。

 

 

「……どう、しようも無い、話しね」

「ああ、俺も、そう思う」

 

 

 正しい行動がなかった。何を選択するにも誰かが被害を被る。考えれば考えるほど、何も生まれない。

 なぜ、そんな話をしたんだろうか。

 

 

「その子供ってさ、実は」

「俺なんだ」

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 タオルで顔を覆い尽くしたまま、先生は淡々と言った。私は何も言えなかった。その言葉は頭の中で何度も何度も復唱される。その子供、その子供。雨に濡れた、ボロボロの子供。

 

 

 

「雨に濡れて、久しぶりに思い出したよ」

「ごめんね、急に」

「ただ、どうしても、誰かに話したくって」

「……ヒナなら、賢いから、流してくれる、かなって」

 

「……」

 

 

 

 聞き流せる訳がなかった。誰だって忘れることが出来ないだろう。どれだけ賢くても、また逆でも、それは変わらない。

 

 

 

「なあ、ヒナ」

「手を、握っててくれないか」

 

 

 無意識的に握っていた手に意識が宿り、私は壊さないよう、でも離さないようにその手を握る。

 

 先生は、泣いている。タオルで顔を隠しても、鼻をすする音と、咳とは違う嗚咽が漏れるのを、聞き逃せなかった。

 

 

「ごめん、ごめん……ごめん……」

「……」

 

 

 ひたすら謝る先生。大人としてもみっともない状況。よく先生が使う言葉で言うならそうだ。だが、私はそうは思っていない。

 

 

「先生」

「……ん」

 

 

「先生、私はね」

「先生を、愛しているわ」

「何があっても、私がいるわ」

「だから、我慢しないで」

 

 

 

 私の口は、考えるよりも先に動いていた。

 先生が虐待児だと言った瞬間に言えればよかったことを、ようやく言えた。

 

 

 先生のタオルを抑える手に力が入り、クシャッとしてしまう。明らかに、嗚咽は大きくなった。我慢しているようだけど、抑えられないほど強い感情の揺れ。

 

 タオルから出る水とは別に、勢いの増すその水の滴りを私は手で拭う。

 

 

 そっと、握った手を離す。物名残惜しそうに、だが先生は手を離した。

 

 そして、先生の上体に優しく包むように、抱きついた。重しにならないよう、そっと。

 小さな体で、できるだけ、あなたと触れられるように。羽を広げて、そっと。

 

 

 部屋には、子供らしい鳴き声が響いた。

 いつの間にか先生は泣き疲れて寝ていた。私はずっと手を握って、その存在を強く肯定した。

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

「……あ」

「おはよう、先生」

「おはよう……」

「……雨、やんだわ」

 

「もしかして、ずっとそばにいてくれたの? 確か、俺、熱出して……」

「……」

「えっと、う、うん」

「ごめんね、こんなおじさんの介護なんてしてもらって。わ、タオルまで……」

 

「う、……うん」

「どうかした?」

「い、いや! ……なんでもないわ」

「そう……あ、あとその、ひ、ヒナの手が、あの……」

「……これは、このまま」

「え?」

「このままでいい……かしら?」

「ヒ、ヒナがいいなら……」 

「……じゃあ、こうしているわね」

 

「あ、ありがとう」

「あ! いやありがとうじゃなくて、わかった」

「……うん」

 

 




どこかで聞いたことがあるような話を思い出しつつ使いました。
「豪雨の虐待児」の部分です
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