「せ〜ん〜せ〜い〜!」
バン!
勢いよくドアが開く。しかし、いつもの席には先生の怯えた顔がない。
「あれ……いない」
「いるよ! 」
「……え? 先生?」
先生の声はするが、部屋のどこにも見当たらない。
「本当にどこにいるんですか? 声はしますけど……」
「ここだよ!」
椅子にぴょこんとアホ毛が出る。しかし顔が見えない。
机の下に隠れてたんですか。そう言って机の方へ回り込む。
「今日という今日はきっち……り……」
「や、やぁ。ユウカ」
私が回り込んで椅子を引っ張った時、先生は椅子の上に立とうとしており少しよろめく。
そこには明らかに小さくなった先生がいた。
身長は小学生一年生ほど、約110ほどだろう。明らかに顔も童顔になっており、いつもの威厳は明らかにない。
服はダボダボ、帽子は頭を呑み込みそう。白い手袋は前腕の三分の一ほど隠してしまっている。
無意識なのだろうか、両手で椅子の縁を掴み足をプラプラさせている。
すごく困る。個人的に。
「ご、ごめんねぇ。せっかくきてくれたのに……」
「説教に来たんですけどね……。でもこれは予想外すぎました」
「そうだよねぇ……」
「……で、なんでそうなったんですか?」
「それがさぁ」
思い当たりはあるが、確証はない……。ということだった。
「つい先日、温泉が当たった! ってある生徒からきてさ……。ホイホイついて行ったんだよね」
「昨日は平日では?」
「うっ……。ま、まぁ、生徒との交流も私の仕事だから」
「…そうですか? 本意ですか? それ」
「そ、それでせっかくだから温泉に入りに行ったのさ。
なんでも、そこら辺の一帯の温泉は若返りの効用があるかなんか言われてたらしい」
なんとなく読めてきた。
「……入って寝ちゃった、みたいなんだよねぇ。帰るまではなんともなかったんだけど、朝起きたらこんな体に……」
「不思議ですね」
先生は腕を組み頭を傾げる。なんで寝たんだろうとか、にしてもだよなぁ……とか、一人ぶつぶつ自己問答していた。
……すごく正直な話。私は今の先生に対して、普段よりも劣情を抱いている。……のかもしれない。
いや、普段からそういう目で見ているわけではないんだけど!なんというか、ギャップというか、保護欲というか……
「反則ですよ……」
「え? なんか言ったユウカ?」
「い!? いえ何も!」
危ない……口から漏れてしまっていた。先生の容姿が幼くなったからとはいえ、中身はいつも通り。
そんな感情を抱くのはおかしい! ……はず。だっていつもは、恋愛、感情だし。
「と、とりあえず先生? 今日1日はその体で過ごして、明日以降も治らないようでしたら病院へ行きましょう」
「ん〜。そうだね。ちっちゃくなったこと以外は普段と変わりないし」
声がすごく高くなってますよ。なんて言った時にはどんな顔をするんだろうか。気になるが、やめておく。
「じゃあ、ちょうど今日は私の当番の日ですし、仕事しましょう」
「わかった!」
普段はハスキーな声で大人びているのに、今日に限っては元気な子供の声で返事を返してくる。
とても萌える。なんということだ。
私は一日耐えられるんだろうか。
「……えっと、それでユウカ? 悪いんだけどさ……」
「? なんですかモジモジして。まさか」
「(トイレ!?)」
「いやその、椅子、高さが足りなくてさ、ユウカの膝の上で仕事してもいい?」
「(そっちか〜!)」
予想の斜め上をいく高火力な発言が飛んできた。ダイレクトアタックを決められそうである。既に鼻血が垂れてきそうだ。
小学生ほどの身長から繰り出される上目遣い。若さとは普遍的で不可逆的な価値があると悟りを開いた。
本人にはその気は無いのだろうが、こちらはその気である。
「(トイレよりも火力高かった〜……)」
「ダメ?」
「あッ⤴︎。い、い、いいですよ」
「ごめんね。ありがとう!」
「あッ⤴︎」
言葉の一言一言が気の惑いを引き起こした。
「〜♪」
先生は、柔らかかった。何もかも。
肌年齢は実質赤ちゃんである。太ももに乗る軽やかな足。ブカブカな服から漂う太陽の暖かさ。
ちょうど顎の下にくる柔らかで花の匂いがする髪の毛。
ふんふんと鼻歌を歌いながら仕事をする姿はまさしく天使である。
「(フー! フー!)」
必死に耐えている。本当に危うい。
私は幼子に興奮する淫らな奴だったのかと理性。
誰だって無理だ。私にだって無理だと本能。
今にでも手が先生の体を抱きしめて1時間は離さない自信はあるが、なんとか堪える。
先生は私が耐えている間ずっとハイテンションで仕事をこなしていた。
「終わり〜!」
「お、お疲れ様です。じゃ、じゃあ。おりますか? (降りてほしく無い)」
「ん〜。ユウカ! 仕事頑張った!」
降りる気配はない。すこし安心した。
なんだかさっきよりも発言が幼児化している気がする。気のせいじゃないはず。
そして投げかけられている言葉の意味が咄嗟に理解できなかった。
「?」
「仕事頑張ったから、褒めて!」
「…………」
あ、あぁぁ〜。ごめんなさい。お母さん。お父さん。私は今日犯罪を犯してしまいそうです。
普段は一人で黙々と仕事をこなし、終われば生徒たちとのコミュニケーションでメンタルケアをするというどこからどう見ても完璧な先生のはず。はずなのに、仕事が終わったことを褒めて欲しいと生徒に求める先生。
ギャップの温度差でそれこそ温泉が沸かせそうだ。体が熱くなる。
「……よ、よくがんばりました。先生」
「ふふ〜。撫でて〜」
なで!? 今撫でって言った!?!? は!?
撫でて!?
は!?
体をこちらにくるりと回転し、恋人距離、てかなんならキス距離まで顔同士が近づく。他から見れば兄弟のようだが、私からすれば実質……
相変わらずの二重に上目遣い。お腹には先生の小さく体温の高い手がまわし込まれる。
密着した体同士。体温の移動が激しい。
「んふ! ユウカあったかくていい匂い〜」
あぁ、私の体温のほうが高くなってしまっている。でもこんなの仕方ない。そうに決まってる。
お手上げである。どこに手を回すのも理性の壁が破壊される。
たとえ撫でてしまったら最後、私の手は先生の頭とアロンアルファが塗られたようになる。
「────」
「あ、あれ? ユウカ? ユーウーカー?」
頭がフリーズしてしまった。
ほぼ気絶である。
────
「あ! ノア、ねねユウカが……」
「……」パシャ
「これは……ふふ」
────
次に目が覚めた時は夕方だった。
「……あ」
聞き馴染みのある先生の声がした。あのハスキーで大人びた低い声。
体を起こす。どうやらソファーで眠っていたそうだ。
「起きた? っぽいね……」
「……おはようございます……」
見てみれば姿はすでに戻っていた。いつも通りの服装である。
そして、先生はどこか気まずそうだった。居心地が悪いという顔をしている。頬杖をつきそっぽを向いている。
「あ、あれ!? もう夕方!?」
「結構寝てたね……」
「あっと、あれ……?」
結構寝てた……? 寝た時間がわかる……?
「先生、もしかして……」
「……すまん……」
「多分、そういうことだ」
「あ、そういうことでしたか」
妙に一瞬冷静になる。森羅万象の全てがわかったような気がした。
先生が席を立ち、こちらへ向かってくる。相変わらずバツが悪そうなのは変わらない。
私も呼応したかのようにソファーを立つ。
私と先生は対面したと同時に、私から仕掛けた。
「あのユウカ、さっk」ボスッ
「あ! ちょ!? ユウカ!?」
先生の胸元に抱きついて思いっきり先生の匂いを嗅ぐ。
もちろん手を先生の体に巻き付けているので逃げられない。
「あの! 俺謝りたかったんだ、! けど!」
「」スーハー! スーハー!
途中から先生が私を傷つけないようにひっぺがそうとしていた手の力もなくなり、状況を受容した。
先生吸引タイムはしばらく続いた。
今回はギャグというか、ユウカがロリコン概念の話でした。
テーマとかないです。つけるとすれば「ロリコン」ですかね。
また次回もよろしくお願いいたします。
追記
アンケート回答ありがとうございました!まだまだ需要が分からないので、定期的に意見を求めるアンケートをすると思います。めんどくさいと思われますが、1動作分の時間私にくださいm(_ _)m