■夏1日目
タブレット曰く、今日から夏らしい。
確かに気温が一気に上がった。タブレットの予測では30度近くまで気温が上がる予定のようだ。
ただ、湿度もそんなに高くないし、日陰にいればそこまで熱いと感じない。
日本のコンクリート熱地獄よりずっと涼しい気がする。
逆に冬は厳しいかもしれない。耐寒方法を考えるべきだろう。
え?昨日の日記はどうしたかって?
あれはどうやら、ちょうど来ていたオァヒンヌアイのキャラバンの人曰く「サイコスード」というものらしい。
空の上、宇宙の衛星上から”幸福感を増幅させる脳粒子波”を放っているのだとか。
性別によって波長が違うらしく、今回は男性向けのサイコスードだから男性の精神に影響を及ぼしていたようだ。
なんというか、やばかった。具体的には言い表せないけど気持ち悪いくらい幸福感がすごかった。
薬物をやめられない人ってのはあんな感じなのかもしれない。
オクスリ、ダメ、ゼッタイ
■夏2日目
うおおおおお!!木を伐採!木を伐採!
途中でタブレットが「収穫の能力不足です」とか言ってたけどうるせぇ!!
俺は成長タイプの主人公なんだ!
木がないと焚火もたけねぇ!木は大事!
■夏3日目
なんと植えていた米が収穫できるまで育っていた!
俺が知ってる米と育つ速度がなんか違う。でも正直ありがたい。
種用はいくらか確保しておいて、米と肉でひとり収穫祭だ!
ちなみに肉はカメの肉を利用した。意外と美味かった。
小動物なら狩ることにためらいがなくなったのはいいのか悪いのか。
■夏4日目
エルフさんキタ―――(゚∀゚)―――― !!
尖った耳と長身の女性!なんとこの世界にはエルフが存在した!!
今日ここにキャラバンとして訪れたのは「ハーフエルフ」らしい。
組織名は「ウィエラ」。ハーフエルフ達が集まった村のようだ。
ほかにもエンシェントエルフというのも居るらしいが、彼らは総じて敵対的であるらしい。気を付けなければならない。
キャラバンとの交易については、襲撃者の落とした物品などを引き取ってもらった。
ここの通貨はシルバーらしい。墜落したときにいくつかあったから大事にとっておこう。
■夏5日目
▼
「きゃあああーー!!」
突然、夜の拠点に届くほどの悲鳴が聞こえた。
この拠点には俺しかいない。ほかにいるのはキャラバンのハーフエルフ達だが、先ほど去っていったはずだ。
声の聞こえた場所に向かうと、キャラバンに所属していた2名のハーフエルフの女性が恐竜のような動物に襲われていた!
「マジかよ!?」
すでに戦闘が始まっており、周囲には血痕が残っていた。やばいかもしれない。
援護するためライフルを発砲する。拳銃だと射程が短いため、こちらを使うことにしたのだ。
「よし当たった!」
うまいこと命中し、既に弱っていた恐竜はそのまま倒れ、意識を失った。
そのまま近くまで寄って、ナイフで急所を刺してトドメを刺す。
「大丈夫ですか!?」
「あ、あ、あ……ライザ!ライザぁぁぁぁ!!」
夜の平原に慟哭が響く。倒れていた1名は、既に絶命していた。
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■夏6日目
どうやら、キャラバンの移動中に恐竜に襲われたらしい。
何とか治療をして、生き残った女性は何とか一命をとりとめた。
「ライザと一緒に殿を務めたの。あの子、馬鹿みたいに使命感が高い子だったから」
何度も「馬鹿なんだから」と呟く表情は、やるせない気持ちが隠しきれていなかった。
■夏7日目
助けたハーフエルフの女性ははグヴェンディさんというらしい。
しばらく滞在して、完治したらここを離れて合流しにいく予定だと言っていた。
これを機に此処の星についていろんなことを聞いていた。
この星の原住民や宙族による襲撃で、油断ならない日々が続いていること。
人を殺すメカノイド達が襲撃してくること。
野生動物たちが時折狂ったように人間に襲ってくること。
想像以上の状態に言葉を失っていると、グヴェンディさんは「仕方ないな」といった様子で苦笑いしていた。
■夏8日目
グヴェンディさんが完治したので、ここを離れるらしい。
その前に、お願いされて作ったライザさんの墓に訪れ、一緒に墓参りをした。
「あんたにとっては他人だから、大事にする必要はないわ」
「ただ、しばらくは残しておいて欲しい」
「あの子の魂が天に還るまでね」
寂しそうに笑ったグヴェンディさんは、最後に「甘ちゃんには難しいかもしれないけど、あんたが生き残ることを願ってるわ」と言って、去っていった。
彼女の言うように、ここで生き残るには俺は弱すぎる。
俺は強くならなきゃいけない。
強くなるには、まずここで生活の基盤を整えようと思う。
当分の方針が決まった。ありがとう、グヴェンディさん。
■夏9日目
今、この洞窟みたいな拠点とも言えない拠点の前で3つの派閥が対峙していた。
先日訪れたウィエラとは別のハーフエルフの派閥「自由主義連立国イトエン」
ニアメーアという種族の集まった派閥「夜魔の一派」
マルという白毛の獣人が雪原地帯に居を構えた集落「ルシャイ学派」
彼ら3つの派閥は俺の拠点の前でいくらか会話すると、争うことなく中立として話をつけたようだ。
いやなんで俺の家の前でやってんの???
■夏10日目
キャラバンのみんなが通るたびにみすぼらしい洞窟自宅を見られるのも恥ずかしいので、そろそろ自宅の建築に着手することにした。
先日必死に集めた木を使って壁と屋根を建て、床を貼り、ベッドをそこに移動させて完成となる。
1日全部使って何とか完成までこぎつけた。
これで俺も一戸建て持ちだ!
■夏11日目
拠点の近くに輸送ポットが墜落してきた。様子を見に行けば、ネズミ耳の少年が不時着で気絶していた。
見捨てるわけにもいかなかったので、拠点まで連れて帰って治療することにする。
先日のキャラバンにもマルという獣人がいたし、エルフもいるし、ニアメーアっていう夜魔?の種族なんかもいたし、今回はネズミ獣人ときた。ロマンがあふれている、なんて星だ。
■夏12日目
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「へへ、わりーな。助けてもらっちまって」
「いや、いいんだ。俺も遭難者だし」
ネズミ獣人の少年が目を覚ました。
どうやら彼は「ラットキン」という、鉱業と農業が得意な種族のようだ。
「いやーいくら痛いのが好きとはいえ、さすがに墜落事故は堪えたぜ」
「????」
何か変な言葉が聞こえたが、おそらく聞き間違えだろう。
「それにしても此処はいいな!俺、女性が苦手なんだ」
「そ、そうなのか」
おや?おかしいな、なんか俺に向ける視線が変だぞ?
「なあ……やっぱいいよな、男って」
「飯作ってくるから待ってろ!」
貞操の危機を感じたので逃げ出した!
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■夏13日目
何とか誤解が解けた。どうやら彼はマゾヒストかつ女嫌いだが、同性愛者ではないらしい。
彼と話すうちに、衝撃的なことが判明した。
どうやらこの星に脱出できる場所があるらしい。
ただ、場所を聞いたらめちゃくちゃ遠い。今から向かっても無駄死にするだけだ。
もし向かうならもっと基盤を整えてからでないといけない。
■夏14日目
突然真っ白でどでかい動物が拠点近くを通ったのでたまげてしまった。
「ありゃスランボだな。喧嘩は売るんじゃないぞ」
と一緒に外を見ていたラットキンの少年「コリアンダー」に釘をさされた。
獣ではあるが、下手したら人間以上に知識が高く、集落によっては神獣として扱われているらしい。
身体能力もあの恐竜なんか目じゃないほどという。
それは戦いたくない。幸いにも温厚な草食動物らしいから、出来るだけ触れないでおこう。
■夏15日目
コリアンダーが完治したので、拠点から去ることにしたらしい。
「ラットキンってのは、どうにも奴隷だの実験体だのに便利らしくてな」
「もしかしたら、俺みたいに路頭に迷うやつもいるかもしれない」
「もしそんな奴がいたら出来るだけ助けてやってほしい」
彼はこれから自分のような境遇のラットキン達を保護するため旅をするらしい。
「ラットキンは情に厚いんだ。いつか必ず礼をさせてもらうぜ」
コリアンダーは約束だと言い残して、はにかんで去っていった。
1年目夏、終了
ラットキンの男性は珍しいらしい。
めっちゃ苦労しそうですね。