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――――その日先生として現れた人は、
ファーストコンタクトを行った七神リンにとって、失踪直前の連邦生徒会長により連邦捜査部
前髪の一部が跳ねたボサボサの頭髪。みすぼらしく映る程に使い込まれた砂色のロングコートの下に着ているのはぴったりと肌に張り付く黒いシャツ。如何にも頑丈な編み上げ靴。
だがきつく搾り上げられた筋肉の隆起がくっきりと布地越しに浮かび上がっているのを目の当たりにすれば、誰もが彼を只者ではないと考え直すだろう。目を覚ました瞬間、視線をタカのように鋭く巡らせて瞬時に状況判断を行うのを間近で目撃すれば尚更である。
先生として呼ばれた男性はリンに気付くなり問うた。
『ここは何所だ』と。
リンは答えた。自分の名前、自分の立場、今居るのがキヴォトスという学園都市である事、男性がどういう立場で何故ここに居るかについて(これに関してはリンも詳細な経緯は知らないので推測系)、混乱するのも分かるしリンにとっても遺憾だが、それでも先生である貴方にやってもらわなければならない事があること。
「そいつは今このキヴォトスとやらに広がっているキナ臭い空気に関わっている事なのか?」
学園都市を現在進行形で襲う非常事態については未だ触れていなかったものだから、男性にそう尋ねられたリンは酷く驚かされた。
「お分かりになるのですか?」
「生憎鼻とカンを利かせておかなきゃ手足の指でも足りない回数はくたばってた身の上なもんでな」
男は大パノラマで広がる窓の外の風景を睨みつけた。
彼は砂塵の紛争国から摩天楼広がる大都市まで世界中を駆け巡った経験があった。かなり大規模なビルの高層階だろう一室から見える風景は、その彼の記憶にあるどんな大都市よりも見事な高層ビルが乱立していたが、きらびやかなオフィス街といった風情のほんの薄皮1枚で蠢く異様な気配を男は感じ取っていた。
それは数え切れない命のやりとりを重ねなければ身に付かない類の第六感である。
「ここからでも感じ取れるんだよ、この窓から見える街並み全体が、今にも噴き出しそうなマグマみたいにグツグツ煮え滾っていやがるのがな……!」
そう断言する男――――聖職者からほど遠い風貌の先生のまなざしは、主席行政官として海千山千の生徒を見てきたリンですら背筋が震える程に恐ろしく思えてくる、灼けた鉄のような熱と極寒の冷たさが同居した険しく鋭い気配を放っていたのだ。
「数千の学園が存在している学園都市で起きているのが発電所のシャットダウンに犯罪を犯して収監中の生徒の脱獄、極めつけに戦車だの戦闘ヘリだのまで含めた違法な兵器の大量流通だぁ?」
エレベーターで降り立ったエントランスで各校から陳情にやってきた少女達に遭遇した先生は、その内容を聞き終えた途端に頭痛を覚えたと云わんばかりに頭を押さえて呻き声を発した。
「……不良が暴れてるとかそういう可愛いレベルじゃない。テロリストどころか軍隊が反乱を起こしたって言われた方がまだ納得できるレベルだぞ」
おまけにだ、とチラリと先生は新たに遭遇した少女達がそれぞれ携帯している存在――――各々個性的なカスタマイズが施された銃器に視線を送る。
(WW1クラスの骨董品から最新モデルのサブマシンガンまで種類も年代もバラついているのはともかく、無駄に銃をブラつかせるチンピラやまともに訓練を積んでいないそこらの民兵もどきとは違う。アッシュレベルとまではいかなくても全員が相応に銃を扱ってきた佇まいをしてやがる)
アフリカや中東に溢れる中古のAKを持たされた紛争国の少年兵からは程遠い、ピカピカの学生服に身を包んだ見た目麗しい美少女達がするにはあまりにも不似合いな佇まいとしか先生には感じられなかった。
(もしかしてこのキヴォトスに存在する生徒全てが
日常的に銃火を交えなければならず、彼女達のような年頃の子供達ですら武器無しでは平穏な生徒としての日々を送れないのか。
そうであるというのならば、それは
(いっそ笑えてくるぜ。それこそ
「代行、あの、隣の大人の方は?」
リンに詰め寄っていた生徒の1人、サブマシンガンを手にした早瀬ユウカはリンと共に現れた大人について訊ねる。
男が行方不明になった生徒会長が指名した人物としてこれからキヴォトスで働く先生であり、今起きている事態を解決してくれるフィクサーとなるだろう存在であるというリンの説明に他の生徒と仲良く驚愕しながらも、ユウカは先程ほんの一瞬目撃した光景が脳裏に焼き付いていた。
(見間違いでなければ、この大人の男の人はさっきあの時――)
ユウカの目には顔を手で隠しながら笑っていたようにも……
或いは今にも涙を流しそうな、悲痛な表情をしていたようにも見えたのだ。
……尤もその記憶は妙に威圧感を帯びた微笑みのリンにより、混乱を収めるのに不可欠な存在が眠るシャーレの部室を奪還する手伝いを強制される羽目になったせいで、意識の奥へと押し流されてしまったのだが。
最早完全な戦場と化したシャーレの部室へ向かう道のりへと向かう段になると、ユウカはまた血相を変えざるをえなくなった。
それはユウカに同行する守月スズミ、羽川ハスミ、火宮チナツといったメンバーも同様である。
「お待ち下さい先生! 前に出たら危険です!」
「ハスミさんの言う通りです。キヴォトスの外から来た方なのですから、私達とは違って弾丸1つでも命の危険があります」
生徒と違ってヘイローを持たない外の人間は簡単に死んでしまうのがキヴォトスの常識だ。
にもかかわらず先生と呼ばれる男はリンから経路を指示されながら、まるで自ら道を切り開くと云わんばかりに率先してユウカ達よりも先に進んでいこうとするのだ。
銃声に臆する訳でもない。かといって猪突猛進に不良達の前へ堂々と飛び込んでいく訳でもなく、キッチリと敵の目を掻い潜って着実に目標の建物へと近づいていくその身のこなしは明らかに鉄火場慣れした者のそれで。
後ろから飛んでくる姦しい抗議の声に振り返った先生は呆れ顔で――――だがその瞳には硬い意志を宿していた。
「あのなぁ、俺は顔も名前も声も知らない連邦生徒会長とやらに理由も教えられずこのキヴォトスに連れてこられた身な訳なんだが……」
「うえっ、それってマジ?」
「それは……災難でしたね」
「どういう魂胆で生徒会長が俺みたいな奴を選んだのかは後日洗いざらい吐かせてやるとしてだ。
俺は先生、つまり
「だから?」
「生徒なら生徒らしく引率の教師の尻にくっついとくもんだ。でなきゃ内申に響くぜ?」
「先生その言い方はセクハラなのでは……いえ先生と生徒の立場を考えると正しい部分もありますが」
ミレニアムサイエンススクールの優等生ではあるが、気の強い面を持つユウカに至っては先生の言い方に憤慨すら抱いていた。だがそれはあくまで先生の身を案じての怒りである。
「茶化さないでよ! ハスミもチナツも先生の身を案じて言ってるんですよ!?
今こうして戦場の中心に向かっている現状でも先生は危険なんですから、先生は前に出ないで私達が戦っている間は安全な場所にいるようにしてください!」
ユウカの怒号にしかし先生は。
先程ユウカが一瞬垣間見た時のとは別物の、ハッキリとした不敵な笑みを口元に浮かべた。
「生憎だが2つ訂正させてもらうぞ。まず1つ、俺みたいな存在にとってむしろ戦場の方が生まれ故郷みたいなもんだ」
どんな
「そしてもう1つ、教師の役割ってのは――」
その時、先生の背後の道路へ向いていたハスミの目が大きく見開かれた。
「先生、ユウカ、頭を下げてください!」
「へっ?」
意識の焦点が先生へと集中していたユウカからは、進行方向の道路に複数の不良生徒が飛び出してきて銃を構えようとしているのが見えていなかった。彼女の方へ顔を向けていた先生も同様だ。
――――その筈だったのだ。
「何があろうが、どんな存在が相手だろうが、
目の前の先生から目を離したつもりはなかった。そういった身動きを行ったようにも見えなかった。
にもかかわらず、次の瞬間には鈍く光る拳銃が先生の手の中に出現していて。
大口径のマグナム弾の発砲音。
「あ゛っ゛!?」
「い゛っ!?」
「たっ!?」
悲鳴が3つ。硬い物が砕ける着弾音も3つ。
10メートル以上は離れた前方に出現した不良生徒が3人、手を押さえて蹲っている。彼女達の足元に転がっている、彼女達が持っていたであろうサブマシンガンやライフルといった武器にはどれも急所である機関部へ弾痕が刻まれていて最早使い物にはなるまい。
それを為したのが銃口から硝煙を漂わせる拳銃を手にした先生であるのは明白だった。
ユウカが所属するミレニアムの生徒では使用者が少ない旧式の
「……自分は後ろに隠れて、子供に銃を持たせて戦場の矢面に立たせる教師がどこに居る」
今見たものが夢でも幻覚でもないとしたならば。
「嘘ぉ……」
「一瞬の抜き撃ちで、3人の武器だけを同時に撃ち落とした……?」
「
諦めの悪い不良生徒の1人が悪態を吐きながら腰の後ろに手を回す。が、
「きゃあっ!?」
スカートの後ろから抜こうとしたバックアップの拳銃も不良生徒が抜き終えるよりも早く、改造されて剥き出しになった臍周りと銃を抜こうとした手の間の小さな空間を通過した銃弾が。僅かに露出したスライド部分に命中した事でメインアームに続き破壊される形となった。これには堪らず少女らしい悲鳴を上げてその不良生徒は尻もちを突いた。
最早偶然でも幸運の産物でもないのは明らかだった。
戦闘力が高いだけの生徒ならキヴォトスには幾らでも居るだろう。
だが神業じみた技量で銃を扱い熟す人物となると、ゲヘナにもミレニアムにもトリニティにもすぐには思いつかなかった――――今この瞬間までは。
「俺の名だ、地獄に堕ちても忘れるな」
「……成程。流石は生徒会長が招来した大人なだけはある、という訳ですね」
遠方よりリンは張りつめていた表情を安堵で緩めながら、満足そうに頷いたのだった。
元殺し屋:シャーレの名簿には藤沢慎吾で登録した。後日、アビドスのラーメン屋で剣鬼と護り屋に再会した。
原作先生とは真逆で自分が銃持って突っ込むのでゲームシステムが見下ろし式シミュからTPSかFPSに変貌してしまっている。
銃を2度撃ち落とされたスケバンちゃん:多分元トリニティ生徒。この後こっそり替えの下着を買いに行った。
七月節が思った以上に難しかったので多分続きません。