「妙だな。呪術師が引いていく……? 自殺行為だぞ」
不思議に思いつつ、街頭に流れるニュースを見て羂索は目を見開かせる。
「あはは! なんだ勇者って!! あはは勇者ね!!! 愉快犯か? さっぱり目的がわからないな! だが、そうだね。情報が漏れているみたいだ」
ニュースを調べていく羂索。呪術師達の動きもマスコミの取材のおかげでわかりやすくなっている為、大変に役立った。しかも足止めまでしてくれる。マスコミ様様だ。
「虎杖悠仁は動けそうにないね。裏梅。各国の様子は」
「態度を硬化させている。侵略者には絶対に屈しないそうだ」
「面倒だな……」
『1000万の透明怪人を解き放つ!』
『1000人の魔王の器をばら撒く!』
『それぞれの街で殺し合いをさせる死滅回遊を開く!』
『そして、すべての日本人を贄にして、異世界への扉を開くのだ! そう、東京タワーに!! この日本は、一度滅び生まれ変わる! ハッピバースデイ!!』
使われているのは、夏油傑の演説の様子。
頭に縫い目はない。
「しかし、こんな事をして、なんの得が……? 設定も半分は嘘っぱちだし……目的がわからない」
考え込みながら、羂索はニュースを見る。
ニュースでは、堕ちた勇者特集をやっている。具体的に言えばオガミ婆とか夏油とか。ちなみに夏油は堕ちた理由や五条悟とキャッキャうふふな青春時代も込みで放映されている。
「んー。まあ、仕事は進めるとしようかな」
1000人の虎杖悠仁を解き放ち、死滅回遊をスタートさせる。
呪術師の妨害がないので、1000万の呪霊という手札はまだ保留だ。いつでも出来る。ただ、守りはガチガチに固めているようなので、天元襲撃が難しそうだ。
「漏瑚」
話しかけると、呪霊達は膝をついた。
「? どうした?」
「強力な力、恐れが流れ込んでくる……!」
「いい気分だよ」
「そうか、日本人全員に共通認識を持たせたから……! 短時間でこれなら、新たな呪霊を生む事すら……ん? ……はっ ……ハハ……アハハハハハハハハハハハ!!! まさか! それで!? いやいやいやいや、嘘だろう!?」
羂索はバカ笑いする。
そうして、呪霊たちに笑いかけた。
「さて、答え合わせに行こうか」
タンタンタンタン。
俺は指で神経質にパソコンを叩き、東京タワーに隠れて待っていた。
呪霊が生まれるその時を。
この為に、膨大な呪力を垂れ流して支配力から外している。
恐怖が、呪力が、緩やかにに扉を形作っていく。
「(来い来い来い来い来い……)」
全く声を出せない、天与呪縛。こんな軽い代償で、強力なネットワーク術式を持って生まれたのはチート転生者という事だろう。
これがあれば、世界を救えたかもしれない。でも興味ない。
俺が興味あるのは、元の世界に帰るという事だけ。
「(こんなもんか!?)」
いかに将来特級呪霊になろうとも、生まれたばかりの三級程度の段階なら、縛りが結べるはず。
俺は術式をぶつける。
『俺に従え!!!』
パソコンに映る俺の操るプログラムが叫ぶ。
「はいそこまで」
腕が吹っ飛ばされる。
『〜〜〜!!!』
『なんでこんなところにいるんだよ、メロンパンが! セコセコ死滅回遊しとけ!!』
「いやーだよ♡ だって、こっちの方が100倍楽しそうじゃないか?」
『ぐっ……愉快犯め!!』
「どっちが。それにしても、日本人に恐怖映像を配布して望みの呪霊を、という試みは面白いね。そう思うと、君は使えるな。私の仲間にならないかい?」
残った腕を呪霊が掴み、俺を捉える。
俺は、最後の抵抗でお茶の間にその映像を流した。
異世界の扉に対する恐怖心を存分に吸い、扉は開く……。
さて、この異世界の扉。
どのような恐怖が詰まったものだろうか。
もちろん、異世界の侵略者達が襲撃してくる世界の扉である。
後、聖なる勇者がいて、堕ちた勇者がいる。
バッチバチのナーロッパ世界。魔法があって夢があって、魔物が迫害なんてされちゃっている世界で、それを守る為に堕ちた勇者が魔王として立っている世界である。
広げられた想像の翼は、偏向報道によって全日本人を特定の世界へと飛び立たせた。
そんな、全日本人の共通認識、もとい恐れに可能な限り近い並行世界に接続し、扉を開く!!!!
扉から転がり出て攻撃してきた異形に、呪霊一派は迷わず攻撃する。
世界大戦は唐突に始まった。
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マシュマロ
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