世界はワタシにコスプレを強いる!   作:usausado64

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20 休日の一片

 神字についての書物を返すついでに何かプレゼントでもしてみようかと考えていると、ルフチンバラのショップで例のコートを見つけてしまった。取り扱いがゴシック系統に依っている店でワタシも贔屓にしている。今日もシルバーのチェーンがついたロンググローブとパレオのような装飾コルセットを購入したのだが、マネキンが着ているのを見て即断してしまった。

 

 倉庫の改造などで色々と最近出費が多かったため財布には痛手だが、ワタシとしてはクロロがあのコートを着ていないことの方が痛手のような気がする。連絡を取ってみると流星街の拠点に居るというので本とコートを持って向かうことにした。

 

 足がまるでないのは色々と不便で、特に荷物がある場合走っての移動は大変面倒なものがある。ワタシの年齢でも低排気量の二輪は免許を取得できるのであとで取得することにして、ルフチンバラでマフィアの下働き時に知り合ったカーディーラーから適当な物を買い取った。ルフチンバラの街乗り用と思っていたが、ディーラーは案外いいものをあてがってくれたようだ。ビービーという名前らしいが、丸っこかったりカラフルなビジュアルデザインだったり独特の排気音的に、これベスパと同じようなものなのではないだろうか。

 

 流星街は砂漠に包まれているのだが、様々な業者が廃棄物を持ち込む関係で道路だけは繋がっている。砂避けにロングコートを着込んでのんびり行くことにしたが、なんと五時間もかかった。初めて訪れたときは西の山岳地帯を抜けたり体力テストのためにだいぶ遠回りだったし、海岸沿いの最短距離ならと思っていたが、“周”で強化していたとはいえ原付の速度ではそんなもののようだ。早く正式に自動車が欲しい。

 

 砂漠の中に浮かび上がる廃墟のような街並みが見えてきた頃にはもう日付も変わるかといった時刻であった。そんな時間帯では街明かりも殆どが見られない。流星街の資源は余所で出たゴミが原料になっているため、節電省エネは当たり前である。そもそもそうして電力などのライフラインが供給されているのはかなり限られた範囲になっている。

 

 流星街に住んでいる人種は様々だが、流星街の住民は大まかに二通りに分けられる。

 

 一つは、流星街の一部に自身がなることによって配給などの保証などが受けられる正式な流星街の住民。彼らは原作でも言われているように、共同体としての教育――或いは洗脳が行き届き、血ではない強固な絆が築かれている。流星街の所有物となるが故に保護――管理を受けられるが、同様に自爆特攻などのように“使われる”こともある。

 

 そしてもう一つが流星街流民である。こちらは流星街の所有物ではない流星街に住む人たちのことで、その大半は流星街の統治機関を頼らずとも生きていける人たちだ。幻影旅団もこちらの扱いであるが、これは単純に流星街の『みんなのモノはみんなのモノ。ワタシのモノもみんなのモノ』という方針がどうやっても相容れないためである。同じように考えて配給を受けずに流星街で生活する人間も意外と多い。

 

 こんな時間に明かりが付いているのはそうしたことが個人で可能な流民ぐらいである。おなじみの廃墟ビルも7階に明かりのようなものが見える。このビルは代々流民の中で力関係が一番強い者が所有することを流星街から認められているものらしく、その代わりに少々厄介な仕事を任されたりもする。原作で言うところのキメラアント討伐なんかがそうだろう。

 

 しかしお腹が空いた。ハッキリ期間を聞いたわけではないが、クロロは数日こちらに居るようなことを言っていたから食料なんかがまるで無いということはないだろうが、おいしくもない保存食は正直遠慮したい。軽食でも作れればいいのだが。

 

 拠点には団長クロロとシャルナーク、パクノダが居た。他のメンバーは思い思いに現地解散したらしい。マチとはA級手配後すぐに会って、ノブナガとのジャポン行きを見送っている。結局なんだかんだで一緒に行動することが多いようである。

 

 パクノダは要警戒だが、そもそも何かを調べられるという状況にならないことが重要なので、出来るだけ自然体で会うことを心懸けている。今のところボディタッチ自体がマチとノブナガからしかないので、このままの距離感でいきたいところである。

 

 三人は7階の食堂で酒盛り中だったようだ。

 

「ようやくご到着か」

 

「時間の_指定無し。仕方_なし」

 

 原付で120キロ以上出して飛ばしたのだ。これ以上は“周”で強化しきれない足回りがぶっ壊れるから無理だ。

 

 シャルがグラスにワインを注いでくれた。空き瓶や空き缶の量は相当だが三人とも至って平然とした様子である。能力者なら相当飲むかわざと酔うかなのだから、今後はこんな調子の宴会経験が増えるんだろうなと予想する。

 

「賞金首ライフに」

 

 正直そんなものに乾杯はしたくないが。グラスをぶつけて中身を煽る。アルコールは念で分解を促進しよう。

 

 本と一緒にコートをクロロに渡すと二人からずいぶんからかわれた。シャルの弄りでパクノダに飛び火して真っ赤になっている。パリッとスーツのクール秘書系美女が慌てる姿は中々に可愛らしいものがあった。それをむっつりとスルーするクロロ。いやぁさすがっス。

 

 少々寒くなり始めた懐具合を考えて内職の許可を貰ったり、神字についてあれこれと意見交換したり、つまみに作った軽食を絶賛されたり、親睦を深めつつ宴会は空が白むまで続いた。

 

 

 

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