世界はワタシにコスプレを強いる!   作:usausado64

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24 暴君

 メイドの処遇をどうするかでちょっと揉めた。というのも彼女があまりにも下っ端で、あまり有用な知識を持っていなかったり、彼女の視点ではメイド長がなにやら知っていそうに見えたということ。それと殺せるかどうかを確かめるのもいいが、また番号が変わるのはあまりよろしくないということで、縛り上げてクローゼットの中に押し込めておいた。

 

 使用人達はコレクションルームと秘蔵品を保管する大金庫へと繋がる書斎に集まっており、執事と庭師が巡回しているそうである。書斎と言っても主人は別荘兼趣味の屋敷と考えているようで、書斎は仕事をするための部屋と言うよりもコレクションの中でも書物系を展示してあるので、コレクションルームと大差ないとのことである。それを聞いた団長が突入を選択するはずもなく、またぞろ見回りの執事を探して暗い屋敷を徘徊することとなった。

 

「なるほど。つまりオーラの顕在化に対して強い負荷が関わっているために“練”や“発”が出来ないのであって、制約として“練”や“発”を封じているわけではないと」

 

 ワタシは肯いてチェーンソーを掲げてみせる。ワタシは《前回出荷鎖鋸(インスタント・チェーンソー)》でチェーンソーを具現化する方法と、一から構成する方法と二種類の方法があるが、他の人はどうなのだろうか。ワタシのように出すたびに大量にオーラを消費するのはあまり居ないと思うが。クロロの本なんかは手に出現させること自体にそれほどオーラを消費するとは思えないが。

 

「んー。だとしたらアンテナ刺してみようかな」

 

 確か操作系の操作権は早い者勝ちだったか。もしシャルナークが操っている場合、何らかの勅命によって操られるという可能性がないのならそれは大きい効果だが、逆の可能性がある。それはそれで、命令を受けていないだけで操られている状態だとハッキリするので、やってみる価値はあると思うが。

 

 屋敷の中をグルリと見て回る。やはり外観の通り内部も広く大きい。使っている部屋が少ないとはいえ、十人にも満たない人数で管理するには相当大変だろうことが予想できる。

 

 正面ホールに辿り着いた。なだらかな曲線を描きつつ二階まで伸びている階段はなぜか左右に一つずつある。幅も十分あるというのに対称にするためだけに二つもこさえたのだろう。無駄もいいところである。ただこの屋敷の建築方式として対称であることは重要なようで、随所にそういった違和感が感じられる。

 

 正直ワタシは非対称だとか歪んでいるモノに食指が動く質なので、こうして整っていることが結構気持ち悪いと思ってしまう。伊達にゴシック好きではないのだ。

 

 ホールの中央にはドデカイ肖像画が掛かっている。否、肖像画と言うよりは家族写真というべきだろうか。写真ではないが。中央に描かれた髭をたっぷり蓄えた男はその豪奢な衣装といい、頭に被っている王冠といいなにやら王族のようであり、タイトルを付けるなら“王家ファミリー”といった感じの絵である。絵画の古さといいこれは貿易商家族のコスプレというより、そのコレクションである可能性が高い。

 

 “纏”で纏えているなけなしのオーラを眼に集中させる。“凝”と呼ぶにはオーラの集まりが弱いために精度は低くなってしまい“隠”なんて使われていれば難しいが、そうでないのなら問題なくオーラ感知は行える。絵画から微かなオーラと、その説明書きのようなプレートからハッキリとしたオーラが滲み出ている。

 

「シャル、この_王朝って」

 

「ソーヤーの言いたいことはわかるけど、多分それはないと思う。だとすればこんな一介の商人が持っていて良いコレクションじゃないよ。ハンター協会が黙っていないさ」

 

 プレートはそれ自体展示物のようで、ガラスの保護ケースが取り付けられていた。石版の縁に金属の装飾が記されている。なんの植物かワタシにはわからなかったが、ツタと葉が絡み合って縁取りしている。中央には非常に簡素にハンター文字でこう書かれていた。

 

『 2番 は 8番 を 殺すべし 』

 

 これが勅命か。あまりにもプレートのサイズにそぐわない一文である。本来なら王家を讃える詩か何かが記されていたのだろうが、現在はその中央に見慣れたハンター文字がポツンと並んでいる。これはその時々で記される文字が変わるのだろうか。

 

「不味いな。おそらく王は人ではあるまい」

 

 ぼそりとクロロが漏らした。屋敷の人物と侵入者のワタシ達で埋まってしまう番号。王様ゲームであるならば居るはずの“王”がいない。別口の侵入者が居るのでないのなら、王はすでに死んでいる。ミステリなら有り得ない話だが、あいにくとこの世界には“念”がある。

 

「“死者の念”というわけね。とんだ呪いのコレクションだわ」

 

 そう。死者の念。生前込められた念が死ぬことで強くなったり思いのために歪んでしまったりしたモノで、総じて通常とは考えられない強力な能力になっていることが多い。発掘された太古の遺跡にはそうした本物の呪いの発掘品もあると言われているが、これがそうとは。

 

 しかしだとすれば広い効果範囲だとか、非接触で相手を縛るルールだとか、重い誓約無しには不可能であろう念能力も説明が付く。おおかたこの王朝は、王の暴走で滅んだのだろう。滅んでもなお傍若無人に振る舞いたいとはまたとんでもない暴君である。

 

 

 

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