世界はワタシにコスプレを強いる!   作:usausado64

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5 四年間の幸せ

 ワタシはどうやら手に入れた知識や情報に囚われて根本的なところを見誤っていたのかもしれない。そもそも知識だけ唐突に手に入れたワタシは、念に限らず実行したり練習したりすることで、ただの知識から習得した技術へと昇華していく必要があったわけだ。

 

 念に関して言えば遙か高みを知っているからか、この程度では駄目だと日々試行錯誤しつつ鍛錬を続けているし、これからもそうしていくだろうが、それ以外の事柄においては、ワタシが電波的に知識だけ得ていることを両親にも隠しているため、圧倒的に実践経験の方が少ないのである。

 

 何とか改善できた例を挙げれば、料理などの家事だ。家事についてはオタク男が一人暮らしをしていたために一通りのことは知識として持っている。片田舎とはいえ電気は通っていたし、伝統作法を残して半ば保護されている民族の集落でもないため、家電の普及もそれほど知識の日本と変らなかったが、如何せんそれは成人した男の身体で得た知識、感覚であり、年の頃一桁の幼女で同じように行うのは不可能であったため、家事手伝いを始めた当初は相当悲惨な結果になったりもした。そして一番知識と感覚の齟齬を感じたのは味覚についてである。

 

 味を感じる舌がまるで別のものになっているし、味覚に関しては成長するものなのだから、当然と言えば当然のことだが、記憶の中にあるおいしいがおいしく感じられないというのは非常にストレスが溜まることだった。

 

 この味が食べたいと脳が欲求を吐き出し、忠実にレシピを再現してもいざ食べると何だか求めていたものと違うと感じて、欲求が解消されないままになってしまうのだ。色々と試行錯誤した結果、念で感覚を高めたりして欲求を無理矢理ねじ伏せる程の“おいしい”で上書きしてしまうという方法に辿り着いたのだが、そこに至るまでは本当に長く感じた。おかげで料理の腕にはちょっと自信がある域にまで達したのは素直に喜べるが。

 

 そして、一番見誤っていたのはこの世界についてだろう。原作ストーリーだのバタフライエフェクトだの考えても答えの出ないようなこと考えすぎて、結局距離をとれば予言か占い――あるいは対岸の火事程度に自分の中で納得させてしまったのが問題だった。

 

 ジョニーはフリーと口が軽いという性質上、マフィアの裏庭でもそれほど大きな仕事には関わってこなかったが、決して清廉潔白ではなかったし手は血に濡れていた。ワタシも使いっ走りではあったが殺し屋だったわけである。片田舎に引っ越した程度で完全な安全が確保できるなんて考えるべきではなかったのだ。

 

 そう――この世界は少なくともバトル漫画の土台となるだけの抗争だの戦闘だのが発生するのだから。

 

 ワタシの持っている知識は結局のところ主人公ゴンとその周辺の出来事だけで、彼の知らないところで、日夜悲劇や惨劇が起きては、解決されたり泣き寝入りすることになったりしているのだ。

 

 この世界は危険に満ちている。ワタシはそれを実感する代償として両親とまだ幼い弟を亡くした。

 

 

 

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