一之瀬帆波「……アイム、ジャグラー?」   作:桜霧島

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書いてはいたんですけど投稿するのすっかり忘れてましたごめんなしあ
新作を投稿しようとして気づきました


トマト収穫祭(後編)

 

 

 俺は一之瀬から櫛田の携帯端末を預かり、パッキーに当てる。タッチ決済機能を使ってジャラジャラと下皿に50枚のコインが流し入れられた。

 

 俺がこの店の立ち上げに際して何より苦労したのがこのシステムだ。

 

 基本的にパチンコ・パチスロ店ではICチップの内蔵されたカードまたはコインに現金を預け入れ、そこから玉やメダルを"借りる"。

 何でそんな面倒くさいことをしてるのかというと、一つには店側の不正防止のためだ。90年代初頭、当時は(『も』かもしれないが)未だパチンコ・パチスロ店にアングラ社会の影響が強く、そうした団体に現金が流れ込むことを懸念した警察がそのような規則を作ったのだ。所謂CR機の誕生である。

 俺も映像でしか見たことが無いが、当時の店内には今ある精算機の代わりに両替機がならんでおり、打ち手は500円玉(あるいは100円玉など)をハンドルの横に積んで遊戯を楽しんでいたのである。

 

 今では先述の通りICチップの内蔵されたカードまたはコインに残高が移されることになっているので、台の方もそのような仕様になっている。

 

 一方でこの高度育成高校のある島では、そもそも現金の使用はほとんど無い。学外の人間は持っているのかもしれないが、PPというある意味では独自通貨を使って遊戯をしなければならない。つまり、【(現金→)PP→玉orメダル】という独自のシステムを作らなくてはならなかったのだ。

 

 そこで役に立ったのがあの坂柳理事長(裏モノ大好きおじさん)だ。彼の人脈を駆使してパッキーを改造し、このような形態になった。もちろん、それなりの対価も支払っている。

 

 え? 三店方式? ちょっとよくわからないですね……。PPは換金性が無いし、合法なんでしょ。(適当)

 そもそも風営法上の届け出を行っていないので、このお店はその時点でアウトだ。だから闇スロ店として5号機を置いている。

 

 ともかく謎の力によって俺の店は摘発を受けていないし、摘発を受けていないということは合法であるということなのだ。ただ、大っぴらに営業するのもはばかられるから地下にもぐっているだけなのだ。

 

 

 

 俺がダララララっとメダルを入れる姿を櫛田はソワソワとしながら見ている。俺の動作に警戒しているのは何となくわかるが、お前みたいな何しでかすかわからない地雷女へ物理的に手を出そうなんざ思ってないから安心しろ。

 

「さて櫛田、スロットを触ったことは?」

「無いよ」

「だよなァ。とりあえず下皿に入れたコインをここに入れてくれ」

 

 トントン、と投入口を人差し指で叩く。

 

「私は一体何をさせられるのかな?」

「言ったろ? PPの増やし方を教えてやるってンだよ。なァ?」

「そうだよ、桔梗ちゃん! すっごく楽しいんだから!」

「ハハハ……」

 

 嘘は言っていない。(運が良ければ)PPは増えるし、スロット友達(カモ)にもなれる。

 

 俺の言うまま櫛田は数枚のメダルを投入口へ入れ、こちらを見上げた。

 これは俺が説明するよりかは一之瀬に説明させた方がいいかもしれないな。催眠スプレーで高まった警戒心もある程度解けるだろう。

 

「……で、どうするの?」

「そうさなァ……一之瀬、お前、櫛田に説明してやれよ。トマトチャンス入れるところまでやったんだから、続きやりたかったんだろ?」

「おっまかせ〜! トマト収穫祭だ~!」

 

 本当にコイツは原作から性格がまるッと変わってしまったようだ。

 俺は悪くない。悪いのはジャグラーにはまった一之瀬なのだ。パチスロは自己責任だ。

 

 俺は彼女たちに背を向け部屋を出た。

 ジメジメとした地下のトイレで用を足しながら今後のことを考える。

 

 とりあえずは林間学校をのらりくらりと終わらせることだ。特にノルマは無いし、あわよくばマラソンで賭場を開いてやってもいい。高度育成高校は賭け事の対象に困らないのだ。

 実力順3連単はおそらく「綾小路→高円寺→柴田颯(Bクラス)」だが、上位2名が八百長に積極的とかどこの地方競馬だよ。

 

 あとは特別試験とそれに付随する一之瀬のあれやこれやがある。だが今のコイツに情けとか容赦とか果たして要るのだろうか? 先ほどの櫛田への態度を見てわかるように、友達や身内に限ってみれば特にバレることを恐れてはいない。つまりある意味において無敵の人だ。

 万引き未遂で登校拒否よりもジャグラー専業堕ちがバレる方がよっぽど外面が悪いと思う。坂柳に攻撃されたとしても多分部屋に引きこもるよりは、ここへ来てストレス発散してるだろう。

 

 そう、ジャグラーは人の悲しみを癒してくれる存在なのだ。

 

 

 ……やばいかもしれない。

 

 

 用を足した便器に水を流し、手を洗ってスロットのもとへ戻る。

 

「桔梗ちゃん、スロットはいいよぉ! 当たった時の音楽とコインが出るときのジャラジャラでね、脳汁がびゅわ~って出るの!」

 

 

 ……やばいわ。

 

 

 読者諸兄よ、すまない。私はとんでもない原作改変をしてしまったようだ。

 たぶんコイツ、もう元には戻らない。

 

「桔梗ちゃん、遅い、遅いよ」

 

 うるせぇ、お前はカイ・シデンか。

 1枚1枚コインを入れる櫛田に一之瀬がキレている。お前も数カ月前までそんなんだっただろうに。

 

 もう俺の出番は無いのかもしれない。

 

 ……帰るか。帰ってオンラインカジノでもして現実逃避しよう。

 

「トマトきたぁぁぁぁ!」

「……じゃ、一之瀬と櫛田、俺はもォ帰るかンな。お前ら以外誰も来ないようにしておくし、扉はオートロックだから、適当に帰ってくれ」

「はぁ!? えぇ!? この状態で私と帆波ちゃんを置いていくの!?」

「お前が順応したら出してもらえるだろ……たぶん」

「出たら絶対〇す」

 

 

 おー怖。

 





アニメ4期決定だけど軽井沢ちゃんの初体験シーンが気になって毎日8時間しか寝れません
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