怪獣娘 BE ULTRA   作:ダブドラ

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新作です。
ずっと温めていた作品がやっと書けました。
よろしくお願いします。


1話 怪獣の魂を宿した少女

 

 

 

 

 ──怪獣

 

 それはかつて存在した、超常的な力を持つ巨大生物のこと。

 

 当時の人類はそんな怪獣の手によって甚大な被害を受けていた。

 

 しかし突如として現れた“光の巨人”によって状況は一変。

 

 危機を脱した人類は巨大な救世主を、

 

 “ウルトラマン”

 

 と呼んだ。

 

 

 

 それから人類はウルトラマンと共に怪獣へ立ち向かい、多くの怪獣を撃破した。

 

 

 戦いの後、平和となった現代で、怪獣の魂をその身に宿した少女の存在が確認された。

 

 

 

 そんな少女たちの事を、人々はこう呼ぶ。

 

 

 

 “怪獣娘”

 

 

 

─────と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 新宿区内にあるビルの前に、一人の少年がいた。

 

 

 少年の名は早田 シンイチ(はやた しんいち)

 

 私立円谷高等学校に通う17歳。

 

 「GIRLS・・・4年ぶりに来る事になるとは思わなかったな」

 

 シンイチが見上げているのは、屋上に“GIRLS”と書かれた黄色い看板が掲げられているビル。

 

 怪獣娘を保護しその身に宿る力を正しく使えるよう指導する為に設立された、

 国際怪獣救助指導組織、通称「GIRLS」の東京支部だ。

 

 

 「父さんに言われた通りここに来たけど、一体何があるんだ・・・?」

 

 

 前日、シンイチは父親から

 

 

 “GIRLS東京支部へ行け。”

 

 

 としか言われていなかった。そのため少し不安そうにしながらビルの入口を見つめている。

 

 「中に入ってみるか」

 

 立ち止まっている訳にもいかないとシンイチは自動ドアをくぐる。

 

 中に入ると、受付カウンターの前に3人の少女がおり、自動ドアの方を向いていた。その内の一人がシンイチの姿を確認するや否や駆け寄ってくる。

 

 

「ねえ!もしかして早田シンイチさん?」

 

「「えっ!?」」

「なっ・・・!?」

 

 茶色がかった黒髪の少女からの問いに二人の少女とシンイチが驚きの声を上げる。

 

「ちょっとミクさん!?」

「ミクちゃん、いきなりは──」

 

 茶髪と銀髪の少女は慌てた様子で黒髪の少女へ駆け寄る。

 

「・・・何で俺の名前を?」

 

 その時、困惑しているシンイチの一言が茶髪の少女の発言を遮る。すると3人の視線が一斉にシンイチへ向いた。

 

「じゃ、じゃあ貴方が・・・?」

「・・・早田シンイチです」

 

 シンイチが名乗ると、茶髪と銀髪の女子がホッと胸を撫で下ろす。

 

「よ、良かった・・・」

「人違いだったらどうしようかと思いました…」

「あのー、ところで何で俺の名前を知ってるんですか?」

「ピグモンさんに言われたんだよ!今日はお客さんがくるから案内してって」

「その時にお名前を教えて頂いたんです」

「なるほど…あの人か…

 

 納得しながら小さな声でつぶやくシンイチに銀髪の少女は説明を続ける。

 

「お名前以外には高校生だということしか知らなかったので、それらしい方が来るまで待っていたのですが…」

「俺を見た黒髪の子が先走ったと」

「驚かせてしまい申し訳ないです…」  

 

 そう言いながら銀髪の少女が申し訳なさそうにしていると、茶髪の少女がシンイチの前に来る。

 

「それじゃ、案内するのでボクたちについてきて下さい。後は歩きながら説明します」

「分かりました、お願いします」

 

 それからシンイチたちはビル内を移動しながら互いの自己紹介を済ませた。

 

 茶髪を一房結って左肩に垂らしている少女は"宮下(みやした)アキ"

 

 黒髪をポニーテールにした少女は"牛丸(うしまる)ミク"

 

 銀髪を三つ編みのおさげにしメガネをかけた少女は"白銀(しろがね)レイカ"。 

 

 シンイチも改めて名乗るとアキが、「そういえば、」と質問する。

 

「早田さんは何年生なんですか?高校生としか聞いてなかったから・・・」

 

「2年生。最近17歳になった所なんです」

 

「先輩だった!!」

 

「俺からも聞きたいんですけど、3人は何故GIRLSに?もしかして・・・」

 

「ええ、私たちは怪獣娘なんです。私が『ウインダム』、ミクさんが『ミクラス』、アギさんが『アギラ』の魂をそれぞれ受け継いでいるんです」

 

 レイカは説明しながらスマホのようなものを取り出す。

 

「ちょっと待っててくださいね…っと」

 

 それからアキとミクもスマホを手に持つと、アキを真ん中に並び立った。

 

 

「ソウルライド、『アギラ』!!」

 

「『ミクラス』!!」

 

「『ウインダム』!!」

 

 

 

 掛け声とともに、3人がスマホを操作する。

 

 するとスマホの画面に『Soul Ride』と表示された後、眩い光に包まれて3人は姿を変えていく。

 

「おぉ・・・!」

 

「こんな感じで、ボクたちは怪獣娘に変身できるんです」

 

 アキことアギラは肥大化した手足とフード付きパーカーを着たような上半身、フードには黒光りした角がついていた。片側にだけ垂らしていた髪も茶髪からオレンジ色になり、両肩に垂らしている。

 

「どうよ、カッコいいでしょ!」

 

 自慢げな表情のミクことミクラスは、牛のような2本の角が特徴的な頭部に大きめのグローブと5本指のブーツ、ビキニとホットパンツという露出の高い姿をしている。

 

「変身には、この『ソウルライザー』を使います。私たちに宿る怪獣の魂を呼び覚ますようなイメージですね」

 

 黙々と説明をするレイカことウインダムは、銀色の半そでジャケットにホットパンツ、機械的なデザインのゴーグルにグローブとブーツを身に着けている。また髪型も銀色の三つ編みから薄い金髪のストレートヘアーに変わっている。

 

 

 

「カイジューソウルってやつですよね」

「そうです。あ、敬語使わなくていいですよ。ボクたちの方が年下ですから」

「ああ、じゃあそうさせてもらうよ」

 

「お聞きするのを忘れていたのですが、早田さんは何故GIRLSに?」

「それが、俺もよく分からないんだ。父さんに行けって言われただけだからさ」

「早田さんのお父さん?」

 

 と首を傾げるミクラスの横で考え込んでいたウインダムが声を上げる。

 

 

早田ってまさか…。あのー、もしかして早田さんのお父様って…」

「ウインちゃん、着いたよ」

「えっ!?あ、ああそうみたいですね…」

 

 

 いつの間にか目的地に着いていたようで、シンイチは扉に書かれた文字へ目を向ける。

 

「講義室?」

「ボクたちはここを、文字通り講義を受ける時や作戦会議をする時に使ってるんです」

「ピグモンさんも待ってるし入って入って!」

「あ、ちょっと押さないで…!」

 

 シンイチは変身の影響で並外れたパワーになっているミクラスに押され、転びそうになりながら部屋の中に入る。すると教卓の前に立っている小柄な少女と目が合った。  

 

「あ…えっと」

 

 

 少女は脛辺りまで伸びた赤いツインテールにモコモコとしたネックウォーマー、それに交差した布で隠された上半身とグレーの虫の足らしきものに覆われた下半身をしている。手袋とブーツも同じくグレーである。

 

 

「ピグモンさん、お客様をお連れしました」

「3人ともありがとうございます~」

 

「早田シンイチさんですね?」 

「は、はい」

「……」

 

 『ピグモン』と呼ばれる少女はシンイチに向き直ると、何故かもじもじし始めた。

 

「あのー、ピグモンさん?」

「顔が、赤くなってる…」

 

 そんなピグモンの様子にアキとレイカが困惑する。

 

 

「ピグモンさん大丈夫ー?」

 

 

 横で心配そうな顔をしたミクラスが近寄ろうとした時だった。

 

 

 

「えーーーいっ!!!」

 

 「ごはぁっ!?」

 

 

「「「ええっ!?」」」

 

 

 

 

 いきなりピグモンがシンイチへ抱き着いた。もはや飛びついたといっても過言ではない勢いであったためシンイチも思わず声が出てしまう。

 

 またそれを目の当たりにしたアギラ達も驚いたまま訳が分からないといった様子である。

 

 

「はー、やっぱり我慢できませんでした~」

 

 シンイチを抱き締めたままピグモンは満面の笑みを浮かべる。

 

 

 そして爆弾を投下した。

 

 

「お久しぶりです〜、()()()()()!」

 

「「「え」」」

 

 

 突然ピグモンが放った一言によって場の空気が一気に静まり返る。

 

 

 

 

「我慢できませんでしたじゃないですよ・・・()()()()()

 

 

「「「えええええええええ!?」」」

 

 

 

 更にそこへシンイチによる追い打ちが炸裂。

 

 

 素っ頓狂な声を上げながら、アギラ達は2人を問い詰めようとする。

 

「ちょ、ちょっと待って!シンイチ君って!?」

 

「トモミさんって・・・どういう事?」

 

「お二人はお知り合いだったんですか・・・?」

 

 

「そうなんです~。あっ、アギアギたちには言ってなかったですね」

 

「…早田さん?」

 

「へっ?」

 

 

 ピグモンの言葉を聞いたアギラがジト目をシンイチに向ける。

 

「説明、してもらえますよね?」

「ていうか何で言ってくれなかったのさ?」

 

 それに乗っかるようにミクラスもシンイチヘ詰め寄る。

 

「いや、ピグモンさんに頼まれたって言ってたから聞いてるものだとばっかり…」

 

「てへっ☆」 

 

 シンイチの弁明に3人がピグモンを見ると、シンイチに抱き着いたままいたずらっぽく笑みを浮かべる。

 

 

「てへじゃないでしょう…」

「まあまあ、まずは説明ですよ~」

 

「私とシンイチ君は、GIRLSが設立された時に出会ったんです~」

「GIRLSが出来た時ってたしか4年前、ですよね?」

「そうですよ~」

 

「当時、俺は父さんに連れられてここに来たんだ」

「お父さんと?」

「聞きそびれていたのですが、早田さんのお父様って…」

「シンイチ君のお父上は『早田シン』さんです~」

 

 シンイチの父親の名前を聞いた途端、アギラとウインダムは目を見開く。

 

「……誰?」

 

 しかし、ミクラスだけは首を傾げている。

 

 

 

「今の防衛大臣ですよ!」

「え、マジで!?」

 

 すかさずウインダムが耳打ちすると、ミクラスも遅れて驚きの表情になる。

 

「ミクちゃん、ニュースとか見てなさそう」

「アギちゃんひどくない!?」

 

 アギラの容赦ない口撃にダメージを受けるミクラスを横目に、ピグモンは説明を続ける。

 

 

 

 初めて怪獣娘が発見された当時、目覚めた力を制御できず、暴走してしまうケースが相次いでいた。当時防衛大臣になって間もない早田シンはこの事態を解決すべく動いていた。

 

 早田は過去、ウルトラマンと共に怪獣に立ち向かった組織である『科学特捜隊』の隊員であった。そのため怪獣に関しても記憶しており、その魂を継ぐ少女たちを救えないか考えていたのだ。

 

 結果としてGIRLSが設立され、シンイチは視察という名目で東京支部を訪ねた父に着いてきていた。

 

 ピグモンこと『岡田トモミ』とはその中で出会った。早田と上層部が会話している間、2人は一緒になって遊んでいた。それから数か月ではあったが、シンイチはトモミのもとを訪れ、2人の関係が深まるには十分な時間が過ぎていった。

 

 やがて本格的にGIRLSが動き出そうとした時、早田はこんなことを言い出した。

 

「GIRLSに保護されてくる怪獣娘達の指導役を君にお願いしたい」

 

 ピグモンは友好珍獣と呼ばれ、科特隊やウルトラマンとも協力をしたことがある。またシンイチと一緒にいるトモミの様子を見ていた早田は彼女ならばと推薦することにしたのだ。

 

 そして現在の立ち位置にトモミが立って以降、それぞれの都合によるすれ違いが発生し、2人が会うことは無くなっていった。

 

 そして今日、早田の言いつけ通りシンイチはGIRLSを訪ね、トモミと再会を果たした。

 

 

「以上が私たちの馴れ初めです~」

「馴れ初めって・・・付き合ってる訳でも無いのに・・・」

 

 満面の笑みでシンイチを抱き締めるピグモンを見ながらアギラ達はやれやれといった顔をする。

 

「そういう事だったのですね・・・」

「…付き合ってなかったんだ」

 

 

「と、トモミさん、流石にそろそろ…」

「嫌ですよぉ〜!4年も会えなかったんですから〜!」

「本題に入りたいんですけど…」

 

「ピグモンさん、むくれてる」 

「なんか兄妹みたいでカワイイ!」

 

「えっ、姉弟みたいですか?えへへ~」

 

 (何でしょう、すれ違いが起きてるような気が…)

 

 

「そうそう、まだシンイチ君に来てもらった理由を言ってませんでしたね」

 

 ピグモンはコホンと咳払いをすると、これまでとは一変して真剣な顔になる。

 

 

「実は、シンイチ君にはGIRLSに入ってもらいたいのです~」

 

「俺が、GIRLSに?」

「はい、それにこれは早田さんからのお願いでもあるんですよ」

「父さんが?」

「何でもシンイチ君の力が必要だっていってました」

「俺の、力…」

 

「それで、どうしますか?入ってもらえるならとっても嬉しいのですが…」

 

 話を聞いたシンイチは俯いて考え込む。ピグモンたちが見ている中、数分が経過するとシンイチは顔を上げて答えを述べる。

 

 

「分かりました。入らせてください」

 

 答えはYesだった。それを聞いたピグモンは再びシンイチに飛びつく。

 

「ありがとうございます~!あ、理由を聞いても良いですか?」

「父さんがわざわざ頼んだくらいだし何かある気がするんです。それに、断る理由もないので」

 

「では諸々手続きが必要なので、少々待っていてください~」

 

 そう告げるとピグモンは部屋を出る。

 

「ねぇねぇ、ホントにGIRLSに入るの?」

 

 一部始終を見ていたミクラスがシンイチに問いかける。

 

「入るよ。俺の力が役に立つなら尚更だ」

「でしたら、手続きが終わった後に改めて歓迎させてください」

「ボクも色々聞いてみたいし」

 

 

「お待たせしましたぁ~」

「トモミさん…ってまさか」

 

 程なくして書類を持ったピグモンが戻ってくる。その隣には老齢の男性がいた。白髪をリーゼントのようにセットしておりグレーのスーツに身を包んでいる。

 

 

()()()()?」

「久しぶりだね、シンイチ君」

「実は手続きのついでに紹介しようと思ってお呼びしたんです~」

 

 握手を交わすシンイチとイデを見ながらアギラ達はポカンとしている。

 

「え、誰?」

「井出光弘さん。父さんと同じ科特隊にいた人だ」

 

「ええっ!?」

「じゃあ、早田さんのお父さんとは…」

「ああ、ハヤタは僕の親友なんだ」

 

 何度目かわからない驚きの声をアギラ達は上げる。

 

「イデさんはなんでGIRLSに?」

「今僕はここの技術部にいてね。責任者をしているんだ」

「アギアギたちが持っているソウルライザーの開発にも協力してくださったんですよ~」

 

「マジで⁉」

「凄い…」

 

 アギラ達がソウルライザーを片手にイデと話す横で、シンイチにピグモンから書類が渡される。

 

「再開の余韻に浸るのはこの辺にして、手続きをしちゃいますよ~」

(トモミさん浸りっぱなしだっただろ…)

 

 心の中で突っ込みながらシンイチは書類を確認し記載事項を書いていく。

 

 やがてすべての書類を書き終えると、封筒にまとめてピグモンに渡す。

 

「ありがとうございます~。これでシンイチ君は我々GIRLSの一員になります~」

「はい!改めて、よろしくお願いします!」

 

「シンイチ君のソウルライザーは僕の方で準備しておくよ。完成したらピグモンちゃんから受け取ってくれ」

「ありがとうございます、イデさん!」

 

 

「それじゃぁアギアギにミクミクにウインウイン、シンイチ君を送ってあげてください~」

「はーい!」

 

 その後、シンイチとアギラ達はビルの外に出る。外は既に、夕日が照り付けていた。

 

「今日は色々ありがとう」

「早田さん、これからよろしくお願いします」

「いっしょに頑張ろーね!!」

「何かあれば、いつでも聞いてくださいね」

 

 三者三様のコメントにシンイチは微笑みながら返す。

 

「ああ、こちらこそよろしく。あとシンイチでいいよ、苗字じゃ父さんと被るし」

 

 シンイチがそう言うと、アギラ達はそれぞれポーズをとりながら横並びになる。

 

「わかりました。それじゃ改めて」

 

 

 

「「「国際怪獣救助指導組織、通称『GIRLS』にようこそ!!シンイチさん!」」」

 

 

 この日、シンイチは新たな一歩を踏み出した。

 





お読みいただきありがとうございました。
ヒロイン一人目はピグモンです。
ちなみに本作ではアニメのキャラで初代マンと戦ったことがある怪獣の怪獣娘は
全員ヒロインになります。

ピグモンとの出会いについては、設定を練ってる時に早田が防衛大臣ならこういう流れも行けるのではと思って本編の流れとなりました。

イデさんを1話で出したかったので長くなってしまいましたが次回から文字数を減らして執筆しています。

次回はヒロインが二人登場します。



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