怪獣娘 BE ULTRA   作:ダブドラ

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200UAありがとうございます!

今回はメインヒロインが登場します。
戦闘描写もほんの少しあります。
面白いと思って頂けたら嬉しいです。


2話 幼馴染と初仕事

 

 

 

 シンイチがGIRLSに入ってから二日が経った。

 

 この二日間は怪獣娘に関する講義やGIRLS支部の施設についての説明といった新人研修が行われた。

 

 そして今日はというと、シンイチはトモミに呼び出されて休憩室に来ている。

 

「まずは研修お疲れ様です〜」

「色々ありがとうございました、トモミさん」

「制服とっても似合ってますよ~」

 

 シンイチは研修の前に支給されたGIRLSの制服を着ており、気恥しそうにしている。 

 

「今日シンイチ君を呼び出した理由は、してほしい仕事があるからなんですぅ」

「仕事、ですか?」

「はい~。シンイチ君にとっては初仕事ですね!」

 

 トモミは嬉しそうな表情のままソウルライザーを操作する。そしてある一枚の画像を表示させシンイチに見せた。

 

「トークイベント?」

「そうです~。GIRLSに所属する怪獣娘の中には、芸能活動を行っている子もいるということは知ってますよね?」

「はい、講義で聞きました」

 

 怪獣娘はその存在が発見されてから5年程経つが、未だに怪獣の魂を宿す彼女達への恐怖心は残っている。根強く残っているそれを取り除き、理解してもらえるようにGIRLSには芸能課が存在しているのだ。

 

 今回のトークイベントもその一環である。こうしたイベントは自分たちの事を多くの人に知ってもらうために定期的に行われている。トモミ曰く、シンイチにはこのイベントに出演する怪獣娘のマネージャーをしてほしいという。

 

「マネージャーってどんなことを?」

「基本的には彼女たちの護衛みたいなものです~。イベントの後に握手会もありますから~」

「護衛って、俺でいいんですか?」

「むしろシンイチ君なら適任だと思いますよ~」

「なるほど……。分かりました、頑張ります!」

 

 

 こうしてシンイチの初仕事が決まった。

 

 それから数日経過しイベント当日の朝。シンイチはトモミの指示で集合場所の公園に来ていた。遊具は少ないが芝生の大規模な広場があり、ペットの散歩にきた人や家族連れで賑わっている。

 

 シンイチは敷地内にある噴水の前に着くと、制服のポケットからあるモノを取り出した。

 

 スマホのようなそれはシンイチ専用のソウルライザーである。トモミ達怪獣娘が所有している物は青がベースの端末だがシンイチの物は銀をベースに赤いラインが入っており、さながらウルトラマンを連想させるような外観をしている。

 

「そろそろ集合時間か」

 

 今の時刻を確認したシンイチはチャットアプリ『KAIJU TALK』を開く。その後画面に表示されたのはトモミとのチャットだった。

 

 そこには仕事に関する説明と、ポスターの画像が貼られている。

 

「…なんて挨拶しようか」

 

 シンイチはカラフルなレイアウトのポスターを見ながらため息をつく。

 

 

 それから数分が経ち、集合時間の少し前になった時だった。

 

 

「よう!」

 

 一人の少女がシンイチに声をかけてきた。少女は褐色の肌にカールした黒髪のおさげ、鼻には白い絆創膏を付けている。

 

「ピグモンが言ってた新人、で合ってるよな?」

「は、はい。早田シンイチです」

「やっぱりか!えっとオレは…って変身したほうが早いか」

 

 少女は自己紹介を中断し、ソウルライザーを取り出す。そのまま画面を操作すると、

 

「ソウルライド、『レッドキング』!!」

 

 掛け声と共に光に包まれる。

 

 

 少女はアギラ以上に肥大化した両腕に黄色い岩のような上半身と、白いフリルが付いたピンクのパンツにガーター、リボンが付いたこれまた岩のような尻尾に白いプロレスシューズといった獣殻(シェル)*1に身を包んでいる。

 

「改めて、オレはレッドキングだ。よろしくな!」

「レッドキングって、あの大怪獣ファイトの?」

「何だ、オレのこと知ってるのか?」

「ええ、テレビで見たことはあります」

「本当か?そりゃ嬉しいな!」

 

 嬉しそうに笑うこの少女こそイベントに参加する怪獣娘の一人、大怪獣ファイト初代チャンピオンのレッドキングこと歌川ベニオである。

 

 大怪獣ファイトとは怪獣娘同士が戦う格闘大会だ。

 怪獣娘は普通の人間と比較して闘争心が強く、また身体能力が向上する都合でスポーツ競技に出られない。その為、溜まったフラストレーションのはけ口として開催された経緯がある。

 

 

「あのーレッドキングさん、もう一人は……?」

「ああ、遅れるってさ。本当は待ち合わせて一緒に来る予定だったんだけどなぁ」

「何かあったんですか?」

「電車を逃したんだってよ。ってか呼び捨てでいいぞ」

「いやでも先輩ですし……」

「先輩っつっても歳違わないし良いだろ、堅苦しいのナシにしようぜ」

 

 呼び捨てを要求するレッドキングに対し困った表情になるシンイチ。どうしたものかと考えていると、レッドキングのソウルライザーに着信が入る。

 

「お、そろそろ着くってよ」

「そうなんですか?意外と早いような……」

「?まあいいや、改めてよろしくな!」

「こちらこそよろしくお願いします!」

 

 シンイチはレッドキングと握手を交わす。自分の手がすっぽり包まれる程のサイズの手に驚いていると、何かに気づいたシンイチが目を見開く。

 

「ん、どうした?」

「いや、何か地鳴りみたいな音がした気がして」

 

 その言葉にレッドキングは首を傾げる。するとシンイチの向いている方角から

 

 ドドドドドドドドド

 

 と音を立てて何かが向かってきていた。

 

 

 砂埃を巻き上げながら迫る『何か』は2人がいる噴水の手前で急ブレーキをかけるように停止する。

 

 現れたのは一人の少女だった。

 

 

「お待たせちゃーん!!」

「遅いぞ、ゴモラ」

「いやぁ面目ない、ナッハッハ!」

「お前なぁ・・・」

 

 少女はゴモラこと黒田ミカヅキ。彼女がもう一人のイベントに出る怪獣娘である。

 また大怪獣ファイトの選手で期待のホープと目されている。

 

 

「つーか変身した状態で来たのかよ?」 

 

 レッドキングの言う通り既にミカヅキはゴモラの姿になっていた。

 

 スク水に手足のそれぞれ肘と膝から下が茶色い恐竜のような皮膚になっており、両肘と手の指、つま先に鋭利な棘と爪が生えている。膝下を覆う皮膚は太ももの外側にも伸びており、尻尾はゴツゴツとしている。頭部には赤い雷のようなラインの入った三日月型の双角と、額の一本角が目立つ。

 

「あ、遅刻とはいえやけに早かったのってまさか……」

 

 ゴモラが何故怪獣娘の姿で来たのか。その理由を察したシンイチが呟く。

 

「ま、間に合わないって思ってつい…」

「おい、まさか変身してビルを飛び越えてきたとか言わないよな?」

 

 

「……バレた?」

 

 

 ペロッとゴモラが舌を出した瞬間、レッドキングの拳骨が振り下ろされた。突然の一撃にシンイチは驚きゴモラは頭を抱えて蹲る。

 

「いったぁ!!レッドちゃんひどーい!」

「ひどいじゃねえよ!?」

 

「うわーん!レッドちゃんがぶったぁ!」

 

 今にも2発目の拳骨が落とされそうな中、ゴモラはなんとシンイチに泣きついた。涙目のまま新人に縋りつく光景にレッドキングはあんぐりと口を開いてしまう。

 

「……離れてくれ」

「えーいいじゃん慰めてよー」

「自業自得だろ」

「ぶー。()()()()()のケチぃ!!」

「ホント相変わらずだな、()()は」

 

 

「待て待て待て、お前ら知り合いだったのか?」

 

 そんなまさかといった表情で問うレッドキング。対するゴモラは何を今さらという顔をしている。

 

「そうだよ?幼馴染だもん!」

「はあああああああ!!!?」

 

「……前にもやったな、こんなやり取り」

 

「お、おいシンイチ説明しろ!」

「さっきミカが言った通り、俺たちは幼馴染なんです。小学校6年間の付き合いですけど」

「でも家近いし、シンちゃんが高校生になってからはたまに会ってたからね」

 

 実はシンイチとゴモラは小学1年生で出会っており、2人の交友は6年間続いていた。だがシンイチが中学に上がりGIRLSに行くようになってから会わなくなった。同時期にゴモラが怪獣娘として目覚めつつあったからだ。

 

「でもミカが怪獣娘になった時は驚いたよ」

「私だって大怪獣ファイト見てくれてたなんて知らなかったなぁ」

「お互い忙しかったしな」

 

「てことはシンイチがオレのことを知ってたのって……」

「前にゴモラvsレッドキングの試合を見たことがあったからですね」 

「やっぱりか……」

 

「それはそうとゴモラ、お前駅のホームで変身したわけじゃないよな?」

 

 先ほどとは一転して真剣な表情になるレッドキング。それを見たゴモラはシンイチの背に隠れていた。

 

「う、ううん、改札出てから変身したよ……?」

「ま、流石にそんな事はしないか」

「そりゃそうでしょ」

「だってピグちゃんに言われたもん、怪獣娘の力で人に迷惑かけないようにって」

 

 ピグモン曰く、怪獣娘には力を悪事に利用している者もいるらしい。これは怪獣娘のイメージアップを目指すGIRLSにとって逆効果になるので、仕事や緊急時以外、力の私用はルールで禁止されているのだ。

 

「私用してる時点でダメなんだけど、迷惑かけなかっただけ良しとするか……」

 

 結果的にレッドキングの怒りも収まり、話が一区切りしたことで3人は本題に入る。

 

「今日はトークイベントよろしくね!」

「マネージャーよろしくな!」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 3人は打ち合わせを兼ねてショピングモール内のレストランに来ている。

 

 イベントの内容としては大怪獣ファイトに関するトークの後に握手会が行われるという形だ。

 

「シンちゃんには握手会中に回りを見張ってて欲しいんだよね」

「案外いるんだよ、ストーカーとかそういう輩ってさ。だからもしそういう輩がいたら引き止めて欲しいんだ」

「引き止めるだけでいいんですか?」

「おう、後はこっちで何とかするさ」

「なるほど、わかりました」

「それじゃ、時間だしそろそろ行こっか」

 

 一通り確認を終えた3人は、ショピングモールの中央にある広場にやってきた。

 

 そこにはライトアップに合わせて多種多様な動きを見せる噴水が目を引くステージがあった。またこの広場は吹き抜けになっており、2階の高さにゴモラとレッドキングが映し出されたモニターが設置されている。

 

 既に大勢の観客で溢れており、ステージ前以外にも上階から見下ろす者もいた。

 

「お、集まってるね!」

「凄いな……」

「待機所はあそこだな、行こうぜ」

 

 

 

 

 

 

 そしてイベントが始まった。怪獣娘の2人が登場すると歓声が上がり、大盛りあがりでトークイベントは終了した。

 

 

「こんなに沢山の人が応援してくれてるのか……。凄いな、怪獣娘って」

 

 

 その後司会者の進行で長机が用意され、握手会が始まった。

 

 ゴモラは持ち前の笑顔で、要望があればギャグを披露し、レッドキングは時折照れる様子もあったが気さくにファンと交流していた。

 

 シンイチはその様子を見ながら笑みを浮かべる。

 

「……何だ?」

 

 しかしその笑みは直ぐに消えた。何故なら待機列に2人、怪しい人物がいたからだ。

 

 (顔は見えないが、何か・・・持ってないか?)

 

 一人は小柄でパーカーのフードを被っている為顔は確認できない。だがポケットに手を突っ込んでおり、なにか隠しているとシンイチは推測した。

 

 もう一人は長身で身体もそれなりにがっしりしている。両手を外に出して組んでいるので、隠している物は無いように見える。

 

 

 シンイチはステージに戻り男達の順番に備える。

 

 程なくして長身の男がレッドキングに、フードの男がゴモラと握手する番になる。

 

 次の瞬間。

 

 「来てくれてありがとうございま──っ!?」

 

 フードの男がポケットに突っ込んでいた右手を出すと、そこにはナイフが握られていた。そのまま男は驚くゴモラ目掛けて刃を突き出す。

 

 

 「ゴモラ!!」

 

 

 レッドキングが叫びながら手を伸ばす。がその間にもナイフとゴモラの距離は無くなっていく。

 

 「キャアアアアアアアアアア!!!!」

 

 その光景を見ていた誰かの叫び声が聞こえ、誰もがゴモラが刺されたのだと思った。

 

 

──その時だった。

 

 

「・・・あれ?」

 

 

 ゴモラが下を向くと、自らのどこにもナイフは刺さっていなかった。突き出された刃は途中で止まっていたのだ。

 

 今度は視線を上げる。するとそこには──

 

 

「ぐぐぐ……!」

「おい、何やってんだアンタ!」

 

 

 男の腕を掴んでいるシンイチがいた。

 

 

 「シンちゃん!!」

 

 それに気づいたゴモラはたちまち笑みが溢れる。

 

 

「ミカ、無事か?」

「うん、大丈夫!」

 

「邪魔を……するなぁ!!」

 

 シンイチに掴まれた腕を振り払った男が、今度はシンイチを狙ってナイフを振り回す。しかしガムシャラに振るわれた刃が当たることはなかった。

 

「大人しくしろっ!!」

 

 シンイチは再び男の手を掴むとそのまま投げ飛ばす。男は柱にぶつかり仰向けに倒れ、動かなくなった。

 

「シンイチのやつ、腕っ節あるじゃんか」

 

 フード男が制圧される様子を見て、レッドキングは感心していた。それから自分の列に向き直ると、シンイチが気にかけていた長身の男がいなくなっていた。

 

 「あれ、いない?」

 

 一部の客はさっきの一件で帰ってしまっていたため特に気にしていなかったが、辺りを見回す中で表情が変わった。

 

 

「シンイチ!後ろだ!」

 

 レッドキングの視線の先には、シンイチの背後に迫る長身の男がいた。

 

「やっぱり……お前もか!」

 

 長身男が振り下ろした右手を避けると、シンイチは距離をとる。

 

 すると、直ぐ様長身男は距離を詰めて蹴りを放った。計2発の蹴りを躱したシンイチに対し、長身男はさらに高い回し蹴りを左側頭部目掛けて放つ。

 

 シンイチはその一撃を、右手で受け止めた。

 

 

 

 

バキボキッ

 

 

「が、アアアアアアアアァァッ!?」  

「……ゑ?」

 

 その時、長身男の足が鈍い音と共にあらぬ方向へ曲がっていた。

 

「やべ、力入れすぎた!」 

「え、ちょ、シンイチおま」

 

 激痛に悶える長身男、それをステージ端から目の当たりにして困惑するレッドキング。当のシンイチは自らの右手の平を見つめてやってしまったという顔をしている。

 

「完全に過剰防衛だよな…これ」

 

 

「あ、危ねぇ!!」

 

 

 再びレッドキングの声が響き渡る。シンイチは気づいていなかったがフード男が目を覚まし背後に迫っていたのだ。既に息も絶え絶えの状態だが長身男を助けようとしているらしい。

 

 

「なっ!?」

 

 

 フード男が得物を振りかぶる。しかし、それより前にレッドキングの声を聞いていたシンイチは回し蹴りで男が持っているナイフを叩き落す。

 

 

「ひっ、ああああああああああ!!!」

 

 武器を失ってはもう無理だと判断したのか、フード男は人込みをかき分けて逃走を図った。

 

 

「逃がすかよ!」

 

 しかしシンイチが男の腕を掴んだことでそれは叶わず、男はステージに放り投げられる。

 

 

 

 ───筈だった。

 

 

 

 バッシャーーーーン!!!

 

 

 

「あ」

 

 

 

 シンイチは強く投げすぎた。その結果フード男は握手会用の長机の上を飛び、奥の噴水へ落下したのだ。

 

「あ、虹!」

 

 凄まじい音と共に上がった水飛沫が収まると、小さな虹が架かった。スタッフに囲まれているゴモラがそれを見て無邪気な声を発する。

 

「ハ、ハハハ……」

 

 レッドキングは引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 こうしてシンイチの初仕事は終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

*1
怪獣娘が着てる服の事





というわけで本作のメインヒロインはゴモたんです。
レッドキングさんとマジで悩みました。
シンちゃん・ミカの呼び方は他の作者さんの怪獣娘SSで出てますがこれが一番しっくり来たのでこの形にしました。

イベントに使われた吹き抜け広場は池袋のサンシャインシティのイメージです。

裏話ですが作者は中学生の頃に行ったウルトラマンフェスティバルで怪獣娘(黒)の映画ポスターを見かけた事がハマるきっかけでした

次回は電撃が得意なお姉さんキャラが出ます(多分)
ULTRAMAN要素も少しずつ入ってきますので
どうぞお楽しみに


▽解説を更新したので良ければ▽
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=314053&uid=322226


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