2025年最初の更新です。
まずは半年程空いてしまい申し訳ございません。
後書きに今後について諸々書いてあるので目を通して頂けると幸いです。
「ウルトラ、マン」
ゴモラは変身した幼馴染の姿に見惚れていた。加えて小学生の頃からずっと抱いていた彼への好意が、何故だか強まっているように感じる。
「ねぇ、シンちゃ・・・・・・ってちょっとぉ!?」
私には聞かなくてはならないことがある、とゴモラが声を発した時、既にシンイチは走り出していた。それどころかムカデ型SBの鎌を飛び越え、強烈な右回し蹴りを叩き込んでいる。
「むきー!話の途中なのにぃ!!」
「シンイチさん、すごい・・・・・・」
「シャドウビーストと互角に戦ってる!」
両手を上げながら怒るゴモラを横目にアギラとミクラスは驚嘆の声を上げる。それもそのはず、シンイチは三体のシャドウビーストを同時に相手取っているのだ。奴らの脅威を肌で知っている彼女達だからこその反応だと言える。
「マジかよ・・・・・・」
後ろにいたレッドキングもシンイチが戦う姿をあんぐりと口を開けて見ていた。
◇
シンイチはカラス型SB*1のエネルギー弾を躱しながら恐竜型SBの顔面へ左の拳を叩き込む。真横からムカデ型SBが振るう鎌に対して前転しながら躱すことで頭部の真下へ潜り込みそのまま右アッパーで頭部を跳ね上げた。
空中で体を捻り地面に着地すると、メットに内蔵された通信機から声が聞こえてくる。
「どうだい、シンイチ君」
声の主であるイデはGIRLSの指令室で“ULTRAMAN—SUIT”という文字と人型の3Dモデル、シンイチ達の戦況をそれぞれ映した二つのモニターを見ている。
「いい感じです。このスーツ、本当に凄い・・・・・・」
「それは良かった。ハヤタと共に開発した甲斐があったよ。」
◇
怪獣娘達とシャドウビーストとの戦闘が開始されて間もない頃。シンイチは新宿駅と直結した地下駐車場にいた。
そこには黒塗りの車と、側にイデが立っている。
「来てくれたか。シンイチ君」
「ええ、覚悟は決めましたから」
「分かった。それじゃあ着いてきてくれ」
そう言って歩き出すイデにシンイチはついて行く。数分歩いて辿り着いたのは、主に業者が搬入用のトラックを駐車するエリアだ。
何台か停車されているトラックの内、一台だけ離れた位置にあるトラックの前までやってくると、何かに気づいたシンイチは目を見開いた。
トラックのコンテナには見覚えのあるエンブレムが刻まれていた。
「科特隊の、マーク?」
黒い四角形の枠、その中央に輝く流星のようなマークこそ、科学特捜隊の証である。
だが科特隊は既に解散している筈。そう思っていたシンイチは、大きな衝撃と懐かしさを感じていたのだった。
「シンイチ君も知っての通り、科学特捜隊は解散している。───表向きはね」
「それって」
「裏では僕が運営していたんだ。
ハヤタにも知らせずに、ひっそりと。でも、ある事がきっかけで自身がウルトラマンだった事を思い出したハヤタを保護する為に、僕は真実を話した」
「初めて怪獣娘が発見された件、ですよね」
イデは静かに頷いた。
世間では御徴河決壊事件という名で報道されている、世界で初めて怪獣娘が発見された事件。
それがきっかけでGIRLSが設立され、イデは技術協力を申し出た。
同時に科特隊メンバーもそっくり移籍しGIRLS技術部が生まれたのだ。
「と、僕の話はこの辺にして、中に入ってくれるかい」
そうしてシンイチはコンテナの内部に入ると、目の前の物に目を奪われた。
「これは・・・・・・」
コンテナ内部には成人男性が収まるサイズのカプセルとケーブルで繋げられたノートパソコンが設置されていた。
加えてカプセル内にはメカニカルなデザインのウルトラマンらしきモノが入っている。
「正式名称は『ULTRAMAN−SUIT』。僕とハヤタで開発した、シンイチ君専用の強化スーツだ」
「俺専用の、スーツ・・・・・・」
「ああ。いずれ君が成長した時、自分の身を守れるようにハヤタが提案したんだ。開発に必要な戦闘データも
ハヤタが自ら試作品のスーツを纏って戦うことで手に入れる事が出来た。」
「そういう事だったのか。だから父さんはあの時・・・」
黒いウルトラマンに助けられた日の事を思い出していたシンイチは無意識に口元が緩んでいた。
「このスーツを装着すればシンイチ君もシャドウを倒せるようになる。いけるかい?」
「勿論です。その為に、俺は此処に来たんですから」
すると、イデはノートパソコンに接続されていたチップを手に取りシンイチへ向き直る。
「分かった。ではソウルライザーを貸してくれ」
シンイチは言われるがままソウルライザーを差し出す。イデはそれを受け取るとバックパネルを手早く外し、チップを取り付けた。
「これでソウルライザーにアプリが追加された筈だ。そいつを起動すれば何処でもスーツを装着できる」
説明しながらイデは端末を返す。アップデートされたソウルライザーには、ホーム画面にウルトラマンの胸部を模したアイコンが増えていた。
「急ぐんだ、シンイチ君。今も皆は戦っている」
そしてシンイチは頷くと、地上を目指して駆け出したのだった。
◇
そして現在、イデは何やらモニターを操作している。
「・・・・・・よし、それじゃあ、次は武装を試してみようか」
すると、スーツの右手の平と左手人差し指の上部、親指との隙間に当たる個所が変形し、黒い中身が露出した。
「右手の平にあるサブコネクタに左手の第二制御ユニットを接続してくれ。ちょうど右手を左手に被せるようにして」
シンイチが指示通りに手を重ねようとすると、右手の平から青白い光が放たれる。光は右手全体を覆いやがて装甲に沈むように消えていった。
(右手を、左手に・・・・・・)
心の中でそう呟きながらシンイチは恐る恐る手を被せた。その時だった。
「うっ!?」
重ねられた右手からV字型の短い光線が放たれたのだ。実際のところ反動自体はそこまで大きくはないのだが突然の出来事であったためにシンイチの身体は少し仰け反っていた。そして光線の方は真っ直ぐに飛んでいきムカデ型SBに当たった。
「今のはスラッシュ光線。中・遠距離からの攻撃や牽制にも使える武器だ。一発の威力は低いけれど連射が可能だから汎用性は高い」
イデの説明を聞く内に着弾地点から上る黒煙が晴れていく。次第に見えてきたのは僅かに傷ついたムカデ型SBの体表だった。
「なるほど・・・・・・」
それからシンイチは再びスラッシュ光線の構えをとると、今度は空中へ連射する。光線の向かう先は宙を舞うカラス型SBだった。だが何発か本体へ命中するも有効打には至っていない。
(効いてないか。でも嫌がってはいるみたいだ。それなら!)
と、三度攻撃を試みようとしたシンイチの眼前に巨大な尾が迫る。
恐竜型SBの妨害は既に回避が間に合わないところまで来ていた。その為シンイチは両腕を上げ防御態勢に入り歯を食いしばる。
(・・・・・・?)
しかし、『ドスン!!』という鈍い音から数秒経っても、シンイチの身体は吹き飛ぶどころか衝撃が来ることさえなかった。
防御するとき咄嗟に瞑っていた目を開くと、シンイチの眼前には二人の人影があった。
「ぬうううっ!!」
「ぐぐぐぐ・・・・・・だぁっ!」
何とミクラスとレッドキングが間に割り込むようにして尾を抑えていたのだ。
「オレたちの事、忘れてねぇだろうな?」
「アタシもいるよっ!」
二人は尾を弾き返すとシンイチの両サイドに立つ。
「ありがとう、助かった!」
「こっからは一緒に戦うぞ、シンイチ!」
「はい!」
「それで、どういう作戦でいくの?」
「そうだな・・・・・・ん?」
シンイチが考えながら後ろを向くと、アギラがウインダムを介抱していた。ゴモラは既にムカデ型SBと戦っている。
ウインダムは獣殻があちこち傷ついているが目立つ大きな怪我はない。むしろ肉体的なダメージよりも恐怖等の精神的ダメージの方が大きいだろう。
(レイカは大丈夫そうだな。良かった)
仲間を救ける事ができた事実にシンイチは再び安堵し、策を練る。
実際の所遠距離からの援護があればかなり有利だが、今のウインダムに戦わせる訳にはいかない。
(虫っぽい奴はミカが戦ってるから大丈夫として、飛んでる奴が厄介だな。羽をもぐか切り落とすかできれば・・・・・・)
と、考えをまとめたシンイチは敵を見据えながら二人へ指示を出す。
「レッドキングさん、恐竜みたいなヤツの注意をひいて貰えませんか」
「注意をひくだけでいいのか?」
「大丈夫です。それとミクは周りの奴らを」
「周りって・・・・・・げっ!!」
驚くミクラスの視界にはまたしても湧き出てくる多数のシャドウが映っていた。
「まだいるのぉ!?」
「狼狽えるなミクラス!少なくともエレが来るまでの辛抱だ!」
「エレキングさんが来るまでって・・・・・・?」
「アイツが別行動してる理由、多分シャドウの巣がある可能性を考えたからなんじゃねえかと思うんだ」
そう。これまでに判明している事実として、シャドウは巣を形成する事がある。
加えて巣が潰されない限り奴らは無限に湧き出てくる。そしてレッドキングの推測通り、エレキングはソレを探べく単独行動を取っているのだ。
「ええ、その通りよ」
「エレ!」
「ごめんなさい、遅くなったわ」
と、どこからともなく現れたのはエレキングだった。左手には六角形の盾を、右手には脱着可能な自身の尻尾を持っている。
「さっきシャドウの巣は潰して来たわ。後はここにいる連中を倒すだけよ」
「本当か!ならさっさと終わらせるぞ!」
「よーっし、暴れるぞーっ!」
その言葉にレッドキングとミクラスは気合を入れ直しファイティングポーズを取る。準備は万全のようだ。
「エレキングさん、あの」
「何かしら?」
ふと、何かを思いついたシンイチがエレキングに声を掛ける。
「私はまず空を飛んでいるシャドウビーストを担当すればいいのね?」
「はい。お願いします。後……」
「わかったわ」
シンイチから何かを伝えられたエレキングは、頷きながら一歩前に出る。
現状、知っての通りウインダムは戦える状態ではなく、側についている為アギラも動けない。またゴモラは絶賛戦闘中なので手が離せない。
更に飛び道具を有するカラス型を最優先に倒したいと考えると、斬撃を放てるエレキングが適任だとシンイチは踏んだのだ。
「その代わり、手を貸してもらえるかしら?」
「勿論です、エレキングさん」
「決まりね」
「それじゃ……行きますよッ!」
シンイチの合図をもって四人はそれぞれの相手に向かっていった。
「おりゃあああ!!」
ミクラスは勢い良く飛び出すと、レッドキング仕込みの格闘技でシャドウの群れを蹴散らしていく。
「こっちだ、かかってきやがれ!」
レッドキングは散乱している瓦礫を恐竜型SBへ投げつける。こうすることで敵の注意を自身に向ける作戦だ。
大怪獣ファイターコンビがそれぞれ戦闘を再開した時、エレキングとシンイチも移動を開始していた。二人はビルの外壁を伝って屋上へ向かう。
「いくわよ!」
そしてエレキングの掛け声でシンイチは端へ移動すると、バレーボールにおけるトスの構えをとった。エレキングはそれを確認すると同時に駆け出し、飛び上がってシンイチの手を踏む。
そこに合わせるようにシンイチは屈みこみ、戻りながらエレキングを投げ上げた。
シンイチのパワーにより空高く跳躍したエレキングはカラス型SBへ真っ直ぐ向かっていく。やがて至近距離までくると、右手に持った尻尾を横薙ぎに振るいSBの翼を切り落とした。
「再生なんてさせないわ」
カラス型SBは落下しながらも翼の再生を試みる。しかしエレキングはそれを見逃さず、足に巻き付けた尻尾から電流を流し込む。
「これで・・・・・・終わりッ!!」
その後、電撃が効いたのか怯んだカラス型SBをエレキングは流れるように尻尾で一刀両断。カラス型SBは瞬く間に爆散したのだった。
◇
「やった・・・・・・!」
その瞬間を地上から見上げていたアギラが安堵の声を漏らす。その隣で座るウインダムは口を開けたまま呆然と空中に広がる爆炎を見つめていた。
「・・・・・・」
◇
一方シンイチはエレキングの背後を取ろうとしたシャドウ数匹をスラッシュ光線で撃ち落とした後、レッドキングの元へ向かっていた。
ビルから飛び降りて交差点に戻ると、シンイチの眼前には恐竜型SBの攻撃を躱し続けるレッドキングの姿があった。
「遅くなりました!」
「見てたぜ! 上手くいったみたいだな」
レッドキングはシンイチの声に気づくと、彼の隣まで後退しつつ笑みを浮かべる。だがすぐにある疑問を口にした。
「そういやエレは?」
「エレキングさんならミカに加勢してくれてます」
その言葉通り、エレキングは現在ゴモラと共にムカデ型SBと交戦中なのだ。事前にシンイチが伝えていた何かとはこの事だったのである。
「おっしゃ、こっちも負けてらんねぇ!」
と右拳を左掌に当てて意気込むレッドキング。
シンイチも続いて構えを取ろうとした時、イデからの通信がそれを遮った。
『聞こえるかい、シンイチ君』
「問題ないです」
『先ほど新しい武装のロックを解除した。接近戦を仕掛けるなら役に立つはずだよ』
すると今度は胸部から発せられた光がスーツの前腕部分に集中し、やがて装甲が開き青い刃が姿を現した。
その輝きにレッドキングは見惚れている。
「おお・・・・・・綺麗だな」
『その名もスペシウムブレード。武器を持った相手との接近戦を想定し搭載した装備だ。また何かあれば連絡する。くれぐれも気をつけるんだよ』
「なるほど・・・・・・使わせてもらいます、イデさん」
「っし、いくぞシンイチ!」
「はい!」
通信を終えたシンイチとレッドキングは目を合わせ、同時に怪獣型SBへ飛び掛かる。
「はぁっ!」
「でりゃあっ!」
シンイチは淡く輝く刃を振るい、軌跡を描きながら怪獣型SBの腹部を切り付ける。そして連打の終わりに大きく振りかぶって右ストレートを放った。
更にレッドキングは飛び上がると、両拳を組んでハンマーのように頭部へ振り下ろす。
「ギャオオオオオオオオオオ!!!!」
「・・・・・・っ!?」
だが、怪獣型SBはビクともせず雄叫びを上げた。それに伴い発生した衝撃波から二人は距離をとる。
「傷はついても大して効いてないか・・・・・・」
「分かっちゃいたが、全身鎧みてーだな・・・」
「やっぱり眼を狙うべき、ですかね」
「だと思うぜ。ミクラスのラッシュでひびが入ってたしよ」
そう言いながらレッドキングが指差すのは、クモの巣状にひびが入っている黄色い眼。
過去に似たような個体とGIRLSが交戦した際は、アギラともう一名が其処を集中的に攻撃する事で撃破に至っている為、弱点であるという公算は大きい。
「ゼットンの奴は別の任務でいねぇし、オレ達でやるしかねえ訳だが・・・・・・」
「どう仕掛けましょうか・・・」
ゼットンとはGIRLS最強と称される怪獣娘である。大怪獣ファイトでは無敗の王者として今も名を馳せており、先程述べた“もう一名”の事でもある。
その圧倒的な戦闘力があれば戦況がひっくり返る事は間違いないが、今は任務で遠方にいる為合流は難しい。
二人が考えあぐねていると、三度通信が入る。
『シンイチ君、それなら
イデが言うと、同時にお馴染みと言わんばかりにスーツの胸部が発光した。
そして左手首と右前腕部に小さな窪みが現れた。
『右腕のコネクタに左の制御ユニットを接続するんだ』
その指示に従いシンイチはまた腕を合わせる。
「っ・・・!? イデさん、これって・・・・・・」
左右の手を十字に組んだ状態を見て、
すると、イデはシンイチ達からは見えていないが薄っすら笑みを湛えて言う。
『そうだよ、シンイチ君。
───
スペシウム光線。
それはウルトラマンの代名詞ともいえる、腕をクロスして放つ必殺技である。
「なあ、それなら───」
「むしろ、これしかない・・・・・・っ!?」
そうと決まれば、とシンイチが狙いを定めようとした時だ。
怪獣型SBの尾が頭上から振り下ろされた。
それを既の所でシンイチは回避し、再び両手を組んで構える。
「シンちゃぁーーーーん!!」
すると両脇に何者かが現れた。
「ミカ、エレキングさんも!」
「こっちは終わったわよ」
「後はアイツだけ!」
それは傷だらけのゴモラとエレキングだった。どうやらムカデ型SBを撃破できたらしい。
また、振り返るとシャドウの群れは綺麗さっぱり消えており、ミクラスとアギラがこちらを見て頷いた。
ふと、シンイチとウインダムの目が合う。見ればシンイチが助けた時より傷が増えている為、戦線復帰できたのだろう。
(後は、決めるだけだ)
そしてシンイチは腰を落として腕をクロスさせる。コネクタの接続音が響き渡ると、同時に怪獣型SBが突進を開始する。
(・・・・・・今だ!)
「オオオッ!!!」
雄叫びと共に左手を下へスライドさせると、青白い光線が放たれる。
光線は真っ直ぐに伸びていき、やがてシャドウビーストの眼を貫いた。
やがて怪獣型シャドウビーストは撃ち抜かれた頭部から連鎖的に、徐々に大きな爆発を起こし消滅した。
「・・・・・・当たった、のか?」
シンイチは光線を放った姿勢のまま唖然としていたが、背後からぶつかってくる何かに押し倒される。
「うおっ!?」
「勝ったよシンちゃん!これで全部やっつけたんだよ!」
そう嬉々と犯人であるゴモラは告げ、シンイチが立ち上がっても尚背中にしがみついている。
「やったのか、俺。倒せたんだ・・・・・・」
「シンイチっ!!」
今度はレッドキングが駆け寄り、シンイチの右肩に手を置いた。
「やったな!大金星だぜ!」
「はい!・・・あ、そうだ」
シンイチが思い出したように自身の側頭部に触れると、メットのみが解除され素顔が顕になる。
「ふうっ」
「なんか久しぶりにシンちゃんの顔見た気がする!」
「つーかそこだけ脱げるんだな」
「「シンイチさん!」」
物珍しそうにスーツを凝視するレッドキングの後ろからアギラとミクラスが現れた。何故だかミクラスは目を輝かせている
「やっぱりカッコいいな〜」
「ミクちゃんってこういうの好きなんだ」
「えーアギちゃんもそう思わない?」
「それは思うけど・・・・・・」
「あ、あの」
ふと、シンイチに背後から声が掛けられる。声の主はウインダムだった。見るとほんのり頬が紅くなっている。
「先程は、本当にありがとうございました! シンイチさんが来て下さらなかったら私は・・・今頃・・・」
「こちらこそ、無事で本当に良かった。もう大丈夫なのか?」
「ええ。怖くて怖くて堪らなかったのですが、アギさんが側に居てくれましたし、シンイチさん達が戦っている所を見て、何とか立ち上がる事ができました」
ウインダムは話している内にどんどん頬を紅潮させていく。するとそれを見逃さなかったゴモラがしがみつく力を強めた。
「ちょっミカ、待って痛い、痛い!」
「シンちゃんは黙ってて。ねぇ、ダム子ってシンちゃんの事好きなの?」
「へっ!?」
ゴモラのストレートな質問に、遂にウインダムの顔が真っ赤になった。
「はっはぁ、図星だねこれは」
「ウインちゃん、マジで?」
「本当なのか・・・・・・?」
興味津々なミクラスと突然の事に動揺しているシンイチ。二人を前にウインダムは──
静かに頷いた。
「あ、ああで、でも自分でもまだ整理がつかなくて、その、あの、えっと」
ウインダムは両手をバタバタさせながら分かりやすく慌てている。その横でアギラとレッドキングも明らかな動揺を見せていた。
「ウインちゃんが恋を・・・」
「ま、マジかよ」(吊り橋効果ってやつなのか・・・?)
「シンちゃんは渡さないよ!!」
「ぐおえっ、力入ってる、力入ってるって!」
「ご、ゴモたんさん!?」
回答を得たゴモラがしがみつくと言うより絞め落としにかかる様な勢いでシンイチを抱きしめる。
流石のシンイチも顔色が段々悪くなる中、ゴモラは手を緩めない。
「まず言いたかったんだけどさ、なんで私じゃなくてレッドちゃんの方に行ったの!? 命令違反でここに来た事よりそれに怒ってるんだけど!!」
「いや、それは・・・ってかちょ、息が」
「状況を考えれば妥当な判断よ、ゴモラ」
そんな状況を見兼ねたのか、エレキングが割って入る。そしてなぜ自分がゴモラの加勢に回ったのかを説明した。
「それはそうだけどさぁ、私がいながら他の娘を選んだみたいでなんかモヤモヤするんだよ」
「そんな事言ったって・・・」
「あ゙ぁ?」
「いえ何でもないです」
ゴモラは圧を放ちながら数秒思案すると、程なくして何か思いついたような笑顔をシンイチへ向けた。
「それじゃぁさ、私とデートしてよ!」
「で、デートぉ!?」
真っ先に声を上げたのは何故かレッドキングだった。いきなりの事に隣のアギラも驚いた様子で目を見開いている。
「良いよね、シンちゃん!」
「分かった!分かったから揺らすな!」
「よし、言質取ったからね!」
「はぁ、話は済んだかしら?」
先程とは打って変わって嬉しそうな様子のゴモラに、ため息を吐きながらエレキングが訪ねる。
「うん!いいよ!」
「それじゃ、色々聞かせてもらうわよ。シンイチ」
「ゲホッ、分かりました・・・・・・」
こうして、シンイチはスーツに関する経緯を説明し
初めてのシャドウとの戦いを終えた。
後日ピグモンにこってり絞られたシンイチだったが、ゴモラとデートの約束をした事がバレて、修羅場になったのはまた別の話。
ご覧頂きありがとうございました。
まず遅れた理由は多忙と文章を練り直していたことにあります。
個人的に中々納得がいかず書いては消すを繰り返していました。
その為、あくまで可能性ですが本話は今後大幅に書き直す事もあり得るとだけ述べさせて下さい。
次回は一度閑話を挟みます。
シンイチの研修中の話を短めに書くので良ければ読んで頂けると嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いします。