新宿での激闘の翌日。
死闘の末、勝利を収めたシンイチ達はトモミの指示で講義室に集まっていた。
「まずは皆さん、お疲れ様でした〜!」
演壇に立つトモミはにこやかな笑顔を浮かべてパチパチと手を叩く。
これには戦場に赴いていたシンイチと怪獣娘達も皆、釣られて笑みを浮かべる。
「とはいえ、一時はどうなる事かと思ったけどな」
「シャドウビーストが三体同時に出るなんて前代未聞の事態だったしねぇ」
腕組みをして言うベニオに、ミカヅキもうんうんと頷いて賛同する。
「トモミさん、それで俺達が呼び出された理由って・・・」
「もちろん、これからちゃーんと説明しますよ〜」
トモミはシンイチの質問に笑顔で答え、コホンと一つ咳込む。
すると、途端にトモミの表情は真剣なものに変わった。
「今回皆に集まって貰った理由なのですが、実はシンイチ君の事で話しておかなければならない事があるからなんです」
「え、なになにシンちゃん何かやらかしちゃったの!?」
「いや何もしてないって・・・・・・あ、でも命令無視はしたか・・・」
「それについては後でじーっくりお説教します〜」
ニヤニヤしたミカヅキに言われてシンイチは心当たりを呟き、続くトモミの言葉にガックリと肩を落とす。
トモミは怒る時はしっかり怒るタイプなのだ。
「先に言いますが、話しておかなければならない事は二つあります。まずはシンイチ君がウルトラマンである事を秘密にして欲しい、という事です」
皆へ向けてそうトモミが告げると、同時に背後のスクリーンに画像が映し出される。
それはウルトラマンスーツを着て戦うシンイチの写真が掲載された、とあるネットニュースのページだった。
「これって、シンイチさん・・・だよね」
「ええ。その通り」
動揺しているミクの呟きに答えながら、ランはゆっくりと演壇へ移動しピグモンの隣に立つ。
「この記事は今朝エレエレが見つけた物です。そして皆さんお気づきの通り、これはウルトラマンスーツの存在が世間に知れ渡ったという事でもあります」
「でも、それって良い事なんじゃないの?GIRLSに大きな戦力が増えたって知ってもらえれば、印象だって良くなると思うし」
「そうね。ゴモラの言う点では良い事、と言って差し支え無いわ」
そう、実は今回の一件は既にニュースとして報道されており、GIRLSは世間からの評価を上げることに成功している。
ミカヅキの言う通り新たな戦力の増加と、被害を最小限に留めた功績が評価されたのだ。
だが実の所、ニュースの影響は良いものだけではなかった。
「皆、ニュースの見出しを良く見て」
そう言いながらランは画面を操作し、記事の文章が見えるよう拡大する。
そこには太字でこう書かれていた。
「光の巨人復活!?その正体とは」
このいかにもネットニュースらしい見出しの下には、『突如新宿に現れ、シャドウと戦ったウルトラマンに酷似した人物の正体を考える』といった書き出しから始まる数千字の文章が続いている。
最初に反応を示したのはベニオだった。
「こういう奴はいるだろうとは思ってたが、流石の行動の早さだな」
「感心してる場合じゃないわ。こういう輩によってシンイチの素性が世間に知られてしまったら、ハヤタ親子はより危険な状況になるのよ」
ウルトラマンの正体。
それは現代の今に至るまで秘匿され続けていた。
もし世間に広まってしまえばどれだけの異星人が襲って来るか分からないからだ。
シンイチの正体がバレれば父親の事も同時にバレたも同然なので、徹底的に隠さなければならないという訳である。
「ですから、シンイチ君には民間人がいる場でのスーツの装着及びマスクの着脱をしないで貰いたいのです」
「あの記事にシンイチの素顔が写っていないのは、ピグモンが記者を避難させたからよ。今後は気をつけなさい」
「は、はい!迂闊でした・・・」
「後はシンイチ君との連絡手段についてです。スーツを装着したままでは円滑に、とはいかないこともあるでしょうし、あまり大きな声を出すのも万が一がありますから」
そう言ってトモミがランに耳打ちすると、ランは何処かへ電話をかけ始める。
数分後、現れたのはイデだった。
「お待たせ。ここからは僕が説明を代わるよ」
そう言いながらイデは手に持ったアタッシュケースを開き、中身を皆へ見せる。
「イヤホン?」
「ああ。小型の通信器さ。司令室やウルトラマンスーツとの通信はもちろん、機器同士の通信もできる」
曰く、これはトモミが以前から依頼していた物だという。
戦闘中にソウルライザーを一々取り出していては敵に背を向ける事になる為だ。
「昨日のような大規模な戦いが今後もないとは限らない。だから大いに役立つ筈だ」
「イデさんありがとうございます〜。あ、一応言っておくと、もし壊したり無くしちゃったりした場合は二万三千円の弁償になりますから大事に扱ってくださいね〜」
「サラッと凄い金額!?」
「ソウルライザーと同じくらいするんだ・・・・・・」
トモミのカミングアウトに驚きを隠せないミクとアキ。
声にこそ出していないが、皆驚きの表情を浮かべていた。
「という訳で、一つ目の話は以上になります〜。続いて二つ目のお話です。えーっと・・・」
そう言いながらトモミは周囲をキョロキョロと見回す。
「どったのピグちゃん?」
「ええ、ゼットンがそろそろ到着する筈なのですが・・・・・・」
「ゼットンさんが!?」
トモミの口からゼットンの名が出た途端、アキが驚きのあまり勢い良く立ち上がる。
というのもアキが怪獣娘へ変身出来たきっかけを与えた人物こそがゼットンであり、それ以来アキは強い尊敬の念を抱いているからだ。
「そういやアイツ、何処に行ってたんだ?任務だってのは知ってるけどよ」
「実は、ゼットンには北海道でシャドウビーストの対処にあたって貰っていたのです〜」
そう。実はシンイチ達が新宿で戦っていた時、他の地方でもシャドウが出現していたのだ。
ほとんどは現地の怪獣娘達が対処していたが、北海道にシャドウビーストが出現した事でゼットンに緊急出動の指令が下された。
「いいな~北海道!私も行きたい」
「ミカ、ゼットンさんは遊びに行ってたんじゃないんだぞ」
「それは分かってるけどさぁ、シンちゃんだって行ってみたいとか思わない?」
「まぁ、そりゃ一度は行ってみたいけど」
「でしょ!?」
事情を聴いた直後にも関わらず、普段通りマイペースなミカヅキ。思わずシンイチは指摘するが、その流れに呑まれかけてしまう。
「二人共、一先ず話を続けたいので静かにして貰えますか?」
そこで二人の会話をトモミが一時止めさせようとした、その時。
講義室の入り口に突如、ピシュンという音と共に少女が現れた。
少女は黒髪のロングヘアーに頭頂部で鈍く光る銀色の二本角や、白と黒の二色で構成された甲冑の様な獣殻の胸部と額にある黄色い発光体が目を引き、ミステリアスな雰囲気を纏っている。
彼女こそが最強と称される怪獣娘、ゼットンだ。
ちなみに突然現れたのはテレポート能力によるものである。
「ゼットンさん!」
すると、いち早くアキが反応を示す。だがゼットンは一瞬だけアキに微笑むとすぐに無表情に戻り、一直線に歩き始めた。
そしてゼットンは階段を降りてシンイチの目の前にやってくると、歩みを止めて彼の顔をじっと見つめる。
「あの・・・ゼットンさん?」
そう声を掛けてもゼットンは反応せず、ついに沈黙に耐えかねたシンイチが立ち上がろうとした次の瞬間。
「うぶっ!?」
何と、ゼットンがシンイチの顔を抱きしめたのだ。これにはGIRLSの面々も驚きを隠せない。
「なぁ!?」
「え、えっ!?」
特にベニオとアキが大きな声を上げ、ミカヅキに至っては完全に硬直してしまっている。
当のシンイチはというと、胸に思い切り顔を埋める形になった為かみるみる内に赤くなっていた。
「むぐ、むぐぐ!」
「・・・良かった。貴方が怪我をしていなくて」
そう優しく呟き、ゼットンはシンイチの頭を撫でる。
「ふぇ、ふぇっほんふぁん?」
「前線に立ったと聞いて、凄く心配だった」
「むぐゥッ!?」
(マズいぞ、い、息が⋯)
優しげな声色で囁きながら、ゼットンは抱擁する力を強める。このままでは息が出来ない、とシンイチは焦りを募らせながら藻掻くが、微塵も抜け出せる気配がない。
その時だった。
「てーいっ!」
突如ミカヅキがゼットン目掛けて飛び蹴りを放ったのだ。お陰で抱擁が緩み、シンイチは僅かに空気を吸うことができた。
ちなみにミカヅキはいつの間にかゴモラの姿に変身しており、表情からは怒りが見え隠れしている。
そんなゴモラの奇襲を、ゼットンは抱き締めたシンイチ毎テレポーテーションすることで回避してのけた。
「ゴモラ、何をするの」
「何って、それはこっちのセリフだよ!」
「どうして?」
「シンちゃんの独り占め禁止!返してもらうよ!」
その言葉と共にゼットンへ飛び掛かるゴモラ。だが彼女の攻撃は尽く交わされ、シンイチに触れる事すら叶わない。
次第に苛立ちが募っていき、やがてゴモラは周囲の事も気にせず両手を広げて叫び声を上げた。
「うぎーっ!!こうなったらぁ……!」
すると、彼女の双角が赤い光を帯び始める。それから徐々に光は双角から額の角へと集中し、稲妻を纏ってより激しく、より赫く光り輝いた。
「くらえ必殺! 超振どばばばばばばばばばば!?」
そして、頭を振り上げようとしたゴモラを突然の電撃が襲う。見ればランもといエレキングが、取り外した自身の尻尾をゴモラの尻尾に巻き付けている。
「いい加減にしなさい。講義室を吹き飛ばすつもり?」
そう言いながらエレキングは黒い煙を発して倒れるゴモラを睨みつけ、続けてゼットンの方へ向き直る。
「ゼットンもよ。このままでは話が進まないわ」
「・・・分かった」
渋々ながらもゼットンはエレキングに従い、ようやくシンイチは解放されたのだった。
数分後、改めて全員が着席したことを確認したトモミが口を開く。
「それでは、先程の話の続きをしていきますね〜。時間が押しているので手短に、早速本題からです」
すると、ネットニュースが映し出されていたスクリーンが切り替わり、今度はプレゼン資料らしきスライドが映し出される。
「これって、進路の話の時に使っていた資料ですよね?」
レイカの言う通り、それは過去にレイカ達にも行われた進路に関する説明で用いられていた物だった。
「そうです〜。二つ目の話は、シンイチ君以外の皆にも関係する事なんですから〜」
「アタシ達にも?」
ミクラスの質問に頷きつつ、トモミは指示棒を取り出してスライドの一点を指し示す。
「二つ目はシンイチ君の進路についてです〜。端的に言えば、特定の課に所属するか否かを決めて欲しいんです」
トモミ曰く、GIRLSに所属する以上シンイチも進路を決める事になるのだが、特別にフリーという選択肢もあるという。
ただし、その場合は必要に応じて様々な課のサポートを行うことになるのでより忙しくなるとの事だった。
「なるほど・・・・・・」
「確かに、大怪獣ファイトのマネージャーをしてくれるならありがてぇけど、オレたちだってそう頻繁に試合する訳じゃないもんな」
「逆に私のいる調査部は長期間の出張もあるから、常在してくれる方が都合はいいわね」
レッドキングとエレキングの二大ベテラン怪獣娘がそれぞれ意見を出す中、シンイチは迷っていた。
フリーで複数の部署を行き来し幅広く挑戦するか、それとも特定の部署で一つの事を突き詰めるか。今後に関わる大事な選択。軽々しく決めるわけにはいかない。
「とはいえ、まずはそれぞれの課の事を知ってからです。今はそういう選択肢もある、と覚えておいて貰えると助かります」
だから焦らなくていい。そう助け船を出してくれたトモミヘ、シンイチは心の中で感謝の念を抱きながら俯いていた顔を上げる。
「分かりました。なるべく早く決められるよう、よく考えてみます」
その言葉を聞いたトモミは穏やかな笑みを浮かべ、深く頷いたのだった。
まずはお読みいただきありがとうございました。
そして更新が遅れてしまい申し訳ございません。
完全に自業自得なのですが、プロットをしっかり固めていなかった結果構成からかんがえなおしておりました。
今後の流れは概ね決められたので不定期ではありますが更新は続けてまいります。
また、既に投稿している1話から5話と番外編について、文章を整形し直す予定です。具体的には次回の更新と並行して手を加えようと思っております。
そしてどう変わるかですが、簡単に言えば三人称多元視点で書いていた現在から一元視点寄り(特定のキャラ視点に近づける)に書き換えようと考えております。
今後もお待たせすることになるとは思いますが、なにとぞよろしくお願いいたします。