地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
アフリカから、インド洋を旅し、どうにか極東にまで逃れてきた第十二艦隊の残存戦力が、第五艦隊との合流を求めてきた。
途中、敵の分厚い包囲を抜けられず、長時間立ち往生していたのだという。戦力は駆逐艦とフリゲートを中心に、巡洋艦も一隻だけ含める合計八隻。文字通りの敗残兵であり、艦隊としてはさほどの規模では無いが、見捨てるわけにも行かない。
何より、護衛している客船を改装した輸送船八隻に、貴重な空軍のファイター数機と、避難の民間人を二万五千ほども乗せている。その中には国連の要人も乗っており、救援は必須だった。
それと、時を同じくして。
敵を攻撃に出ていたレンジャー9から、救援要請が来ていた。
膨大な数の敵に攻撃を受けているというのである。現在ビークルを全て喪失し、追撃を振り切ることが出来ないと言う。
悪い事に、東京基地の主戦力は、東に姿を見せているドラゴンの群れに対応するため、身動きが取れない。
プロテウスも既に出撃できる状態だが。
結局、レンジャーチームの一部隊だけを戦友に、ストームチームが出るしか無かった。ビークル類も、キャリバンが二機、グレイプが二機、一緒に出撃するレンジャー13に与えられただけである。
劣悪な戦力。
それに対して、敵の戦力は、三千とも四千とも事前に報告を受けており、なおかつ、蜂がいることが分かっている。
まともにやりあって勝てる戦力では無い。
生存者を救出し、包囲を貫いて撤退するしかなかった。
専用機で、近くまで出向く。
戦場になったのは厚木の少し先。神奈川の中心部だ。この辺りも以前はビル街があったのだが。
今は既に、廃墟が延々と続く焼け野原である。
崩れ落ちた高架の近くに、ヒドラを停める。現時点で敵は確認できないが、いつ襲撃をかけられてもおかしくない。
敵は巨大生物がほぼ勢揃い。
赤蟻黒蟻凶蟲に、蜂。更に未確認だが、女王と思われる大型個体もいるということだった。
戦って勝てる相手ではない。
すぐにヒドラから出て、陣地を展開。危険を承知で、ジープを四方に出す。
レンジャー部隊を率いているのは、以前から四度ほどストームチームと共同戦線をしたことがある中佐で、前大戦でも何度か共闘している。
彼は戦闘力は高いのだが、皮肉屋であり。
いつも周囲の文句ばかり言っている。
「有馬中佐、此方で偵察の二チームを出す。 其方でも二チームを出して貰えるか」
「イエッサ。 ジープを使って良いですか」
「もちろんだ。 敵が姿を見せても、絶対に手を出さないように」
「了解、と」
有馬中佐は、強化クローンの兵士に操縦させて、さっと出て行く。
私はと言うと、周囲に通信装置をばらまいて、状況確認。どうもレンジャー9からの通信が、とても弱いのだ。
「此方、レンジャー9。 黒蟻およそ二十に攻撃を受けている。 現在は持ちこたえているが、かなり厳しい戦況だ」
「すぐに救援が向かう。 現在の損害は」
「四名がやられ、残りも負傷している。 急いでくれ」
通信を切ると、弟が谷山に指示。
何処にいるか割り出せというのだ。
というのも、周囲のレーダーが酷く乱されていて、味方の位置がどうにも掴めないのである。
電波を攪乱する例の物質が撒かれているのは間違いない。
ヒドラを中心に、急いで防御陣地を構築する。
後ろには崩れかけたビル。黒沢にセメント弾を撃ち込ませ、補強し、即興の壁に。ビークル類を並べ、更に電磁プリズンも張る。
キャリバン三両は、いつでも出られるように待機している。
当然全ての機体には、セントリーガンを配備済みである。
「見つけました。 11時の方角。 此方です」
「よし、すぐに出る。 姉貴、殿軍を頼めるか」
「任せろ」
どうせ罠に決まっている。
三千だか四千だかの敵が、姿を見せないのは不信に過ぎる。明らかにレンジャー9を餌に、ストームチームを釣っているのだ。
それだけではない。
恐らくは、このタイミングで都合良く姿を見せたドラゴンも。それにインド洋をはるばる逃れてきた第十二艦隊も。
此方の戦力を削ぎ。
効率よく戦闘データを取るために、用意されたお膳立ての材料だとみるべきだろう。広域戦略でも、フォーリナーはEDFの上をずっと行っている。前からそうだし、今でもそうだ。
弟が操縦するキャリバンで、レンジャー9が待っている戦場へ急ぐ。
見えてきた。
高架の残骸を盾にしながら、必死に応戦しているレンジャー9。今の時点では敵は大した数では無いが。
レンジャー9の消耗が悲惨だ。
ジープの類まで消耗し尽くしていて、装備もアサルトのみ。これでは、長時間は持ちこたえられない。
一緒に来た日高中尉が、ひょいとキャリバンのサイドドアから顔を出すと、舌なめずりしながらハーキュリーをぶっ放す。
針の穴を通すコントロールで、速射ながら黒蟻を即殺。
レンジャー9が、此方に気付く。
「ストームチーム! 来てくれたか!」
相手との間に、滑り込ませるように、ドリフトさせながらキャリバンを走り込ませる。私は同時に、敵に対してガトリングをぶっ放し、一気に打ち据える。だが、敵は予想通り、地平の果てから、どっと姿を見せた。
数は、数百どころでは無い。
「やはり来たな……!」
「此方レンジャー13!」
「敵を発見したか」
「ええ、それももの凄い数です」
相手にせず、すぐに本隊に合流せよ。
弟はそう言うと、キャリバンをオート操縦に変更。タンクデサンドすると、アサルトAF100をぶっ放し、辺りの黒蟻を私のガトリングと合わせて瞬時に制圧した。民間協力者がキャリバンから飛び出してきた。すぐに負傷者しかいないレンジャー9を、キャリバンに収容。
敵の数は圧倒的だ。
できる限り、即座にヒドラに戻って、撤退しないと危ない。
だが。
キャリバンで下がる途上に、悠々と姿を見せる蜂の群れ。
これも百や二百では無い。それも、キャリバンを追い越して、まっすぐヒドラへと向かって行くでは無いか。
空を抑える気だ。
勿論、残してきた防御陣地は、既に攻撃を開始している。
ミラージュによる誘導エネルギービームと、エメロードの小型ミサイル、それにネグリングのミサイル。それぞれが一斉に放たれ、蜂の群れを押さえ込みに掛かる。
しかし、蜂の数が、あまりにも非常識すぎる。
私も最後尾に残り、ブースターを使って下がりながら、上空にガトリングの弾を撒く。弟も、AF100で、片っ端から蜂を落としに掛かるが、とても手が足りない。
必死に、レンジャー13が、先ほど構築した防御陣地に逃げ込んでくるのが見えるが。電磁プリズンは、今にも破られそうな状態だ。後ろにだけは回り込まれずに済みそうだが、周囲は十重二十重というも生やさしい敵の海。
更に、落としても落としても湧いてくる蜂に、頭を抑えられ、ヒドラも出撃が出来なくなっている。
最後尾の私が、防御陣に飛び込むが。
既に最外壁に配置しているキャリバンは、蜂の針で、山嵐のような姿になっていた。セントリーガンも既に沈黙させられている。
そして、地平の果てからは。
悠々と言わんばかりに、膨大な数の巨大生物が押し寄せてくる。
以前北京基地近郊で、数千に達する凶蟲と戦ったが。その時に、勝るとも劣らない、凄まじい数だ。
「おいおい、旦那。 こりゃあ、ちいとまずいんじゃねーのか?」
「蜂を集中的に狙え。 涼川、近づいてくる巨大生物を抑えてくれるか」
「やってはみるが、全方位は無理だぞ」
電磁プリズンが、崩壊する。
それだけ、とんでも無い数の針を浴びたのだ。
一斉に、蜂の群れが、距離を詰めてきた。
勿論応戦するが、見る間に味方の負傷が酷くなっていく。キャリバンからも、あまりにも危険すぎて、出られない状況だ。
谷山が電磁プリズンを張り直すが、それもいつまで保つかわからない。
対空攻撃は相当苛烈にやっているのに。
また、電磁プリズンが喰い破られる。蜂はまだ、二百を超える数がゆうに健在。弟は、厳しい決断をするしかなかった。
「やむを得ん。 全員、ヒドラに飛び込め。 無理矢理上空に逃れる!」
「しかし、それではヒドラがもたないぞ」
「蜂と戦いながら、撤退戦をする」
無茶苦茶だ。
しかし、他に選択肢がない。
ヒドラのローターが回転を開始。ビークルを一機ずつヒドラに収納していくが、どれも針だらけで、痛々しいほどの悲惨さだ。ベガルタAXが盾になって、上空に火力の束を振らせているが、それでも倒し切れる数では無い。ベガルタにも、見る間に無数の針が突き刺さっていく。
「急いでください!」
ジープが擱座。
悲鳴を上げて飛び出した兵士が、針を浴びて串刺しになる。アーマーが生きているとは言え、もう戦わせられる傷では無い。味方に引きずられていく兵士を、更に狙う蜂を、私が叩き落とす。
蜂は、落とされても落とされても、次から次に来る。
谷山が、周囲にガードポストを設置。少しは、これで楽になったか。ヒドラのサイドドアはわざと開けたままにする。
既に、雲霞の如き敵大軍勢は、至近にまで迫っていた。
私が矢島と一緒に、ベガルタAXを最後まで支援。機動戦を行いながら、蜂をスピアで叩き落とす。
これ以上の交戦を諦めた谷山と原田が。針だらけになっているジープを無理矢理操縦して、ヒドラに飛び込んだのが最後。
タラップをバックしながら、ベガルタAXが入り口を塞ぐようにして、ヒドラに乗り込む。私と矢島も、ガトリングで蜂を落としながら、それに続くが。消耗が激しすぎる。
ヒドラが、浮き始めるが。
蜂の猛攻は続く。
左右のサイドドアを開けて、両側から群がってくる蜂を叩き落としつつ、浮上。しかし、膨大な蜘蛛糸が飛んでくる。
一気に距離を詰めてきた凶蟲どもが、一斉に放ってきたのだ。
がつん、がつんと、ヒドラの外壁が凄まじい音を立てる。蜂はローターにも群がって、攻撃を続行。
容赦も呵責もない。
「東京基地へ急げ! 町田を超えれば、支援砲撃を受けられる!」
ガードポストの効果があっても、ヒドラの消耗が酷い。
其処まで保つか。
更に言えば、巨大生物も、追いすがってきている。蜂の攻撃が酷くて、ヒドラがあまり速くも高くも飛べないことを、熟知しているかのようだ。
「全員、サイドドアに! 敵を迎撃続行する!」
弟が声を張り上げる。
流石に自爆の危険があるから、誘導ミサイルの類は使えないが。全員にアサルトとショットガンは行き渡っている。
少しずつ速度を上げて行くヒドラのサイドドアに陣取ると、周囲を飛び回りながら攻撃を続けてくる蜂を迎撃。しかし、数が多すぎる。ヒドラの内部にも、次々と針が飛び込んでくる。
中には、ヒドラに飛び込んでこようとする蜂さえもいる。
「敵の群れ、追撃してきています! これ以上、速度を上げられません!」
ヒドラの機長が、悲鳴に近い報告をしてくる。
私はブースターをふかして飛び出すと、ヒドラの背に。ローターに巻き込まれたら即死だ。気をつけないと行けないが。この速度だったら、まだ振り落とされず、何とか闘える。
上に回り込んでいた蜂どもが、私を見て、一斉に針を放ってくる。この風の中では、いちいち避けられない。盾で塞ぎながら、ガトリングで確実に叩き落としていく。被弾して態勢を崩し、ローターに突っ込んで、バラバラになる蜂。ぶちまけられる死骸と体液。舌打ちしたのは、ローターへのダメージが酷くなるからだ。
蜂の巡航速度は、ヒドラと同等以上。
追撃は容赦なく続き、ローターが火を吹き始める。
私を真似して上がって来た矢島。多少ふらついているが、ヒドラの背で、しっかり踏ん張って見せた。
「加勢します!」
「気をつけろ。 敵の攻撃を防いでいる余裕は無いぞ」
「イエッサ!」
息を合わせると、辺りに火力をばらまく。
ガトリングで薙ぎ払い、少しでも蜂の数を減らす。対空銃座も一応ついているが、蜂の数が多すぎる。
ついに、高度が落ち始める。
速度も。
町田までは、まだ距離がある。
「不時着に備えろ」
弟が、淡々と、皆に注意を促した。
幸い、蜂の数は減ってきている。更に、解放したままのサイドドアから、飛び出しのはバゼラート。
蜂の群れにミサイルを叩き込み、一機に数を減らす。蹴散らされた蜂が、火だるまになったまま、次々墜ちていった。
「谷山、残敵を集中攻撃できる位置まで追い込め」
「お任せを!」
谷山が如何に神がかったヘリの操縦技術を持っていても、蜂の群れの相手は分が悪い。だから、支援しなければならない。
私達が、ガトリングで、谷山を狙う蜂を叩き落とす。
谷山はそれに助けられながら、蜂をサイドドアから狙える位置へと追い込んでいく。連携しながら、落ち行くヒドラの上で戦う。
ほどなく。
蜂の殲滅に成功。敵に新手がいるかも知れないが、まだ周囲には、姿を見せていない。
「町田まで飛べそうか」
「ダメージ甚大! 出来ればすぐにでも着地したいところです」
「敵の本隊が、追いついてくる時間は」
「およそ一時間」
黒沢が、即座に計算を済ませる。
弟は、決断した。
「よし、ならばこの場で着地。 此方で時間を稼いでいる間に、ヒドラを可能な限り修復しろ」
「し、しかし敵の数は」
「打って出て、ゲリラ戦で対応する」
簡単に言う。
しかし、それ以外に手がないのも事実だった。
不時着する前に、着地することができた。どうにか、と言う状態だ。焼け野原だから、何処にでも着陸できたのが、この場合は有り難かった。
これほどの戦況でも、柊が平然とカメラを廻しているのは恐れ入った。ただ、正直、奴に構っている余裕は無い。
この近辺は、何処か。
ヒドラから降りると、敵の警戒に当たる。
すぐに整備班がヒドラの上に上がり、ローターの修復を開始。煙を噴いているローターのダメージは、遠目にも酷い。
同時に、機動戦に用いるビークルも修復。
まだ敵に蜂がいるかも知れないが、関係無い。
ネレイドに出て貰う。
「谷山、分かっていると思うが、極めて危険な任務だ。 蜂の群れが現れた場合、くれぐれも無理をするな」
「分かっていますよ」
先に、谷山が行く。
主にナパームをばらまくことで、敵の進撃速度を遅らせ、数も削るのだ。
その間に、アーマーの張り直しが済んだビークルを、順番に出撃させていく。
蜂以外の巨大生物は、ほぼ無傷の状態。
蜂だって、どれだけいるか分からない。まだまだ相当数が温存されていてもおかしくはないだろう。
それに比べて此方は、先ほどの戦闘で、レンジャー9の人員は救助できたものの、レンジャー13は重傷者を四人出している。更に、ジープは全て失ってしまった。
キャリバンとグレイプで、引き撃ちをするしかない。
そのキャリバンも、ハリネズミかヤマアラシという状況だ。セントリーガンを据え付けて、準備完了。
私はキャリバンにタンクデサンドする。涼川と原田はグレイプに。
他のメンバーは、キャリバンのサイドドアから顔を出して射撃をしたり、それぞれに分乗したりして戦う事になる。
エミリーと三川だけは、ラビットジャンプを駆使しての引き撃ちが出来るから、ビークルに乗っての戦闘は考慮しなくても問題ない。
後、香坂夫妻と黒沢は、イプシロンで同じ事を行う。
私はフェンサースーツの状態を確認。まだ戦闘は出来る。最悪の場合、敵の群れに突入して機動戦を行う必要があるので、アーマーは多めに貼って貰ったが。それでも、気休めだろう。
あの数の敵だ。
真正面から戦ったら、それこそひとたまりもない。
後は、黒沢に確認する。
「この辺りは」
「大和市と横浜市の間くらいですね。 もう少しで、谷山さんが接敵する筈です」
谷山なら、敵の足止めを上手にやってくれるはずだが。しかし、敵も蜂をまだ残している可能性が高い。
順次、キャリバンとグレイプが出撃する。最後尾に、ベガルタAXもいる。
弟だけは、ギガンテスを使ったが。これは最悪の場合、最後尾で盾にするためだ。なお、弟は戦車の操縦もかなり出来る。ヘリは谷山には及ばないが、ギガンテスだったら多分ストームチームの誰よりも上手に操れるはずだ。
車列を組んで、敵の群れに。
レンジャー13からも、七名が参加してくれている。彼らを死なせないためにも。戦闘は、慎重に行わなければならない。
谷山から通信。
「敵、三波に別れ、進撃中。 片っ端からナパームを撒いて削っていますが、これはかなり厳しいですね」
「もっとも此方に近いのは」
「バイザーにデータを送りますが、多分北から接近している凶蟲のグループです」
「よし、ではまずそいつらからだ」
勿論、全滅させるのは無理だ。鼻面に集中攻撃を浴びせて、一撃離脱。向きを変え、北上。間もなく、見えてくる。
凶蟲がぽんぽんと飛びながら、此方へと迫ってきている。
数は二千近いとみて間違いないだろう。
向こうも、此方に気付く。
一旦車列を停止。弟の攻撃合図を待つ。
凶蟲は、距離を詰めることを一切怖れない。跳躍を繰り返しながら、突入してくる。そして、間合いに入った瞬間。弟が、叫ぶ。
「よし、攻撃開始!」
「ヒャッハア! 待ってたぜぇ!」
涼川と原田が、スタンピートからグレネードを雨霰とばらまく。
爆裂で敵前衛が消し飛ぶ中、早々に弟は後退を指示。オートに設定したギガンテスの上に上がると、ギガンテスにも主砲で射撃させつつ、自身もAF100で敵の群れを制圧に掛かる。
更に、皆の盾となったベガルタが、コンバットバーナーで敵を牽制しつつ、ミサイルを連射。次々敵を吹き飛ばす。
やはり敵の戦意は旺盛で、爆破されようが焼かれようが、全く意に介さず迫ってくる。さあ、見せろ。お前達の戦いを。お前達の戦闘能力を。そうすれば、同胞皆が強くなる。そして、我等は神と一つになる。
頭に、響く。
これはきっと、幻聴では無い。
あの巨大ドラゴン、グレーターワイルドドラゴンと会話したとき、悟った。此奴らのこの意思も知性もあるにも関わらず、自分を全く顧みることなく、全てを周囲に捧げることが出来るこの行動。
それは、神と一つになると、信じているからだ。
宗教は最強最悪の精神的な麻薬だが。
宇宙に出ても、その法則には何ら変わりが無い、という事なのだ。
ガトリングで弾をばらまきながら、下がる下がる。敵はかなりの速度で追ってくるが、それでも対処は出来る。
レンジャー13のメンバーも、頑張ってくれている。有馬中佐も、ハーキュリーでなかなかのエイミングを見せて、敵を確実に打ち抜いてくれていた。流石に、あの地獄を生き抜いた男の事はある。
敵の群れを、一旦引きはがす。
谷山と連絡して、周囲の状況を確認。
一度ヒドラに戻り、補給を済ませてまた出撃した谷山によると、現在三波に別れた敵の群れは、谷山の攪乱によって進撃速度を遅らせているが、それでも確実にヒドラへと迫っているという。
しかも悪い事に、南から来ている部隊には、蜂も混じっているというのだ。
次は、南が近い。
叩かないと、また蜂にダイレクトにヒドラが攻撃されることになる。そうなると不時着どころか、多分撃墜されるだろう。
有馬の声が聞こえる。
「思い出すな、こういうときにはあの時の事を。 前の戦いの際に、敵に包囲されてな」
「む……」
弟が、反応を示す。
私がいなかったときのことだろうか。前の大戦では、私と弟は、一緒の戦場にいないことが多かった。
有馬は、部下達に蕩々と話している。
「あの時は、英雄がいたから助かった。 たった一人で、敵の群れを蹴散らしたんだ」
「何度も聞きましたよ隊長。 例のストーム1リーダーでしょ? でもあの人って、確かその後マザーシップとの戦いで、行方不明だって聞いています」
「ああ、そうだな」
一兵卒は、普通は知らされていない。
あの戦いの後、弟が生き延びたことを。
当時のストーム1リーダーと、現在のストームリーダーは、別の人間だと、多くの兵士達は信じているのだ。
だから、最近は、兵士達が歌っている。
「マザーシップの撃墜に-、英雄一人で成功すー。 その後の消息不明だが-。 きーみはかならず舞い戻るー」
弟の事だ。
なお、有馬は弟が生きている事を知っている。だから、兵士達にそれを言えず、歯がゆい顔をしていた。
次の敵集団と接触。
今度は赤蟻と黒蟻が主体だが、問題は空に蜂の群れがいる事。数は百を超えている。ネレイドの支援は受けられないし、通すわけにも行かない。
厳しい戦いになるが、やりきるほかない。
「エミリー、三川、私の後ろに」
「OK。 盾でのガード、頼むわよ」
二人が、キャリバンに飛び乗ってくる。後ろは矢島に固めて貰い、盾をかざす。
また、下がりながら、敵への攻撃開始。
蜂は容赦なく、まずはビークルを針塗れにするべく、集中攻撃を仕掛けてきた。
何度かの戦闘を経て、かろうじて時間を稼ぐことは出来たが。
全員が手酷く負傷し。
ビークル類もそれぞれが大きな損傷を受けて。
そして、ようやくヒドラの側にまで辿り着く。まだ、谷山は戻ってきていない。ネレイドで、極限まで時間を稼いでくれるつもりなのだ。
通信もまばらだが、それでも。ヒドラの強力な通信装置で、悲惨な状況が分かってきた。
また、基地が一つ、フォーリナーに潰された。
抵抗を続けていた基地だからだろう。生き延びた面子は、地下に潜ったと信じたいが。少なくとも基地は、多数の攻撃機に襲撃され、その機能を失った。
「EDF総司令部は、現在地下にその場を移して、抵抗を続けています。 戦闘での損害は多大ですが、まだEDFは組織的抵抗を諦めていません。 アースイーターへの攻撃に向け、準備は行われています」
「絶対嘘です、そんなのっ! もうみんなやられちゃって、どうにもできなくて、まけてみんな死ぬのをまつだけなんです!」
ヒステリックな声が入る。
おそらく、戦術士官ではなく、あの調子が良いオペレーターだろう。
少し前に聞いたが、同期の子がいた基地が潰されたのだという。確か欧州の、ギリシャにあった基地だ。
基地の人員はどうなったかわからない。
少なくとも、基地は四千とも五千ともいわれる巨大生物に飲み込まれ、消滅した。それ以来、精神が相当不安定になっている様子だ。
更に言えば、オペレーターは会議にも出席できていない。
心が弱い彼女なら。
まあ、今の戦況で、勝ち目がないと判断するのも仕方が無いだろう。
オペレーターのヒステリックな声が聞こえなくなる。多分戦術士官が黙らせて、別の部屋に連れて行ったのだろう。
当然の措置だ。
あんな声を聞かされ続ければ、士気だって落ちる。
弟は嘆息すると、まだ作業をしているスタッフに叫ぶ。
「修復は?」
「もう少しです! あと少しで、東京基地まで飛べるようになります!」
「敵反応! 西からです!」
ナナコが叫ぶ。
釣られてみると、確かにかなりの数。しかし、谷山の報告には無い。そうなると、別働隊か。
主力の三部隊が押さえ込まれている間に。あの少数部隊だけが、ヒドラに迫っていたという事になる。
ヒドラが傷ついていて。
それを叩けば、此方が全滅だと、分かっていて。あの別働隊が組織されたと見て良いだろう。
弟が、防御陣を組めと叫ぶ。
ベガルタが前に出て、その隣にギガンテスが。
横付けされたキャリバンの上に、急いでセントリーガンが配置される。そして、先の戦いで酷く傷ついたネグリングも、ヒドラから出てきた。
「ヒドラには絶対に近づかせるな! 迎撃開始!」
どっと殺到してくる巨大生物の群れ。
ガトリングで薙ぎ払いながら、ふと私は疑問に思う。巨大生物の中に、女王らしき奴はいたか。
まさか。
いや、考えすぎだろう。
敵の勢いは凄まじく、油断すると瞬時に突破されかねない。
私は唇を噛むと。
その猛撃に耐え抜くべく、気合いを入れ直した。