地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

103 / 120
2、滅びの包囲

アフリカから、インド洋を旅し、どうにか極東にまで逃れてきた第十二艦隊の残存戦力が、第五艦隊との合流を求めてきた。

 

途中、敵の分厚い包囲を抜けられず、長時間立ち往生していたのだという。戦力は駆逐艦とフリゲートを中心に、巡洋艦も一隻だけ含める合計八隻。文字通りの敗残兵であり、艦隊としてはさほどの規模では無いが、見捨てるわけにも行かない。

 

何より、護衛している客船を改装した輸送船八隻に、貴重な空軍のファイター数機と、避難の民間人を二万五千ほども乗せている。その中には国連の要人も乗っており、救援は必須だった。

 

それと、時を同じくして。

 

敵を攻撃に出ていたレンジャー9から、救援要請が来ていた。

 

膨大な数の敵に攻撃を受けているというのである。現在ビークルを全て喪失し、追撃を振り切ることが出来ないと言う。

 

悪い事に、東京基地の主戦力は、東に姿を見せているドラゴンの群れに対応するため、身動きが取れない。

 

プロテウスも既に出撃できる状態だが。

 

結局、レンジャーチームの一部隊だけを戦友に、ストームチームが出るしか無かった。ビークル類も、キャリバンが二機、グレイプが二機、一緒に出撃するレンジャー13に与えられただけである。

 

劣悪な戦力。

 

それに対して、敵の戦力は、三千とも四千とも事前に報告を受けており、なおかつ、蜂がいることが分かっている。

 

まともにやりあって勝てる戦力では無い。

 

生存者を救出し、包囲を貫いて撤退するしかなかった。

 

専用機で、近くまで出向く。

 

戦場になったのは厚木の少し先。神奈川の中心部だ。この辺りも以前はビル街があったのだが。

 

今は既に、廃墟が延々と続く焼け野原である。

 

崩れ落ちた高架の近くに、ヒドラを停める。現時点で敵は確認できないが、いつ襲撃をかけられてもおかしくない。

 

敵は巨大生物がほぼ勢揃い。

 

赤蟻黒蟻凶蟲に、蜂。更に未確認だが、女王と思われる大型個体もいるということだった。

 

戦って勝てる相手ではない。

 

すぐにヒドラから出て、陣地を展開。危険を承知で、ジープを四方に出す。

 

レンジャー部隊を率いているのは、以前から四度ほどストームチームと共同戦線をしたことがある中佐で、前大戦でも何度か共闘している。

 

彼は戦闘力は高いのだが、皮肉屋であり。

 

いつも周囲の文句ばかり言っている。

 

「有馬中佐、此方で偵察の二チームを出す。 其方でも二チームを出して貰えるか」

 

「イエッサ。 ジープを使って良いですか」

 

「もちろんだ。 敵が姿を見せても、絶対に手を出さないように」

 

「了解、と」

 

有馬中佐は、強化クローンの兵士に操縦させて、さっと出て行く。

 

私はと言うと、周囲に通信装置をばらまいて、状況確認。どうもレンジャー9からの通信が、とても弱いのだ。

 

「此方、レンジャー9。 黒蟻およそ二十に攻撃を受けている。 現在は持ちこたえているが、かなり厳しい戦況だ」

 

「すぐに救援が向かう。 現在の損害は」

 

「四名がやられ、残りも負傷している。 急いでくれ」

 

通信を切ると、弟が谷山に指示。

 

何処にいるか割り出せというのだ。

 

というのも、周囲のレーダーが酷く乱されていて、味方の位置がどうにも掴めないのである。

 

電波を攪乱する例の物質が撒かれているのは間違いない。

 

ヒドラを中心に、急いで防御陣地を構築する。

 

後ろには崩れかけたビル。黒沢にセメント弾を撃ち込ませ、補強し、即興の壁に。ビークル類を並べ、更に電磁プリズンも張る。

 

キャリバン三両は、いつでも出られるように待機している。

 

当然全ての機体には、セントリーガンを配備済みである。

 

「見つけました。 11時の方角。 此方です」

 

「よし、すぐに出る。 姉貴、殿軍を頼めるか」

 

「任せろ」

 

どうせ罠に決まっている。

 

三千だか四千だかの敵が、姿を見せないのは不信に過ぎる。明らかにレンジャー9を餌に、ストームチームを釣っているのだ。

 

それだけではない。

 

恐らくは、このタイミングで都合良く姿を見せたドラゴンも。それにインド洋をはるばる逃れてきた第十二艦隊も。

 

此方の戦力を削ぎ。

 

効率よく戦闘データを取るために、用意されたお膳立ての材料だとみるべきだろう。広域戦略でも、フォーリナーはEDFの上をずっと行っている。前からそうだし、今でもそうだ。

 

弟が操縦するキャリバンで、レンジャー9が待っている戦場へ急ぐ。

 

見えてきた。

 

高架の残骸を盾にしながら、必死に応戦しているレンジャー9。今の時点では敵は大した数では無いが。

 

レンジャー9の消耗が悲惨だ。

 

ジープの類まで消耗し尽くしていて、装備もアサルトのみ。これでは、長時間は持ちこたえられない。

 

一緒に来た日高中尉が、ひょいとキャリバンのサイドドアから顔を出すと、舌なめずりしながらハーキュリーをぶっ放す。

 

針の穴を通すコントロールで、速射ながら黒蟻を即殺。

 

レンジャー9が、此方に気付く。

 

「ストームチーム! 来てくれたか!」

 

相手との間に、滑り込ませるように、ドリフトさせながらキャリバンを走り込ませる。私は同時に、敵に対してガトリングをぶっ放し、一気に打ち据える。だが、敵は予想通り、地平の果てから、どっと姿を見せた。

 

数は、数百どころでは無い。

 

「やはり来たな……!」

 

「此方レンジャー13!」

 

「敵を発見したか」

 

「ええ、それももの凄い数です」

 

相手にせず、すぐに本隊に合流せよ。

 

弟はそう言うと、キャリバンをオート操縦に変更。タンクデサンドすると、アサルトAF100をぶっ放し、辺りの黒蟻を私のガトリングと合わせて瞬時に制圧した。民間協力者がキャリバンから飛び出してきた。すぐに負傷者しかいないレンジャー9を、キャリバンに収容。

 

敵の数は圧倒的だ。

 

できる限り、即座にヒドラに戻って、撤退しないと危ない。

 

だが。

 

キャリバンで下がる途上に、悠々と姿を見せる蜂の群れ。

 

これも百や二百では無い。それも、キャリバンを追い越して、まっすぐヒドラへと向かって行くでは無いか。

 

空を抑える気だ。

 

勿論、残してきた防御陣地は、既に攻撃を開始している。

 

ミラージュによる誘導エネルギービームと、エメロードの小型ミサイル、それにネグリングのミサイル。それぞれが一斉に放たれ、蜂の群れを押さえ込みに掛かる。

 

しかし、蜂の数が、あまりにも非常識すぎる。

 

私も最後尾に残り、ブースターを使って下がりながら、上空にガトリングの弾を撒く。弟も、AF100で、片っ端から蜂を落としに掛かるが、とても手が足りない。

 

必死に、レンジャー13が、先ほど構築した防御陣地に逃げ込んでくるのが見えるが。電磁プリズンは、今にも破られそうな状態だ。後ろにだけは回り込まれずに済みそうだが、周囲は十重二十重というも生やさしい敵の海。

 

更に、落としても落としても湧いてくる蜂に、頭を抑えられ、ヒドラも出撃が出来なくなっている。

 

最後尾の私が、防御陣に飛び込むが。

 

既に最外壁に配置しているキャリバンは、蜂の針で、山嵐のような姿になっていた。セントリーガンも既に沈黙させられている。

 

そして、地平の果てからは。

 

悠々と言わんばかりに、膨大な数の巨大生物が押し寄せてくる。

 

以前北京基地近郊で、数千に達する凶蟲と戦ったが。その時に、勝るとも劣らない、凄まじい数だ。

 

「おいおい、旦那。 こりゃあ、ちいとまずいんじゃねーのか?」

 

「蜂を集中的に狙え。 涼川、近づいてくる巨大生物を抑えてくれるか」

 

「やってはみるが、全方位は無理だぞ」

 

電磁プリズンが、崩壊する。

 

それだけ、とんでも無い数の針を浴びたのだ。

 

一斉に、蜂の群れが、距離を詰めてきた。

 

勿論応戦するが、見る間に味方の負傷が酷くなっていく。キャリバンからも、あまりにも危険すぎて、出られない状況だ。

 

谷山が電磁プリズンを張り直すが、それもいつまで保つかわからない。

 

対空攻撃は相当苛烈にやっているのに。

 

また、電磁プリズンが喰い破られる。蜂はまだ、二百を超える数がゆうに健在。弟は、厳しい決断をするしかなかった。

 

「やむを得ん。 全員、ヒドラに飛び込め。 無理矢理上空に逃れる!」

 

「しかし、それではヒドラがもたないぞ」

 

「蜂と戦いながら、撤退戦をする」

 

無茶苦茶だ。

 

しかし、他に選択肢がない。

 

ヒドラのローターが回転を開始。ビークルを一機ずつヒドラに収納していくが、どれも針だらけで、痛々しいほどの悲惨さだ。ベガルタAXが盾になって、上空に火力の束を振らせているが、それでも倒し切れる数では無い。ベガルタにも、見る間に無数の針が突き刺さっていく。

 

「急いでください!」

 

ジープが擱座。

 

悲鳴を上げて飛び出した兵士が、針を浴びて串刺しになる。アーマーが生きているとは言え、もう戦わせられる傷では無い。味方に引きずられていく兵士を、更に狙う蜂を、私が叩き落とす。

 

蜂は、落とされても落とされても、次から次に来る。

 

谷山が、周囲にガードポストを設置。少しは、これで楽になったか。ヒドラのサイドドアはわざと開けたままにする。

 

既に、雲霞の如き敵大軍勢は、至近にまで迫っていた。

 

私が矢島と一緒に、ベガルタAXを最後まで支援。機動戦を行いながら、蜂をスピアで叩き落とす。

 

これ以上の交戦を諦めた谷山と原田が。針だらけになっているジープを無理矢理操縦して、ヒドラに飛び込んだのが最後。

 

タラップをバックしながら、ベガルタAXが入り口を塞ぐようにして、ヒドラに乗り込む。私と矢島も、ガトリングで蜂を落としながら、それに続くが。消耗が激しすぎる。

 

ヒドラが、浮き始めるが。

 

蜂の猛攻は続く。

 

左右のサイドドアを開けて、両側から群がってくる蜂を叩き落としつつ、浮上。しかし、膨大な蜘蛛糸が飛んでくる。

 

一気に距離を詰めてきた凶蟲どもが、一斉に放ってきたのだ。

 

がつん、がつんと、ヒドラの外壁が凄まじい音を立てる。蜂はローターにも群がって、攻撃を続行。

 

容赦も呵責もない。

 

「東京基地へ急げ! 町田を超えれば、支援砲撃を受けられる!」

 

ガードポストの効果があっても、ヒドラの消耗が酷い。

 

其処まで保つか。

 

更に言えば、巨大生物も、追いすがってきている。蜂の攻撃が酷くて、ヒドラがあまり速くも高くも飛べないことを、熟知しているかのようだ。

 

「全員、サイドドアに! 敵を迎撃続行する!」

 

弟が声を張り上げる。

 

流石に自爆の危険があるから、誘導ミサイルの類は使えないが。全員にアサルトとショットガンは行き渡っている。

 

少しずつ速度を上げて行くヒドラのサイドドアに陣取ると、周囲を飛び回りながら攻撃を続けてくる蜂を迎撃。しかし、数が多すぎる。ヒドラの内部にも、次々と針が飛び込んでくる。

 

中には、ヒドラに飛び込んでこようとする蜂さえもいる。

 

「敵の群れ、追撃してきています! これ以上、速度を上げられません!」

 

ヒドラの機長が、悲鳴に近い報告をしてくる。

 

私はブースターをふかして飛び出すと、ヒドラの背に。ローターに巻き込まれたら即死だ。気をつけないと行けないが。この速度だったら、まだ振り落とされず、何とか闘える。

 

上に回り込んでいた蜂どもが、私を見て、一斉に針を放ってくる。この風の中では、いちいち避けられない。盾で塞ぎながら、ガトリングで確実に叩き落としていく。被弾して態勢を崩し、ローターに突っ込んで、バラバラになる蜂。ぶちまけられる死骸と体液。舌打ちしたのは、ローターへのダメージが酷くなるからだ。

 

蜂の巡航速度は、ヒドラと同等以上。

 

追撃は容赦なく続き、ローターが火を吹き始める。

 

私を真似して上がって来た矢島。多少ふらついているが、ヒドラの背で、しっかり踏ん張って見せた。

 

「加勢します!」

 

「気をつけろ。 敵の攻撃を防いでいる余裕は無いぞ」

 

「イエッサ!」

 

息を合わせると、辺りに火力をばらまく。

 

ガトリングで薙ぎ払い、少しでも蜂の数を減らす。対空銃座も一応ついているが、蜂の数が多すぎる。

 

ついに、高度が落ち始める。

 

速度も。

 

町田までは、まだ距離がある。

 

「不時着に備えろ」

 

弟が、淡々と、皆に注意を促した。

 

幸い、蜂の数は減ってきている。更に、解放したままのサイドドアから、飛び出しのはバゼラート。

 

蜂の群れにミサイルを叩き込み、一機に数を減らす。蹴散らされた蜂が、火だるまになったまま、次々墜ちていった。

 

「谷山、残敵を集中攻撃できる位置まで追い込め」

 

「お任せを!」

 

谷山が如何に神がかったヘリの操縦技術を持っていても、蜂の群れの相手は分が悪い。だから、支援しなければならない。

 

私達が、ガトリングで、谷山を狙う蜂を叩き落とす。

 

谷山はそれに助けられながら、蜂をサイドドアから狙える位置へと追い込んでいく。連携しながら、落ち行くヒドラの上で戦う。

 

ほどなく。

 

蜂の殲滅に成功。敵に新手がいるかも知れないが、まだ周囲には、姿を見せていない。

 

「町田まで飛べそうか」

 

「ダメージ甚大! 出来ればすぐにでも着地したいところです」

 

「敵の本隊が、追いついてくる時間は」

 

「およそ一時間」

 

黒沢が、即座に計算を済ませる。

 

弟は、決断した。

 

「よし、ならばこの場で着地。 此方で時間を稼いでいる間に、ヒドラを可能な限り修復しろ」

 

「し、しかし敵の数は」

 

「打って出て、ゲリラ戦で対応する」

 

簡単に言う。

 

しかし、それ以外に手がないのも事実だった。

 

 

 

不時着する前に、着地することができた。どうにか、と言う状態だ。焼け野原だから、何処にでも着陸できたのが、この場合は有り難かった。

 

これほどの戦況でも、柊が平然とカメラを廻しているのは恐れ入った。ただ、正直、奴に構っている余裕は無い。

 

この近辺は、何処か。

 

ヒドラから降りると、敵の警戒に当たる。

 

すぐに整備班がヒドラの上に上がり、ローターの修復を開始。煙を噴いているローターのダメージは、遠目にも酷い。

 

同時に、機動戦に用いるビークルも修復。

 

まだ敵に蜂がいるかも知れないが、関係無い。

 

ネレイドに出て貰う。

 

「谷山、分かっていると思うが、極めて危険な任務だ。 蜂の群れが現れた場合、くれぐれも無理をするな」

 

「分かっていますよ」

 

先に、谷山が行く。

 

主にナパームをばらまくことで、敵の進撃速度を遅らせ、数も削るのだ。

 

その間に、アーマーの張り直しが済んだビークルを、順番に出撃させていく。

 

蜂以外の巨大生物は、ほぼ無傷の状態。

 

蜂だって、どれだけいるか分からない。まだまだ相当数が温存されていてもおかしくはないだろう。

 

それに比べて此方は、先ほどの戦闘で、レンジャー9の人員は救助できたものの、レンジャー13は重傷者を四人出している。更に、ジープは全て失ってしまった。

 

キャリバンとグレイプで、引き撃ちをするしかない。

 

そのキャリバンも、ハリネズミかヤマアラシという状況だ。セントリーガンを据え付けて、準備完了。

 

私はキャリバンにタンクデサンドする。涼川と原田はグレイプに。

 

他のメンバーは、キャリバンのサイドドアから顔を出して射撃をしたり、それぞれに分乗したりして戦う事になる。

 

エミリーと三川だけは、ラビットジャンプを駆使しての引き撃ちが出来るから、ビークルに乗っての戦闘は考慮しなくても問題ない。

 

後、香坂夫妻と黒沢は、イプシロンで同じ事を行う。

 

私はフェンサースーツの状態を確認。まだ戦闘は出来る。最悪の場合、敵の群れに突入して機動戦を行う必要があるので、アーマーは多めに貼って貰ったが。それでも、気休めだろう。

 

あの数の敵だ。

 

真正面から戦ったら、それこそひとたまりもない。

 

後は、黒沢に確認する。

 

「この辺りは」

 

「大和市と横浜市の間くらいですね。 もう少しで、谷山さんが接敵する筈です」

 

谷山なら、敵の足止めを上手にやってくれるはずだが。しかし、敵も蜂をまだ残している可能性が高い。

 

順次、キャリバンとグレイプが出撃する。最後尾に、ベガルタAXもいる。

 

弟だけは、ギガンテスを使ったが。これは最悪の場合、最後尾で盾にするためだ。なお、弟は戦車の操縦もかなり出来る。ヘリは谷山には及ばないが、ギガンテスだったら多分ストームチームの誰よりも上手に操れるはずだ。

 

車列を組んで、敵の群れに。

 

レンジャー13からも、七名が参加してくれている。彼らを死なせないためにも。戦闘は、慎重に行わなければならない。

 

谷山から通信。

 

「敵、三波に別れ、進撃中。 片っ端からナパームを撒いて削っていますが、これはかなり厳しいですね」

 

「もっとも此方に近いのは」

 

「バイザーにデータを送りますが、多分北から接近している凶蟲のグループです」

 

「よし、ではまずそいつらからだ」

 

勿論、全滅させるのは無理だ。鼻面に集中攻撃を浴びせて、一撃離脱。向きを変え、北上。間もなく、見えてくる。

 

凶蟲がぽんぽんと飛びながら、此方へと迫ってきている。

 

数は二千近いとみて間違いないだろう。

 

向こうも、此方に気付く。

 

一旦車列を停止。弟の攻撃合図を待つ。

 

凶蟲は、距離を詰めることを一切怖れない。跳躍を繰り返しながら、突入してくる。そして、間合いに入った瞬間。弟が、叫ぶ。

 

「よし、攻撃開始!」

 

「ヒャッハア! 待ってたぜぇ!」

 

涼川と原田が、スタンピートからグレネードを雨霰とばらまく。

 

爆裂で敵前衛が消し飛ぶ中、早々に弟は後退を指示。オートに設定したギガンテスの上に上がると、ギガンテスにも主砲で射撃させつつ、自身もAF100で敵の群れを制圧に掛かる。

 

更に、皆の盾となったベガルタが、コンバットバーナーで敵を牽制しつつ、ミサイルを連射。次々敵を吹き飛ばす。

 

やはり敵の戦意は旺盛で、爆破されようが焼かれようが、全く意に介さず迫ってくる。さあ、見せろ。お前達の戦いを。お前達の戦闘能力を。そうすれば、同胞皆が強くなる。そして、我等は神と一つになる。

 

頭に、響く。

 

これはきっと、幻聴では無い。

 

あの巨大ドラゴン、グレーターワイルドドラゴンと会話したとき、悟った。此奴らのこの意思も知性もあるにも関わらず、自分を全く顧みることなく、全てを周囲に捧げることが出来るこの行動。

 

それは、神と一つになると、信じているからだ。

 

宗教は最強最悪の精神的な麻薬だが。

 

宇宙に出ても、その法則には何ら変わりが無い、という事なのだ。

 

ガトリングで弾をばらまきながら、下がる下がる。敵はかなりの速度で追ってくるが、それでも対処は出来る。

 

レンジャー13のメンバーも、頑張ってくれている。有馬中佐も、ハーキュリーでなかなかのエイミングを見せて、敵を確実に打ち抜いてくれていた。流石に、あの地獄を生き抜いた男の事はある。

 

敵の群れを、一旦引きはがす。

 

谷山と連絡して、周囲の状況を確認。

 

一度ヒドラに戻り、補給を済ませてまた出撃した谷山によると、現在三波に別れた敵の群れは、谷山の攪乱によって進撃速度を遅らせているが、それでも確実にヒドラへと迫っているという。

 

しかも悪い事に、南から来ている部隊には、蜂も混じっているというのだ。

 

次は、南が近い。

 

叩かないと、また蜂にダイレクトにヒドラが攻撃されることになる。そうなると不時着どころか、多分撃墜されるだろう。

 

有馬の声が聞こえる。

 

「思い出すな、こういうときにはあの時の事を。 前の戦いの際に、敵に包囲されてな」

 

「む……」

 

弟が、反応を示す。

 

私がいなかったときのことだろうか。前の大戦では、私と弟は、一緒の戦場にいないことが多かった。

 

有馬は、部下達に蕩々と話している。

 

「あの時は、英雄がいたから助かった。 たった一人で、敵の群れを蹴散らしたんだ」

 

「何度も聞きましたよ隊長。 例のストーム1リーダーでしょ? でもあの人って、確かその後マザーシップとの戦いで、行方不明だって聞いています」

 

「ああ、そうだな」

 

一兵卒は、普通は知らされていない。

 

あの戦いの後、弟が生き延びたことを。

 

当時のストーム1リーダーと、現在のストームリーダーは、別の人間だと、多くの兵士達は信じているのだ。

 

だから、最近は、兵士達が歌っている。

 

「マザーシップの撃墜に-、英雄一人で成功すー。 その後の消息不明だが-。 きーみはかならず舞い戻るー」

 

弟の事だ。

 

なお、有馬は弟が生きている事を知っている。だから、兵士達にそれを言えず、歯がゆい顔をしていた。

 

次の敵集団と接触。

 

今度は赤蟻と黒蟻が主体だが、問題は空に蜂の群れがいる事。数は百を超えている。ネレイドの支援は受けられないし、通すわけにも行かない。

 

厳しい戦いになるが、やりきるほかない。

 

「エミリー、三川、私の後ろに」

 

「OK。 盾でのガード、頼むわよ」

 

二人が、キャリバンに飛び乗ってくる。後ろは矢島に固めて貰い、盾をかざす。

 

また、下がりながら、敵への攻撃開始。

 

蜂は容赦なく、まずはビークルを針塗れにするべく、集中攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

何度かの戦闘を経て、かろうじて時間を稼ぐことは出来たが。

 

全員が手酷く負傷し。

 

ビークル類もそれぞれが大きな損傷を受けて。

 

そして、ようやくヒドラの側にまで辿り着く。まだ、谷山は戻ってきていない。ネレイドで、極限まで時間を稼いでくれるつもりなのだ。

 

通信もまばらだが、それでも。ヒドラの強力な通信装置で、悲惨な状況が分かってきた。

 

また、基地が一つ、フォーリナーに潰された。

 

抵抗を続けていた基地だからだろう。生き延びた面子は、地下に潜ったと信じたいが。少なくとも基地は、多数の攻撃機に襲撃され、その機能を失った。

 

「EDF総司令部は、現在地下にその場を移して、抵抗を続けています。 戦闘での損害は多大ですが、まだEDFは組織的抵抗を諦めていません。 アースイーターへの攻撃に向け、準備は行われています」

 

「絶対嘘です、そんなのっ! もうみんなやられちゃって、どうにもできなくて、まけてみんな死ぬのをまつだけなんです!」

 

ヒステリックな声が入る。

 

おそらく、戦術士官ではなく、あの調子が良いオペレーターだろう。

 

少し前に聞いたが、同期の子がいた基地が潰されたのだという。確か欧州の、ギリシャにあった基地だ。

 

基地の人員はどうなったかわからない。

 

少なくとも、基地は四千とも五千ともいわれる巨大生物に飲み込まれ、消滅した。それ以来、精神が相当不安定になっている様子だ。

 

更に言えば、オペレーターは会議にも出席できていない。

 

心が弱い彼女なら。

 

まあ、今の戦況で、勝ち目がないと判断するのも仕方が無いだろう。

 

オペレーターのヒステリックな声が聞こえなくなる。多分戦術士官が黙らせて、別の部屋に連れて行ったのだろう。

 

当然の措置だ。

 

あんな声を聞かされ続ければ、士気だって落ちる。

 

弟は嘆息すると、まだ作業をしているスタッフに叫ぶ。

 

「修復は?」

 

「もう少しです! あと少しで、東京基地まで飛べるようになります!」

 

「敵反応! 西からです!」

 

ナナコが叫ぶ。

 

釣られてみると、確かにかなりの数。しかし、谷山の報告には無い。そうなると、別働隊か。

 

主力の三部隊が押さえ込まれている間に。あの少数部隊だけが、ヒドラに迫っていたという事になる。

 

ヒドラが傷ついていて。

 

それを叩けば、此方が全滅だと、分かっていて。あの別働隊が組織されたと見て良いだろう。

 

弟が、防御陣を組めと叫ぶ。

 

ベガルタが前に出て、その隣にギガンテスが。

 

横付けされたキャリバンの上に、急いでセントリーガンが配置される。そして、先の戦いで酷く傷ついたネグリングも、ヒドラから出てきた。

 

「ヒドラには絶対に近づかせるな! 迎撃開始!」

 

どっと殺到してくる巨大生物の群れ。

 

ガトリングで薙ぎ払いながら、ふと私は疑問に思う。巨大生物の中に、女王らしき奴はいたか。

 

まさか。

 

いや、考えすぎだろう。

 

敵の勢いは凄まじく、油断すると瞬時に突破されかねない。

 

私は唇を噛むと。

 

その猛撃に耐え抜くべく、気合いを入れ直した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。