地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
ヒドラは、殆ど不時着同然で、東京基地のポートに着陸した。文字通り、さんざんな戦いだった。
サイドドアを開けるのも、苦労する。
拉げて歪んでしまっていたからだ。
当然の話である。
どうにか修理が終わって、町田を少し過ぎた辺りで、ここぞとばかりに仕掛けてきたドラゴンから攻撃を受けたのだ。
即応したが、追い払うまでに、墜落寸前の打撃を受けた。
幸い、神奈川の敵集団は此方への追撃を停止していたから、その場で着陸。修復して、どうにかここまで来たのだが。
それも二度の破壊に対する応急処置。
完全には行かなかったのである。
消火班が来て、火を噴いているエンジンに泡を掛け始める。けが人も、順番に中から搬送される。
けが人の中には、ストームチームをずっと診てくれていた医師もいる。
ドラゴンに襲撃された際、ヒドラの外壁に貼られていたアーマーがついに限界を超えた。そして火球が一つ、窓を破ってヒドラの内部に飛び込んだのである。
死者は出なかったが、医師は爆裂の余波を浴びて、吹っ飛ばされ。壁に叩き付けられていた。
ストームチームの専用機がこれだ。他のヒドラも悲惨な戦況下で苦闘を続けているのは分かっているが。最精鋭の専用機がこのような目に会っているのでは、もはや何が起きても不思議では無い。
口惜しくて、地面を蹴りつけるほかなかった。
珍しく、結果報告より先に休むように、日高司令から連絡が来る。部下達を先に休ませるが、その理由はすぐに分かった。
休憩後、通信が来る。
カプセルから出たばかりの私は、思わず唖然としていた。
また、アルゴである。
それも、横浜に上陸。多数の巨大生物と、数隻の輸送船を左右に侍らせ、東京へ進撃を開始したというのだ。
アルゴが複数いたことに驚きは無い。フォーリナーの技術力なら、いても不思議ではないから、である。
前回アルゴと対戦したときの、苦い思い出がよみがえる。
ストームチームは、奴との戦いで、ほぼ壊滅状態にまで追い込まれたのだ。
幸い、今回は戦闘データがある。
流石にストームチームだけにやらせるとは思わないが。
すぐに、弟と一緒に司令部に顔を出す。司令部では、日高司令とどうにか帰還が間に合ったデスピナ艦長をはじめとする幹部が揃っていたが。その面子は、前回の会議よりも、更に減っていた。
大阪、旭川の両基地が陥落した後である。
既に両基地は抵抗を諦め、地下に潜った。連絡も、取れない状態になっている。指揮官が会議に出てこないのは、当然だろう。
ストームチームの幹部が揃うと、すぐに会議が始まる。
映像が出るが。
其処には、飛行形態では無く。人型のアルゴが映し出されていた。
「第五艦隊の遠距離砲撃により、アルゴと護衛の部隊にダメージを与える事に成功はしている。 これは前回の、ストームチームによる交戦記録からの成果だ。 敵は横浜に上陸したと言うよりも、我等の手で陸に追い込んだと言って良い。 ただし今はドラゴンの群れによる散発的な攻撃が第五艦隊に行われており、支援は難しい」
「其処で君達に、アルゴの周辺戦力を撃破して貰いたい」
「アルゴそのものはよろしいのですか」
弟の問いに、日高司令は問題ないと言った。
前回の反省を生かし、今回は砲兵隊の装備に改良を加えているという。ストームチームはアルゴの護衛をしている輸送船を追い払い、攻撃機部隊と、ヘクトルを叩いて欲しいと言う事だった。
アルゴの人型形態の戦闘力は非常に高いが。
一定距離を保ちながら、その護衛だけを追い払うのであれば、どうにかなるか。
すぐに作戦が開始される。
ヒドラが大破している状態だ。ビークル類も損傷が酷い。幸いベガルタはすぐに動かせるので、これとキャリバン、イプシロンを中心に戦う事になる。ネグリングはヒドラと同等の損害を受けていて、今回は工廠でお休みだ。
ジープを何台か出して貰ったので、ビークルに乗りきれない者はそれを使ってすぐに出る。
通信を、弟が入れてきた。
「大丈夫か」
「私はな。 他のメンバーに気を配ってやれ」
「そうじゃあない。 様子がおかしかったぞ。 まさか、敵の声が聞こえるようになっているんじゃないだろうな」
図星を突いてくる。
流石に血を分けた唯一の存在だ。
ため息を一つつくと、その通りだと応える。
「だが、今更だ。 敵に対して慈悲を掛けることは無いから、安心しろ」
「安心できるか。 相手がただの殺戮と破壊だけを行うクリーチャーなら、殺しても精神にダメージが行くことは無いだろう。 相手が宗教まで持っている高度な知性の持ち主で、人間と同レベルの思考が出来、なおかつ信念のために戦っていることがはっきりしたんじゃないのか。 そんな相手の声を聞きながら戦っていたら、もたないぞ」
分かっている。
思わず、大声を出していた。
驚いた様子で、ナナコと三川が此方を見る。
咳払いすると、目を閉じて、腕組みした。
「なあ一郎。 前からそれは分かっていたことだろう。 人間を遙かに上回る精密極まりない戦略行動、一糸乱れぬ戦術展開。 連中には知性があるし、下手をすると人間以上に優れていると。 ブレインと接触し、ドラゴンが喋るのを聞いても、それが裏付けられただけだ」
「その通りだ。 だが姉貴、最近悪い夢も見るようになったんだろう。 俺が提案した第三の案だって、俺たちが犠牲になるようなものだ。 報われる未来なんて」
「良いんだよ。 どうせ私もお前も、散々相手を殺してきたんだ。 地獄とやらに墜ちるならそれも仕方が無いし、お前が一緒ならいいさ」
通信を切る。
弟が言うまでも無い。
今更PTSDになったり、敵を殺すことで精神にダメージを受けたりはしない。しかし、敵が喋るのを聞けば、それなりに心にも傷もつく。
体は、如何に不老に等しいと言っても。
心はそうじゃあない。
現地に到着。
先に展開していた一部隊が、敬礼をしてくる。親城准将指揮下の、レンジャー三個部隊だった。
周囲に人がいるから、親城准将は多少口調が硬い。
「指揮下に入る」
「状況を知らせてくれますか」
「現在、敵攻撃機と交戦中。 敵には大型輸送船二機が健在。 青ヘクトルが何機か、護衛として進軍中。 幸いディロイの姿はなし」
もう、視界に奴、アルゴの人型形態が入っている。しかも、全身から、少なからず煙を上げているようだ。
第五艦隊からの猛攻で、相当なダメージを受けたという事である。
EDFの底力は、まだまだある。
一度見た相手なら、そう簡単に遅れを取ることは無い。
「アルゴの掃射砲は強力だ。 中距離を保ちながら、護衛の敵戦力を殲滅する。 イプシロンは輸送船に攻撃を集中! ベガルタは火力を温存しながら、敵の攻撃から味方を守れ!」
「イエッサ!」
弟の指示で、全員が散る。
空から来る無数の攻撃機。ヘクトルは攻撃範囲に入っていないから、まずは彼奴らからつるべ打ちだ。
ネグリングを中心に、後退しながらミサイルの雨を浴びせる。スナイパーライフルでも、最近はストームチームの新人達も、十二分に攻撃機を落とせるようになってきている。一緒に戦っているレンジャー部隊の面々は其処まではやれていないが、それでもひとかたまりになって下がりながら、確実に敵を始末していく。
皆の中心にあるギガンテスとグレイプには、既に谷山がガードポストを設置済みだ。これで、普段より格段に生存率が上がっている。大量生産をして、他の部隊にも配置すれば、更に生存力が上がるはずだ。
だが、敵も物量が凄まじい。
倒しても倒しても、次々に来る。
輸送船への攻撃も続行されているが、それでもだ。一隻目の輸送船が爆沈すると、どうやらアルゴは此方に対する戦術を変えるべきだと判断したらしかった。
主砲を持ち上げはじめる。
遠距離で、東京基地を狙うつもりだ。
同時に、攻撃機とヘクトルが、一気に前進してくる。無理矢理にでも、消耗戦に持ち込むつもりか。
「砲兵隊は何をしている」
弟が、バイザーに通信を入れているが。
まだ準備が整っていないのか。
敵との距離が縮まってくる。このまま放置しておくと、アルゴは東京基地に、主砲をうち込みかねない。
攻撃機の圧力も、凄まじい。
正直、アルゴに関わっている余裕が無い。
その時だった。
アルゴに、特大のエネルギービームが直撃、大爆発を引き起こす。射線上の攻撃機も、根こそぎ吹き飛ぶほどのものだった。
更に、カノン砲からの砲撃支援。
アルゴの全身に、灼熱の花が咲く。巨体が、露骨に揺らぐ。
「EDF! EDF!」
レンジャーチームの兵士達が、喚声を挙げるのが分かった。
砲兵隊は到着した。遅れたのには、何かしらのトラブルがあったのだろう。
しかし、どうにか間に合ったという事だ。
今の極太エネルギービーム、おそらくX3改などに装備されているという主砲クラスの火力があった。
要塞砲を外して、運んできたのだろう。
それで時間が掛かったという事か。
煙を上げながらも、アルゴはまだ健在。
しかし、二隻目の輸送船が撃墜されると。戦況は逆転した。砲兵隊からの対空クラスター弾支援もあり、攻撃機が横殴りの射撃で撃墜されていく。そうなると残りは青ヘクトルだが、元々の数がそれほど多くないのだ。
「エミリー!」
「OK!」
前回の戦闘で、巨大ドラゴンは殺しきれなかったが。
それでも、改良を更に加えた決戦兵器、グングニルを、エミリーと三川が構える。今度は、一撃で仕留めてみせる。
気迫が、二人の目にはあった。
私も負けてはいられない。
迫ってくるヘクトルが、ガトリングを回転させはじめている。私はブースターをふかして至近に。
ゼロ距離からガリア砲を叩き込んで、吹き飛ばした。
このガリア砲も、少し前からバージョンが上がって、火力が向上している。一撃とはいかないが、傷ついた青ヘクトルなら、この通りゼロ距離射撃でどうにでも出来る。
倒れたヘクトルが爆裂。
射線が確保される。
しかし、意外な速度で進んできていたアルゴが。全身から煙を上げながらも、掃射砲の射程内に、此方を捕らえていたのである。
圧倒的な火力が、降り注ぎはじめる。
バック。
弟が叫ぶが、間に合わず吹っ飛ばされる者が出る。キャリバンの一機が、瞬時に粉砕された。
相変わらず凄まじい。
盾を構えて負傷者を庇いながら、エミリーに叫ぶ。
「グングニルはまだか!」
「もう少しよ、耐えて!」
流石に要塞砲を連射するのは厳しい。あの大火力だ。多分動力も考えると、プロテウス並みの規模になる筈。
盾が、見る間に消耗していく。
矢島も、冷や汗を流しながら、耐えているのが分かった。
砲兵隊が、攻撃機の殲滅を完了。
ヘクトルも、既に全機が沈黙。
下がりながら、皆がアルゴに攻撃を集中するが、まだまだ倒れない。掃射砲の反撃が凄まじい。そればかりか、前に交戦したときよりも、移動速度が尋常では無く向上しているでは無いか。
「行けるわ!」
エミリーが叫ぶ。
弟が、ファイアと叫ぶ。
二条の、必殺の光の槍が、空を走る。
そして、アルゴの胸に、突き刺さっていた。
爆裂。
先ほどの特大エネルギー砲並みの火力だ。個人の携行火器で、これほどの破壊力を実現できるとは。
更に、とどめとばかりに、砲兵隊がアルゴにカノン砲を連射。砲弾の大半が、アルゴの巨体に吸い込まれ、装甲を喰い破った。
全身の装甲を破られたアルゴが、軋みを挙げながら、それでもまだ倒れない。私は盾を放り捨てると、ガリア砲をうち込む。
グングニルが直撃した地点に、更に一撃。
其処へイプシロンからの射撃が、容赦なくもう一撃を加える。
大型ミサイルが飛んでいくのが見えた。
プロミネンスか。
見ると、涼川だ。
必死に逃れようとするアルゴだが、既に火力の大半を失っている状況。カノン砲によるもう一射が、足を砕いたことが決定打になった。
狙い違わず。
巨大ミサイルが、アルゴの胸の傷を直撃。
直後。
その場に、光の柱が出現していた。
プロテウスが来る。
地上車両に主砲を搭載していると思ったのだが。どうやら、プロテウスが背負う形であったらしい。
日高司令が、通信を入れていた。
「遅れてすまない。 途中、敵の部隊と交戦していてな」
「敵別働隊が!?」
「ああ。 敵も流石によくやる。 後は、此方で処理しておく。 一番犠牲を出している君達は、先に戻って治療を受けてくれ」
誰も、文句は言わない。
というのも、プロテウスも相当に傷ついていたからだ。砲兵隊を守りながら、敵を蹴散らし、それであの地点まで辿り着いたのなら。かなり無理をしたのだろう。それならば、遅れるのも仕方が無かった。
もっとも、総合的な作戦指揮に問題があったのは否めない。
矢島が、手酷くやられていた。
左手の手首から先を吹き飛ばされている。戻ったらクローン医療だ。もっとも、矢島も以前に経験しているだろうが、あれは回復するときが一番痛い。キャリバンに収容された矢島が、包帯に撒かれた手首を見せてくる。
「やられてしまいました」
「レンジャーチームの死者は、三名で済んだ。 お前がよくやってくれたからだ」
「でも、三名亡くなったのは事実です」
「そうだな」
だが、死んだ三名は、矢島を恨んではいないだろう。
東京基地に戻る。
アルゴの残骸が、プロテウスとタイタンによって、牽引されてくる。上半身と下半身が泣き別れになった鉄の巨神は。それそのものが、先進テクノロジーの塊だ。分解すれば味方のために役立つ。
私も医者で、軽く治療を受けるが。
医師は、首を横に振った。
「ほぼ回復しています。 ですが、念のためにカプセルで休んでください」
彼は、普段の主治医では無い。
だから、私の異常な快復力。地下の彼奴と融合したことで得たそれを、不可思議なものだとしか思えないのだろう。
医師に言われたとおり、カプセルで休む。
ぼんやりしていると、また悪夢を見た。
アシャダムとオメガチームが、情け容赦のない攻撃に晒されている。部隊が標準的に装備している零式レーザーで反撃しているが、敵の数が圧倒的すぎるのだ。
「くそっ! 下がるな、下がるな!」
傷だらけになりながらも、アシャダムは必死に敵を撃退し続けている。
だが、無数の攻撃機とディロイ、それに撃墜しても撃墜しても湧いてくるアースイータが、確実にオメガチームの戦力を削り取っていくのだ。
ついに、アシャダム一人になる。
周りを囲まれる。
逃れる事は、できない。
一斉攻撃に、さしものオメガチーム最強の戦士も、吹っ飛ばされる。立ち上がろうとしたところを、ヘクトルに踏まれた。
「ち、畜生……っ!」
「此処までのようですね。 それに、充分にデータは取れました」
この声は。
ブレインだ。
「貴方も典型的な地球人。 戦いが大好きで、相手を殺すのが好きで好きでたまらないのだから、この死に方は本望でしょう。 我々としても、無抵抗の非暴力者を殺すような悪魔ではありたくない。 戦いを望む者からデータを取りたいのです。 貴方はその理想型ですね。 楽しんでいただけたようですし、何よりです」
「巫山戯んな、このブリキ人形っ!」
アシャダムが、必死の反撃。
まだ手にしていた零式レーザーで、踏んでいるヘクトルを射撃、爆破。
だが、その爆風の直撃を受けて、動かなくなる。
ヘクトルがガトリングをぶっ放し、アシャダムにとどめを刺した。
目が覚める。
病院から帰って、寮のカプセルで寝ていたのだ。それを思い出して、何度か深呼吸した。
冷や汗を、全身に掻いていた。シャワーを浴びながら、これは正夢じゃないだろうなと、高鳴る心臓を抑えながら思う。
今頃、ドイツではオメガチームが、攻撃の準備をしている。
第八艦隊を壊滅させたブレインだ。恐らくは、今頃欧州に向かっているはず。幾らオメガチームでも、極めて勝ち目が薄い相手だ。極東と同じくらいの戦力をまだ保持しているだろう欧州のEDFでも、総力で挑んで勝てるかどうか。いや、総力で挑んで、やっと勝ちの目がわずかに見える、程度の相手でしかない。
服を着ると、フェンサースーツを身につけることもせず。
寮の床に転がると、バイザーを付ける。
オメガチームにつながるだろうかと、漠然と操作。既に欧州はかなりつながりにくくなっているが。
意外にも、アシャダムにつながった。
オメガチームとは、殆ど交流がない。
アシャダムは昔から良く言えば孤高、悪く言えば協調性に欠ける男で。前大戦の頃から、話した事は殆ど無い。
「どうした。 あんたが俺にかけてくるとは、珍しいな」
「お前こそ、話したのはひょっとしてはじめてかも知れない」
「そうだったか。 まあ俺も、社交的な方では無いからな」
会話が続かないが。
しかし、それは前からだ。
少し悩んだが、状況を聞く。案の定、現在ブレインがドイツ上空に来ているという。しかも、ベルリンでは無い。
わざわざ攻撃可能な範囲に来ているとかで、オメガチームは欧州の全戦力をかき集めて、対処に乗り出すそうだ。
「必ず叩き落としてやる」
「気をつけろ。 第八艦隊の火力でも、落としきれなかった相手だ」
「分かってるさ」
通信を切られた。
まさか、夢の中でお前が殺されるのを見たなどとは言えない。
ため息をつくと、弟の様子をうかがう。
弟は。
台所で、食事を作っていた。
「香坂夫妻を呼んである。 またどうせ、すぐに厳しい任務がある。 皆でゆっくり食事をしておこう」
「ああ、そうだな」
「どうした。 誰と通話していた」
「アシャダムだ」
珍しいなと弟が言ったので。
そうだなとだけまた答える。
弟が準備してきたのは、たらちり鍋だ。とはいっても、取れたての鱈ではない。冷凍して保存されていたものだ。
香坂夫妻は、すぐに来た。
ナナコを連れている。黒沢も、一緒にいた。
他のメンバーと違って、孤独でいやすい二人だ。香坂夫妻としても、放ってはおけないのだろう。
ましてや、黒沢は、最近弟子として、スキルを仕込んでいるのだから。
六人で、鍋をしばし囲む。
アルゴが来たのは、わざわざ言うまでも無い。ブレインが欧州に対して攻撃を行い、データを取るため、横やりを防ぐ目的だろう。
欧州は間もなく、苛烈な攻撃に晒される。
そして極東も、横やりを防ぐために、アルゴ以上の戦力が投入されるはずだ。マザーシップが来る可能性もある。
「良い鱈だ。 最近の冷凍技術は大したものだ」
秀爺とほのかだけは、料理の味が分かるようだった。
この辺りは、歴戦の貫禄が故だろう。
いずれ、こういう老人になりたいけれど。それは、叶わぬ夢だ。
食べ終えたころ。
戦術士官から、通信が入る。
「静岡に、フォーリナーの大部隊が結集していると報告がありました。 ほぼ間違いなく、東京基地への攻撃を企てていると思われます」
「大部隊か。 数は」
「分かっているだけでも、新型輸送船が十隻。 ディロイ二十四、青ヘクトル二百七十、攻撃機が二千から三千。 巨大生物は、二万八千に達するようです」
「笑えてくるほどの数だな」
押し寄せられたら、極東の最後の要である、東京基地もひとたまりも無い。
第五艦隊と協力し、総力で迎撃するしかないだろう。
鍋を片付けると、解散とする。
私は鍋の香りが残ったままの部屋で、ぼんやりと天井を見つめる。ナナコはどうしたのだろうと思って通信を入れると。北海道基地で救出したヤソコの様子を見に行ったらしい。まあ、他人事では無いだろうから、当然か。
PTSDが酷くて、ヤソコは戦場に戻せそうにない。
そうなると、地下シェルターの警備係か。それも良いだろう。第三世代の戦闘用クローンといっても、全員が戦いに向いているわけじゃあない。生ものである以上、怪我だってするし、心もあるのだから。
ドアをノックされる。
柊だ。
まさか、この寮を知っていたとは思わなかった。うんざりする私に、柊は完全に作り込んだ笑顔を向けてきた。
「素顔のまま話すのは、ひょっとして初めてですか」
「さてな」
「もう、最後が近いようですし、取材を念入りにさせて貰えませんか? ストームリーダーも合わせて」
「……どうする」
後ろにいる弟に声を掛ける。
一郎は、別に構わないと言った。