地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
地下には百万に達する避難民。
最後の砦を巡る戦いが始まります。
作戦開始まで、間もなく。
逃げてもどうしようもない状況で。敵は降伏など受け入れるはずもないとわかりきっていたからか。
絶望的な状況にもかかわらず。
それでも、逃亡者はいなかった。
敵が対話のチャンネルを開けていたら、降伏する者は出ていただろう。だが、私も日高中尉や三川から聞かされたのだが。兵士達の間にも、噂が流れているそうだ。フォーリナーは、好戦的な人間と戦うために地球に来て。戦いだけを目的としていると。
それでは、降伏しても、戦わされるだけ。
結局生き延びることは、出来ない。
生きたければ戦い抜け。
それ以外には、ない。
この噂を流したのは誰だろうと思ったけれど。EDF幹部は一枚岩では無いし、誰かが愛人にでも寝物語したのが拡がったのかも知れない。いずれにしても、今更それが拡がったところで、どうにもならないし。
防いでも、意味もないことだった。
「全員、時計を合わせろ」
「イエッサ!」
作戦は極めて緻密で、それでいながら行き当たりばったりに状況を処理することが要求される。
はっきりしているのは。
此処で敵をある程度散らして、少なくとも東京基地周辺から追い払わなければ。ブレインとの決戦を行う状況さえ、作る事が出来ないという事だ。人類はフォーリナー、つまりフォリナ現状打開派の戦闘用奴隷とされ、彼らが満足するまで、永遠に戦い続けることになる。
それは、滅びと何が違っているだろう。
作戦開始まで、五分。
谷山が戻ってくる。ハンドサイン。準備万端という合図だ。
暗い中、全員が緊張しているのが分かる。
無茶な任務に何度も何度も従事して、それぞれが地獄をくぐってきた猛者達ではあっても。
その中でも最大級の作戦にかり出されたのだ。
私だって、これほどまでに危険で無茶な任務にかり出された例はあまり多くない。ないとは言えないのが悲しいところだ。
弟が、ハンドサイン。
突入準備。
そして、ほどなく。
合図が発生した。
大爆発。
そして、光が差し込んでくる。その光に向けて、全員で突撃する。
先ほどまで潜んでいたのは、東京中に張り巡らされた地下シェルターの一角。其処に、ストームチームは潜んでいたのだ。塞いでいた入り口の一つをパージしたのである。
以前もマザーシップ攻略戦などで同じような作戦を用いたが。
今回は、シェルターに民間人が多数いると言うことが違っている。勿論民間人のいるスペースは隔壁で厳重に閉じているが。
一歩でも間違えれば、巨大生物が地下になだれ込み、収拾がつかなくなる。
躍り出た外で、あらん限りの大火力火器を、全方位にぶっ放す。流石に敵が如何に此方の上を行っても、こればかりは予想できない。
私はスタンピートを立て続けにぶっ放す涼川達を横目に、バトルキャノンをぶっ放して、ヘクトルを瞬殺した。飛び出してきたイプシロンが、即座に一撃を放ち、見えた輸送船に直撃弾。更に其処へ、遅れて来たエミリーが、ノータイムでグングニルをうち込む。輸送船が爆沈するのが見えた。
まずは、輸送船を一隻つぶせた。
ネグリングも、ミサイルを連続してうち込む。敵の群れの中で、誘導ミサイルが異常なほどの効果を上げた。一発撃ち込めば、数匹の敵が連鎖的に吹き飛ぶのだ。
周囲の敵は、まだ混乱から立ち直れていない。だが、数が数。その上密度が密度だ。攻撃の際はその密度が莫大な戦果を上げることにつながったが、防御となると、一瞬で押し潰されてしまう。
手当たり次第に薙ぎ払った後、即座に後退。
ベガルタAXが最後尾になって、穴の中に戻りはじめると。当然、敵が追撃してくる。追いついてくる敵を、穴の中で後退しながら薙ぎ払う。ベガルタを主力にしているから、狭い穴の中で、追撃してくる敵を撃破していくのは難しくない。
そして、巨大生物共は思い知る。
追撃してきた赤蟻を中心とした巨大生物たちが見たのは、重層的に構築された、セントリーガンの縦深陣。
そしてその先には、ストームチームの容赦ない迎撃砲火が待っているのだ。
赤蟻の群れが、瞬時に撃退され。逆に、今度は死体を蹴散らしながら、穴の入り口近くまで押し戻す。
まさかこの状況で押し返してくるとは思わなかっただろう巨大生物たちの死体を、ギガンテスとベガルタで押しやりながら、思う存分撃退した。
また、敵が反撃に出てくるが、つきあわずに下がる。
そして押し込んできた敵が、また縦深陣に引っかかり、多大な犠牲を出す。
しかし、それも二回までだ。
敵がぴたりと動きを止める。
おそらく、ディロイかヘクトルで、穴そのものを攻撃に掛かってくる。だが、それも計算済みである。
既に、攻撃のタイミングは指定してあるのだ。
「コンクリ弾!」
涼川が、スティングレイを構える。
黒沢がコンクリ弾を準備しながら、私は時計を確認。
予定通りの時間に、揺れが来た。
第五艦隊からの支援砲撃である。穴の周囲にいる敵を、これで一気に蹴散らしてしまう。ずずん、ずずんと、凄い音。最高火力のテンペストミサイルが何発も着弾しているのだから、当然だろう。
当然、ディロイだろうがひとたまりもない。
その隙に、コンクリ弾で穴を封鎖。
更に、その前に涼川が事前に指定しておいたポイントを打ち抜いて、穴そのものを崩落させる。
崩落した穴をコンクリで固めて、第一次攻撃は成功。
ゲリラ戦の見本のような結果に終わった。敵は相当な損害を出し、此方は被害皆無。だが、分かっている。
初撃だから、こうも上手く行ったのだ。
弟が、本部に通信を入れた。
「此方ストームチーム」
「司令部だ。 戦果は確認させて貰った」
「第二段階に入ります」
「頼むぞ」
同じ手が通じるほど、敵は甘くもなければ、頭も悪くない。輸送船を撃墜し、千を超える敵をこの攻撃だけで葬ったが。
同じ手を使えば、即座に対策されるだろう。
だから、それを逆に利用させて貰う。
最後の戦いだから、どんな手でも使う。窮鼠は猫を噛む。この場合、鼠と猫どころか、蟻と恐竜くらいの力の差があるが。
それでも、反撃の方法は、あるのだ。
次の攻撃地点に移動。
念のため、民間人は深く深く地下に潜って貰い、何重もの隔壁でガードはしているが。それでも巨大生物が喰い破って地下に入ってきたら、何が起きても不思議では無い。元々地下は、連中にとってのホームグラウンドなのだから。
弟が、オンリー回線をつないでくる。
「姉貴、どうした。 今日は妙に無口だな」
「案ずるな。 別に問題があるわけではない」
「それは分かっているが。 何かあったら言ってくれ」
「分かっているさ」
ビークル類の移動も、今の時点では問題なし。
また、先ほどの攻撃地点も確認しているが、崩落した上にコンクリで固められた進入路を突破することを、敵は諦めた様子だ。
いや、或いは。
次の攻撃のタイミングで、ストームチームを潰すつもりなのかも知れない。
そうとも限らない。
次の攻撃を、むしろ楽しみに待っているという可能性もある。対策をするのは、豊富な戦闘経験を積むため、か。
移動完了。
点呼を取った後、時計を合わせる。
第五艦隊にも通信を入れて、攻撃のタイミングを調整。
次の攻撃は。
東京基地、外壁のすぐ側。しかも、シェルターの出口でさえない。地下下水道をビークルで無理矢理通り抜けて、封鎖され巨大生物も見向きもしないどぶ川から、ストームチームはカッパよろしく姿を見せたのである。
そして、耐水防御をパージすると。
外壁の側で、攻撃の準備をしていた巨大生物に、ありったけの火力を叩き付けた。
それに合わせて、外壁の上から、味方部隊も一斉攻撃開始。
ストームチームは東京基地の正面ゲートに突入。ゲートはこのタイミングで開かれている。当然敵も殺到してくるが、分厚い強化コンクリートの壁に加えて、味方部隊の援護射撃がある。
簡単には抜かせない。
背後や頭上を気にしなくても良い上、第五艦隊からのテンペストの援護もある。密集して迫ろうとする敵が何度かテンペストの直撃で消し飛ぶと、ぴたりと動きを止める。代わりに蜂とドラゴンが、数にものをいわせて、中空からの攻撃に出ようとした。
其処へ、砲兵隊が、東京基地の内部から対空クラスター弾の弾幕を浴びせる。
混乱したところに、地上の敵を気にしなくて良くなったストームチームからも、十字砲火で歓迎。
適当に敵を削ったところで、正面ゲートから基地内に逃げ込む。
これで、第二段階も上手く行った。
そのまま外壁に上がって、しばらくドラゴンと蜂の相手をする。敵は数が数だ。今のストームチームの攻撃で全体的にある程度配置を散らしているとはいえ、基地の部隊だけでの相手は厳しい。
射撃を続行。
しばらく、無心に戦い続ける。
敵がそろそろ、本気で総攻撃に出ようとするタイミングを見計らう。敵の攻撃は苛烈だが、まだまだ本気ではない。蜂とドラゴンを中心に、対空砲火を中心に防備を固めた東京基地に、確実にダメージを与えに来ているが。敵の数は十万以上。ストームチームが多少削った程度では、痛手にもなっていない。
そればかりか、敵の地上部隊は、強化コンクリートの外壁を、真正面から破りに来ている。
凶蟲もドラゴンも蜂も、外壁の上にいる迎撃部隊を無視して、壁に攻撃をしてきている有様だ。
もしも外壁を一カ所でも破られたら。
東京基地は終わりだと、知っているのである。
そして如何に分厚くアーマーを積み、強化コンクリートで固めても。アーマーが破られてしまえば、攻撃には長くは耐えられないとも。
勿論、その過程で。
嫌がらせと言わんばかりに、外壁の上にも、容赦のない攻撃を叩き込んでくる。
ストームチームは基地の彼方此方を駆け回りながら、不利になっている部隊を支援。次の段階に移動するべく、タイミングを待つ。
しかし、である。
敵は数による手数を、生かしてきている。
基地に対して飽和攻撃を続けながら、一部がおかしな動きを見せ始めたのである。ディロイ十機以上が、横に並んで前進を開始。周囲には、その十倍以上のヘクトルの姿もあった。青ヘクトルばかりではないという事が、今回の敵が如何に本気かを、端的に示している。
アレに近づかれたらまずい。
もう少しで、準備が整うのだ。
対処のために、ストームチームが移動。
第五艦隊は、少し前から、直接攻めこんできたドラゴンの対処もしなくてはならず、投射できる火力が明らかに衰えてきている。味方砲兵隊も、補給を済ませ、銃身を冷やさなければならないから、攻撃の間隙は出来る。
並んで迫ってくるディロイが、プラズマ砲を乱射しはじめた。
端から集中攻撃で潰して行くが、敵の波状攻撃の背後には、更にディロイの横列編隊が見えている。
間断ない攻撃を加えることで、此方の抵抗力を削ぐ気だ。
三川のグングニルが、ディロイ一機を撃砕する。
私と矢島のバトルキャノンが、迫るヘクトルを確実に仕留めていく。
だが、大物に手を掛けている間に、巨大生物は苛烈な攻撃をその分強めてくるのだ。味方部隊の被害も、うなぎ登りに上がっていく。
「よし、準備が整った!」
日高司令の声。
殆ど間を置かず。
敵の主力部隊後方。敵のど真ん中に、プロテウス二機が。
それぞれ背中を合わせて立つようにして、出現。そして、その火力を全開にして、敵を薙ぎ払いはじめたのだ。
流石にこれは予想していなかったようで、敵が混乱する中。
正面ゲートを開け、総攻撃に掛かる。
混乱から立ち直った敵が、反撃に出ようとしたタイミングで、味方砲兵隊が総力での攻撃を開始。
基地の要塞砲も、全てが同時稼働。
全火力を投入しての反撃が開始される。
だが、敵の数はなおも圧倒的。
プロテウスのいきなりの出現と猛攻に一時は戸惑ったが、すぐに対策してくる。此方の出撃部隊を、ヘクトルとディロイが中心に押さえ込みながら、敵中にいるプロテウスには、ドラゴンと蜂を中心とする戦力で反撃。
さしもの頑強なプロテウスも、見る間に防御が削られていくのが分かる。
とどめとばかりに、黒蟻と赤蟻が、プロテウスに群がっていく。
私は、敬礼した。
有り難う、今まで。
前線に出てくるお前に、どれだけ助けられたか分からない。バトルキャノンでヘクトルを打ち砕きながら、合図を出す。
全軍が、再び正面ゲートから撤退を開始。どのみち、真正面からの戦いでは、そう長くはもたないのだ。
敵の海の中に孤立するプロテウス。
もはや、敵に飲み込まれ。崩壊は時間の問題だと思われた瞬間。
自動操縦で動かされ。
中にありったけの爆薬を積んでいたプロテウスが。二機とも、自爆した。
キノコ雲が上がる。
爆風は、近くに群れていたドラゴンと蜂を根こそぎ焼き払い。翼を折って地面へと叩き付ける。
混乱する敵に、一斉反撃開始。
まだまだ敵の数は圧倒的だが。その出鼻くらいは、挫くことが出来た。
一旦戦闘が落ち着いたので、外壁の中に引き上げる。
ストームチームの負傷は、思ったほど酷くは無い。ネグリングが中破していること、三川が軽傷を受けている事くらいである。全員がアーマーの耐久内で、戦闘でのダメージを抑えることが出来たのだ。
他のチームも、相応の打撃は受けているけれど。まだまだ戦闘そのものは続行可能。
第五艦隊は、ドラゴンの群れと散発的に戦闘中。敵は第五艦隊を抑えるために、ドラゴンを矢継ぎ早に投入し、動きを塞いでいる様子だ。
司令部に呼ばれたので、弟とジョンソンと一緒に出向く。
とはいっても、この東京基地にも、散発的な攻撃がある状態だ。のんびり会議などやってはいられないし。休めるときに休まないと危ないが。
会議室に入る。
エッケマルクが来ていた。最近はずっと前線に出ていて、会議で直接顔を合わせるのは久しぶりだ。
彼の愛騎は先ほど爆散してしまった。日高司令のも。
実はまだ一機プロテウスはいるのだが、調整中の機体で、いきなり戦闘に出すのは厳しい。
出すとしても、本当に最後の最後だろう。
「敵の損害は八千を超えると報告があった。 相当な打撃を与えてやったし、撃破した中には多数のドラゴンと蜂がいるのが大きい。 だが、敵の主力はまだまだ戦闘続行可能で、ディロイもヘクトルも多数が健在だ」
「次はどうするか、だな」
エッケマルクが腕組みする。
わかりきったことだが。何しろ敵と味方の戦力差はあまりにも圧倒的だ。守勢に出た瞬間、此方は蹂躙され、終わる。
初撃については、だいたい予定通りに進んだ。現時点では、損害比率も敵の方が大きい。しかし弾薬の消耗などを考えると、必ずしも味方が敵を圧倒しているとは言いがたい部分もある。
外壁の消耗も、実はかなり大きいのだ。
このまま敵が攻撃を続行し。外壁のアーマーが破られでもしたら、その瞬間に勝負がついてしまう。
十万弱の巨大生物をどうにかして追い払わない限り、ブレインを迎え撃つどころではないのだ。
「では、予定通り、しばらくは蜂とドラゴンを中心に攻撃。 敵の高空戦力をある程度削り次第、温存していた空軍を出す」
これで会議は終了。
私は弟に促され、一旦カプセルで休む事にした。三十分だけでも、休めるときに休まないと、危ないのだ。
無言で休憩だけこなし。
次の戦いのためだけに休む。
機械じみているのは昔からだ。だが、どうしてだろうか。少し前に、弟が「準備」を見せてくれたおかげで、少しだけ気分は楽になった。あれ以降弟も気を遣ってくれるし、少し嬉しい。
カプセルから出て、軽くシャワーを浴びて、リフレッシュ。
随分楽になった。
再び、前線に出る。外壁の修復は急ピッチに進められているが、工場で生産されたアーマーにも限界がある。
いつまでも敵の猛攻を支えてはいられないだろう。
敵がおかしな動きを見せていると、スカウトが連絡を入れてくる。とはいっても、あまり遠くまでは、スカウトも出られる状況では無い。
現時点では、敵は外壁から少し距離を取ってくれているが。
それも、いつまた寄せてくるか分からないのだ。
「敵が輸送船を中心に、前進を開始しています。 前線にいる部隊と合流するつもりかも知れません」
「更に増援を繰り出すつもりか」
「分かりませんが、敵の中にはシールドベアラーやレタリウスも混じっているようです」
「分かった。 捕捉される前に戻ってきてくれ」
通信を切る。
弟は少し考え込んでいたが。出ようと一言だけ。
確かに、敵の策が東京基地に直撃するよりも、ストームチームを狙ってきた方が、被害が小さくなる。
正面ゲートから出る。
ネグリングで、主に蜂とドラゴンを狙い撃ちしながら、少しだけ前進。敵は間合いを計りながら、此方をじっと見ている。
蜂とドラゴンも狙われると面倒だと考えたのか、低空に降りて、他の敵と見分けがつかなくなる。
少々面倒だが。
敵が消極的になっている、今が好機だ。
正面ゲートを出てすぐの地点で、敵に大火力火器を連射する。しばらくは、その場で無心に攻撃を続ける。
勿論、敵が反撃に出てくる可能性も高い。
さて、敵は何を狙っている。
それが分かったのは、五分後。一旦基地に戻ろうかと、私が考えはじめた、その瞬間だった。
第五艦隊から、通信が来る。
「海上に、攻撃機を含む大規模部隊出現! 東京基地を、海上を迂回して直接狙っている模様!」
「迎撃は可能か」
「数が多すぎる! 東京基地への浸透は、おそらく避けられない!」
そして、此方でも、敵が動く。
真正面にじっとしていた敵の大軍勢が、一斉に。今までは遊びだと言わんばかりに、動き始めたのである。
凄まじい圧力。
無言のまま後退。
東京基地に飛び込むと、正面ゲートを閉じる。全火力で敵を迎撃開始するが、支えるだけでやっとだ。
後方では、第五艦隊を突破した敵の高空戦力が、基地に迫っている。
あの大規模航空部隊に基地の上空を抑えられたら。
それだけではない。
戦闘中も、敵の観察を続けてくれているスカウトから入電。此方に移動中の輸送船が、何かを投下しているというのである。
「あれは、女王蟻です! 蜘蛛王もいます!」
なるほど、読めた。
前面正面攻撃と、背後からの攻撃。これらはおそらく、牽制のためのものにすぎない。これらでストームチームの動きを止め、本命の主力部隊が、これから来るというわけだ。そして第五艦隊は、敵の高空戦力の相手で手一杯。
雑兵の大軍勢で足を止め。
疲弊したところに、大物を投入して、一瞬に此方の息の根を止めるつもりだ。手数で圧倒的に勝っているから、出来る事。
そして、出来る事を、敵も躊躇わないという事だ。
味方の損害が、増していく。
外壁の負荷も。
セントリーガンが、次々と凶蟲が放った糸に吹っ飛ばされる。上空から来るドラゴンの火球が、味方を直撃。アーマーを貫かれた味方兵士が、火だるまになって、外壁の内側に墜ちていった。
グレネード弾をばらまきながら、涼川が叫ぶ。
楽しいなあ。
敵の群れをハーキュリーで貫きながら、日高中尉が喜ぶ。
嬉しいなあ。
二人は、もはや人間の業そのもの。
前線まで、敵のシールドベアラーが来た。一方此方のシールド強化装備であるガードポストは、そろそろ限界が近い。
外壁に、敵がとりつく。
とりついた端から落としていくが、敵は空にもいる。壁を垂直に上がってくる黒蟻に、全力で対応は出来ない。
これは、まずい。
壁の上での白兵戦になったら、終わりだ。数の差が出て、瞬時に蹂躙されてしまう。蜂が、無数の針を振らせてくる。ドラゴンが、爆撃のような火球をばらまいてくる。ストームチームや砲兵は対応できるが。ドラゴンは特に、生半可な兵士では、どうしようもない。
外壁の上に、何かが上がってくる。
これは。
ベガルタバスターロードか。
ファイアロードもいる。
ついに、完成した第一陣を、本部が繰り出したことになる。圧倒的な火力を振るい、正面にいる敵を薙ぎ払う最新鋭ベガルタ。
幾らかだけ、敵の勢いが鈍る。
負けてはいられないと、ベガルタAXも、もてる火力を総動員し、敵を片端から打ち抜く。ほんのわずかだけ、正面からの圧力が弱まる。
私は黙々と、今までずっと大物だけを打ち抜いてきたが。
好機だ。
ガトリングに切り替え、群がる敵を制圧に取りかかった。
敵が多大な被害にもかかわらず、押し寄せてくる。後方からの高空戦力が、迫っているから。
それだけではない。
敵の前線の後ろには、女王や王を含む、本命の戦力が控えているからだ。
勿論基地からもテンペストを撃てるだけ撃っているが、それでも抑えきれる戦力ではない。
わずかに持ち直した戦況を。
更に敵がひっくり返す。
とうとう、第五艦隊の対空砲火を抜けて、航空部隊が基地上空へと来たのである。攻撃機を中心とした部隊が、基地の対空砲火をまず踏みつぶしに掛かる。外壁で必死の抵抗を続けている部隊にも、上空から襲いかかる。
見る間に、味方の負荷が上昇していくのが分かった。
「ありったけの火力を動員しろ!」
日高司令が叫ぶが、そんな事はとうにやっている。
正面からの敵も、勢いを増す。
圧力が、強まる。
要塞砲の一つが爆裂。沈黙した。発射の瞬間、砲身に蜂が飛び込んだらしい。おそらく狙っての自爆だろう。
セントリーガンも、次々潰されていく。
針に貫かれ、火だるまにされ。味方の兵士も、見る間に目減りしていくのが分かった。
当然、ストームチームへの損害も増す。
最初に敵の砲火に掛かったのは、エミリーだった。
敵にミラージュを連射して、高空部隊に対処していたから、狙われたのかも知れない。気がつくと、攻撃機が神風を仕掛けてきたのだ。
攻撃機は至近でエミリーが爆破したが、吹っ飛ばされる。
守る暇も無かった。
キャリバンに詰め込まれ、病院に送られるエミリーだが。そのキャリバンも既に満身創痍だ。
基地の地上部分は放棄して、地下を使って抵抗するしかないかも知れない。
いや、それはまずい。
そうなると、おそらくこの基地の戦略的価値そのものが、著しく減殺する。
「ディロイの群れ、接近! 多数です!」
スカウトが声を張り上げる。
ディロイだけではない。
前衛を赤蟻の群れが固め、その後ろにはヘクトル。そして更に後ろに、本命の女王蟻と蜘蛛王。
更には、蜂の女王までいるではないか。
敵の主戦力が到着したのだ。
私はガトリングを捨てると、スピアを換装する。
「姉貴、行く気か」
「ああ。 援護を頼むぞ」
やるしかない。
女王と蜘蛛王。更に蜂の女王を、私が単独で潰す。ディロイとヘクトルは、弟たちに任せる。
誰かが、蜂に背中から串刺しにされた。
黒沢だ。
まだ生きているが、すぐに病院に運ばれる。イプシロンももう、集中攻撃を浴びて、長くは保たない。
せっかく来てくれたベガルタ部隊も、いつまで持つ事か。
躊躇している時間は、ない。
「俺が、背中を守ります!」
矢島が叫ぶ。
頷くと私は、ハンマーを振りかざして、敵の群れの中へと、外壁から飛び降りていた。
姉貴が敵陣に飛び込んで行く。
私は。ストームリーダーとしての責務を果たさなければならない。可能な限り姉貴の負担を減らし、最悪の場合は救援に出向くのだ。
姉貴を死なせるわけには行かない。
誰だって死なせるわけには行かないが。これは唯一の肉親に対する偽りのない感情だ。
ジョンソンが、舌打ちしながら零式レーザーを放り捨てる。
愛用して来た銃だが。流石に無茶な使用が祟って、ついに壊れたらしい。代わりにフュージョンブラスターを構え、手近な敵をまとめて薙ぎ払っていく。
秀爺が、通信を直接入れてきた。
「蜘蛛王だけは儂が何とかする」
「イプシロンは限界に見えますが、大丈夫ですか」
「任せろ」
ならば、蜘蛛王は良いだろう。
秀爺がああいったのだ。絶対にどうにかしてくれる。
更に、チャージを終えた三川が叫ぶ。
「グングニル、行けます!」
「よし、狙うは蜂の女王だ! 当てろ!」
「イエッサ!」
三川が、一瞬の照準の後。
蜂の女王に、グングニルを叩き込んだ。
収束したエネルギービームが、女王蜂の装甲を直撃。おそらくクローンかなにかで培養された個体だろうが、強烈な負荷に悲鳴を上げながら身をよじる。私はそれに合わせて、ライサンダーを連射。
姉貴の負担を、少しでも減らさなければならないのだ。
ジョンソンが、フュージョンブラスターを捨て、次のに持ち変える。
涼川と原田が片っ端から巨大生物を薙ぎ払ってくれているが、それでも手数が足りないのだ。
姉貴が、女王蟻の側にまで到着。
ハンマーで巨大生物を蹴散らしながらだが、長くは保たないだろう。女王蟻も、腹部を持ち上げて、酸をばらまきはじめている。その量は圧倒的で、まるで噴水か何かのようだ。
ジョンソンが今度はノヴァバスターを持ち出し、邪魔をしようとしたディロイに超高出力ビームを叩き込む。動きを止めたディロイに、ナナコがライサンダーの一撃。ノヴァバスターで破られた装甲部分を、見事にピンホールショット。爆破沈黙させる。
日高中尉は、前よりは少し周囲を見るようになって。味方を攻撃しようとした蜂を、ハーキュリーで片端から撃ちおとしてくれている。
姉貴が、女王蟻と戦いはじめる。
ハンマーを叩き込み、ディスラプターで敵を焼く。
だが、女王も明らかに性能が強化されている。
姉貴の猛攻に、怯まず反撃。
死闘の周囲は、誰もいないかのように、むしろ静かでさえあった。矢島が、姉貴に近づけないように、最後の壁になっているからだ。
イプシロンが、隣で爆発。
ついに負荷に耐えきれなくなったのだ。秀爺が、イプシロンから出てきた。ほのかに肩を貸している。
「やったぞ」
見ると。
蜘蛛王が頭を打ち抜かれ、地面に倒れ伏していた。
イプシロンを失いながらも、やってくれたのだ。
すぐに次を用意して貰う。ついでに負傷も回復した方が良いだろう。秀爺には、一旦下がって貰う。
私は、ライサンダーで。
めぼしい敵を、片端から打ち抜く。
今、倒すべきは女王蜂。かなり弱っているが、撃ち出してくる針の凄まじさは、姉貴でもまともにくらったらどうにもならない。
味方部隊も、敵の猛攻を必死に凌ぐのが精一杯。
此処で敵の大物をどうにか出来なければ、負ける。
ナナコが、側に駆け寄ってきた。
ライサンダーを構える。
今のこの子なら、出来るかも知れない。
「先に女王蜂を」
「イエッサ!」
多くを語らずとも、意図は通じる。
狙うは一瞬。
場所は指定するまでもない。先ほど、グングニルが直撃した場所。ネグリングが焼き付きそうだと、池口が悲鳴を上げているが、頑張ってもう少し支えろとだけ伝える。谷山は彼方此方にセントリーガンを配置し、電磁プリズンを設置し、ガードポストを動かすので精一杯。
此方にまで、手を回す余裕が無い。
ならば、私とナナコでやるしかない。
ナナコが、ライサンダーで、女王蜂を撃つ。
その一瞬後。
私も、引き金を引いた。
完全なピンホールショット。グングニルがダメージを与えた女王蜂の装甲に、ナナコの一撃が入る。
相手が飛んでいる状態にもかかわらず、である。
狙いも完璧。
そして完璧だったが故に。
その弾丸がはじけきる前に。
私の弾丸が、後ろから、更にそれを後押しした。
アーマーが、瞬時に抜けた。
女王蜂が、凄まじい悲鳴を上げた。腹部が、大きく欠損している。文字通り今のライサンダー二連射で、消し飛んだからだ。
一人でライサンダー二丁では、こうはいかない。
他の兵士達が、女王蜂のアーマーが潰れた事に気付いたのだろう。狙撃を実施。もはや普通の狙撃銃でも防げない。女王蜂の体中が穴だらけになり、鮮血をばらまきながら、死の体現者は墜ちていった。
そして時をおかずして。
姉貴も、ついに女王蟻の頭を、粉砕していた。
敵が主力を潰されて、流石に下がりはじめる。呼吸を整えながら、ライサンダーを連射。めぼしい敵を潰しておく。
矢島が、姉貴に肩を貸して、戻ってきた。
敵の海を渡り。
女王蟻まで倒したのだ。
無事で済む筈がない。
敵の高空部隊も、一度後退。
しかし、東京基地は既に陥落寸前。此処で無理をしなくても、後は押していくだけで大丈夫だと判断したのだろう。
ベガルタAXが、全体から酷い煙を上げている。
降りてきた筅が、辺りの惨状を見て、息を呑んだようだった。
ナナコにしてからも、背中から派手に出血している。どうやら、蜂の針を自力で引き抜いて、そのまま狙撃を行ったらしい。
前のめりに倒れそうになるナナコを、私は支えた。ナナコはここのところ、無理ばかりする。姉貴の血が入った強化クローンだから、だろうか。
「次の攻撃に備えろ! 負傷者を病院に!」
さて、敵はどれだけ時間をくれるか。
既に、敵と味方の損害比率は逆転している。敵は今までに一万以上を失っているが、それでもまだまだ意気軒昂。
それに比べて此方は、ストームチームの戦力さえ半減。
ビークル類も、壊滅状態だ。
第五艦隊も、先ほどのドラゴンとの戦いで、大きな被害を出したという。既に、東京基地は満身創痍。
大物を二匹や三匹潰したくらいでは。
戦況は、有利になどならないのだ。
「ストームリーダー」
顔を上げると、其処には原田がいた。
激戦の間に被ったらしい煤で、顔が真っ黒だ。
「少しお休みください。 此処は俺がやっておきます」
「お前こそ休め。 涼川と一緒に戦って、大変だっただろう」
「いえ、俺は……まだ余裕がありますから」
部下に気を遣われてはおしまいか。
頭を振って、カプセルに向かう。少しでも休む事で、次の戦いを、わずかなりでも勝利に近づけなければならないのだから。