地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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巨大生物、機械兵器、全て外は敵の海です。

少しでもそれを削り取る戦いが続きます。


2、血がにじむ日

カプセルから出る。

 

女王蟻を倒したところまでは覚えている。その後は意識がもうろうとしていた。確か矢島に群がっていた敵を蹴散らして。それから、おぼつかない足取りで、弟の所まで戻ったような気がする。

 

多分、その後、倒れたのだ。

 

周りを見回す。

 

病院だ。周囲は地獄絵図。気が触れてしまったらしい若い戦士を、看護師達が引っ張っていくのが見えた。

 

「アハハハハ! 糸、糸に巻かれて死ぬんだよォ! 空見ろ! 何て性能の敵だ! あんなのに勝てる訳がない! アハハハハ、アハハハハハハハ!」

 

女性戦士は、まだ戦っているつもりなのだろう。もう周囲を、正確には認識できていないようだった。

 

少し、体が重い。

 

まだ回復しきっていないか。だが、それでも、状況は確認しなければならないだろう。

 

戦況は。

 

敵は一度後退。

 

主力を失ったからか。ある程度、此方の戦力を削ったからか。分からないけれど、既に損害比率は逆転している。敵は一万二千程度を今までの戦闘で失ったようだが、此方は死者だけでも一割半を超えている状況だ。まともに戦える人数は、東京基地が包囲される前の、二割という所だろうか。

 

他のメンバーは。

 

エミリーが重傷。現在、急速医療にて回復中。ナナコや黒沢も。主に、蜂の針による攻撃の結果だった。

 

香坂夫妻も負傷している。だが二人は、そこまで酷い状態ではない。

 

負傷者の多くは、蜂によるもの。

 

そういえば、敵の主力は蜂だった。

 

ドラゴンもいたが、かなり少なかった気がする。まだ温存しているとみて良いのだろう。

 

弟から通信が来る。

 

「姉貴、今起きたか」

 

「ああ、其方は」

 

「俺は負傷もしなかったし、少し休んだから平気だ」

 

話ながら、時間を確認。

 

戦いから、丸一日経っている。その間、敵は待ってくれたという事か。より多くの戦闘経験を、絞るためだろう。

 

まだまだ、戦闘経験を搾り取れる。

 

そのためなら、多少自分たちが死のうが、とうでもいい。

 

奴らの意識には触れた。

 

連中は本気で考えている。この戦いで進化すれば神と一つになると。ならば、恐れる事は、何も無いのだろう。

 

地球でも似た状態で、狂信者達が命を捨てた戦いをした。地球上の何処でも、繰り返されてきた事だ。

 

そして地球では宗教に過ぎなかったが。

 

巨大生物の場合、本当に実在する神に極めて近しい存在と。本当に一体化することが出来ると言う点でも。

 

その狂気と重みは、段違いだった。

 

弟と合流。

 

皆の負傷が酷いと、弟は嘆く。基本弟は私と自分を呼ぶが。気分が高ぶったときは、俺と言う。

 

「俺は結局、運が良いだけなのかも知れない。 ナナコは負傷しながらも、動く相手に見事なピンホールショットを決めて見せた。 あれは、明らかに歴戦で鍛え抜かれて出来た事だ。 俺はどうだ。 元々の性能で押しているだけではないか。 それに精神も弱い。 まだ俺は悩んでいる」

 

「お前が指示した通りにナナコは動いただけだ。 お前が世界最強の戦士であることは、私が保証する」

 

「……そうか」

 

「ああ、そうだ」

 

地下病院を出て、呻く。

 

辺りは修復も進んでいない。負傷者を救助し、ビークルを工廠に運び込むだけで、精一杯だったという事だ。

 

しかも此方には、増援の宛てなどないのに。

 

敵はそれこそ、まだまだいくらでも援軍を呼び集めることが出来る。それどころか、本命のブレインとアースイーターさえ、まだ姿を見せていないのである。

 

外壁に上がる。

 

此方も酷い有様だ。辺りには血痕がかなり残っているし、巨大生物の死体も片付けきれていない。

 

外を確認。

 

そこそこの距離を取って、巨大生物共が布陣している。

 

数は少しは減ったようだ。だが、まだまだ一瞬でこの基地を飲み込む程度はいる。外壁の上に上がってきた者がいる。

 

三島だ。

 

巨大生物を見ても全く怖れていない様子だけは流石だ。此奴も、涼川や日高中尉と別の方向ではあるが、頭のネジが外れてしまった人間の一人だから、不思議では無いかも知れないが。

 

「どう、元気にしている?」

 

「馬鹿な事を聞くな。 調子が良いわけがない」

 

私が毒づくと、弟が咳払いした。本題に入れと促しているのだ。

 

ノートゥングと、通信が不安定になってきていると、三島は言った。

 

そういえば、EDFの切り札の一つとして活躍してきたノートゥングは、衛星軌道上でマザーシップとの追いかけっこをしながら、各地での戦闘に戦略爆撃で支援をしてくれていた。

 

通信が不安定になっていると言うことは。

 

「総司令部が、いよいよ危ないという事か」

 

「地下に場所を移してゲリラ戦をしているらしいのだけれど、それ以上は何も分かっていないのですもの。 ドラゴンや他の巨大生物が、通信阻害する物質を吐くようになっているのは貴方たちも知っているでしょう。 それによるものか、或いは総司令部が潰されたのか、どちらかは分からないけれど」

 

現時点で、通信が出来る基地は、ついにゼロになったとも、三島は言う。

 

九州の福岡基地も、ついに通信が出来なくなったそうだ。

 

潰されたのか、通信阻害物質によるものか。或いは、此処と九州の間にあるアースイーターによる通信妨害か。

 

いずれにしても、もはや九州は絶望的。

 

既に、東京基地は、完全に孤立したことになる。

 

敵はわざわざ距離を取って、包囲を維持しているが。それは、東京基地から可能な限り、戦闘経験を搾り取るため。今の三島の話で、その仮説が裏付けられた。現状を考える限り、巨大生物共は、東京基地を瞬時に蹂躙できるのだから。

 

「味方の状態は」

 

「過労死寸前で、工廠のスタッフが頑張ってくれているけれど、ビークル類は修復がやっとねえ。 海軍もかなり厳しい状況だし、後一回、総攻撃を支えられたら御の字という所かしら」

 

「病院は」

 

「其方は専門外だから知らないけれど、復帰出来る兵士はどれほどいるのかしらね。 貴方たちの所のメンバーは、急速医療で意地でも復帰させるって話らしいけれど」

 

此処はヴァルハラか。

 

北欧神話の天国。其処では死ぬことが無い戦士達が、世界の終末の日まで、延々と殺し合いを行うと言う。

 

EDFは、いや人類は、前大戦で医療技術を大幅に進歩させた。

 

今では、死んでさえいなければ、大概の怪我は治す事が出来る。

 

つまりEDFの戦士達は。

 

死ぬ事さえ、滅多な事では許されないと言うことでは無いか。

 

北欧神話のヴァルハラは、この光景を何らかの形で見た過去の人間が、書き残したものではないのか。

 

そんな妄想さえ、一瞬抱いてしまった。

 

逃げ出したいと思った事は、正直な所、何度かある。それでも、私はその心をねじ伏せてきた。

 

だが、今は。

 

もはや、天を仰ぐしかない。

 

「なあ、三島」

 

「どうしたの、はじめちゃん」

 

「何か勝てる方法は思いつくか」

 

「ブレインを叩くしかないでしょうね。 それにはどうしてでも、次の戦いには耐えて貰わないといけないわ」

 

欧州を通信途絶に追い込んだブレインである。

 

もし次の獲物を見つけるとしたら、東京基地以外にない。

 

三島の言うとおりだ。

 

まだ、休む事は。許されない。

 

三島が外壁を降りていくと、弟が嘆息する。

 

「姉貴、大丈夫か」

 

「お前こそ。 逃げ出したいと思ったのでは無いのか」

 

「そんな事、何度も思ったさ。 だが、他の人間も、市民も、見捨てるわけにはいかないだろう。 おかしな話だ。 私も姉貴も、人間ではないというのにな」

 

「幼い頃の洗脳の結果か、それとも」

 

唯一、私と弟を、人間扱いしてくれた、あの人の影響か。

 

首を振って雑念を追い払うと、カプセルで休むことにする。まだ、巨大生物は仕掛けてこないだろう。

 

仕掛けてくるまでは、休んでおいた方が良い。外壁を私が降りはじめると、弟もついてきた。

 

 

 

どうにか、ストームチームの戦備は整った。

 

負傷者も急速医療で無理矢理治して、前線に出られるようにはなったが。全員が、かなり寿命を縮めたはずだ。

 

無理をすれば、当然それに応じた副作用がある。

 

今更、声高に言うまでも無い話である。

 

「敵の状況は」

 

「援軍を更に呼び集めている模様。 特に大形兵器が増えているようです」

 

戦術士官は、弟の質問に、淡々と答える。

 

巨大生物だけなら、次の攻撃も支えられるかも知れないが。大形兵器は、どうにか削らないと厳しいか。

 

温存していた試作型プロテウスは、まだ出せるようにはならないという。

 

敵がいつまで待ってくれるか、だが。

 

しかし、増援をかき集めているとなると、そう長くは待ってくれないだろう。ある程度不十分な状況でも、やるしかない。

 

弟が、会議から戻ってきた。

 

もう会議をしても仕方がないという事か。ここ数日は、殆ど行われなかった会議だ。規模も縮小されていて、弟と日高司令、デスピナの艦長くらいしか参加しなかった。ジョンソンは参加したさそうにしていたが。弟に休めと言われて、カプセルでしぶしぶ休んでいた。

 

彼にしても、連戦での疲弊が、溜まっている状態だったのだ。

 

それに総攻撃は仕掛けてきていないといっても、連日小競り合いは起きている。その度にストームチームはかり出されていて、数日小康状態が続いていても、じっくり休むと言うわけにはいかなかった。

 

弟が、皆を見回す。

 

「また、地下を使って、奇襲を仕掛ける」

 

「大物狙いか」

 

「そうだ。 後は、この地点を叩く」

 

弟が指示した地点。

 

完全に焼け野原になった一角に、ドラゴンが張り付いている。確かに、ドラゴンの群れを叩いて削り取れば、敵の戦力をかなり目減りさせることが出来る。

 

巨大生物も増援を加えて、ここ数日で再び十万近くにまでふくれあがっているようだし、ストームチームで削らなければ、陥落は目前だ。

 

三島はああ言っていたが。

 

多分次の攻撃にも、東京基地は耐え抜けないだろう。

 

ドラゴンは何カ所かに分散しているが、その一角。千数百を超える数が休んでいる場所を狙う。

 

そこにいるドラゴンだけでも叩ければ。

 

随分と、基地への圧力は減らせるはずだ。

 

すぐに移動開始。

 

東京基地の地下から、シェルターを通って、戦地に。幸い、前回の戦いで、逆撃してきた敵が、シェルターになだれ込む事態は避けられた。今もシェルターの人々は、不安に身を縮めているが。危険にさらして申し訳ないとは思う。

 

しかし、東京の地下が丸ごとシェルターになっている現状。

 

そして、人類の存亡が掛かっている現在。

 

彼らにも、ある程度の危険を、肩代わりして貰わなければならないのだ。

 

移動していくストームチームを見て、EDFの名を連呼する民もいるけれど。明らかに、不満げな視線をぶつけてくる人間もいる。

 

グレイプに乗った柊が、それを撮影しているのを見て、私は呆れた。

 

「もういいんだぞ。 届ける相手だっていないだろう」

 

「いいえ、それは違うわ」

 

「どういうことだ」

 

「この戦いは、きっと勝てる。 貴方たちがいる限り。 私は報道に携わる人間として、可能な限り中立的にものを見ようとは考えているけれど。 それでも、これだけは貴方たちをずっと見てきた私の嘘偽りない感想よ」

 

ああそうかい。

 

思わず、心中で毒づいていた。

 

柊がそんな風に考えていたとは思わなかった。此奴のせいでチーム内が分裂の危機を迎えたことさえあったのに。

 

シェルターを抜け、無人地帯に入る。後ろで隔壁が閉まる音。

 

しばらく、放棄された地下鉄を進む。この辺りも監視システムと、いざというときは爆破できるように仕掛けられた爆弾の巣だ。

 

そして、それらの間を抜けて。

 

何重にも隔壁で封鎖された、地下鉄の駅に出た。

 

位置を確認。

 

「フュージョンブラスター装備」

 

事前にブリーフィングで決めているが。それでも、弟が最終確認を兼ねて、全員に言う。

 

今回の攻撃は、速さの勝負だ。

 

ドラゴンを飛び立たせてはならない。一瞬で敵陣を蹂躙し、それで勝負を決めてしまうのである。

 

攻撃する角度についても、全員が決めている。

 

ドラゴンを飛ばせたら終わりなのだから、当然だろう。

 

私と矢島は、ディスラプターを装備。

 

既にフェンサースーツは、全員が大戦開始時の私くらいは使えるように、改良が加えられているけれど。

 

それも、もう遅いかも知れない。

 

矢島はそれ以上に使いこなせる。多分現時点では、私の次に手慣れたフェンサースーツ使いだ。

 

訛りが抜けない木訥な男も。

 

歴戦で鍛え抜かれて、此処まで成長したという事である。

 

今では、助けられることさえある。

 

「時計を合わせろ」

 

緊張の一瞬。

 

谷山が、入り口をパージする準備を終えた。

 

そして、辺りにも、崩落させるための爆発物が仕掛けられている。つまり今回は、此処からは戻らない。

 

別地点を経由して、東京基地に戻るのだ。

 

敵を出来るだけ混乱させるための措置である。

 

勿論ただの瓦礫にしては、其処から巨大生物に侵入される。後続のスカウトが、セメント弾で崩落した跡地を内側から固めるのである。

 

弟が、攻撃開始を指示。

 

入り口をパージ。

 

引火して、周囲全てが吹き飛ぶのでは無いかと、私は一瞬だけ、ひやりとした。だが、谷山がそんなドジを踏むはずがない。

 

全員一丸となって、飛び出す。

 

煙が晴れるのを、待ってはいられない。

 

レーダーが頼りだ。

 

フュージョンブラスターで、周囲のドラゴンをまとめて焼き払う。使い切ったフュージョンブラスターは、そのままグレイプの中に放り投げる。

 

跳び上がろうとするドラゴンが見えたが、そのまま薙ぎ払う。

 

私と矢島のディスラプターも、極限まで強化されている。ドラゴンを殲滅するには、充分だった。

 

一瞬の勝負。

 

だが、やはり完全には上手く行かない。十を超えるドラゴンが離脱に成功。しかし、跳び上がったドラゴンを、即座にライサンダーに切り替えた秀爺が叩き落とす。黒沢とナナコ、弟もそれに続く。

 

少しひやりとさせられたが、これで第一波は成功。

 

次だ。

 

ギガンテスに飛び乗った谷山が、主砲を乱射しながら進み始める。敵の一角を強行突破して、次の地点に向かうのだ。当然、敵は今の攻撃を察知して、総攻撃を仕掛けてくる。敵が殺到してくる前に、敵の包囲を崩して、抜ける。

 

殿軍は私。

 

突破支援は矢島に任せた。

 

主力のベガルタAXは真ん中に。あらゆる状況に対応し、主力となって敵を叩き潰す。

 

弟が、AF100の圧倒的火力を駆使して、周囲の敵を薙ぎ払う。涼川と原田が、大火力火器で、敵をまとめて爆砕する。

 

グレイプの上に陣取ったエミリーが、ミラージュで四方の敵を片っ端から貫く。

 

そして三川はグングニルを装備。身近にいた敵を、確実に貫く。ディロイが一機、三川に打ち抜かれて、瞬時に粉砕される。

 

此処まで腕を上げていたか。

 

ウィングダイバーのプラズマジェネレーターも強化されて、グングニルの消耗にも耐え抜けるようになった。連続使用は流石に厳しいが、少し時間をおけば大丈夫だ。敵の群れを強引に突破しながら進む。揉み込むように集まってくる敵を、グレネードの雨が迎え撃つ。

 

勿論、反撃も凄まじい。

 

見る間にグレイプもギガンテスも、アーマーが消耗していく。

 

ネグリングが確実にミサイルをばらまき、敵を削る。

 

ヘクトル。至近まで、いつのまにか迫っていた。私がバトルキャノンで吹き飛ばす。だが、影にもう一機。

 

ガトリングを持ち上げているのが見えた。既に発射可能な態勢である。

 

しかし、此処はナナコが即応。

 

ライサンダーの弾を、ヘクトルに叩き込む。

 

のけぞったヘクトルを、私がバトルキャノンでとどめ。しかし、敵の包囲は、見る間に苛烈になっている。

 

酸の雨を浴びるようだ。

 

「目標地点まで、後一キロ!」

 

「余裕だな!」

 

弟の軽口も、精彩を欠く。

 

何しろ現地に到着しても、まず入り口をパージしなければならない。スカウトが先にシェルターを通って準備をしてくれている予定だが、それも上手く行くかどうか。

 

空。

 

蜂とドラゴンが姿を見せる。

 

しかし、此処で予定通りに、東京基地が対空クラスター弾で支援開始。蜂の群れが、横殴りの対空クラスター弾を浴びて、次々爆散。追いすがってくるドラゴンの群れは、私が火球をどうにか盾で防ぎ。エミリーがミラージュで足を止め。必死の反撃で、叩き落としていく。

 

ベガルタの攻撃も効果的だ。垂直発射されるミサイルの群れが、ドラゴンの群れを容赦なく叩き落とす。

 

しかし、数が多すぎる。

 

火球が次々にビークルに着弾。

 

キャリバンも、グレイプも、限界が近い。ベガルタが何度か庇う。しかし、ベガルタの装甲だって、無限ではないのだ。

 

グレイプの速射砲が吹き飛ぶ。

 

キャリバンに積んでいたセントリーガンが、全て沈黙した。

 

イプシロンが咆哮し、立ちはだかろうとしたヘクトルを吹き飛ばす。ギガンテスがヘクトルの残骸を押しのけながら走るが、その装甲も、そろそろ限界近いかも知れない。前を塞ごうとする敵は、矢島がハンマーで蹴散らしてくれているが。矢島だって、いつまでもつか。

 

舌打ちして、盾を放り捨てる。

 

限界に達したのだ。

 

ブースターで加速しながら、グレイプの側に。サイドドアを開けて貰い、盾を受け取る。盾を装備しながら、振り返り、ディスラプターを起動。追いついてきていた巨大生物共を、薙ぎ払う。

 

しかし、敵は薙ぎ払われても叩き潰されても、次々に姿を見せる。

 

ちくりと、頭に痛み。

 

彼らの歓喜が伝わってくるのだ。

 

戦ってくれる。

 

戦いの経験だ。

 

俺たちはこれで、更に進化できる。そして神へと近づける。神と一つになった時、我々は宇宙を統べる存在の、肉となる。

 

栄光の種族の、さらなる繁栄の、礎となる事が出来るのだ。

 

狂信者と、彼らを笑い飛ばせるだろうか。いや、人間の宗教よりも、この方がずっと実利的で。

 

それが故に恐ろしい。

 

池口が、通信を入れてくる。

 

「ミサイル使い切りました! 転送装置による補給まで、少し掛かります!」

 

「ネグリングはオート走行に移行。 タンクデサンドし、攻撃続行」

 

「イエッサ!」

 

池口がネグリングの上に這い上がると、エメロードでの支援を開始。

 

最新型エメロードの火力は圧倒的で、誘導式小型ミサイルの群れが次々に敵を打ち砕いていく。

 

だが、焼け石に水。

 

程なく、筅からも同様の通信。此方はもうすぐ弾切れだが、絶望的な状態に代わりは無い。

 

最強のベガルタAXも、弾切れには勝てない。しかもこの機体は、様々なピーキーな仕様を盛り込んだ結果、転送装置による補給は出来なくなっているのだ。

 

近づく敵をコンバットバーナーで焼き払い、リボルバーカノンで周囲に群がる敵を吹き飛ばしながらも。

 

ベガルタの疲弊は、もう限界が近いと分かる。

 

あと少しだ。

 

だが、ディロイが二機、追いすがってくる。バトルキャノンを浴びせるが、装甲を強化しているタイプだ。一撃では沈まない。

 

プラズマ砲が、容赦なく撃ち放たれる。

 

グレイプが、中破。

 

側面ドアが壊れ、吹っ飛んだ。

 

顔を出した柊が、追いすがってくるディロイを撮影している。此奴は、何処まで命知らずなのか。

 

一機目は、その直後、私が打ち抜く。

 

だが、二機目は。

 

秀爺のイプシロンからレールガンの弾を浴びて。それでもなお壊れず、プラズマ弾を放ってきた。

 

イプシロンの砲塔が大破。

 

中途から折れて、吹き飛んだ。

 

まだ車体は動いているが。これではもう戦えない。

 

「秀爺、無事か」

 

弟の前に、私が叫んでいた。

 

車体の上にいる黒沢は、無事だ。ハーキュリーで、追いすがってくる蜂を叩き落としている。

 

香坂夫妻は、返事がない。

 

不安が、胸をよぎる。

 

だが、間もなく、通信が帰ってきた。

 

「無事だ。 ただ、アーマーが破られた。 ほのかも怪我をした」

 

「もう少しです。 頑張ってください」

 

「ああ、何とかする」

 

通信の後、気付く。

 

オンリー回線でつないでいなかった。

 

日高中尉が、くすくす笑っているのが分かった。

 

「お爺さんを心配する、お孫さんの気分ですか?」

 

「うるさい」

 

「いいなあ。 うちは親があんなですから」

 

「日高司令は、あれはあれで頑張っている。 お前もいずれ、分かるようになるさ」

 

現地、到着。

 

スカウトが手を振っているのが見えた。どうやらパージは成功したらしい。

 

だが、巨大生物が穴を囲んで、苛烈な攻撃を仕掛けている。スカウトは元々装備も劣悪だ。長くは保たない。

 

ギガンテスが、敵中に突っ込む。主砲をゼロ距離で浴びせて、敵の群れを蹴散らすが。同時に反撃を喰らって、擱座。ただ、横に逸れて、退路を塞がなかった辺りは、流石谷山だ。

 

谷山が飛び出し、壊れかけのイプシロンに飛び乗る。

 

矢島が退路を必死に確保しているのが見える。盾をかざして巨大生物共の攻撃を凌いでくれている。

 

イプシロンが、穴に飛び込む。

 

グレイプも。

 

ネグリングがそれに続き、ベガルタが最後尾で来る。既に破損寸前まで追い込まれているが、AXはまだ壊すわけにはいかない。ドラゴンが放ってきた火球を、私が盾ではじき返す。

 

吹っ飛ばされそうになったが、踏みとどまる。

 

私のアーマーも、限界近い。

 

「急いで!」

 

スカウトチームが叫んでいる。バックで移動しながら、ベガルタが穴に。矢島も穴に入った。

 

私もそれに続く。だが、穴に入った瞬間。

 

飛び込んできた赤蟻に噛まれた。

 

しまった。

 

そう思った時には、もう遅い。

 

一瞬のことだ。ナナコが冷静にAF100で赤蟻を蜂の巣にして、私は吹っ飛ばされ、地面に叩き付ける。

 

だが、この隙に。

 

敵が穴になだれ込んでくる。

 

爆破の準備は出来ていても、一度は敵を押さえ込まないといけないのだ。そうしないと、味方まで爆破に巻き込んでしまう。

 

ナナコが飛び出すが、襟首を掴んで引き戻す。

 

死にたがっている節があるナナコだが。

 

死なせるわけにはいかない。

 

その時。

 

機転を利かせたのは、池口だった。

 

壊れかけのネグリングに、谷山から受け取っていたらしい爆弾を仕掛けると、オートで敵に突進させたのである。

 

流石に面食らった敵の真ん中で、ネグリングが爆発。

 

周囲の敵を、瞬時に焼き払った。

 

射撃を集中して、追いついてきていた敵を掃討。至近まで迫られていたが、どうにか片付ける事には成功。

 

押し返して、それから下がる。

 

入り口部分を、スカウトが爆破。殆ど、首の皮一枚だった。

 

弟が点呼。

 

全員いる。

 

だが、全員負傷してもいた。

 

辺りを、スカウトがセメント弾で固めはじめる。崩落したからと言って、油断は出来ないのだ。

 

ベガルタは何とか自力歩行が出来るが、グレイプは壊れる寸前。イプシロンもかなり状態が厳しい。

 

キャリバンは、何とかぎりぎりで耐え抜いていた。

 

どうにか動ける弟と私はナナコと一緒に、スカウトがここまで持ってきてくれたジープに乗る。

 

他のメンバーは、全員キャリバンに。

 

戻る途中に、応急処置を済ませて貰う。

 

私は、赤蟻に噛まれたけれど。

 

アーマーはぎりぎり保った。怪我はない。

 

弟が、オンリー回線で、通信を入れてきた。

 

「最後に少しひやりとしたが、どうにか上手く行ったな」

 

「ああ。 すまなかった。 私がドジを踏むとはな」

 

「何、あの程度は仕方が無い。 本部から通信があったが、敵の大半を此方が引きつけたおかげで、かなりの数を遠距離砲撃で削る事が出来たようだ。 一旦戻って、東京基地の戦力と合流するぞ」

 

これで、どうにか一息をつく事が出来るか。

 

行き同様、シェルターを通って東京基地に戻る。

 

戻った時には、東京基地でも、状況が一段落していた。ありったけのテンペストを敵に叩き込み、相当数の損害を出させることに成功。高空戦力も攻撃してきたが、此方は温存していた対空火器で、迎撃に成功した。

 

先の戦いで陥落寸前まで追い込まれたが。

 

敵の損害は今回の戦いで二万に迫り、それに対して、此方はビークルが少々。勿論弾薬類の消耗があるが、今回は完勝と言って良いだろう。

 

持ち直したのだ。

 

だが、敵はまだ主力さえ姿を見せていない。

 

喜ぶのは、あまりにも早すぎると言えた。

 

それに、二万を削ったと言っても、敵の数はまだまだ八万。これが空前の戦力であり、東京基地を包囲していることに代わりは無いのである。

 

基地に戻った私達を、日高司令が出迎える。

 

だが、素直には、喜べなかった。

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