地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
ついにブレインまでもが迫ります。
全てを絞り取るために。
東京基地に、どうにか辿り着いた偵察機。
勿論無人機だが、それが恐ろしいものを撮影していた。
中国地区に出ていた無人機が持ち帰った映像には、見間違えるはずもない代物がはっきり残っていた。
ブレイン。
しかも、護衛として、アルゴを連れている。周囲には、攻撃機が多数。しかも移動経路は、まっすぐ東京基地に向けて、である。
ついに来たのだ。
中途での迎撃は、もはや出来る状態には無い。
しかもブレインが来ているという事は、欧州の戦況が絶望的である事も、同時に意味していた。
このままだと、ブレインは日本海を横断して、そのまま新潟に上陸。そして東京へ来るが、もはや止める手段はない。
東京基地の上空まで来たブレインを、総力で迎撃するしかないのだ。
移動速度からして、ブレインが到着するのは明日。
二日ほど、敵の攻撃が無い日が続いたが。
それは、東京基地がもはや逃げる事が出来ないこと。
そして恐らくは敵が、東京基地との戦闘データを、ブレインの間近で取りたいと考えたことが要因だろう。
更に。悪い報告はそれだけでは無い。
太平洋上に展開していた偵察機が、悪い情報をほぼ同時に持ち帰ったのだ。
接近しているのは、ブレインだけではない。
マザーシップもだ。
どうやら、北米でモグラ叩きをしていた敵戦力の中の一機らしい。護衛戦力は連れていないが、何しろマザーシップである。そんなものは必要ないと言う判断なのだろう。まあ、確かにマザーシップを迎撃できる戦力は、現在の地球には残っていない。アルゴはサイズこそ互角でも、所詮廉価版のマザーシップ。
その戦闘力は、攻防ともに備え、文字通り母艦としての機能も備えたマザーシップの方が上だ。
私は、カプセルから出たばかりで、ぼんやりしていた。
最高深度での回復を行うモードを使ったのだ。こうなることはわかりきっていたし、今まで溜まっていた疲れを取ろうと思ったのである。
だが、この状況を知った以上、動かないわけにはいかない。弟は先に出ていたので、ストームチームの集まる場所。
今はもう活用しようが無い、専用のヒドラの所に出向いた。
ビークルを積み込むこともなく、空っぽになっているヒドラは、ストームチームのたまり場となっている。
こういうなれ合いが嫌いそうなジョンソンさえ。
もうどうしようもないからだろう。一角の椅子に座って、バイザーで情報を検索している有様だ。
前に聞いたことがあるが、古典文学を読んでいるらしい。
スラム出身のジョンソンだから、なのかも知れない。彼は必死に背伸びして、可能な限りの出世を求めてきた人間なのだ。だから准将にまで上り詰めたが、しかしまだ彼の夢である、自分の好きに出来る組織は作られていない。
シミュレーションを行っていたらしい原田達が来る。今日は涼川が指導をしていたらしく、若者達を先導して歩いていた。
当然彼らも、情報は既に察知していた様子である。
「ブレインに、アルゴ、ついでにマザーシップまでご到着か」
楽しそうに涼川が言う。
原田が、冷静にそれに返した。
「もう、自分たちしか残っていないって事でしょうか」
「だからなんだよ」
「いえ……」
「むしろあたしは嬉しいぜ。 ぶっ潰しにわざわざ足を運ばなくても良いんだからよ」
そこまで前向きだと羨ましい。
前回の戦いで全破損したネグリングは、新しいものを提供して貰った。突貫工事で、他のビークル類も修理が済んでいる。
しかし、現状のストームチームの戦力では。マザーシップ一機を撃退するのも、実情は難しい。
そして、敵のかつてない戦力である。
迎撃に作戦など、練りようがない。
日高司令から、バイザーに通信が入る。
全EDF兵士に当てたものだ。まあ、このタイミングである。何を放送するかは、だいたい予想がつくが。
「既に諸君らも聞いていると思うが、最後の日が近づいている。 敵の首魁であるブレインに加え、アルゴ、更にマザーシップが、この東京基地に迫っている。 しかも東京基地の周辺は、八万に達する巨大生物が分厚い包囲を敷いており、更にその外側にも敵の包囲がある事が分かっている。 海上も似たような状況だ。 もう逃げる場所は、地球上の何処にもない」
全くの事実だ。
だから、私は何も言わない。
「今生き延びている戦士達には、事実を言おうと思う。 フォーリナーは、地球に資源を求めてきたのでは無い。 彼らは、地球に銀河系一凶暴で、戦闘を好む生物である我々がいる事を突き止めてやってきた。 彼らは進化のために戦いを望んでいる。 だからこそ、我々のいる地球に、はるばるやってきたのだ。 其処までが、今までの調査で分かっている」
フォリナ現状打開派とか、彼らが銀河系の支配者である事は、流石に日高司令もいわない。
言っても意味がないことだからだ。
「彼らは、人類を絶滅させる気は無い。 しかし、もしも我々が敗れた場合、地球人類は彼らの戦闘用奴隷として、彼らが満足するまで、彼らの管理下で、巨大生物との殺し合いを続けさせられることになる。 勿論、非戦闘員も含めた全員がだ。 そんな事を許してはならない、例え相手が此方の力を遙かに上回っているとしてもだ」
演説は、おそらくその場で考えたものではないだろう。
日高司令は、指揮官としては無能だ。
だが前線の勇者としては優れている。或いは、ひょっとするとだが。ずっと古い時代に生まれていれば、英雄として名前を残せる人間だったのかも知れない。指揮官としては無能でも、確かに人の心を掴めるものは持っているからだ。
「敵が到着するのは明日。 そして、包囲している巨大生物が、今日攻撃してくる可能性は少ない。 工廠などのメンバーも含め、今日は可能な限り自由時間を作るように。 思い残すことなく、明日は全ての力を出し切り、侵略者を地球から叩きだそう」
通信は、それで終わった。
工廠は、正直休みを取るのが厳しいだろう。弾薬もビークルの修復も、時間が幾らあっても足りない位なのだ。
ただ、今は、工廠に民間の希望協力者が相当数入っている。
上手く仕事を割り振れば、休みを取れるかも知れない。
「旦那、ゲーセン行こうぜ。 エミリーも」
「良いだろう」
弟は、涼川と一緒にレクリエーション施設に行った。
ゲームセンターと言うほどの規模では無いが、シミュレーションマシンで、似たような事は出来る。
日高中尉が、後輩達に声を掛けている。
「一旦休憩した後、シミュレーションをやっておこう」
「イエッサ!」
連れだって、彼らもヒドラを出て行く。今回は珍しく、筅も一緒に行くようだった。日高中尉が、本来やるべき事を思い出したのは良いことだ。
ジョンソンは一人で、ふらりとヒドラを出た。多分カプセルで、思う存分寝るつもりなのだろう。
或いはお気に入りの場所で、本でも読むつもりなのかも知れない。
谷山はというと、家族に通信を入れるつもりらしい。
香坂夫妻も同じ。
不仲な子供達だと言うが。もしも通信が出来るのなら、しておきたいだろう。家族水入らずの時を過ごしたいのかも知れない。
私は。
一人で、ぶらりとヒドラを出る。
今日は一人で、静かに過ごしたい。だが、外では、腕組みして、柊が待っていた。
「はじめ特務中佐」
「何だ、もう取材しても仕方が無いだろう」
「最後の戦い、私もついていきます。 邪魔にはならないようにするので」
「……好きにしろ」
最後まで、報道を続けるつもりか。
ブレインの間近で。
敵との最後の戦いで、ストームチームが散っていく様子を、撮影するつもりなのか。或いは、勝利の瞬間を、撮るつもりなのか。此奴の話では、勝つのはストームチームらしいのだから、それもありかも知れない。
工廠を出る。
外壁の上に上がろうかと思ったが、止める。
寮に戻るのも芸がない。
ふと思い出したことがあったので、病院に向かうことにした。
病院では、急速医療で、負傷者を無理矢理回復させている最中だった。
青ざめている兵士が目立つ。
急速医療は、体に負担を掛ける。それをカプセルの回復効果で無理矢理抑えているのだから、どうしても無理が出てくる。
今日は、フェンサースーツは身につけないで、歩いてみようと思った。
だから、周りは私を、嵐はじめ特務中佐だとは思わないようだった。ストームチームの面々は私の事を知っているけれど。一般の兵士は、そうではないのだ。
兵士は、私を第三世代の戦闘クローンと思っているものもいるようで。ぞんざいな視線を向けてくる奴もいたけれど。
放っておく。
どうせ、この姿で。
いや、そもそも私が外を歩ける時間は。もうそう長くは無いのだから。
病院の奧。
弟が準備してくれた、例のものがあった。三島とも話し合って、信頼出来る医師と、隠蔽できる準備も済ませてある。
その場所に出向くと、私はぼんやりと。
薄明かりの中に浮かび上がる、それを見つめる。
ブレインが言ったとおりだ。
英雄なんて、すぐに必要とされなくなる。
ましてや、地球人にとって。それ以外の存在なんて、塵芥に等しい。だが、私は死にたくない。
弟も、死なせたくない。
生物として中途半端でも。
子孫を作る事が出来なくても。
それでも、死にたくは無い。生きたいのだ。
これは恥ずかしい事なのだろうか。
部屋を出る。
しばらくぼんやりとしながら、辺りを歩き回る。バイザーに連絡が来る。香坂夫妻からだった。
「此方の用事は済んだ。 飯にしないか」
「分かりました。 其方に向かいます」
指定されたのは、香坂夫妻の寮ではない。
その手前にある空き地だ。
大きめの鍋が準備されている。そして、シミュレーションを終えた若者達も、集まってきていた。
ジョンソンや谷山、涼川とエミリーもいる。
弟はと言うと、既に準備に加わっていた。
「一度、ストームチーム全員で、飯にしておきたかった」
弟はそう言う。
まあ、最後の晩餐だ。これも良いだろう。
鍋はすぐに出来た。大きすぎる鍋だから、全員に充分な量が行き渡る。熱いできたての鍋は、やはり美味しい。
立食みたいな形になったが。
これもまた、面白い昼食の形だ。
温かくて、おなかに染み渡る。
酒も出た。
だけれど、私はあまり酒が好きでは無い。ジョンソンはがぶがぶ飲んでいたし、エミリーも平気。
日高中尉も飲んでいたが。
私は、酒が皆に渡りはじめると、隅に移って、後はわいわいやる皆を見つめることにした。
出来るだけ、死なせたくない。
こう考えることは、不遜なのだろうか。
私は、結局の所、仲間の輪に入ると言う行動が苦手だ。
それでも。
一緒に戦って来た者達も。
そうで無い者達も。
出来れば、死なせたくは無かった。
晩餐が終わる。
皆が引き上げていくのを見送ると、私は改めて気付く。久しぶりに、フェンサースーツを着ないで、ずっと過ごしていたのだと。
先に寮に戻った弟。
私は、ぼんやりと。宴の後を見つめていた。
バイザーが鳴っている。
今日は出来れば戦闘を避けたいのだが。それでも、軍人だ。呼び出しがあれば出なければならない。
可能性が小さいとは言え、敵が攻め寄せてきたら、対応もしなければならない。
バイザーをつけ、通信を受ける。
「こちらはじめ特務中佐」
「私よ」
「何だ、三島か。 何か新しいことでも起きたのか」
この時点で、敵の襲撃の可能性は消えた。嘆息して、側のベンチに腰掛ける。周囲には、まだ宴の残り香がある。
ドラゴンか何かが、いきなり防空圏を突破してくる可能性もある以上。
此処も安全とは言いがたいが。それでも、今はリラックスできていた。
データを見る限り、弟にも同時に通信が行っている。まあ、これは当然のことだろう。
「先ほど、欧州からのデータが届いたわ」
「オメガチームか」
「いいえ、作戦参加した生き残りのチームからよ。 オメガチームは消息不明。 作戦は、失敗したの」
まあ、ブレインが此方に向かっている時点で、それは分かっていたことだ。
三島によると、送られてきたデータを分析した結果、ある事が分かったと言う。他にも、色々有益なデータが取れたとも。
「まず、この戦いで裏付けられたけれど、ブレインは装甲を修復する能力を持っていないようよ。 オメガチームの攻撃を浴びた後のと、衛星から撮影したデータを確認したのだけれど、ダメージに回復が見られないわ」
「そうか。 僥倖ではあるな」
「三島、続けてくれるか」
弟が、発言。
ただ、声が少し曇っている。或いは、風呂にでも入っているのかも知れない。
「そして、此処が重要なのだけれど」
戦闘データを確認する限り。
ブレインは、ある特殊な波長の電波を、常に出しているという。これが何を意味するのかは分からない。
だが、中和する事は出来る。
中和する事で、一瞬なりと、相手に隙を作る事が出来るはずだ。
そう、三島は言った。
もっとも、それは希望的観測に過ぎない。
「ライサンダーの弾の一つに、電波を中和するカスタマイズをしておくわ。 ここぞという時に使って」
「ありがとう。 助かる」
弟はそう言う。
そして、私は。なるほど、そうだろうなと思った。
結局世界は弟を選ぶ。
だが、それでいい。弟の方が戦闘力は高いのだし、チームリーダーとしての実績も、何よりマザーシップ撃墜の立役者でもあるのだから。
三島の計測によると、ブレインの到着は明日の朝八時半。
同時に敵の総攻撃が開始されるという。
ブレインは、東京基地上空に、直接乗り込んでくる可能性が極めて高い。もはや人類が組織的抵抗をしているのが、東京基地をはじめとする、わずかな場所しかないからだ。そして此処で負ければ。
人類は、戦闘用奴隷への運命をたどる。
通信を終えると、私は寮へ戻ることにする。
まだ時間は幾分かある。
せっかく、フェンサースーツを着ないで、ひとときを過ごしているのだ。色々と、やっておいても損は無い。
シミュレーションルームへ向かったのは、何となく。
いつも涼川が遊んでいるゲームはどんなものだろうと、思ったから。
出向くと、涼川がいた。
酒が入っているが、私を見ると、意図は察したようだった。
「んー? 遊ぶか?」
「ああ、今日は少しだけつきあおう」
他のメンバーとも、少しは話したり、遊んだりしておきたい。
残った一日は。戦い以外のことに、使いたかった。