地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
最後の基地に、ついに直接ブレインが猛攻を開始します。
基地の地下にはもはや行く場所もない避難民多数。
負けられない戦いです。
序、ブレイン猛攻
次々に東京基地を塞ぐようにして降りてくるアースイーター。六角形の敵宇宙船。それを片端から、叩き落とす。ただひたすら、無心のまま落としていく。
アースイーターに制圧された地域は、奪還できていない。
今まで、ただの一度もだ。
兵士達の顔に恐怖が浮かぶ。東京基地を丸ごと飲み込もうとする最強の敵。そして、敵の首魁も、既に姿を見せている。
第八艦隊を壊滅させ。
欧州では、最精鋭の一つオメガチームをも退け。
そして各地の反攻作戦を蹂躙してきた、最強の敵。そしてその首魁。予定通りの時間に来たのは、もはや小細工など弄する必要もないからだろう。
コアさえ潰せば、周囲のアースイーターごと爆破できる。
だが、そのコアにしても、ライサンダーの一撃二撃では埒があかない。データを効率的に取れる最後の敵に対して。
ブレインは、もはや容赦も遠慮も、するつもりは無い様子だ。
地上部分の指揮は、ストームチームが担当している。
既に東京基地の周囲からの攻撃は考えない。其方にはありったけのセントリーガンを配置して、地雷を置いて。時間稼ぎだけをする。
東京基地の外壁の内側にいる敵だけを、ひたすらに狙う。
もはや、それ以外に、取れる手はないのだ。
どれだけ激しく迎撃しても、
対空砲火を総動員しても。
相手は、今まで幾多のEDF基地を蹂躙してきたのだ。手が足りない。コアが破壊されても、無事なアースイーターもちらほら出始める。そういったアースイーターにも、下向きの制圧用砲台は装備されている。
間もなく。空が見えなくなる。
敵が、戦闘態勢を整えたのだ。
舌打ちする。
完全に空を塞がれた。兵士達がどよめく中、通信を入れてくるのは日高司令だ。
「最後の時が来た。 君達の目の前にいるブレインこそ、敵の首魁。 アースイーターという大艦隊を従える旗艦であり、最強の空中要塞だ。 空を塞ぐ敵にして、EDFをもっとも追い詰めてきた、最強の敵。 奴を倒さなければ、人類は空を失う事になる」
空を失う、か。
私は、もう大半の人類が、地下のシェルターに籠もっていて、其処で息をひそめていることを知っている。
とっくの昔に人類は、空を見る力をなくしているのだ。
だが、EDFだけは、まだ抵抗を続けている。
各国の政府も、もはや禄に機能していない中。EDFだけが、必死に戦い続けているのだ。
そして敵は。
それを喜んでいる。
「我々に残された力は少なく、敵の力は圧倒的だ。 だが、我々はやらなければならない」
日高司令の声は悲壮だ。
勝てる筈がないのに。それでも、戦いに部下を駆り立てなければならないからだ。無能な司令官と陰口をたたかれながらも、事実その通りであっても。
責任を最後まで放り出さなかった事だけは、立派に司令官として褒められる事をしている日高司令である。
そして、演説も、それなりに立派だった。
「なぜなら我々はEDFだからだ。 EDFは撤退する事はあっても、敵に背中を見せて逃げる事はない。 我々が敗れれば、地下にいる百万を超える無辜の民が、敵の餌食になる事を思い出せ。 我々は、逃げるわけにはいかないのだ」
総員、攻撃を開始せよ。
それが、合図となる。
アースイーターと、激烈な射撃戦が開始された。対空砲火群が敵の射撃を迎え撃つ。全ての残存戦力が、アースイーターのコアを狙って、射撃を行う。敵の砲台の中には、ジェノサイド砲らしきものもある。かなりの巨大さで、これをまともに受けてしまうと、おそらく地下まで貫通されてしまう。
「ジェノサイド砲は絶対に撃たせるな!」
「敵の砲撃が激しすぎます!」
言われるまでも無い。
バトルキャノンで、私もコアを撃ち抜くが。その度に新手が降りてきて、ブレインの周囲の隙間を塞いでしまう。
その一瞬で、弟と秀爺が名人芸とも言える射撃を叩き込んでいるが。
何しろ、X3改の主砲直撃にさえ耐え抜いたブレインだ。ちょっとやそっとの攻撃で、落とせるはずがない。
敵の射撃は凄まじい。
何度も至近距離で爆発が生じる。
吹っ飛ばされた黒沢が立ち上がり、ハーキュリーで敵砲台を落とす。コアと連動していないアースイーターも、砲台が全てやられたとみるや、すぐに新手と交代するのだからタチが悪い。
バイザーに、味方の被害状況が飛び込んでくる。
あまり、状況は良いとは言えない。
今回は、チームごとに分けるのでは無く、混成部隊を組むようにしている。フェンサーチームは盾を使って、上空からの射撃をガード。ウィングダイバーとレンジャーが、狙撃武器でアースイーターを狙い撃つ。
中央部分のブロックは、完全にストームチームのみが担当。
既に対空砲火群は、稼働限界に近い。
砲兵隊も頑張ってくれているが、何しろ直上にある砲台群だ。倒しても倒してもお代わりが来るこの現状、どうしようもない。
ブレインの声は。
今の時点では聞こえない。
まだまだ、敵に切り札を使うのは早すぎる。
イプシロンは、倉庫の一つを盾にして、其処から射撃を叩き込む。コアを潰すのは、弟と私の役割。
イプシロンに乗っている秀爺が、その大火力を利用して、ブレインに穴を穿つ。どんなに堅牢な要塞でも、必ず破壊できる。ましてや敵は、条約に縛られていて、あまりにも強力な兵器は持ち込めないのだ。絶対にブレインにも弱点はある。
第五艦隊から通信。
私は黙々と、コアを落としながら聞く。対応は、弟がする。
「アースイーターの護衛に、攻撃機の大軍が向かっている! 対空ミサイルで叩き落としてはいるが、対応しきれない」
「分かった。 どうにかする」
「頼むぞ」
既に、ハッチから発進した攻撃機によって、各部隊に少なからず被害が出ているのだ。今更お代わりが来たくらいで、どうとも思わない。
涼川が、スティングレイロケットランチャーを連射して、その度に敵の砲台を破壊しながら、ぼやく。
その隣で、原田も涼川ほどでは無いにしても、見事な射撃を披露していた。ロケットランチャーの誘導は、とても難しいのだが。涼川と実戦をこなしにこなしたのだ。これくらい出来るようになるのは、当然とも言えるか。
「なあ、特務中佐」
「どうした」
ベガルタがミサイルポットから、ミサイルを打ち上げる。砲台を次々と爆破していくが、アースイーターはその度に次を追加してくる。
コアが破壊されて、アースイーターが消えて。
ブレインが露出した瞬間に、また秀爺が、完璧なタイミングで狙撃。ブラストメナス電磁投射砲の弾が、露骨に大きくなってきているブレインの傷を直撃する。次のアースイーターが来る前に、私もバトルキャノンから弾を撃ち込む。弟も、攻撃機を叩き落としながら、一発、ライサンダーの弾を叩き込んでいた。
「あのデカブツ、自分だけであたしらに勝てるとでも思ってんのかな」
「それは、そうだろう」
「は、舐めてくれるぜ」
正確には、情報を取るには、もうアースイーターだけで充分という所だろうか。奴にとっては、重要なのは新しい肉体の取得。巨大生物に戦闘で得られた経験を流し込んで、進化させること。
精神がリンクしている巨大生物たちは、戦いが行われれば行われるほど、情報を相互交換して、強くなって行く。
そしてブレインが統率制御。
最終的に、ブレインは今銀河系で最も神に近しい存在、フォリナの新しい肉体を造り出すのだ。
至近に着弾。
シールドでガードするが、アースイーターからの射撃が露骨に激しくなってきている。イプシロンもネグリングも。既に壊れてしまったギガンテスを利用して砲台を持ち上げたギガンテスも。グレイプもキャリバンも、良く砲撃に耐えているけれど。いつ壊されてもおかしくない。
また攻撃機が来る。
他の部隊が、外壁近くでかなり落としてくれていると思いたいのだが。日高中尉が即応。ハーキュリーでつるべ打ちに叩き落とす。
撃ち漏らしをナナコが処理。
再び、アースイーターにだけ集中する。
また、コアを粉砕。爆裂するアースイーターの隙間が見える。
総攻撃。
弟が叫び、全員でブレインに一斉射撃。隙間が塞がれる十数秒の間に、総力での攻撃を叩き込んだ。
その中には、三川とエミリーのグングニルによる射撃も含まれていた。
だが、ブレインが、痛打を浴びた形跡は無い。
一個艦隊の火力。
オメガチームの装備する、零式レーザーによる集中砲火。
機動要塞X3改の主砲による一撃。
そして、ストームチームの総力による攻撃。
これだけ受けても、いまだ墜ちぬ鉄壁の城塞。マザーシップよりも、格上の。圧倒的すぎる化け物だ。
敵の攻撃が、いよいよ激しくなり始める。
吹っ飛ばされた矢島を、キャリバンに放り込む。アーマーを付け替えて、応急処置。急げ。
中にいる民間協力者に叫ぶ。
こんな戦況でも。
キャリバンとグレイプには、自分たちも出ると言って聞かなかった、民間の協力者が乗ってくれているのだ。
彼らも命がけだ。
「基地の外にいる巨大生物共は」
「今の時点では動きなし! 増援が現れる様子もありません!」
「よし……」
弟が、ライサンダーの弾丸を装填しながら、上を見る。
何か狙っている。
私は、その邪魔をするものを、防ぐ。それだけだ。
「皆、聞いて欲しい」
弟が、他の隊員達全員へと通信を入れる。
オープン回線での通信だから、傍受されるのも時間の問題だろう。しかし、それでも弟は、通信する意味があると判断したのだ。
だから私は、好きにさせる。
「これより、ストームチームで、ブレインに総攻撃を行う。 今の時点で、敵は本気では無い。 此方を舐めきっている。 だから、その隙を突く。 これより皆に指定したタイミングで、アースイーターを攻撃して欲しい」
「イエッサ!」
複数の声が連鎖する。
爆撃のような攻撃が雨霰と降り注ぐ中だ。爆発は連鎖し、基地内の構造物は次々灰燼と帰して行く。
最後まで残った東京基地も。
暴力的な戦力差の前には、なすすべがない。
しかし、その中で、此処まで生き延びてきたEDF隊員は、良く耐えてくれる。弟に対する信頼感もあるだろう。
勿論、愚痴も聞こえてくる。
「こんなの、耐えられるわけがねえ! 早くしろよ、クソッタレ!」
「時計の針にさっさと進めとか考えたの、学生時代以来だぜ。 くそっ! もう耐えられねえよ! アーマーがもたねえ!」
「意識をそらすな! エイミングが疎かになっているぞ!」
びしりとした声。
親城准将が、愚痴を宣う兵士達に、活を入れたのだ。
確かにエイミングが疎かになれば、それだけ敵の火力が上がる。どれだけ敵がアースイーターを投入してきても。
一度に、面に繰り出せる数には、限界がある。
相手に兵力の逐次投入を強いてしまえば、理論上は勝てる。逆にそれさえなしえなければ、もはや勝てる理屈もない。
もう少しだ。
バトルキャノンで、砲台を叩き潰し。
ブースターを使って機動して、敵の砲撃を避けながら。
私は頭の中で、カウントを進める。
レーザーがフェンサースーツを直撃。アーマーを容赦なく削っていく。地上の対空砲火群も、そろそろ限界が近い。多数が砲撃で打ち砕かれ、既に用を為さないものも多い。ストームチームのビークル類だって、いつまでもはもたない。
カウントが、終わる。
終わるまでの時間が、永遠にも感じられた。
次の瞬間。
東京基地上空にいたアースイーターが、一瞬にして、全て粉砕される。
全てのコアが、同時に打ち抜かれ。それ以外の箇所の砲台も、全てが同時攻撃で粉砕されたのである。
今のこのとき。
弟が指定した通りに、各員が攻撃を加えて。一瞬だけ、空に空白地帯を造り、ブレインを丸裸にしたのである。
そして。
続けての弟の叫び。
撃て。
東京基地にある、砲兵も含む全ての火力が、一斉にブレインに攻撃。あらゆる火砲が、ブレインの上部構造体を直撃した。
爆発が連鎖し、火の雨が降ってくる。
今の攻撃には、残っていた東京基地の小型テンペストまでも含まれていた。これで、無事ならば。
もはや打つ手がない。
固唾を飲んで、状況を見守る。
ほどなく、見えてくる。ブレインの上部構造体が、半ば以上、消し飛んでいた。
「ほう、やりますね。 素晴らしい」
声が聞こえる。
ブレインだ。間違いなく、ブレインが、私に語りかけてきている。他のメンバーは、様子を見る限り、声が聞こえていない。
目を細めた私が、煙の中、浮かんでいるブレインを見つめる。
そして、ある光景を確認。
弟に、オンリー回線で連絡を入れた。
これで、仮説が裏付けられた。
「蓄積していたダメージも、これで限界に達しました。 これはそろそろ、本気を出さなければならないでしょうね」
「茶番はもういい」
「ふむ?」
「お前の構造体、破壊したところで何ら影響は無いな。 装甲で最初スーパーコンピューターに類するものを守っていると考えていたが、破損部分を確認する限り、内部は全て均一だ」
くつくつと、ブレインが笑う。
此奴は、やはり。
「効率よく戦闘経験を引き出すために。 わざとベンチマークに類するものを出してきた、ということだったんだな」
「良くおわかりで」
「本当の貴様は何処にいる」
「いいえ、少し考えが間違っています。 確かに戦闘経験を効率よく得るためにベンチマークは用意しましたが。 貴方がデコイと考えているものは、正真正銘のブレインで間違いありませんよ」
どういうことだ。
弟は、こう言っていた。
人類の戦闘経験を効率よく引きずり出し、巨大生物に情報を反映して進化を促すのであれば。
恐らくは、あのブレインは囮だと。
しかし、敵の本体は、そう遠くにはいないはずだとも。
確かにブレインを囮に情報を集めたら、すぐにでも回収したい筈なのだから。
だがブレインは違うという。
混乱する私に。
奴は、更に絶望的な事実を告げてくる。
「これはね、我々にとってもバロメーターなんですよ」
「バロメーターだと」
「著しく頑丈に作り上げたブレインを、あなた方が破壊しきる時こそ、戦闘経験の蓄積が充分だと判断できる時。 つまりあなた方は、生き残ろうと思うのなら。 あなた方がアースイーターと呼ぶ惑星環境調整装置群の攻撃をかわしながら、バロメーターとなるこのベンチマークを、破壊しきらなければならない」
所詮、手のひらの上という訳か。
弟が、静かに。深い怒りを込めて、会話を遮った。
「撃て」
私の様子から、ブレインにろくでもない事を聞かされていることを悟ったのだろう。もう一撃、総力を集めた火力が、ブレインに直撃する。
EDFの兵士達は、喚声を挙げた。
更に、露骨なほど確実に。ブレインの上部構造体が、消し飛んだからである。更に装甲そのものにも、ひびが入り始めている。
「やったぞ! 中破しやがった!」
「あれだけ壊したんだ! 精密機器が、まともに動くはずがない! 俺たちの勝利だ!」
「EDF! EDF!」
戦慄する私の前で。ブレインは、更におぞましい事実を告げてくる。
それはきっと。
私を追い詰めることで。地球最強の戦士である弟の全力を引き出すことが出来るから、だろう。
「まだまだこれからです。 もっともっと。 あなた方が大好きな殺戮本能を、私に向けてきてください。 暴力と支配と拒絶を、私にぶつけてくるのです。 そうすればそうするほど、進化に適した情報がより早く集まります。 もたもたしていると、ジェノサイド砲が、シェルターに届いてしまいますよ」
「くそっ!」
「姉貴、もういい! そいつの言う事を聞くな!」
いつの間にか。
空には、アースイーターが戻っていた。喚声が、ぴたりと止む。
その気になれば、何時でも補充など出来る。ブレインが、高笑いする様子が、目に浮かぶようだった。