地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
最後の力を、互いに絞り尽くすように。
敵が現れて、人類はとても喜んでいる。
そう、相手が理解している事は分かっていた。それは違うと相手に伝えたけれど。しかし、ブレインは。
実際に多くの人間を分析して、そう言っているのだ。
私は、人間でさえない。
弟も。
そして奴が言う事も、正しいとはわかっている。実際に人間の文化が、暴力と性と権力闘争で構成されているのは、間違いの無い事実なのだから。
人間は、フォーリナーの脅威が迫るまで、団結することさえ出来なかった。
私も。
弟も。
フォーリナーが来るのがもう少し遅れていたら、どんな風に処理されていたか、分からない。
結局の所。
何のために戦っているのか。
私にも、良く分からないと言うのが、現実なのだろうか。守りたいものはあるけれど、それが地球や、人類かと言われると、小首をかしげてしまう事もある。人類が奴隷化されるのは見ていられないけれど。助けた人類は、絶対に私と弟を裏切る。それもほぼ、確定なのだ。
確かに、秀爺のように、私や弟を、家族として扱ってくれた人はいる。
谷山も、私をいつもおちょくってはいるけれど、人間として認めてはくれている。
でも、絶対的多数の人々は、どうなのか。
弟は、何も言わない。
不満を抱えていても、人々には優しく接する。それがどうしてなのか、それだけが。私に分からない弟の心。
弟は、どうなのだろう。
私が、苦悩を抱えていることは、理解してくれているのだろうか。人々は、戦いが終わった後、ブレインが言うように、きっと私と弟を排斥する。それはもう間違いの無い事実だろう。
すぐに、またフォーリナーが攻めてくる可能性がある場合でも。
弟は軟禁され。
私は閑職に押し込まれ続けていた。
それが、もうフォーリナーが来ないとなれば。
頭を振る。
雑念を追い払って、目の前の現実と戦う。
圧倒的火力で爆撃に等しい攻撃をしてくる親衛隊アースイーター。必死の抵抗をするストームチームを、叩き潰しに来ている。いや、ストームチームの全力を、ぶつけてこいと言っているのだろう。
戦闘データを取るために。
乗ってやらなければならないのが口惜しい。
だが、それでも。
やらなければ、生き残ることは出来ないのだ。
「正直な話だけどよ」
膨大な敵砲台を叩き落としながら、隣で涼川が言う。
此奴でさえ、既に何度もアーマーを変えにキャリバンに戻った。型落ちのキャリバンは、もう何機もスクラップにされた。
援軍に来てくれた兵士達も、必死に頑張ってくれているけれど。
一人は既に重傷を受けて脱落。
ヤソコがナナコと一緒に、必死の対空射撃を続行。それも、いつまで保つかわからない。
「あんたはまだ幸せな方だと思うぜ、特務中佐」
「何のことだ」
バトルキャノンで、大型砲台を射撃。
一撃では墜ちてこない。
超高出力のレーザーを放ってくる危険な砲台だ。アレを残しておくと、被害がとんでもない事になる。
現に先も、矢島が一撃でアーマーを全損させられた。
今、キャリバンで応急手当をしている。そのキャリバンも、いつまでもつか。
涼川が、スティングレイを連射。
全弾を大型砲台に命中させ、破壊。流石の精度だ。スナイパーライフルの扱いは不得手でも、ロケットランチャーを使わせたら、EDF一だろう。
「悩める余裕があるんだからよ」
「そんなものか」
「あたしも最初はそうだったけどよ、大体の奴は悩む余裕も無く、戦場じゃ小便と涙垂れ流しながら戦ってんだよ。 おっと、二時の奴」
即応した私が、プラズマ砲を放とうとしていた砲台を、バトルキャノンで叩き落とす。今度のアースイーターは、コアがやたら頑丈で、中々墜ちてこないのだ。その上、コアを打ち抜いても、健在な砲台が非常に多い。全てがスタンドアロン制御されている、危険なアースイーターなのだ。
しかも、ブレインの周囲を、ゆっくり回転しながら移動している。
この攻撃的な特徴、今までに類を見ない。
幸いと言うべきか、破壊すると、お代わりは来ない。
問題は、破壊までの手間と、敵の攻撃能力が、尋常では無いと言うことだ。
至近に、プラズマ弾が連続して着弾。
イプシロンがやられた。
秀爺が、破壊されたイプシロンから出てくる。ほのかも。黒沢も傷だらけで、呼吸を整えながら、秀爺に肩を貸していた。
「悪いが、儂らは狙撃位置を移す。 此処は頼むぞ」
「大丈夫ですか」
「負傷なんぞかまっとる暇は無い」
二人が、ジープを使って移動していく。
弟は止めない。黒沢は少し悩んだ後、二人の後を追っていった。
狙撃手として、何か思うところがあるのかも知れない。ブレインを主体で叩くのでは無く。
この親衛隊アースイーターを、主体になって潰すつもりか。
至近に着弾。
とっさにシールドで防ぐが、涼川が吹っ飛ばされる。まだ残っていた建物に叩き付けられ、背中からずり落ちる。その建物も、今の衝撃で崩れた。
原田が駆け寄る。
その原田も、頭から血を流していた。
ウィングダイバー二人は、ずっとMONSTERで上空の砲台を攻撃しているが。被弾を抑えきれない。
特に三川は、既に血だらけ。
筅のベガルタAXの影に隠れて、射撃を続けてくれているが。
二人とも、いつまで保つかわからない。
ベガルタにしても、同じなのだ。
「かなりの数の砲台を削った。 もう一息だ!」
弟が声を張り上げるが。
味方の損害が大きすぎる。
外では、ストライクフォースライトニングが奮戦してくれているようだが、それでもアースイーターまでには手が回らない。
既に味方の火力も、明らかに劣勢。
それに対して、敵は士気が存在しない。淡々と此方の力を極限まで引っ張り出し、戦術データを取ることだけを考えている。
破壊されることさえ、厭わない。
此処が最後の狩り場だから、だろうか。そうだろう。何よりもブレインはAI。死など怖れる理由がない。目的を果たすことだけが、その全てだ。
死んでたまるか。
そう自分に言い聞かせて、気迫を絞り出す。
気力を、奮い立たせる。
また、至近に着弾。
それだけではない。レーザーも、数発が、フェンサースーツに直撃。呻いたのは、アーマーが貫通されて。
レーザーが、腕を貫いたからだ。
それでも、バトルキャノンで、砲台を叩き落とす。
気付いたのは、池口だ。
ネグリングを飛び出すと、肩を貸してくれる。キャリバンに入ると、スーツを解除。既に血は滴るほどに流れ落ちていた。
痛みは、それほどない。
傷も、骨を上手に避けていたが。それでも傷口は炭化していて、ダメージは甚大だった。
すぐに応急処置をして貰う。
外では爆発音が連鎖的に響いている。このキャリバンも、いつまでもつか。要塞救急車などという呼び方まである機種なのに。
鎮痛剤を投与。
テーピングを済ませ、回復が促進される薬も入れる。
少しからだが重く感じる。
こういうとき、古い時代の軍隊では、覚醒剤などの薬物が用いられることがあったと聞いているけれど。
今の時代、それは禁じられている。
後の消耗が大きすぎるからだ。
EDFは元々人員が多くない。防御能力が昔に比べて著しく向上したこともあり、人員は使い捨てにはされない。
それだけは、今。
有り難く感じた。
キャリバンを飛び出す。アーマーを張り替えたから、まだしばらく戦える。しかしフェンサースーツのダメージは蓄積する一方で、既にアラートが幾つか連動したバイザーに点灯している。
これだけ激しく戦ったのだ。
当然とも言える。
キャリバンから飛び出すと同時に、バトルキャノンをぶっ放し。先ほど此方を貫いてくれた大型砲台を打ち抜く。
爆発して吹き飛んだ大型砲台。
緑色の、巨大な鉛筆に似たそれが、無数に生えているアースイーターが来る。レーザーを放ちまくっているという事は、下にいる部隊を好き勝手襲っているという事だろう。これ以上、やらせてたまるか。
「矢島!」
「はい、特務中佐!」
「あのアースイーターの、大型砲台を全て落とすぞ!」
「イエッサ!」
弟は何も言わない。
そのまま、支援攻撃に移ってくれる。キャリバンから、涼川が復帰してきた。とはいっても、応急処置だけ済ませての復帰だ。額には包帯を巻いたままである。
バトルキャノンで、一つずつ砲台を片付けていく。
流石に、二発のバトルキャノン弾を喰らってしまうと、大型砲台でもひとたまりもない。だが、大型砲台が、目標としているアースイーターには、二十を超える数がついているのだ。此方に来るまでに、全てを撃墜しきれるか。
横殴りに叩き付けられたライサンダーの弾が、大型砲台を直撃。爆破。
秀爺か。
しかし、あの位置は。
今更に気付いた。三人が、どういう意図で、狙撃地点を移したのか。そして今までの戦闘で、どれだけ味方の被害を減らしてくれたのか。
思わず飛び出しそうになるが、しかし今は。
バトルキャノンで敵を撃ち抜くのが先だ。
老人の意地という奴を発揮して、今陣取った位置から、狙撃を続ける。
此処は、敵を一番効率よく狙える場所。少し前まで対空兵器が置かれていて。今は破壊されて、瓦礫になっていて。
つまり、身を隠せない。
だが、狙撃には好都合。
ライサンダーの弾を、ほのかの指示で黙々と撃ち続ける。黒沢がこれにつきあったのは意外だ。
何度か、ストームリーダーの所に戻るように言ったのだけれど。
若造は、聞く耳を持たなかった。
ほのかはもう、黒沢の火力も計算に入れて、狙撃の指示をしてくる。何度も何度も至近に着弾。
しかし、その度に、黒沢に持ち込んだアーマーを張り替えさせる。
それにも限界があるのが分かる。
「4,5,2,77,12,28」
黒沢が、ほのかの指示を聞いて、愕然と顔を上げた。
分かったのだろう。
後28手で詰む。
敵の大型砲台密集地帯が、頭上を通り過ぎる。しかし、此処での狙撃を続けているから、他の部隊への被害を、極限まで減らせているのだ。もし此処から逃れた場合、かろうじて戦っている他ストームチームの面々が、圧倒的なレーザーの嵐に晒される。
詰みの瞬間まで、老人二人が此処で頑張ることで。
他のストームチームメンバーは、助かるのだ。
射撃。
大型砲台は、三発のライサンダー弾を撃ち込むことで、破壊できる。
携行用艦砲と言われるライサンダーでそれだ。バトルキャノンでも二発が必要になる。たかが砲台に、どれだけの防御性能を積み込んでいるのか。
だが、それでも、破壊は出来る。
黒沢は、逃げない。
もうすぐ、あの大型砲台の群れが、射程に此方を捕らえるのに。
射撃。
大型砲台を撃破。装填をしながら、告げる。
「最後だ。 早う逃げろ」
「嫌です」
「頑固な奴だ」
「僕はすれた人間です。 自分がどうして生まれたのか知りたいとずっと思ってきたし、生きる意味も欲しいと思ってきました。 それでいながら、勝手な行動をして、一時期はストームチームにひびも入れかけました」
射撃。砲台撃破。
後11手。
ほのかも逃げる気は無い様子だ。
どいつもこいつも、仕方が無い奴らだ。
「それでも、僕はここでやって行けた。 だから、最後は駒として、皆を守りたい」
「そうか、だがそれでもお前さんは生きなきゃいかん」
「どうしてですか」
「儂らと違って、若者だからだ。 儂らは仲が良いとは言えないが、子供もいるし孫も出来た。 人間としての責務はきちんと果たした。 だからお前さんも、同じように責務を果たしてから、そんな事はいえ」
もう一撃。
巨大砲台が墜ちる。
後8手。
着実に迫ってくる砲台の群れ。
だが、全く恐ろしいとは感じない。それに、悩みも多くて、いつも未来のことを悲観していて。
傷だらけになっても戦い続けている嵐姉弟を助けられるのなら。これくらいの恐怖、何でもない。
黒沢は逃げない。
「どうした、早く行け」
「……その命令だけは聞けません」
「仕方が無い奴だ」
もう、説得している時間もない。
巨大砲台を射撃。一発では墜ちない。射程距離に入ってくるまでに、もう一つは巨大砲台を落とせる。
そうすれば、ストームチームへの負荷も減る。
悔いはない。
最後の一射。これで詰んだが。その代わり、嵐姉弟の射撃で、残りのアースイーターは駆除できる目処が立った。これでブレインに、とどめの一撃を届かせることが出来る筈だ。
巨大砲台が光り始める。
明らかに此方を狙っている。
「母さん。 地獄に行ったら、まず何をしようか」
「そうですねえ。 閻魔様に頼んで、観光旅行でもして見ましょうか。 どうせ色々な地獄に行かされるのでしょうし、それくらいの気分でいたいです」
「それもそうだ。 儂らが殺した蟻や蜘蛛もたくさんいるだろう。 手強い奴も多かったし、せめて地獄では仲良くしたいものだ」
「本当にね。 彼らの事情を考えると、無責任に恨む事ばかりも出来ませんからね」
からからと笑いあう。
だが。
その時。
横殴りに叩き付けられた射撃が、今レーザーを発射しようとしていた巨大砲台を打ち砕く。
スナイパーライフルによる射撃。
それも、十人以上によるものだ。
通信が来る。
「まだ死なれては困りますよ、師匠」
「赤沢か。 東北の地下に籠もっていると聞いたが」
再びの射撃。明らかに、巨大砲台を狙っている。確実に潰されていく巨大砲台。
ほのかが射撃指示を出してくる。
詰みが遠のいた。
この援軍は、想定していなかった。赤沢は、東北の基地に出向していたとき、鍛えたスナイパーの一人。
東北での戦線で大きな戦果を上げていたが、戦況悪化に伴って、地下に潜った。それ以来、話は聞いていなかったのだが。
「巨大生物が東京基地に集まっていく過程で、幾つかの基地の上に陣取っていた巨大生物がいなくなったんです。 だからヒドラを引っ張り出して、増援として来ました。 同じように、彼方此方から増援が来る筈です」
「そうか」
「師匠達夫婦の料理をまた食べたい。 だから、まだ死なないでください」
ほのかの指示に基づいて、黒沢と二人、射撃を開始。
ひょっとしたら、これは。
捨て石にならなくても、勝てるかも知れない。
東南アジアからかき集められた増援が、ヒドラで到着。
第五艦隊からの支援を受けながら、アースイーターの攻撃を受けている東京基地に、無理矢理なだれ込んだ。
兵力は百名程度だが、今の状況では、非常に貴重な百名だ。
更に、東北からも、低空飛行でヒドラが基地に飛び込んできた。此方は三十名ほど。ただし並の三十名では無い。
十名以上が秀爺の弟子のスナイパー達だ。そのほかも、皆名が知られた精鋭ばかり。
報告を聞き終えた弟が、頷く。
スナイパー達は、捨て石として移動した秀爺の支援に廻ったらしい。そして、アースイーターの火力が落ち始めている今。この増援の到来は、非常に大きい。
だが、基地の外に群れている敵の数はなおも圧倒的。
そして敵はこの状況でも。
まだまだ、いくらでも増援を呼び出せる状況にある。勝ったなどとは、口が裂けても言えない。
盾をかざして、爆発を凌ぐ。
やられた腕が酷く痛むが、それでもどうにかするしかない。バトルキャノンで反撃。確実に、アースイーターの砲台を削り取っていく。
ハッチが開いた。
攻撃機が出撃してくる。だが、アースイーターはかなり数を減らしている。その上、秀爺の弟子達がまとめて駆けつけてくれたのだ。砲台はいっそ、其方に任せてしまって良いかもしれない。
キャリバンに走り寄ると、誘導ミサイル系の武装を取り出す。
大破したネグリングから這い出してきた池口に、一つは渡す。原田にはどうしようかと思ったが、やめておいた。
日高中尉に渡すと。
彼女は口をとがらせる。
「ええ、エメロードですか?」
「攻撃機に対応する人員が必要なんだ」
「私が使います」
挙手したのは、ナナコだ。
だが、今ナナコは、ライサンダーで確実な射撃が出来る数少ないメンバーである。少し悩むが、不意に袖を掴む手があった。
「私が、やり、ます」
「お前は」
煤だらけの、小柄な強化クローン兵。
ヤソコだ。
他の、地下シェルターから来た戦士達は、全員がもう病院送りになっている中。必死の奮戦を続けて、まだ残っている。
だが、もう傷だらけ。
確かにこの状況だと、それが良いかもしれない。
「よし、二人でエメロードを使い、足止めに徹しろ。 近づく奴は、残りのメンバーで射撃し叩き落とせ」
「イエッサ!」
私は、アラートが多数点滅しているフェンサースーツを無理矢理駆って、再びアースイーターへの攻撃に戻る。
キャリバンから出てきた涼川が、隣に並んだ。
向こうでは弟が、一騎当千の暴れぶりを見せて、ライサンダーで可能な限りの敵を叩き落としまくっている。
「よう、まだやれるか?」
「どうにか」
「最終的には、旦那とあの腐れ脳みその一騎打ちになりそうだな」
「そう、だな」
涼川は案外鋭いところがある。
私だって、分かっている。
このまま戦いが推移して、ブレインがそのままでいる筈がない。徹底的にデータを搾り取るために、極限まで此方の戦力を痛めつけに来るだろう。
攻撃機が来る。
日高中尉が即応し、ハーキュリーで叩き落とす。
丁度背中合わせに立ったヤソコと池口が、エメロードで次々攻撃機を落としているが。それでも、他の戦線で、被害が拡大するのは止められない。
軽傷者は、病院からすぐに復帰してくるだろうけれど。
アースイーターの火力が相手では、そうも言ってはいられない。
だが、ついに弟がやる。
コアを叩き落とし、ブレインへの射線を確保。
そして、ブレインも。
増援のアースイーターを投入してこない。やはりこの親衛隊アースイーター、そうそう多くは用意できないのか。
既に罅だらけのブレインに、弟が容赦なく、ライサンダーの一撃を入れはじめた。その射撃も、確実に罅に傷に食い込んでいく。
煙を吹き出すブレイン。
アースイーターの反撃も必死なものだが。
それでも、弟は止められない。
止めようとする一撃は、私は涼川が食い止める。
ハッチをまたアースイーターが開けるが。おそらく秀爺やその弟子達の射撃が、一斉に集中。
出ようとしていたディロイごと、ハッチを瞬時に爆散させた。
これでアースイーターの群れに残ったコアは存在せず。
ハッチも、全て失った。
後は大型砲台を中心に、かなりの数の砲台が残っているが、それでもこの戦況は、決定的に此方に傾いたと言える。
今の時点では、だ。
弟が一瞬躊躇したが、開戦前に渡された弾を使うのは止めたようだ。やはり弟も察しているのだろう。
まだブレインに余力が充分にあること。つまり、此方の戦闘データを、まだまだ搾り取る気である事は。
「今のうちに負傷者を下げろ。 残りはアースイータの反撃を抑えつつ、ブレインに総攻撃開始!」
「よっしゃあ!」
涼川が取り出したプロミネンス。超大型ミサイルを発射する、携行火器としては桁外れの代物だ。
ぶっ放されたプロミネンスのミサイルが、ブレインに容赦なく着弾する。
ジョンソンも温存していた最後のノヴァバスターを投入。亀裂が、更に大きく、激しく拡がるブレイン。
エミリーがグングニルをぶっ放す。
それが、決め手になった。
ブレインの亀裂から向こう側に、エネルギービームが抜けるのが分かった。ブレインの堅牢極まりない構造に、ついに貫通弾が通ったのだ。
残っていたアースイーターが、まとめて爆散する。
ブレインに致命打が通ったのは、誰の目にも明らか。
喚声が上がった。
「やったぞ! 力尽きやがった!」
「……」
私は呼吸を整えながら、バトルキャノンを下ろす。
そして、三川に、エミリーにも告げる。
「グングニルの充填を」
「え……」
「でも、あれじゃあいくら何でも、耐えられないわよ」
多分、ブレインはまだ満足していない。今のアースイーター爆破は、状況をリセットするためではないのか。
奴の目的は、地球の征服では無いし、人類の抹殺でもない。
それを考えれば、アースイーターでさえ、奴にとってはそう大事なものではない。大事なのは、ただ。
戦闘経験を蓄積し、巨大生物進化にとって、重要なデータを揃える事だけ。
自身でさえ。
捨て駒に過ぎないブレインにとって。
護衛のアースイーターなど、文字通り塵芥に過ぎない筈だ。
案の定。
周囲が、真っ暗になる。
また、何かが降りてくる。
全員が絶句する。
その中、唯一戦術士官だけが、状況を分析し、伝えることが出来ていた。
「また何かが落下してきます!」
オペレーターが喚くのでは無いかと思ったが。
外壁部分で、今プロテウスと一緒に戦っている筈だ。多分、状況を聞いて取り乱す余裕も無いのだろう。
戦闘音が聞こえる。
日高司令の所では、まだ押し寄せる敵の群れと、戦闘が続いている証拠だ。ブレインは、まだ諦めていない。
「素晴らしい」
ブレインの声。
かすれているようで。歓喜に満ちているようで。
とてもAIとは思えない、生々しい感情が溢れていた。
此奴にとって、歓喜は目的を果たすことが出来る事によって、生じるのかも知れない。しかし、そうなると。
「後一歩と言う事か……!?」
「間もなく、必要なデータが揃います。 あなた方の残虐性と暴力性は、天の川銀河に新しい秩序を造り出す。 いずれあなた方は、フォリナの歴史の未来を変えた存在として、大いなる敬意を払われることになるでしょう。 もう少しです。 もう少しあなた方の残忍な暴力を、振るい続けてください。 私が破壊されるまで、後ほんのわずかですよ」
頭の中で、声がきんきんと反響した。
声に、抑揚がなくなっているのだ。
降りてくるそれが、見え始めた。
内臓が、固まったような、六角柱。形状はブレインに似ているが、赤黒く、大きさもまちまち。
しかも、今までと違い。
東京基地だけでは無く、その周辺。
東京そのものを覆い尽くすほどの広域に、降りてきているようだ。
背筋がぞくりとする。
これは、おそらく親衛隊アースイーターとさえ何かが違っている。一種の生体兵器とさえ感じ取れる。
あらゆる意味で。
地球人類と、全身全霊をかけ、殴り合いをするためだけに作られた、何かとてつもなく禍々しい存在。
いにしえの時代。
予言者と呼ばれる存在は、此奴の到来を幻視して。
恐怖の大王やら、悪魔やらと、誤認したのではあるまいか。
歓喜の笑い声が、爆発した。
禍々しい六角柱の群れ。
強いていうなら、最終攻撃アースイーターとでもいうべきものが、戦闘行動を開始した。
下部にある穴から、強烈な稲妻状のビームを放つ。
無数のドラゴンが、穴から放出されはじめる。
優勢に進めていた戦況が。
また、一気にひっくり返された