地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
文字通り最後の戦いを行うために。
顔を上げると。
其処は地獄だった。
キャリバンの中で意識が戻る。矢島久助は、最終攻撃アースイーターの一撃で吹き飛ばされたことを思い出し、戦況を確認しようとしたけれど。
窓から見える外の光景は、目を覆うような有様だった。
外は、まるで闇夜。
それほどの数、あの最終攻撃アースイーターが来ているのだ。
降り注ぐ稲妻状のビームは、まるで雷雨に突入したかのよう。無理矢理起きようとして、気付く。
全身が、痛い。
いや、ようやく気付いたと言うべきか。もう、戦える状態にないと。
見える。
まだはじめ特務中佐が戦っている。
ストームリーダーは立ち尽くし。まるで不死身の魔神のように、敵を倒し続けている。涼川さんは。
いない。
おそらくオメガチームらしい戦士達が、空に無数のレーザーを放っている。それで最終攻撃アースイーターを次々打ち倒している。だが、その数があまりにも超絶的過ぎるのだ。まるで、空の星が全て降りてきたかのような数。
揺れが、酷い。
東京基地そのものが、凄まじい揺れに襲われていると見て良い。
もう、基地も、保たないかも知れない。
「鎮痛剤を、お願いできますか」
側にいる民間協力者の医師が、死ぬ気かと言う。
そのつもりだと答える。
死なせたくない。
一人前の戦士にしてくれた人達を。
谷山さんの戦車が、射撃を繰り返して、最終攻撃アースイーターを次々落としているけれど。
数がもの凄すぎて、とても捌ききれない。
とてもではないが、このキャリバンも、長く保つとは思えなかった。
「俺はフェンサーです。 外に出れば、少しは戦況を良く出来ます」
「どうしても、やる気なんだね」
「命に代えても」
「分かった。 しかし、死ぬのでは無くて、生きて戻ってくるんだ。 その約束が出来なければ、鎮痛剤はうてない」
約束すると答える。
そして、フェンサースーツを身に纏うと。無理矢理体を動かして、キャリバンを飛び出した。
辺りは地獄絵図。
もう東京基地は欠片も残っていない。コンクリと、砕かれた建造物があるだけ。前に皆で食事にした香坂夫妻の寮や、その前の広場も、もう残っていない。
砲兵隊は既に機能停止。
対空砲火は全滅。
必死の抵抗を続けているのは、多分ストームチームと、此処に集ってくれた最後の精鋭達だけだ。
オメガチームの隊長が、声をからして叱咤している。
「踏みとどまれ! 欧州の二の舞にはさせるな!」
「イエッサ!」
無数のレーザーが空に伸びる。
しかし爆破されると、最終攻撃アースイーターは、それだけ集まってくるようだ。倒しても倒しても、きりが無い。
はじめ特務中佐の側に行く。
側に行って分かった。
彼女も、もう限界をとっくに越えている。多分フェンサースーツを脱いだら、見るも無惨な有様の筈だ。
小柄で、黙っていれば可愛い女の子にも見えるのに。
戦闘目的で作られたからって。こんな悲惨な戦場の最前線で、どうして此処まで酷い目にあわなければならないのか。
「俺も……」
「一つだけ、出来る事がある」
はじめ特務中佐は、此方を見ない。
ひょっとすると、もう動く力もないのかも知れない。それなのに、バトルキャノンをぶっ放して、最終攻撃アースイーターを叩き落とし続けている。
周囲で戦っているペイルチームも、最新鋭の装備で、群がってくるドラゴンを叩き、最終攻撃アースイーターを削り取っているが。
相手の数が多すぎる。
降り注ぐ稲妻が、一撃ごとに、此方の残った力を削いでいくのだ。
「ブレインはもう残り一割もない。 あれを精密に砕けるのは、多分秀爺か弟だけ。 秀爺は支援に徹しているから無理。 私は、弟を攻撃しようとしているアースイーターを先から叩いている。 お前は、弟の射線を遮ろうとするアースイーターだけ潰してくれるか」
「イエッサ!」
すぐに、言われたまま動く。
分かっている。
はじめ特務中佐だって、誰かが守らなければ、死んでしまう。今度こそ、本当に死んでしまうはずだ。
あの不死身の涼川さんでさえ、リタイアしている戦場なのだ。
そういえば、キャリバンの上に仁王立ちして、高笑いしながら戦っているのは日高中尉。あんな変わり果てた姿になって。
どちらも、痛々しい。
頭を振ると、決める。
一刻も早く、この戦場を。この地獄を終わらせると。
バトルキャノンをぶっ放し、ストームリーダーの射線を塞ごうとしていたアースイーターを叩き潰す。
その隙間を、確実にストームリーダーが撃って。ブレインに着弾させる。
ブレインがまた、大きく削り取られた。
エミリーさんは、私を守るときに、こんな事をいつも言っていた。
いつかセンが、私を逆に守ってね。
北米の女性らしい豊満な肉体と健康な色気を持っているあの人は、私とは全く別の生き物に見えて。同じ人間の雌だとは思えなかった。
いつも一緒に行動して。
技やスキルを見せてもらって。
少しは成長してきたけれど。
こんな場所で、やはり足が震えてしまうことは避けられない。エミリーさんは、酷い怪我を負ってリタイヤして、今病院にいる。
新しいプラズマジェネレーターを貰った今。
ストームリーダーの役に立てるのは、私だけだ。
よく、ブレインを狙う。
グングニルは途方もない火力を持つ兵器だけれど、とにかく一度撃つと充填まで時間が著しく掛かる。
側に舞い降りてきたのは、カリンさん。
現在世界最強のウィングダイバーだ。はじめ特務中佐の孫弟子に当たるそうだけれど、いつもいけ好かない相手だと文句を言っていた。
「頼みがある」
「な、なんでしょうか」
「そろそろ支えきれない。 グングニルを外さず、ブレインに当ててくれ」
愕然とした。
この人は戦士としての誇りを持つ、最強のウィングダイバーの一人。そんな人が、こんな事をいいに来るのだ。
どれだけ戦況が厳しいか。
今、必死に装備を換装しているベガルタAXの影で震えながら、私は何をしているのか。
次に当てれば。
或いは、ブレインを落とせるかも知れない。
至近。
ドラゴンが舞い降りてくるが、カリンさんが即応。手にしているイズナで、瞬時に焼き払った。
吹っ飛んだドラゴンだが、数匹が立て続けに来る。
精鋭、ペイルチームでも、次々来るドラゴンと、最終攻撃アースイーターの連携には、もうどうしようもなくなりつつある。
第五艦隊は、相当数の敵を引きつけてくれているはず。
これでも、かなりマシな状態の筈だ。
長くは第五艦隊ももたない。
やらなければ、ならない。
グングニルを構える。
知っている。北欧神話の主神が持つ、一射確殺の槍。これを受けて倒れない存在なんて、いないはず。
私は、極限まで、エネルギー収束を絞る。
壊れてしまっても関係無い。一撃でブレインを打ち抜き、破壊するのだ。
側に来るドラゴンを、次々カリンさんが倒してくれるけれど。それもいつまで保つかわからない。
至近に火球が着弾。
ベガルタの装備換装が終了したのは、その時だった。
周囲に武装をフルにうち込み、一気に敵を薙ぎ払う筅ちゃん。その瞬間。ブレインが、いやに大きく見えた。
撃て。
そう、エミリーさんが言っているような気がした。
狙いは完璧。
息を止める。
時間も止まるような気がした。今なら、針の穴でも通せる気がする。
引き金に指を掛けて。
撃ち放つ。
グングニルの、収束エネルギービームが、空間を驀進。そして、ブレインを。
ブレインに。
直撃した。
次の瞬間、自分が吹っ飛ばされたことに気付く。ああ、そうか。ドラゴンの火球にやられたのか。
当たった。
でも、もうほんのちょっと長く当たっていれば、きっとブレインを壊せていたはず。この世から、何ら残す事もなく。
それだけが、少しだけ口惜しい。
原田啓介は、影に隠れて戦況を見ながら、千載一遇の好機を狙っていた。
涼川さんはこう言ったのだ。
「多分、最後の一撃を入れるのは旦那だ。 お前は欲を掻かないで、確実にその道を作ることだけを考えろ」
近くに、戦車が来る。
この状況でも上手に立ち回り、周囲のアースイーターを次々落としている谷山さんだ。戦車に乗せて貰う。
担いでいるのは、プロミネンス。
此奴を、もう一回ブレインに叩き込んでやれば。絶対に、落とせる。落とせなくても、後はストームリーダーが、何とかしてくれる。
谷山さんが、バイザーに通信を入れてきた。
ストームチーム宛のものだ。
「勝てると断言したのに、すみません。 だが、手は打ちました」
谷山さんのことだ。
何かしらの根拠があって、そう言っているのだろう。ヘリの達人で、空爆のタイミングを見極める事に関しても素晴らしい。戦略級の状況で、どれだけ谷山さんに助けられたか、分からない。
プロミネンスのロックオン、完了。
あまり速度はでないけれど。
超特大の威力を持つロケットを、撃ち放つ。
どうだ、いけ。
当たれ。
必死に念じる。
敵はブレインを防御することを、考えていない。この状況だったら。少し前に、三川のグングニルも直撃した。
今やブレインは、虚空に浮く小さな塊に過ぎない。
あれさえ破壊しきれば、勝ちだという話なのだ。これで、絶対に、根本的に破壊しきることが出来る。
谷山さんが舌打ち。
一匹、ドラゴンが射線に割り込む。
戦車砲をうち込む谷山さん。直撃。ドラゴンが吹っ飛ぶ。しかし、その影にもう一匹。原田もスティングレイを取り出して、うち込むけれど。爆発が収まったとき。更に一匹が、プロミネンスのミサイルに噛みついていた。
万事休す。
ふらふらと態勢を崩すプロミネンス。しかしそれでも、ドラゴンを引きずって、ブレインの至近へ。
そこで、爆発した。
ブレインを、確実に巻き込んだ。
やった。
思わず安堵の声が漏れるけれど。煙が晴れてきたとき、見えてきたのは、真っ黒い球体。愕然とする。
あまり大きくは無いけれど。
あれは、きっとブレインのコアだ。
今の爆発で、コアだけが残ったのだろう。そう言う意味では、無駄にはならなかったけれど。
本当に口惜しい。後一歩、ほんの少しだったのに。
ドラゴンの群れが殺到してくる。
谷山さんが上手に戦車を動かして、味方チームの方に逃れるけれど、間に合わない。追いすがってくる一匹を、谷山さんが戦車砲で吹き飛ばす。しかし、ペイルチームもオメガチームも、此方を守りきれない。
火球が複数、戦車を直撃する。
涼川さん。
俺は、路は作りました。
戦車から吹っ飛ばされながら。そう、原田は思っていた。
エメロードが壊れそうになるまで連射を続けながら、池口吉野は思う。こんな時まで、マイペースな自分が、少し疎ましいと。
援軍として来てくれたヤソコちゃんと背中合わせに立ち、エメロードから小型誘導ミサイルを連射し続けて。随分と味方を支援してきたけれど。
ネグリングが壊れる前と同じ。いつも、支援しか出来ない。
特性を見いだされて、それで随分みんなを助けられた。
それは誇りともなっている。
でも、どうしてなのだろう。皆がこれほど傷つけられて。敵も散々殺しまくって。血の雨が辺りに降っているのに。
どうして自分は、こうもマイペースなのだろう。
谷山さんが、通信を入れてくる。
「池口少尉。 君にやって欲しい事があります」
「何でしょう」
マイペースに答えると。
バイザーを通じて、あるものが引き渡された。
それは、一斉艦砲射撃の、コントロール。タイミングは谷山さんが見極めるそうだけれど、支援砲撃の狙いについては、渡すという。
戦慄する。
どうして、自分に。
しかし、すぐに分かる。ネグリングをずっと使って来たのだ。支援砲撃の狙いに関しては、ひょっとすると筅ちゃんよりも、自分の方が習熟しているかも知れない。
「マイペースな君だからこそ、感情に優先せず、淡々とこなせる。 そう信じていますからね」
「分かりました。 やってみます」
エメロードを下ろす。
ヤソコちゃんは、黙々とミサイル射撃を続けている。私はバイザーをセットし直すと、狙うべき地点を見極めた。
次々来る最終攻撃アースイーター。
ドラゴンの群れ。
狙うべきは、どちらか。
不意に、見えてくる。
ネグリングで射撃しているとき、いつも不意に見えるような感覚があった。敵の集中する場所。狙うべきポイント。
それを見極めて、ネグリングをうち込むことで。
予想以上の成果を上げることが、出来るようになっていた。
いつの間にか、身についた事だ。
谷山さんが、戦車を飛び降りると、多分最後だろうガードポストを設置しはじめる。そして自身は、ペイルチームが乗って来たヒドラに入る。そして引っ張り出してきたのは、バゼラート。
捨て身で、ドラゴンの注意を引くつもりだ。
それならば、やる事は一つ。
バイザーを通じて、攻撃ポイントを指定。第五艦隊が、困惑した声を上げた。
「其処には何も……」
「攻撃を開始してください」
「分かりました。 速射砲、射撃準備!」
頭の中で、カウントする。
オメガチームの零式レーザーが、辺りの最終攻撃アースイーターを薙ぎ払う。ペイルチームの放つ閃光が、ドラゴンの群れを駆逐する。
其処へ、新手の最終攻撃アースイーターが姿を見せる。
そう。
私の、狙った通りの地点だ。
現れた瞬間、おそらく最後の支援砲撃となる、艦砲射撃が集中。瞬時に、十隻以上の最終攻撃アースイーターを粉砕爆破した。
敵の空白地帯が出来る。
勿論、この瞬間を逃すストームリーダーではない。
何か特殊な弾を装填して、撃った。よく分からないが、それで周囲の砲撃が、一瞬だけ。確実に止まった。
そして、谷山さんも。
特殊なレーザーサイトを用いて、ブレインのコアを照射している。攻撃支援用のポインターだ。
今まで、必死の支援を続けていたはじめ特務中佐が。
筅ちゃんのベガルタが、全ての武器を、ブレインコアに向ける。
日高中尉も。そして遠くで支援してくれていた、香坂夫妻や、黒沢君も。きっと、狙っている筈だ。
誰よりも、ストームリーダーが、その中心にいる。
私は。
その時、コンクリのクレーターの中に転がって、ぼんやりその光景を見ていた。
アースイーターが吹っ飛ばされたとき。
私も、ドラゴンからの砲撃で、吹っ飛ばされたのだ。
「オールウェポン、ファイア!」
閃光が、空に向けて走る。
私の薄れた意識の中。それだけが、はっきり見えた。