地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
ただその結果だけが、其処にありました。
呼び出しに、目を擦りながら起き出す。
あくびをして、バイザーを手にする。EDFの幹部になっても、こればかりは、どうしようもない。
生理的な反応を抑える技術は著しく進歩した。
今では、カプセルベットが標準的に各家庭で使われている。私が使っているのも、それだ。
これを使っていると、寝ている間にヘルスチェックもしてくれるし、簡単な病気は即座に治してくれる。癌も早期に発見が可能だ。何よりベッドなどより遙かに寝心地が良いし、一日の睡眠時間を二時間程度に抑えても、体に無理が出ない。
平均寿命は百三十五歳に達するだろうとも言われているが。
あの戦いから七年。
まだまだ、そんな平均寿命が実現するには、遠い。
軍服に着替えて、外に。
ジープが寮のドアに横付けする。運転しているのは。はじめ特務中佐にそっくりに成長した、ナナコだ。背も少し伸びたけれど、私よりはだいぶ小さい。
「日高大佐、行きましょう」
「相変わらず早いねえ」
「すぐ近くに住んでいますから」
此奴も、今や中佐。
それぞれ准将になってから引退した涼川さんや香坂夫妻、それに谷山さん達は、今は中々会う事もない。
あの激しい戦いの日々は。
夢だったようにさえ思えてくる。
ジョンソン中将は、今やEDFの地区司令官だが。此方は此方で、どうにも毎日が退屈で仕方が無いようだ。
エミリーさんはカリンさんの次に、ペイルチームのリーダーになって。今はもう准将。退役しないで、ばりばり現役で活躍している。
「今のうちに、目を覚ましてください」
「はいはい」
ジープを走らせながら、ナナコは言う。
昔は、変わり果てた私に、いちいち悲しそうにしていたのに。最近は、もう慣れたらしい。
どうやら旧ストームチーム若手メンバーは、私をリーダーとした一派閥としてみなされているらしく。
戦場での凄まじい活躍もあって、私が多分次のストームリーダーだろうとも、噂されているようだった。
ストームリーダーか。
正直、あれから腕を上げた今でも、あの人と。それに嵐はじめ特務中佐には、勝てる気がしない。
二人とも、戦闘が終わった後、何処ともなく消えた。
はじめ特務中佐は酷い負傷をしていたのに。無事なのか、とても不安だ。
復興してきた街を、ジープで行く。
今や車には全てにオート操縦機能がついていて、事故が起きそうになると、自動で停止する仕組みが取り入れられている。このため、交通事故による死者は、一年半前の停電の時を境に、全世界で起きていない。
町並みは少しずつ拡がっていて、世界最大の集約型超巨大都市は、徐々に姿を取り戻しつつある。
その中心からわずかに外れたところに。
EDF東京基地。
極東総司令部は存在しているのだ。
入り口の検問で、身分証を見せる。身分証には、ストームチーム所属のあかし。私が現状ナンバーツーであるストームチームは。現在のナンバーワンである親城中将がそろそろ引退するという話もあって、事実上私がチームを仕切っている。
現在のメンバーは二十五名。
いずれも世界中から選び抜かれた精鋭で。
またいつ攻めてくるかも知れない(とされている)フォーリナーに備えて、訓練を続けていた。
入り口から奥に入ると、以前より遙かに近代化した東京基地の光景が目に飛び込んでくる。
メタリックな色彩もあるけれど。自然なビルも幾つかある。
それらの全てが、以前とは比較にならない強化装甲で守られていて。自動防空システムは、現在でも空に目を光らせている。
軌道衛星上には、フォーリナーの迎撃のための、キラー衛星が多数。
現在。
地球人は。
フォーリナーが、もう攻めてこない事を、知らないのだ。
本部に到着。
父と顔を合わせるのは正直気にくわないが、仕方が無い。ちなみに父は大将のまま。総司令官であるカーキソン元帥が現役なので、これは仕方が無いだろう。ただし次の元帥は、父だろうとも言われていたが。
敬礼して、会議室に。
親城中将は既に来ていた。軽く話すが、やはり衰えが酷いようだ。超人達に混じって、いい年なのに無理を続けたからである。
「君は円熟しているな」
「アンチエイジングナノマシンを入れていますから」
「そうか」
特に否定もしない親城准将。
現在、アンチエイジングは簡単にできる。私は実年齢が二十代後半に入っているけれど、これを使って年齢を二十歳にずっと保っているのだ。そうすることで、戦闘力と頭のさえを維持する。
理由は簡単だ。
EDFが世界の敵認定されたときに、備えるためである。
父が来た。
もう随分長い事、家には戻っていない。父は私を一瞬だけ見たが、それだけだ。
咳払いすると、話し始める。
「復興作業が進むにつれて、物資の提供を求める声が大きくなってきている。 フォーリナーの恐怖が薄れているから、だろう」
何を茶番を。
もうフォーリナーは、攻めてこない。
彼らは、地球上でするべき事を、全てしていったのだ。だが、その後の事を考えて、EDF総司令部は、最後の戦いについて、ねつ造した。
爆発四散したブレイン。
破壊されたアースイーター。
マザーシップは巨大生物を回収すると、空に去って行った。
奴らはこう思ったに違いない。割に合わないと。
我々は、最後まで激しい抵抗を続けることで、勝つことができた。多くの犠牲を。あまりにも多くの犠牲を出したが。勝ったのだ。
その宣伝文句を見た時、私は考えた奴を殺すべきだと思った。
あの戦いで、どれだけはじめ特務中佐が、絶望したか。寡黙な中に、どれだけの怒りを、ストームリーダーが抱えていたか。
私は正直、戦いで頭がおかしくなった。それは認めるが。
二人が本当に人間らしい人間で。ずっと苦悩しながら戦っていたか、良く知っている。涼川さんも、それを思って。黙って探すのを止めたのだ。
「我々としても、市民と対立するのは避けたい。 できる限りの物資を渡していくつもりではあるが。 しかし、敵の再来の可能性がある以上、ある程度の軍備拡張は必要だ」
「そこで、提案が」
挙手したのは。
小原博士の跡を継いで、EDF科学陣のトップに収まった三島徳子。此奴もアンチエイジングナノマシンを使っているが。問題は、十代半ばにまで容姿を戻していることだ。実際はその倍も年を取っているくせに。
物理的に若作りが出来る今。
見かけと実年齢は、一致しない。
「現在、衛星軌道上のキラー衛星は絶対防空圏を構築していますが、早い段階で月に進出を進めるべきかと思います。 月の資源を有効活用して、EDFと市民の対立を緩和すべきかと」
「具体案を出してくれるか」
「此方になります」
手際よく用意されたレポート。
ざっと目を通すが、悪くない。また、幾つかの彗星についても捕獲して、資源衛星化する計画もあるようだ。
「分かった。 良い計画に思える。 各国首脳に提案してみよう」
次と、指示を出す父。
寿退職した「元」戦術士官がこの職場を抜けてから、新しい秘書代わりの人材には、これといった者が出ていない。
今の秘書官も有能とは言いがたく。私も、しらけた目で、あまり仕事が出来る方では無い秘書官を見ていた。
幾つかの問題が処理された後、私達に話が回ってくる。
「親城中将、ストームチームに一つこなして欲しい仕事がある」
「何なりと」
「月探査チームを護衛して貰いたい。 前回の大戦では、マザーシップが攻撃前に、月に集結した。 フォーリナーの何かしらの防衛設備や、残していった機械類がいてもおかしくは無い。 月探査チームも、君達の護衛であれば、納得するだろう」
「分かりました」
粛々と従う親城中将。
会議が終わる。私とナナコに、もう引退間際の中将は、面白くも無さそうに言う。
「退屈が顔に出ていたぞ」
「すみません。 実際に退屈だったもので」
「君は相変わらずだな。 まだ父君を許す気にはならないのか」
「戦場で散々苦労しましたからね」
心が狭くなった事は分かっている。
会議に真面目に臨んでいるナナコを見ると、昔はこうだったのかもしれないとも思う。だが、壊れてしまったのは仕方が無い事だ。
鹵獲技術によって、月はとても身近な場所になった。以前よりも遙かに簡単に、出向くことが出来るようになったのだ。
ただし、絶対防空圏の外側なので、あくまで軍か、探査チームくらいしかいかない。それも、フォーリナーの遺失物があるかも知れないと言う、調査が目的となっている。
アーマーが進歩したおかげで、昔のようなごつい宇宙服は必要なくなり。
今では、かなりスマートな宇宙服で、船外活動が可能だ。
探査チームが船から出て行くのを見ると。
私は久々に結集した、あの頃一緒に戦ったメンバーを、一瞥だけした。
三川は少し前に結婚したが、寿退職はせず、未だにストームチームに残っている。子供を産む気は無いらしく、ただし遺伝子情報を提供して、作ってもらった子供を育てているそうだ。
これは子供を産む事によって、産休を取らなければならないから、らしい。
激しい戦いを経て、三川も何だか変わった気がする。
或いは、私と同じように壊れたのかも知れない。最終決戦で大けがをして、意識が戻るまで時間が掛かったが。
その間に何か見たのかも知れない。本人が語らないので、どうとも判断はつかないが。
矢島は、今やフェンサースーツの大家。
あの戦いから三世代ほど強化されたフェンサースーツの試験にいずれも関わり、最新鋭品を毎回貰って使いこなしている。
私が見たところ、まだまだはじめ特務中佐ほどではないけれど。
今では、世界最強のフェンサースーツ使いとして、疑う者はない。
最近は引退して猟師に戻った香坂夫妻の所に、黒沢と一緒に出向いては、料理を振る舞ってもらっているそうだ。
原田は色々な部隊で、教導をしている。
これが非常に評判が良い。
実戦ではどうしてもパッとしないところが目だった原田だったけれど。自分で四苦八苦しながら色々とコツを掴んでいったことが、後進の育成に役立っている様子だ。実際、ストームチームの新人達も、原田をとても慕っている。
池口はというと、誘導兵器の開発に協力。
ネグリングの後継機種を毎回操っては、そのアドバイスをしている様子だ。実戦からは離れていたが、今回は最新鋭の誘導ミサイル兵器を船に乗せてきたので、彼女に任せている。
黒沢は彼方此方を出向して、各地のチームでのブレインを勤め上げてきた。
緻密な整理された頭脳は、何処の部隊でも重宝されたけれど。頑なにスナイパーとしての自分を貫き。戦いの際以外では、一切汚い手を使わなかったという。それを聞いて、ストームチームの最初の頃の黒沢を思い出して、驚いた私だけれど。
結局黒沢がストームチームに戻ってきて、もっと驚かされた。
筅が乗っているベガルタM5を見上げる。
ベガルタAXをベースに改良を進めた次世代型の、更に次世代タイプ。
巨大生物など、もはや紙くずのように引き裂ける圧倒的な力を持ち。自由自在に空を飛び回ることも可能な、最新鋭兵器だ。
筅が蓄積してきた戦闘データが、次世代型構築の要になったのは、言うまでも無い。
本人は相変わらず控え目な性格で、思った事もあまり口にすることはないけれど。戦闘での猛々しい有様は健在。
ベガルタに乗ると人が変わるという評判は、相変わらずだ。
これに十一名の新人が加わって。
周囲を、油断なく警戒して見張る。
私の補助役に収まっているナナコが、先行して探索隊の障害がないか確認していたが。フォーリナーが戻ってくるはずもない状況。正直、茶番以外の何物でもない。
すぐにナナコは戻ってきた。
「敵性勢力はなし」
「探索隊」
「分かっています」
促すと、すぐに探索をはじめる科学者共。正直、此奴らのおもりは、面倒でならないけれど。
万が一もある。
よりによって、ストームチームが失態を晒すわけにも行かない。私は退屈を感じながらも油断はしていなかった。
探索が終わるまで、六時間ほど。
結局最後まで何も無かったけれど。
それでいい。
私達は、暇で良いのだ。
地球に戻ってきた後、シャワーを浴びる。
さっぱりしたけれど。
今の時代。その気になれば、カプセルに入るだけでかなりのリフレッシュが出来る。人間の脳の解析は進んでいて。しかも、あの地獄のシェルターでの生活が、それを促進もしたのだ。
谷山さんから通信が来る。
此奴は、ストームリーダーとはじめ特務中佐が何処に消えたか、知っていると私はにらんでいる。
勿論教えてはくれない。
頭が壊れている今の私には、言えないと思っているのだろう。
「日高大佐、今暇があるかな」
「はあ、問題ありませんが」
「注意して欲しい」
不意に、谷山の声が沈んだ。
谷山によると、国連が主体になって、EDFとは別の軍組織が再建される予定だという。
対フォーリナーの武器で統一されていた今までの防衛軍組織とは違う。対人兵器を中心とした、旧来のものだそうだ。
これはつまり。
EDFから、主権を奪い返す前段階と見て良いだろう。
「暗殺があるとすれば、真っ先に狙われるのは君達です。 気をつけて欲しい」
「分かっていますよ」
実はもう、何度か襲撃未遂はあったのだ。
その度に丁重にお帰り願っているが。
ストームリーダーとはじめ特務中佐は正しかったのである。こうなることが目に見えていたから、姿を隠したのだ。
「フォーリナーについて、真相はEDF上層にしか知られていないはずですが」
「誰かが情報を漏らしたのか、それともハッキングによるものか。 いずれにしても、これから厳しい局面が来るでしょうね」
言われるまでも無い。
通信を切る。あまり長く話していると、それが傍受される可能性もあるからだ。嘆息すると、私は思う。
はじめ特務中佐。ストームリーダー。
貴方達は今、何処で何をしていますか。
地球は、フォーリナーとの戦いが終わった後。たった数年で、また元の木阿弥になろうとしています。
同一種族同士での差別、利権の争い、殺し合い。
銀河系一排他的で、凶暴で残虐な種族の本領発揮というわけです。
貴方達がいたところで、どうにもならないことは分かっています。はっきりいって、混乱が加速した可能性さえあるでしょう。
しかし、それでも。
いて欲しかった。
バイザーを出して、装着。横になって、ニュースを確認する。
各地で復興が進む反面、やはり色々な問題が噴出しはじめている。フォーリナーとの戦いの際は、それでも無理矢理押さえ込むしかなかった問題が、押さえ込めなくなってきているのだ。
このままだと、近いうちに。
紛争が発生する。
地球上には、また対人用の武器が溢れ。やがて、大国同士が仁義なき殺し合いをはじめるようになるだろう。
ひょっとすると、だが。
放っておけば地球人が滅んでしまうのは確実だから。フォーリナーは、急いで収穫に来たのかも知れない。
乾いた笑いが漏れてくる。
フォーリナーに、地球からいなくなってもらった今も。
地獄は、決してこの世から遠のいていない。
また、呼び出しが鳴る。
今度は、父からだ。
「招集だ。 急いで欲しい」
どうせ、ろくでもない用事だろう。小さくあくびをすると、適当に受け答えだけをして、私は軍服を着込んだ。
どうせ地獄がずっと続くのなら。
せめて、自分の力で、地獄を打ち払っていきたい。
そう、私は思うのだった。