地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
しかし、それは常に真実なのでしょうか。
少しずつ、意識が覚醒していくのが分かった。
此処は。
覚えている。
最後の戦いが終わった後、籠もった最終シェルターだ。フォーリナーとの戦いが長期化するときに備えて、開発が進められていた、超長期冷凍睡眠装置。
そして、私が目覚める時は。
このシェルターが開くときと、知っている。
二重三重の偽装が施された此処は、知っている者がそもそも殆どいない。開けるためのパスワードでさえ、複数に分割して、信頼出来る人間に託したのだ。しかも、一つでも失われると、開かない。
内側からは開けられるけれど。
正直な話、開ける気は最初から無い。
眠っていられるなら。世界の終わりまで、眠っているつもりだった。それが、目が覚めたという事は。
このシェルターに、侵入を試みている者がいて。
そして、間もなく入ってくる、という事だ。
物理的な破壊が試みられた場合、このシェルターに接続されている核融合炉が爆発するようになっている。
これを作ったのは、国連の要人の一人。
絶対に助かりたいし、虫に食われるのも嫌だ。
そういって、地下シェルターの更に最深部に。こんな仕掛けを作ったのだ。勿論本人がいないということは、どういう結末に終わったかは明らか。避難の途中に、巨大生物に食われたのである。
そして此処だけが残った。
小原博士の置き土産のデータから、偶然存在を知った三島が。シェルターを用意して欲しいと言う弟に、これを準備して渡したのだ。他にも小原博士の置き土産は、色々と地味な形で最終決戦で役立っていたそうだが。具体的にどのように役だっていたのか、私は良く知らない。
カプセルが開く。
ぼんやりと霞が掛かった頭を振って、まずはバイザーを身につける。時計を確認すると、眠りについてから、百七十年が経過していた。
そうなると、ここに来ようとしているのは、宇宙人かも知れない。勿論、此方を確実に殺すためという可能性もあるが。
シェルターの外には、警告の一文もある。
状況から考えて、多分相手は、正面からパスワードを解除して、入ってこようとしている。もし手段を選ばず殺すつもりなら、核融合炉を爆破するはずだ。もっとも、たかが二人を殺すために、其処までするとは思えないが。
念のため、側にあるAF100を手に取る。
銃弾について確認。此処にも小さな弾薬庫はあるし、しばらく戦うだけの備蓄は充分にある。
弟は。
隣のカプセルを見て。
私は愕然としていた。
カラだ。
誰も入っていない。そんな馬鹿な。最後の戦いの時、酷く傷ついた私を、弟は引きずって。このシェルターに連れて来たではないか。
まさか、彼奴。
私だけをシェルターに残して、出て行ったのか。
酷く自分が動揺しているのが分かった。弟が、こんな事をするなんて。彼奴は一体、どこに行ってしまったのだろう。
慌ててカプセルから出て、転びかける。周囲は非常用電源で照らされていて、お世辞にも明るいとは言いがたい。
まだ体は本調子じゃない。
頭を振って、混乱を何とか押さえ込もうとする。体は、大丈夫だ。鈍っていない。馬鹿が金と技術の粋をつぎ込んで作ったこれは、冬眠なんて生やさしい状態ではなくて。体だけを完全に凍結させて、その瞬間を保存し。必要に応じて、生きた状態で解凍する、ウルトラテクノロジーだ。
何とか立ち上がる。
体の方は、完全に治っている。多分強制睡眠モードに入る前に、カプセルが完全回復にまで持ち込んだのだろう。
辺りを見回して、状況を整理していく。
武装についても確認する。
深呼吸して、やがて落ち着きを取り戻すと。するべき事が、全て自分の中でまとめられていた。
この狭い場所で、いきなりフェンサースーツで戦うのは、あまり好ましくない。まずはアーマーを重ねて、簡単には死なないようにする。このシェルターは三層式で、この睡眠フロアの上は、広いホール。その更に上に、入り口でもあり、敵を防ぐための壁でもあるフロントフロアがある。
階段を上がって、ホールに。
まだ敵の姿はない。
広いと言っても、高さも奥行きもそうはない。
入り口への通路は一本だが。これは、敵を可能な限り、途中の武装で削り取るためのものだ。
最悪の事態に備えた脱出口もある。
だが、入り口が抑えられている現状。
其処も、塞がれていると見るのが自然だろう。
入り口にまで来た。
外からは、正規の手段での解放が試みられているようだ。勿論、だからといって、友好的な勢力が入り込んでくるとは限らない。
AF100を構えて、私は様子をうかがう。
バイザーに警告が来た。
あと五分ほどで、入り口が開放されるという。
舌打ちすると、私は最終チェックを行う。装備はいずれもが問題なし。もっとも、百七十年も経過した世界だ。
AF100なんて、オモチャ同然のゴミと化している可能性も高かったが。
敵対勢力に捕まったら、どうなるのだろう。
勿論自爆用の小型爆弾ぐらいは用意がある。陵辱されるくらいだったら、その前に木っ端みじんになって死ぬ。
ただ、弟と会えないのは少し悲しい。
ほどなく。
光が、差し込みはじめた。
おかしな話だ。
此処は大深度地下。どうして、光などが、差し込んでくるのか。
「開きました!」
「救世主殿は!」
何が救世主か。
声色は複数。喋っている内容からして、宗教関係者か。何だか、馬鹿馬鹿しい話だ。本物の神と一番近い相手と、一番激しく戦い。
結果吸い尽くされるだけ吸い尽くされて。
守るべきものも禄に守れなかった残骸品を求めてやってきたのは、宗教関係者だというのか。
縄ばしごが下ろされて。
降りてくる粗末な格好の人影複数。
動きからして、明らかに素人だ。武器も碌なものを持っていない。何だアレは。旧時代のライフルか何かか。
分析結果が、バイザーに入る。
危険度E以下。
全部まとめて、巨大生物、黒蟻一匹にも値せず。
ため息をつくと、私は進み出る。
「何だお前達は」
「貴方は……」
「その見慣れぬ格好! 救世主様に違いない!」
「私は救世主などではないが」
舌打ちする私に。
シェルターに入ってきた粗末な格好の連中は、まるで蛙のように這いつくばってひれ伏した。
シェルターから出て、真っ先に驚かされたのは。
辺りが草原になっていると言うことだ。
ただし、外は通信状態が明らかにおかしい。通信設備が、ないのかも知れない。
此処は東京の筈。
しかし、GPSも反応しないし、周囲のレーダーも様子がおかしかった。
一体、何が起きた。
粗末な衣服を着込んだ連中は、救世主様と私を崇めるけれど、具体的な事は何も分からない様子だ。
頭を掻くと、バイザーに蓄えられているデータを活用して、周囲の状態を順番に調べていく。
温湿度は問題なし。
歩いて行くと、海に出た。極めて美しい海だ。汚染されている様子も無いし、此奴らを脅かすような怪物だっていない。
一体此奴らは、何を怖れているのか。
ふと気付くが。
拡がっている自然は、あくまで平穏で。破壊の跡があまり見受けられない。文明の残骸に、植物が根を張ったという雰囲気は見受けられない。何かしらのカタストロフが起きてこうなったとは、思えないのだ。
戦争なり、異文明の侵略なりで、人類が滅んだのでは無いのか。
神の所に案内したいというので、私はついていく。
東京は、名残もない。
辺りにあるのは、極めて原始的な家屋ばかり。文明と呼べるものも、殆ど残っていないようだ。
ただし、貧しい生活をしている者達は、極めて健康に見える。
辺りにある自然も脅かされていることもなく。人間は、自然と極めて自然な協力関係を作り上げているようにしか思えない。
何が此奴らを、駆り立てているのか。
神だという存在の所に連れて行かれる。
石を積み上げた、粗末な祭壇。
ピラミッドのような巨大さはなく、かといって精緻なギリシャの古代神殿のような空気の良さもない。
ただ、其処にあったものは。
私を驚かせるに、充分だった。
間違いない。
祭壇に安置されているそれは。
弟のヘルメットだ。
「姉貴、来たか」
「お前……」
声は聞こえる。
そしてその声は。どうやら、祭壇の下に格納されている。この辺りに拡がった、生体コンピュータからのもののようだった。
弟を神と崇める連中には、外に出て貰う。
そして、話を聞かせて貰う事とした。
一体世界に何をしたのか。人類は、どうしてしまったのか。
弟は、こともなげに、いう。
「人類は、宇宙に出るのを急いだ。 そして多くの犠牲を出しながらも、フォリナが文明人と認めるランクまで技術力を伸ばした。 その結果、フォリナと第二の遭遇を果たしたのだ。 今から七十年ほど前だな。 そして約束通り、フォリナに厚遇されて、一定の地位を銀河系で獲得。 今は七つほどの星系に拡がって、人口も二百億少しまで増えている」
「では、此処の有様は何だ」
「此処はな、地球を出て行くのを嫌がった連中の子孫達が暮らしている場所だ。 地球は現在、非常に重要な保護区域とかしていて、フォリナが管理している。 此処にいる人類は、言うならば昔でエコロジストと称した連中だ。 そして彼らは、いつ外にいる神々、フォリナのことだな。 フォリナが怒って、功徳が足りない自分を殺戮しようとするかも知れないと、怯えている」
愕然とする。
たったの七十年で、地球に残った人類は此処まで退化したのか。
確かに、昔のSF予想図などで、こういった光景はあった。自然との共存を目指した人類の未来図という奴である。
此処にいる此奴らは、自然との理想的な共存を果たすことで、脅威を忘れた。
いや、違う。
普段ないからこそ、圧倒的な脅威を、むしろ神威として恐れるようになったのだろう。そして、弟は。
フォリナと、取引をしたのだという。
自身のデータをくれてやる代わりに。半永久的に生きられる肉体と。そして、この地区の管理権を手に入れたというのだ。
言葉が、出ない。
弟の意図が、分かってしまったからだ。
このやり方なら、地球を完璧なまでに守れる。それだけじゃあない。
ずっと苦悩し続けていた私を。
より完璧な形で。苦悩から解放される。
私を傷つける奴も、戦わせようとする奴も。もはや、この世界にはいない。そして銀河系を支配するフォリナに楯突いてまで、この星に侵略を仕掛ける存在だって、現れる事はない。
私は、ただ主体性の無い恐怖に怯える連中を。
何もせず。見下し続ければ良い。
昔、私がされた事を、そのままやり返せる。
そして極限まで弱体化した此奴らには、もはや私を害することは出来ない。特にフェンサースーツを装備した場合。
此奴らを皆殺しにすることだって、私には容易だ。
「そうか、この環境を作るために、お前は」
「俺は、姉貴が苦しんでいる様子を見るのが、悲しかった。 どれだけ戦っても報われることなく、傷ついても苦しんでも、人類という存在は俺も姉貴も認めない。 英雄として評価はするが、その後には排斥するだけ。 わかりきっていた事実から目を背けられず、ただすり減っていく姉貴の様子が、ただ悲しかった」
弟は。
だからストームリーダーは。
本当の意味での、護星の存在となった。
そしてもはや、私は。この星では誰にも脅かされることはない。更に言えば。地下の彼奴との融合を果たした私には、事実上の寿命だってない。
もう私は。
気分次第で地球にいる人類を皆殺しにすることだって出来る。
私がそうしたいと願えば、躊躇なく弟は、その手助けをするだろう。
頭を振る。
そして、私は。
顔を上げた。
「お前も、私同様。 病んでいたのだな」
「否定はしない」
当然だろう。
あれだけの数を殺し、味方も殺しに殺され。毎日戦いに戦い抜いたのだから。
実のところ、ストームチームベテラン勢は、全員が弟の協力をしてくれたという。ジョンソンやエミリーまでもが、だ。
日高司令も、である。
百年ほど掛けて、地球人類が地球にこだわる必要がなくなると。
雌伏の必要もなくなった。
後は大きな恩を売りつけてやったフォリナに、取引を迫るだけ。相手は勿論、大乗気であったという。
弟の戦闘データを取ることが出来れば。
新しい肉体が老いたときにも。また新しい進化した肉体を、造り出す事が出来るのだから。
しばらく、一人にしてくれ。
そう言い残すと、私は神殿を。変わり果てた弟の所を出た。
文字通りの神となった弟は、もう人間とは言いがたい。人間としての肉体は、地下の生体コンピュータのコアとなっている上、もはや何が何だか分からないスペックの戦闘力を得ているようだ。
私のためにやってくれたと言うことは、分かっている。
それはとても嬉しいし。弟の事は今でも唯一の肉親だと思っている。
それなのに。
どうしても。昔の弟と、同じように考える事は出来なかった。
結局の所、護星の戦士とは、何だったのだろう。
歩いて行くと、石像がある。弟の信者共に聞くと、なるほど、納得がいった。これは涼川ににている。此方は谷山。
これは香坂夫妻だ。とても仲が睦まじそう。
一騎当千の猛者達。
旧ストームチームの面々もいる。死んだ奴もいるし、最後まで生き延びた奴もいる。懐かしいと思いながら、私は歩く。
山の上まで歩くと、絶景が見えた。
完璧に管理された山林。
其処は、まさに至玉の芸術。
そして、同時に。
冥界でもあった。
腰を下ろすと、私は信者共が持ってきた食糧を口に入れる。頭に来るほどうまい。これが、自然の味か。
もう、世界は守る必要さえない。
だが、しかし。
弟は、その世界を作るために、途方もない犠牲を払った。きっと、苦しいだろう。現在進行形で。
地球人類が、恩を忘れない種族だったら。弟はこんな事をしなくても良かったのだ。だが、守るべき人々が、どういう性質を持っているか、弟は知っていた。
だから雌伏に移ってからは。この計画を進めて。そして自分の全てを犠牲にして。計画を遂行した。
地球を出て行った人類は、今や大繁栄を遂げているだろうが。
もはや我々には、関係がないことだ。
そして私には、もはや弟を、どうしてやることも出来ない。
EDFという歓喜の声が。私達が戦い抜いた後、一体何年響き渡っただろう。多分、何ヶ月もなかったはずだ。
石像には、若き戦士達のものもある。
彼らは尊敬されなかった。
だからこその結果なのだろう。
ごろんと転がると、私は空を見上げる。もはや脅かされることもなく。穏やかな空気が取り戻された世界。
「あーおいちきゅうをまもるためー、いーでーえーふのしゅつどうだー」
子供が歌っている。
そうか。この歌は、きっと弟が残したのだろう。
「きらめくしょうりのいなびかりー。 うちゅーじんどもやっつけろー」
意味も分からず。
何が過去にあったかも知らず。
無邪気に歌う子供達。みんな粗末な格好をして、完璧な管理をされて。平穏な中、生きていく者達。
私に害を為す事は、絶対に出来ない。
涙が出てきた。
私は結局、最後まで。
世界がどうあろうとも。
戦士であることに、代わりは無さそうだった。
英雄が、排斥されずに生きていく世界というものは、こうも悲しく、むなしいものなのか。
涙を擦ると、体を起こす。
今はせめて、こうなってしまった世界を少しでも見て廻り。そして今後、何をするか、考えよう。
そして、私は。
無駄に有り余った時間を、どう活用するか。
少しでも、考えて行かなければならなかった。
(地球防衛軍4二次創作、2025絶滅螺旋、完)
フォーリナーとの戦いは終わりました。
不要となった英雄は消えました。
それがどういう意味を持っていたのか。
それはそれぞれが考える事です。
戦いはそれぞれの利害があって始まります。それがどれだけ愚かだろうと、切実だろうと、関係はありません。
ただ戦いが起きて。そして生き延びた。
それだけが、結果としてあるのでした。