地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
元々無茶な戦闘ではどうしようもないのです。
幸い、ストーム1は二人います。
連携しながら、互いのダメージをカバーして動くしかありません。
私は結局EDF東京支部に搬送され、其処でバイザーを通じて弟の戦いを見ることになった。
相手は無数の凶蟲だが、航空支援がある状態では、此方に分がある。
谷山が砲撃地点を指示。
攻撃機アルテミスが、敵に重機関銃の弾丸を雨と降らせる。流石に十メートルを超える巨体でも、この巨弾を受けてしまうとひとたまりもない。今回は、制空権が味方にある。前大戦よりも、巨大生物には対処がしやすい。
今の時点で、弟が攻撃を担当している戦域に、レタリウスは出ていない。攻撃機は存分に猛威を振るえる。
地上戦力にとって、攻撃機が悪夢に等しい相手だと言う事は。昔と変わっていない。それは巨大生物とて同じ事だ。
秀爺による狙撃が開始。
谷山は支援を担当しながら、香坂夫妻の護衛にもついて貰っている。空爆課の兵士にも、自衛のための武器は渡されているのだ。
流石に日高も悪いと思ったのだろう。
今回の作戦には、弟が率いるストームにレンジャーの一部隊が追加で参加している。弟は文句一つ言わず、彼らとともに、凶蟲との死闘を繰り広げていた。
ビル街を音もなく飛び回りながら、無数の糸を飛ばしてくる凶蟲は、昔から大きなレンジャーにとっての脅威だった。
糸がそれぞれ、弾丸以上の運動エネルギーを持ち、酸と毒を有しているからだ。
ベッドに横たえられた私は、幾つかの器具を付けられて、回復作業を急ピッチで進められている。
実は医師は、最初これに反対した。
自然の回復に任せるべきだというのである。こういった機械に頼った回復をすれば、体への負担が大きいというのである。
しかし、私はそうしてくれと、敢えて言った。
先ほどの地底への攻撃だって、私がいなければ、更に数人が死んでいたはず。ストームが参加しなければ、スカウト6は全滅していただろう。
病室に誰か入ってきた。
気配ですぐに分かる。三島だった。
「うーん、相変わらず抱きしめたいくらい可愛いわ」
「ああそうかい。 年齢ではお前より上なのだが」
「そんなの関係無いもん」
子供みたいな言動に、流石にげんなりする。此奴は若くしてEDFでも認められている俊英というべき存在だが。それが故に、精神の歪みっぷりも半端ではない。バイザーを付けている所を見ると、戦況については知っている筈だ。
ベッドに縛り付けられて、事実上身動きできない私は、戦況を見ていることしか出来ない。
眠るべきだと医師には言われたのだけれど。
せめて、この作戦の状況を確認してからでないと、眠る気にはなれなかった。
三島は看護師に目配せ。退室して貰う。
さてはなにか、ろくでもない事が起きたなと、私は思った。
「良くないニュースが一つ」
「この状況下でか」
「月面に集結しているマザーシップの件が、マスコミに漏れたわ。 誰がリークしたのかは知らないけれど、厄介なことになりそうよ」
「……恐らくは、EDFが抱えている天文学者の誰かだろうな」
違う事を知った上で、私は敢えてそう言う。
EDFは一枚岩じゃない。特に大戦後の復旧が進む中で、多くの異分子も入り込んだ。マスコミと関係が深い上層部もいる。
今、左手だけは動かせる。
バイザーを操作して、ネットに接続。
調べて見ると、まだ今の時点では、国連が押さえ込んでいるのか、情報は流れてはいなかった。
弟は優勢に戦況をコントロールしている。秀爺の狙撃支援もあって、担当地区から凶蟲を間もなく駆逐し終える。
だが、いつもと同じだ。
手強いとみた凶蟲は、さっと撤退した。
弟といえど、敵を皆殺しに出来たわけではない。人類最強の超人だろう弟でも、それは無理だ。
「相変わらず素敵ね、一郎君」
「あまりつきまとうな。 彼奴も苦労が絶えないんだ」
「あら、嫉妬? かーわいい!」
「くっつくな、鬱陶しい」
左手でくっついてこようとする三島を押しのける。
咳払いの声。
日高が、病室を覗いていた。
「うぉほん。 取り込み中の所、すまん。 用事がある」
同じ基地の敷地内とは言え、日高が直接来ると言う事は、多分ろくでもない用事だ。流石に三島も、支部司令官の前では、遊んでいるわけにも行かないのだろう。一礼すると、病室を出て行った。
日高も、私の事を最初に知ったときは、驚いていた口だ。
白衣を着せられ、ベッドに縛り付けられている私の横に座ると、感慨深そうに言う。
「前の大戦でも、君達には随分と苦労を掛けたな」
「このくらい、前の大戦に比べればなんと言うこともありませんよ」
「まだ始まったばかりなのに?」
「ええ。 前は武器が劣悪すぎて、目の前で死んでいく兵士をどうにも出来ませんでしたから。 今回は装備が優秀で、ある程度の人数を救えるだけ、マシだというものです」
病室の外を、急患が運ばれて行く。
東京支部では、巨大生物の巧みな組織戦に振り回されて、今も現在進行形で多くの被害を出している。
幸いにも、夕方になってから、敵の動きは沈静化した様だけれど。
それも明日になったら、また小さくない被害が出ることだろう。
「わざわざ来たと言うことは、何か大きな作戦ですか」
「意見を聞きたいと思ってね。 私も、自分が無能だと言う事は理解している。 現場にいる君達から、被害を減らすための意見を聞いておきたいのだ」
「……そう、ですか」
日高も弱気になったものだ。だが、理由については、分からないでもない。
彼の娘は、今前線で戦っているのだ。
指揮がまずければ、娘は死地に追いやられることになる。勿論、娘だけを特別扱いできない。
出来る様な、生ぬるい戦況では無い。
「フォーリナーと連動されると面倒です。 巨大生物は、今のうちに可能な限り葬るべきでしょうね」
「やはり、そうか」
「ただし、味方の被害が大きくなると、前回の十倍に達する規模の敵に、対処が出来なくなります」
今の時点でも、正直な話、かなり厳しいのだ。
東京近辺の敵だけでも、片付けられれば。
話はかなり変わってくる。
今回の作戦で、敵の中枢に、小さいながらもくさびを打ち込むことには成功した。作戦自体は、間違っていないのだ。
女王さえ叩いてしまえば。
東京の地下は、安全地帯になる。
ただ、七万を超える巨大生物を、女王を叩いただけで無力化できるわけではない。掃討作戦には、かなりの被害が出ることを、覚悟しなければならないだろう。
「手が足りない場合は、私が前線に立ちますが」
「考えておく。 今は休んでくれ」
日高が病室を出て行く。
代わりに、というべきなのだろうか。
弟が、通信を入れてきた。
「姉貴、容体は」
「今、急速に回復中だ。 この様子だと、恐らくは明日中には、身動きが取れるようにはなるだろう」
完治するとは言っていない。
だが、元々私は強化クローンだ。この程度の傷なら、放って置いても治る。弟は、何もそれについては言わなかった。
「日が暮れて、敵の動きが止まった。 今日の作戦行動は、此処までだろう」
「凶蟲が出てきて、敵の手に落ちた地区が増えたか」
「ああ。 またかなりの地区を、敵に奪われたな。 予備役の再訓練と新兵の短縮プログラムは、南米支部に任せるとして。 各地の支部から増援が来ても、このままだと押し切られる可能性が高そうだ」
フォーリナーはひょっとして。
高みの見物をしているだけで良いのではないのだろうか。
一枚岩とはとうていいえない人類の無様さを、月で笑いながら見ているだけで良い。後は巨大生物が、勝手に処理してくれる。
「お前も無傷とは言えないだろう。 応急処置は受けておけ」
「姉貴ほどじゃないさ。 それと、スカウト6の連中が、姉貴に礼を言っていたぞ。 ありがとう、だとよ」
「救えなかった奴もいるし、その礼は受け取れない」
「受け取ってくれ。 彼奴らが割り切るためにも、重要なことなんだ」
言われなくても分かっている。
だが私は。心も体も、弟ほどは強くないのだ。
通信を切ると、ベッドで寝返りを打つ。
看護師が入ってきて、点滴を外した。医師の診察を軽く受ける。驚異的な快復力だと、驚かれた。
「しかし、それにも限界がある。 無理はしないように」
「分かりました」
言葉だけ、そう返した。
これからもっと無理はしなければならない。無理をしなければ、もっと多くの人々が、死んでいくのだから。