地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
全くの無傷ではなく、二隻を撃墜し、二隻を行動不能にできました。
ですがそれでも、六隻が地球に降下。単純に計算しても八年前の六倍に達する戦力。更に地球に潜伏していた巨大生物が活動を活性化させている状況です。
迎撃が始まります。絶望的な迎撃が。
マザーシップが降下し、太平洋上の一角を占拠してから、やはりというかなんというか。巨大生物の動きは、今まで以上に活発化した。
ドイツでの巣穴攻略作戦はどうにか成功。南米に続いて脅威を取り除くことは出来た。しかしまだ全世界で十カ所の巣穴が残っており、なおかつ東京地区にある最大規模のものは健在。
また、マザーシップは続々と周辺に麾下の戦力を展開しているという報告がある。
水中でも平然と動き回るフォーリナーの戦力は、既にいつでも進撃が可能な状況だという報告さえあるようだ。
全世界が固唾を飲む中。
毎日ストームチームは、堅固な敵陣を攻略させられ。
疲弊が溜まらないようにと、その後は強制的にカプセルで休まされた。
三川の様子を見に行く。
PTSDの研究は、昔に比べてぐっと進んでいる。実際今回の戦いでも、初期からPTSDに掛かってしまう兵士は多く出ていた。
三川だけが特別に心が弱いわけではないのだ。
病棟に出向く。ストームチームだと告げると、すぐに医師が出てきた。恰幅がよいよく太った初老の男性である。
軽く三川の病状について、説明を受ける。
「今、投薬によって、トラウマの除去を行っている状態です。 無理にトラウマを除去すると、永久に復帰が不可能になる場合も多いので、慎重に、ですが」
「上手く行きそうですか」
「まあどうにかなるでしょう。 もっと重い症状の人でも、今は回復する事が可能になっています。 ただ、今月中の復帰は諦めてください」
「そうですか。 分かりました」
他人事では無い。
私も最初に戦いに参加したときは。目の前でゴミの様に食い殺されていく同輩を多数見せつけられて、何度も吐いた。
弟だって、今は鉄のような心を保っている様には見えるが。
それでも、最初の頃は、私に愚痴を吐くことだって多かったのだ。私だって、弟に散々泣き言を聞かせた。
誰だって、最初から何でも出来るわけではない。
最初から出来るように作られた自分たちでさえこれなのだ。だから、私には、三川を責める気は無かった。
病院を出てから、スーツのバイザーを起動。
弟に状況を話すと、そうかとだけ帰ってきた。
「部隊拡張についてはどうする」
「兵器類の提供をして貰うつもりだ」
確かに、人員を下手に増やすより、その方が良いかもしれない。しかし、実のところ、一人だけ増やすことが決まっている。これはまだ弟に話していない。多分同じ性別だからという事で、私の所に最初に来た。
日高に頼まれているのだ。
職権乱用かと思うかも知れないがと、日高は言っていたが。
やはり、心配でならないのだろう。前線で戦っている娘をストームで面倒見て欲しいと言うのである。
ただ、これに関しては、日高と関係強化をするという意味でも、やっておいて損は無いかも知れない。
それを話すと、弟は多分、通信の向こうで腕組みした。
文字通り血を分けた弟だ。多分、普通の弟よりも関係性は濃い。だから、それくらいは分かる。
「日高中将の娘御か」
「そこそこに優秀な兵士だとは聞いている。 三川があのようなことになっている現状でもあるし、戦士は一人でも多い方が良い。 マザーシップが上陸した後は、恐らくは脱落者のケアどころでは無くなる」
酷い話だが、戦争である以上、現実を第一に考えなければならない。
三川のケアは、専門家に任せる。
脱落する場合は、別の人員を入れる。
勿論復帰してくるのなら、最大限の尊重はするし。兵員としてカウントもする。本音を言えば、三川には戻ってきて欲しい。新兵訓練の時に、この子は伸びると思ったからである。
弟だって、反対はしなかった。
通信を一旦切る。
既に、出撃するべく、皆が集結していた。
これから今日中に二つ、レタリウスが制圧している地域を奪還しなければならない。レタリウスを放置しておくと、極めて堅固に巣を張り、長距離砲撃での駆除さえ難しくなる事が分かってきているのだ。
私が列に加わると、弟が軽くブリーフィングを開始。
後は車両に分乗して、戦地へ向かう事になった。
マザーシップ到来は早くても一週間後と日高は言っていたが。
私にはそうは思えない。
数日以内に、奴らが来てもおかしくは無い。可能な限り、巨大生物の駆除を、進めておくべきだった。
マザーシップの上陸に先駆けて、各地のEDFから緊急通信が来る。
先遣隊と思われる飛行ドローンと輸送船が、各地の大陸に大挙して現れているというのである。
輸送船からは、ヘクトルも投下されている。
昔は、機能をダウンさせたヘクトルしか、輸送船は運べない様だったのだけれど。恐らくは、輸送船そのものが機能強化されたのだろう。
マザーシップ降下から、わずか二日のことだ。
まだ、極東近辺には、フォーリナーの軍勢は来ていない。
ストームチームが奪還した港湾地区を中心に迎撃のための部隊が出ており、相当数の兵器が展開している。
来たとしても、簡単に近寄らせはしない。
ただし、それは敵が、まっすぐ東京支部を目指して来た場合、だが。
敵の空白地帯になった欧州、南米にも、フォーリナーの機械化軍は襲来。次はアフリカの巨大生物の巣穴を攻略に向かう予定だったオメガチームも、既に釘付けにされている状態になっていた。とてもではないが、よその攻略を行っている状況では無くなったのである。
南米支部も、状況は近い。
予備役兵の再訓練は間に合い、どうにか敵と互角以上の勝負はしている様だが。
短縮プログラムで訓練中の新兵は、とてもではないが、まだ前線には投入できる状況では無い。
或いは、巨大生物に対する大々的な攻撃が、マザーシップの降下を早めたのでは無いかと言う説もある。
この説は、小原博士が提唱した。
移動中の車の中で、小原の発表を聞く。
「フォーリナーにとって、巨大生物はおそらく単なるペットでは無い。 前大戦でも、尖兵としてけしかけるのでは無く、明らかにヘクトルや飛行ドローン、当時はガンシップと呼んでいたが、いずれにしても護衛の戦力を派遣して、巨大生物を守る様子が見られたほどだ」
黒沢も、この発表については、同意できると言っていた。
私にも、それは考えられる事だと思う。
巨大生物は、あまりにも単体に関して、ドライな反応を見せる。死んだ同胞には見向きもしないし、多数を生かすために少数を簡単に犠牲にする。ただ、それが、群れ全体を一つの命としてカウントしているのならどうか。フォーリナーの一見雑に見える護衛も、巨大生物を全体で一つとして考えているのなら。むしろ手厚い保護にさえ、見えてくる節がある。
前線に到着。
一週間ほど前に陥落した地区なのだが、放置していたらレタリウスが出現。あっという間に陣地が構築された。
レタリウスは、巨大生物に対する戦略を、変えてしまった。
此奴が現れると、空軍戦力による攻撃さえ危うくなる。一キロ先からの長距離精密狙撃と、分厚い陣地の構築能力。どうしても、時間を掛けて、敵陣を攻略していくしか、今は有効な戦術が無い。
そして精鋭が此奴に張り付いている間に、巨大生物は確実に陣地を広げていくのだ。
三島が、今回もサンプルが欲しいと言ってきている。
ジョンソンが新兵達を展開させた。
涼川が出てくる。
彼女が抱えているライフルは、EDFによって開発された最新鋭のものだ。そして今回は、特殊なアーマーを身につけている。
対レタリウス用の装備として、EDF科学陣は何種類かのアーマーを実験的に開発している。
この有能さだけは、前大戦から変わっていない。
対応力の速さだけは、救いだ。
今回の作戦は、実験的に涼川が、新しい戦術を試す。
私と弟は、サイドで涼川を支援。
かなり激しい戦術になるが、やってやれないことはないはずだ。
遠距離に展開しているネレイドは、無数に重なりあう巣を、既に視認している。また、敵への狙撃が可能な地点に、香坂夫妻は既に陣取っていた。
「流石に、ぞっとしねえなあ。 なあ、旦那」
「無茶は承知の上だ。 この戦術が上手く行けば、レタリウスの攻略に弾みがつく」
「確かにそうだけどよ。 この新型アサルトは確かにあたしとしても使って見たいし、戦術については分かったけどな」
「気持ちは良く分かる」
涼川は怖じ気づいているのでは無い。
戦士として凶暴なことと、無謀なことは、必ずしも一致しない。
「よし、行くぞ。 作戦開始!」
GO。弟が声を掛けると、舌打ちしながらも、走り出した。
私は渡されている最新型のシールドを構えると、弟と一緒に走る。レタリウスが、早速。陣地に真正面から向かってくる三人を捕捉。膨大な糸を吐きかけてきた。
新兵達が、一斉に攻撃開始。
グレイプの速射砲が火を噴く。スティングレイの砲火が、敵陣に襲いかかる。
それだけではない。
今回は、ビルの屋上に陣取ったエミリーが、試験的に渡されている長距離狙撃兵器を試している。
MONSTERシリーズ。
今回渡されているのは試作品一号。一撃でウィングダイバーのプラズマジェネレーターが産み出すエネルギーの大半を消耗してしまう化け物の様な火力で、敵を一気に薙ぎ払うことが可能だ。射程に関しても、レタリウスを凌ぐ。
ただし、あまりにもエネルギー消耗が凄まじいため、ウィングダイバーが得意とする空中機動を行えない。バイザーで情報をリンクしながら、冷静かつ的確に、敵を撃っていくことが求められる兵器である。
レールガンが咆哮。
近くにいるレタリウスを薙ぎ払う。
更に一瞬遅れて。エミリーからの狙撃が着弾。
瞬時にレタリウスが火だるまになり、その巣にまで着火。鋭い悲鳴を上げながら、レタリウスが燃え尽きていった。
「ワーオ、凄いわ」
「消耗は」
「お察しよ。 連射したら、ジェネレーターが焼き付くわ」
糸が、ひっきりなしに飛んでくる。
私が盾を構えて、正面で敵の攻撃を受け止めながら、走る。その間に、涼川は、渡されている新型アサルトの起動準備を済ませていた。
だが、撃つにはまだ早い。
弟が手にしているアサルトの射程に、敵陣が入る。
走りながら、弟が射撃を開始。目につく位置にいるレタリウスを薙ぎ払う。
糸が着弾した。
盾で防いでいても、どうにもならない。文字通り、四方八方から飛んでくるのだから。
しかし、鳥もち状の部分が、弾かれる。
新型アーマーの特性だ。ただし、装甲そのものは、今までのアーマーより劣る。あまり、長くは持ちこたえられない。
三人の突撃にあわせ、ネレイドが攻撃開始。
中空からの大火力を集中し、一気に敵陣へ穴を開け始めた。
迎撃に出てくる蟻と凶蟲。
弟がレタリウスから、蟻と凶蟲へターゲットを切り替える。同時に私も、ハンマーへと武装を切り替えて、跳躍した。
真正面から、敵とぶつかり合う。
敵に激しい攻撃を加え。
敵からも膨大な糸と酸を浴びながら、敵陣に踊り込む。
一気に負荷が増していく状況が分かる中。
涼川が、雄叫びを上げた。
「そらあっ! 消毒してやるぜ、蟲どもがっ!」
ぶっ放された大火力は、とてもアサルトのものとは思えない。
虹色に輝く凄まじい熱線が、瞬時に視界にいる全ての敵を薙ぎ払っていった。
フュージョンブラスター。
以前からオメガチームに配備されているレーザーライフルの発展型。あまりにも高エネルギーを用いるため、充電には専門の施設が必要になってくるが、その瞬間的火力はまさに絶大。
レタリウスが、ものの二秒と保たずに燃え尽きる。
レタリウスの巣も、冗談の様に燃え上がる。
蟻や凶蟲に到っては、鎧柚一触。視界にいる敵が、見る間に焼き尽くされていくのを見て、新兵達が歓声を上げているのが、バイザーを通じて分かった。
だが、欠点もある。
エネルギーの消耗が激しすぎるのである。
あっという間に、エネルギーを使い果たしたフュージョンブラスターは。もう再装填も出来ない。
「一本目終わり! 二本目っ!」
涼川が、最初のフュージョンブラスターを放り捨て、二本目を取り出す。
これの発射準備も、既に終わっているのだ。故に、突入するまで、涼川は何も出来なかった。
走りながら、涼川の邪魔をしようと苛烈な攻撃を繰り出してくる敵を、根こそぎ排除していく。
敵が後退を開始するのが分かった。
まるで、空が丸ごと燃え上がっていくような光景。
既に、重なりあっていた銀糸はない。ただし、フュージョンブラスターも、エネルギーを消耗し尽くしていた。
燃え尽き、落ちてくる巣の残骸。
死んでいるレタリウスも、殆どが消し炭だ。
開戦当初に死んだものだけが、比較的マシな死体を残してはいたが。それもバラバラになっていたり腹に大穴があったりで、サンプルとしてはおそらく使い物にならない。
涼川が舌打ちしながら、焼け付いた銃身を放り捨てる。
敵は既に敗走を開始。ただし、此方にも追撃する余裕は無い。
突入した三人全員が、満身創痍になっていたからだ。無理もない話である。このような強行突入を、特化仕様のために性能に劣るアーマーで敢行したのだから。
特に涼川は、忌々しげにフュージョンブラスターを見下ろしていた。
「確かにすげえ武器だが、あたしの好みじゃあねえなあ」
「継戦能力に劣るか」
「そうだ。 際限なく爆発物で敵をぶっ殺すのがあたしの好みだ。 次からは旦那、あんたが持ってくれや」
「承知した」
凄まじい熱を銃身が放っている。
これはおそらく、持ち続けていたらアーマーにもダメージが行き、それを貫通されたら体が瞬時に燃え上がってしまうだろう。
とんでもない武器を、EDF科学陣は作り上げたものだ。
或いは、決戦兵器かも知れない。確かにこれなら、練度に劣る兵士でも、ヘクトルと互角以上に渡り合える。
しかし涼川が指摘したように、継戦能力のあまりの貧弱さが気になる所だ。
通信が日高から入る。
声がわずかに上擦っているのは。今まで散々手こずらせたレタリウスによる堅陣を、一瞬にして撃破する事に成功したからだろう。
「新戦術は有効なようだな。 既に此方からも、地域の奪還は確認した。 流石だ、ストームチーム」
「だがこれは、おそらく再現するには最精鋭による肉弾攻撃が必要になります。 人員の消耗を抑えるためにも、ストーム以外のチームに任せるのは止めた方がよろしいかと」
「もう少しデータが欲しいが、君達の消耗も著しいようだな」
一旦の帰還を指示される。
昔だったら、そのまま戦わされていた可能性が高い。ただ、此処の敵陣は、東京における巨大生物拡大の要になっていた。分厚くて中々手出しも出来ない危険な場所だったこともある。
奪還できたことは、EDFにとって大きい。
すぐにスカウトが来た。調査を開始して、敵のサンプルを回収していく。念のため残るのは、地下から巨大生物が奪還のための再攻撃に出る可能性を考慮してだが。幸いにも、フュージョンブラスターを警戒したのか、もう巨大生物は姿を見せなかった。
グレイプに戻る。
フェンサースーツは、ダメージがレッドにまで達していた。酸がアーマーを破って、スーツを痛めつけたのだ。
戻ったらメンテをしなければならないだろう。
弟も涼川も、至近距離からかなりの酸を浴びていた。アーマーは限界近い。もう少し戦術を練らないと、次は危ない。
一人でも崩されていたら、作戦は失敗していたのだ。
「いっそのこと、三人が全員、フュージョンブラスターで突入するのもありかも知れないな」
「確かにそうだが、あたしは気がすすまねーな。 ジョンソンにやって貰ってくれるか」
「ジョンソン、どう思う」
「優れた戦術ではあったが、最精鋭のスペシャリスト以外では実行が不可能だという点で、現実味がないな。 新しい装備の開発と、人数などのシミュレーションを重ねた上で実行しなければ、失敗して大きな被害を出すだろう」
皆で、わいわいと話している中。
通信が入った。
筅が無言でグレイプRZを出す。すぐに本部に戻るべきだと判断したのだろう。イプシロンや旧型グレイプ、それに上空にいるネレイドも、即座に動き始めた。
「極東に、とうとうフォーリナーの先遣隊が姿を見せました。 海上の防御網の隙を突き、潜り込んできた模様です。 規模は飛行ドローン500、輸送船20」
「とうとう来やがったな。 これからが本番だぜ」
涼川が舌なめずりする。
好戦的な涼川には、これからがお楽しみ、と言う所だろう。
私は其処まで悟れない。
グレイプが急ぐ。はしゃいでいた新人達は、真っ青になって黙り込んでいる。クローン以外は知っているのだ。八年前から七年前にかけて行われた前大戦が、如何に悲惨で無慈悲なものだったか。
フォーリナーの機械兵器をみるだけで、恐怖を見せる者だって少なくない。
続報が入ってくる。
「敵は日本海側に迂回した後、防衛網の薄い場所を狙って突破して来た模様です。 現在、中部地方北部、京都地区西に展開中。 住民の避難を行うと同時に、EDF関西支部から、応援の要請が来ています」
「さて、東京支部はどう出るか」
如何に力を増していると言っても、人員は全世界で三十万程度しかいないのである。
どうしても防衛網などには隙が出てくる。相手を察知できていても、スクランブルできなければ意味がない。
デスピナは太平洋上に展開しているし、ファイターの航続距離にも限界がある。
或いはおとりを使って戦力の過疎状態を意図的に造り出したのかも知れない。フォーリナーならそれくらいはやる。
東京支部に到着。
指示が出るまで、カプセルで休むように、弟が皆に指示。
アーマーを黙々と取り替える弟。私は、フェンサースーツの新しいものを貰うために、研究等に出向く。
いやだが、三島に会わなければならない。
早速出てきた三島に、新しいフェンサースーツを貰ったのは良いのだけれど。ほとんど素っ裸にされて、色々検査させられたのには閉口する。しばらく検査をした後、不意に三島が真面目な顔になった。
「まだ情報がそちらには行っていないだろうけれど、緊急通信が来ているの」
「何か危険な状態か」
「マザーシップが接近しているわ。 おそらく上陸は九州。 長距離砲撃を艦隊が加えているけれど、遠距離シールドで巡航ミサイルを防がれて、手も足も出ないようね」
そうなると、関西支部のは囮か。
囮を上陸させるために、主力部隊を使い。そして囮に味方が気を取られた隙を使って、主力が上陸する。勿論囮と言っても、充分な脅威。輸送船を放置しておけば際限なく巨大生物をばらまかれて、味方は内側から喰い破られる。かといって、主力部隊を放置すれば、極東はまた前大戦の様に、敵に踏みつぶされるだろう。
二段構えの戦略。
相変わらず巧みで、容赦がない。
検査が終わって、シャワーを浴びてから服を着る。
此処からは大型輸送ヘリヒドラで移動だ。フェンサースーツを着込むと、すぐに日高から指示があった。
「ヒドラで九州に移動して貰いたい。 まだ避難が終わらない住民を逃がしつつ、マザーシップを迎撃する。 場合によっては撃墜もして欲しいのだが」
「無理でしょうね。 体制が整わない現状、以前よりも強いだろうマザーシップに対して、何処まで効果的な攻撃が出来るかは分かりませんよ」
「そう、だな。 いずれにしても、君達が出る事で、多くの味方を救い、効率的に作戦を進めることが出来るだろう。 頼む」
「分かっています」
猶予時間はない。
九州にマザーシップが上陸するまで、推定で八時間半。ヒドラなら、現在ストームチームに渡されている備品ごと移動して、充分に間に合う。しかし、問題はそこでは無い。
結局一週間どころか、奴らは四日で極東に再上陸することになった。小原博士が言っていたように。
極東で、EDFが激しく巨大生物と戦闘し。多くを駆逐しているのが原因かも知れない。
いずれにしても、此処からは総力戦になる。
九州に向けて発進するヒドラの元へ集合するよう、弟がバイザーを通じて指示を出している。
その横で、プロテウスが出撃していく。
先ほど、ストームで奪還した地域を足がかりに、一気に敵を殲滅する予定らしい。東京地区の敵を少しでも削り。そして来るべきマザーシップとの決戦、それに巣穴攻略作戦に備えるためだ。
勿論其処まで上手く行かないだろうが、プロテウスの戦闘力は圧倒的だ。一地区や二地区くらいは、充分奪還できるだろう。
もう少しデータが集まれば、レタリウスに対する戦術も確立できる可能性が高い。そうなれば、超人では無い普通の人間でも、充分に対抗が可能になる。
東京支部でも、予備役兵の再訓練と、新兵の募集が大々的に始まっている。
避難民からも、戦いたいと言うものを募っているようだ。今は十六歳以上の縛りが生きている。
しかし大戦末期になれば、その縛りも、多分外される。
またろくに訓練も受けない子供が、脆弱な武器を持たされて、前線に立たされる。そして敵は、容赦などしない。
胸が痛む。
原田が、発進するヒドラから、プロテウスに敬礼していた。