地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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3、帰還と砲火

マザーシップと正面からやり合って、無駄に戦力を消耗するな。

 

そう東京にある極東司令部が指示を出したので、幸い無駄な戦力消耗だけは避けられた。事実ファイターから空対地ミサイルを叩き込んでも、マザーシップの遠距離シールドの前には無力。そして前大戦でも、マザーシップは真正面からEDFの切り札だった移動要塞X3を撃沈し、最大の戦力が集結していた北米支部をねじ伏せているのだ。

 

当時とは比較にならない力を手に入れているとはいえ。

 

九州支部の一部戦力で、マザーシップを迎撃できるはずがなかった。

 

無感動のまま、マザーシップは九州鹿児島に上陸。

 

桜島の噴煙を気にもせずに北上。途中にある都市を眼中にも入れず、淡々と侵攻を続けていた。

 

護衛についている飛行ドローンはその過程でかなりの数が九州全域に散った。

 

数は数千に達している。

 

しかしこれに関しては、九州支部も黙っていない。迎撃を開始して、各地で戦闘が続行されていた。

 

ヒドラが九州支部の指揮をしている、長崎基地に到着。

 

東京基地に比べると規模は小さいが、一通りの装備は揃っている。特に嬉しいのは、此処で新兵器と合流することだ。

 

ベガルタファイアナイト。

 

M3タイプの中でも、巨大生物の群れを正面から蹴散らすことを目的に作られた、EDFの最新鋭人型兵器。赤く塗られた機体は、正に炎の騎士と呼ぶに相応しい。強力なコンバットバーナーに肩に据え付けられたキャノン。近接戦闘に特化した機動力と強固な装甲。ハイレベルでまとまった、傑作機である。製造コストは高いが、それに見合う成果は十二分に上げている機体だ。

 

既に欧州では前線に投入され、大きな戦果を上げている。

 

本当は東京支部に配備される予定だったらしいのだけれど。マザーシップの到来が早かったため、輸送計画が中止。九州支部で、倉庫に眠っていたのだ。

 

現時点では、更にこの強化型タイプの開発が進められているらしいのだが、未だに試験運用の段階。

 

いずれにしても、現時点で前線に投入されているベガルタM3シリーズの中では、これが間違いなく最強の機種だ。実績がそれを証明している。ただまだ実戦投入されているベガルタはM2シリーズが主流で、状況を見ながら量産していく段階だが。

 

現在、北米で生産しているファイアナイトは、欧州に主に配備されているが。極東にも少数が廻されてきていて、その一つがこの機体。最後に届いて、輸送計画が中止されたのである。他はもう東京に届いているそうだ。

 

幸いにも、武装の補給は可能である。補助装備一式も揃っている。

 

一瞥だけすると、弟は言う。

 

「原田一等兵、これから貴官にグレイプRZを任せる」

 

「イエッサ」

 

「代わりに筅一等兵。 貴官がこれを扱え」

 

「え、えっ!? イエッサ!」

 

これは大抜擢だ。

 

確かに空爆課はビークルに関するスペシャリストとして教育も受けている。すぐにマニュアルが渡され、バイザーに電子データがインストールもされる。

 

近年の電子データは進んでいて、操作を円滑に進めることも出来る。最終的には意思と直結したマニュアルも作成する予定だと、私は聞いていた。

 

「池口一等兵」

 

「はい!」

 

相変わらず戦場ではどんくさい池口だが、ここのところ全くというほどフレンドリファイヤをしなくなった。

 

実戦で多少はコツを掴んだ、という事だろう。

 

筅とも一番仲良くしているのを見かける。すらっと背が高い池口と、小柄な筅では、好対照で、それが故に気も合うのだろう。

 

「貴官にも、近いうちに配備される新ビークルを任せる予定だ。 それまでは、今まで通りに任務に当たって欲しい」

 

「イエッサ!」

 

池口は多分、悲観はしていないのだろう。

 

弟の言葉に、元気よく敬礼していた。

 

これでいい。部下の統率に関しては、今の時点では問題ない。ジョンソンもエミリーも、今のところは弟を立てる行動をしてくれているし、私に突っかかることもない。涼川も谷山も香坂夫妻も、前大戦の戦友だ。彼らについては、心配はいらないだろう。

 

弟とジョンソンと一緒に、九州支部の司令官に会いに行く。

 

極東の支部は、東京を除いてそれぞれが少将が地区の指揮を担当する事になっている。この下に准将が何名かつき、各チームをまとめている師団の長に大佐がつく。

 

弟の准将待遇というのは、それだけVIPという事だ。

 

勿論私の待遇も、である。

 

前回の大戦では、生き残れた熟練兵が本当に少なかった。だから、能力をあまり考慮されず、司令部に入ってしまっている人間も少なからずいる。

 

九州支部の長沼少将は、幸いそういった生き延びただけの人間では無いが。

 

かなり気むずかしい男で、前々から東京支部の事を良く想っておらず、ストームチームについても良い印象を持っていない様子だった。

 

だが、それでも。

 

今回は協調体制を取らなければならない。

 

マザーシップが上陸したのは事実なのだ。

 

手をこまねいていれば、蹂躙されてしまうのである。

 

司令部は東京支部と違って、三十階建ての高層ビルに作られている。あまり軍基地内にこういう目立つ上に背が高いビルを作ることは推奨されていないのだが。九州支部では、おそらく東京への対抗意識からだろう。敢えて本部の通達を無視して、こういった行動に出ることが多いようだ。

 

エレベーターを使って、三十階に。

 

司令室に入ると、デスクには既に戦況図が表示されていた。

 

「お久しぶりです、長沼司令」

 

「ふん、ストームチームか」

 

相変わらず機嫌が悪そうだ。

 

私の事も、ジョンソンのことも。あまり良い目では見ていない。ちなみに長沼は、以前一緒に戦ったことがあるので、私の素の姿は知っている。

 

しばらく、弟がやりとりをする。

 

流石に作戦から締め出しをするような事を、長沼はしなかった。事前の約束通り、ファイアナイトを持っていくことも承知してくれた。

 

戦況図の上には、マザーシップがある。

 

今の時点では、恐らくは後続部隊との合流を行うためだろう。

 

宮崎県の北部に居座って、其処で停止している。周辺には十五隻を超える輸送船がいるが、今の時点で巨大生物やヘクトルを投下はしていなかった。

 

「ジェノサイド砲による攻撃も受けてはいませんか」

 

「今の時点ではな。 しかし、このまま九州中に飛行ドローンをばらまかれるのも不快極まる」

 

「まだ東京本部では、マザーシップ撃墜の準備が整っていません」

 

「ふん、以前の大戦では、そんな事をいっているうちに味方は壊滅してしまったがな」

 

弟とのやりとりも、かなり陰湿である。

 

長沼も、弟の実力は認めているはずだ。生半可なレンジャーチームが束になってもなしえないミッションを、続けてこなしているストームチームは。極東のレンジャーチーム全ての尊敬の的だ。

 

長沼も、以前包囲されていたところを、救出したことがある。

 

少なくとも、つっかかられる理由はない。

 

だが、長沼は。不快そうに私を一瞥すると、机上のマザーシップを指先で何度か叩いた。

 

「ジェノサイド砲を起動されると問題が大きい。 それに直衛の部隊を好きかってさせておくと、被害が増える一方だろう。 君達には、マザーシップに肉薄し、少なくともジェノサイド砲は叩いていただきたい」

 

「分かりました。 現地に向かいます」

 

「ふん……」

 

弟は、嫌だとは言わなかった。

 

司令部を出る弟に、ジョンソンが不満げに言う。

 

「どういうつもりだ、ストームリーダー。 九州地区の支援に来たのではなかったのか」

 

「支援に来た。 確かにマザーシップのジェノサイド砲を叩くのが、一番支援としては大きくなる。 長沼少将は言葉こそ悪いが、言っている事は間違っていない」

 

「しかし、新兵も含めた戦力で、マザーシップとやり合うつもりか」

 

「ジェノサイド砲を落とすだけだ」

 

すぐに新兵達を集める。

 

九州全域に戦渦が広がっているが、今の時点で、飛行ドローンに対する迎撃は問題ない。散らばったレンジャーチームが、かなり有利に戦いを進めている。

 

それに、各地の飛行基地から出たファイターが、制空権を保っており、一部では圧倒さえしているようだ。

 

故に心配なのだろう。

 

マザーシップがわざわざ上陸までして。

 

どうしてこうも受け身なまま、状況の推移を待っているのか。

 

弟が通信を入れてくる。

 

この辺りは、以心伝心という奴である。

 

「姉貴、どう思う」

 

「……そうだな。 今は単に情報収集の段階なのだろう。 マザーシップは全く動いていないも同然だ。 自身の戦略的価値を利用はしているが、それ以外には何もしていない」

 

「ならば、叩くのは、むしろ今だと思わないか」

 

「本気か」

 

本気だと、弟は言う。

 

なるほど、相手もまだ此方の実力を見極めていない段階。今回は敵の分厚い防衛網がなく、味方は涼川も谷山も香坂夫妻もいる。米国から派遣されている精鋭のエミリーとジョンソンも、頼りになる。

 

その上、前回の最終決戦では、弟の道を開くことで精一杯だった私だって側にいるのだ。

 

やれるか。

 

「分かっているだろうが、無茶をすれば立場が悪くなる。 くれぐれも、引き際はわきまえろよ」

 

「分かっている」

 

オンリー通信を切る。

 

新兵達が来た。彼らがグレイプに乗り込むのを横目に、私は涼川、谷山、香坂夫妻に弟の考えを、バイザーで伝えた。

 

涼川は賛成。

 

強襲からの蹂躙は、彼女の得意とする所だ。

 

「ただな、あたしは長距離武器が苦手だ。 対空戦闘に専念してもいいか」

 

「それもそうだが、敵の直衛に十五隻ほど輸送船がいる。 それに対処しなければならない」

 

「オッケ。 任せときな」

 

凶暴な笑みを浮かべる涼川。

 

これは情けも容赦も掛ける気は無いだろう。それでいい。此奴を全力で暴れさせれば、敵も本気で対処しなければならなくなる。

 

破壊力だけなら、弟と同等以上。

 

それが涼川という怪物だ。

 

私は谷山と一緒に、ネレイドに乗り込む。ネレイドもヒドラに格納されて、九州まで運ばれて来たのだ。

 

筅は今回、ファイアナイトに乗って現地まで移動。

 

ファイアナイトは殆ど一般車両並の速度が出る上、ブースターを使って跳躍さえ出来る。移動は何ら問題ない。

 

香坂夫妻には、イプシロンをそのまま任せる。

 

長距離から、自由な判断をしてもらう。涼川の支援をするか、それとも輸送船の撃破に努めるか。

 

どちらにしても、弟は任せるつもりだろう。

 

新兵達はジョンソンに任せる。ファイアナイトが加わったことで、単純な戦力も増している。

 

行けると思うほど、私は楽天的では無いが。

 

少なくとも、わずかながらのチャンスはある筈だ。

 

 

 

だからこそ、急激な状況の変化には、愕然とさせられる。

 

宮崎県の北部には、マザーシップの動向を監視するための一部隊だけが張り付いていた。その部隊から、急報が入ったのだ。

 

「こちらレンジャー4! 此方に何処かの部隊は向かっていないか!」

 

「此方ストーム。 どうしたレンジャー4」

 

「マザーシップが、急に活動を開始した! 輸送船から大量の巨大生物を周囲にばらまいている! その上、自身は艦隊を率い、北上を開始! 移動速度が今までの倍以上だ!」

 

レンジャー4の情報を確認。

 

全員がバイクを渡されている軽機動部隊だ。それなりの経験を積んだ兵士で構成されている、有能な者達である。

 

まさか。

 

南下している此方に気付いて、迎撃のために動いているのか。

 

もしも、そうだとすると。

 

「逃げ切れない! 救援を頼む!」

 

悲鳴混じりレンジャー4からの通信。勿論九州支部の長沼も聞いているはずだが、何も言ってこない。

 

谷山が、口を挟んでくる。

 

「黙っていたら全滅します。 ストームリーダー、指示を」

 

「長沼司令、此方で指示を出して構わないか」

 

「好きにしたまえ」

 

苛立ち混じりの声。

 

弟は頷くと、すぐに指示を出した。

 

「総員、フォーマンセルでそれぞれ散れ。 巨大生物は相手にしなくて良い」

 

「わ、分かった!」

 

「おそらくマザーシップ本体が、一チームを追いかけてくるはずだ。 それについては、此方がネレイドで回収する」

 

「イエッサ!」

 

恐怖に上擦りながらも、レンジャー4の兵士達がすぐ指示に従う。

 

フォーマンセルのチームに分かれ、それぞれ別方向へ移動開始したのだ。マザーシップはそれらを無視するように、まっすぐ北上してくる。

 

いや、違う。

 

一部隊を、正確に追ってきている。

 

それで私は確信した。

 

釣りをしているのだ。

 

奴の元へ、ストームチームが向かっていると知っていて。わざと一チームに狙いを絞って、北上している。

 

悪辣な奴だ。

 

本部のオペレータに周辺地図を転送させる。

 

今レンジャー4の一部隊が向かっている方向。マザーシップの速度。そして、此方の南下速度。

 

計算し、激突地点を出す。

 

マザーシップが、住民の避難が終わった街の上空にさしかかる。

 

その時。

 

人類は、再び思い知らされた。

 

奴らが、破壊の権化である事を。絶望の具現化である事を。

 

マザーシップの下から、塔のような巨砲がせり出してくる。あれこそが、マザーシップの主砲。

 

数多のEDF兵士を塵芥に変えていった、恐怖の破壊兵器。

 

ジェノサイドキャノン。

 

閃光が、迸る。

 

新兵達から、悲鳴が聞こえた。

 

直下型地震に等しい衝撃が、移動中の車列と、ベガルタを襲ったのだろう。

 

閃光が収まると、キノコ雲が上がっている。

 

核では無い。

 

解析の結果、レーザーに近いビーム兵器と言うことが判明している。そして、その火力は。

 

一都市が、灰燼と帰す。

 

破壊力は、実に85メガトン。

 

人類が作り上げた最強の水爆さえも凌駕している。おそらくマザーシップは告げているのだ。いつでも貴様らなど、塵に出来ると。

 

レンジャー4の一人が、恐怖の声を挙げる。バイクがスリップした。

 

慌てて止まった一人が助け起こし、バイクの後部座席に乗せる。必死に走るが、容赦なくマザーシップは迫ってくる。

 

悲鳴を上げるレンジャー4の戦士。

 

それを責める事が出来るだろうか。有史以来はじめて人類が目撃した、絶対に叶わない相手に、直接追われているのだ。

 

「だ、駄目だ、間に合わない! た、助けて、助けてくれ!」

 

「急降下します」

 

谷山が地形を読んだ上で、そう宣言。

 

一気に機首を傾けた。

 

落ちる勢いも加えて、加速するのだ。そうすることで、本来のネレイドの速度を超える。坂道を、必死に此方に来るレンジャー4一支隊の姿が見える。そして遙か遠く。

 

完全に消失した、街の姿も。

 

其処にあるのはクレーター。

 

7年で復興した街は。

 

たったの一瞬で、文字通りの灰燼と帰していた。

 

「早く乗れ!」

 

「恩に着る!」

 

バイクを乗り捨て、レンジャー4の戦士達が、ヘリの後部に乗る。装備も捨てるしかない。

 

必死に四人目が乗り込むと、かなり重くなったネレイドが、離陸。

 

容赦なく迫り来るマザーシップが、その努力を嘲笑う様に、艦載機を無数に発進させはじめた。

 

改めて、間近で見ると。

 

人間の力で落とす事が出来たのは、本当に奇蹟に近かったのだと分かる。

 

全長は実に300メートルオーバー。綺麗な銀色の球体。表面に鱗状のパネルが張り付いている。

 

あれの用途を、私は知っている。

 

決してあの鱗は、防御兵器などでは無いのだ。

 

下部には巨大な主砲。全長は数十メートルから百メートル以上はある。先ほどぶっ放したジェノサイドキャノンだ。

 

その周辺に、艦載機の発着ハッチ。

 

飛び立ってくるのは、飛行ドローンだ。

 

対地戦闘に特化しているネレイドでは分が悪い。

 

流石にジェノサイドキャノンは連射できないが、それでも何時間も発射にかかる兵器では無い。

 

私はネレイドを飛び降りると。

 

迫り来る飛行ドローンに向けて、啖呵を切った。

 

「来い。 世界で一番貴様らを落とした姉弟の、片割れが相手だ!」

 

マザーシップは、まだその実力を一割も見せていない。

 

だが、それは此方も同じ。接近している弟の事をマザーシップが察知しているなら。そしてその目的が。

 

早い段階に、ストームを始末することだとしたら。

 

まだまだ、充分に此方にも、勝機はある。

 

ガトリングで射撃開始。

 

相変わらず重力を無視した動きをしながら、此方に迫り来る飛行ドローン。スラスターをふかしてバックしながら、私は奴らの群れを数える。

 

既に、数十機を、超えていた。

 

 

 

無数の飛行ドローンに、はじめ特務少佐が纏わり付かれているのを見て、筅は焦るけれど。

 

しかし、平然としているストームリーダーを見ると、何だか大丈夫に思えてくる。

 

「そろそろ射程距離に入る。 攻撃……」

 

「急報です!」

 

不意に、ストームリーダーの通信に、悲鳴混じりの声が割り込んできた。

 

レンジャー4の一支隊が、敵に纏わり付かれているという。飛行ドローン数百という数だそうだ。

 

それだけではない。

 

輸送船から投下された巨大生物。黒蟻だけだそうだが、それもレンジャー4の一支隊に向かっているという。

 

「涼川、エミリー。 任せて構わないか。 ジョンソンも、筅以外の新人を連れて、行ってくれ」

 

「イエッサ! 勿論全滅させてもいいんだよなあ」

 

「ああ。 全滅させろ」

 

「ヒャッハ! 行ってくるぜえ!」

 

凶暴な笑顔で、グレイプの後部座席に搭載していたバイクに跨がると、涼川少佐が飛び出す。

 

グレイプも、それに伴って進路を変えた。

 

筅は行くように言われなかった。

 

ベガルタM3ファイアナイトの操作については、此処までの道のりでほぼ覚えた。ひ弱で頭が悪くたって。散々戦闘で今まで怪我してきたって。

 

これでも、強化クローンだ。

 

ストームリーダーみたいな特級の例外には及ばなくたって。出来る事は、一杯あるのだ。こんな凄い機体を貰ったのは、期待を受けている証拠。

 

絶対に、活躍しなくてはならない。

 

「筅一等兵」

 

「はい!」

 

「時間だけ稼げ。 私と秀爺で、敵の主砲を落とす。 その後状況を見て撤退」

 

「分かりました!」

 

場合によっては、一気に敵を落とすつもりなのかも知れない。

 

確かにこの早い段階でマザーシップを落とせれば、戦況は一気に楽になる。

 

ベガルタのコックピットは狭い。

 

ただし稼働時の揺れは殆ど無い。昔のベガルタM1はコックピットさえなく、操縦席が剥き出しになっていた上、耐久力にも著しい問題があったそうだ。旋回性能も低く、敵に囲まれてしまうと、どうしようもなかったという。

 

でも、今乗っているファイアナイトは違う。

 

旋回性能も機動力も高い。

 

巨大生物の群れと渡り合える機体なのだ。

 

不意にストームリーダーが、オート操縦にしているらしい旧式グレイプの車上に上がる。構えているのは、ライサンダーか。

 

ぶっ放す。

 

閃光が、空に一筋走るのが見えた。

 

今、正に下部ハッチを開けて、巨大生物を投下しようとしていた輸送船が、火を噴く。装甲が分厚く、巡航ミサイルでも簡単に落とせないらしい輸送船も。あのハッチの内側は、脆いと聞かされていたけれど。

 

二発目。

 

数匹の巨大生物を落としただけが限界だった。

 

爆裂して、消し飛ぶ輸送船。

 

更に、二隻目を狙うストームリーダー。

 

だが、二隻目は、既に巨大生物を投下しきっていた。

 

無数の巨大生物が、左右から迫ってくる。筅の仕事は、この恐ろしい怪物達を、ストームリーダーに近づけないことだ。

 

戦闘用火炎放射器を、迫り来る巨大な蟻たちにぶっ放す。

 

悲鳴を上げながら、焼け焦げていく蟻たち。囲もうとするが、そうはさせない。跳躍。ベガルタファイアナイトは、跳躍することで、著しく機動力を上げられるのだ。

 

跳躍しながら、地面に向けて榴弾砲を撃ち込む。

 

吹っ飛ぶ蟻の群れ。

 

確かに凄い。

 

だが、その分装甲は薄い。囲まれて袋だたきにされたら、あっという間に装甲が溶けてしまう。

 

唇を噛む。

 

慢心するな。

 

この人型兵器は、本来エース級のベガルタ乗りに支給されるものなのだ。ストームにいるから触ることが出来ているだけ。

 

コンバットバーナーで、グレイプに纏わり付こうとする巨大生物を焼き払う。ビルの上に乗っても、崩れない。

 

巨大生物と同じアーマーを利用しているのだろう。だから、見かけよりも、ぐっと軽いのだ。

 

また、輸送船が落ちる。

 

ライサンダーの凄まじい破壊力には、瞠目させられる。

 

グレイプが巨大生物の群れを突っ切る。更に、イプシロンが続いた。

 

遠くでは、爆発が連鎖して巻き起こっている。

 

多分、涼川が大暴れしているのだ。他の新人は、爆発に巻き込まれていないだろうか。少し心配になる。

 

徐々に、周りにいる巨大生物が、増えてくる。

 

逃がしては駄目だ。

 

絶対に駆逐しないと。今、九州のEDFは、飛行ドローンの大群と交戦中なのだ。まき散らされた巨大生物が、対空交戦中の部隊と接触したら、地獄絵図になる。

 

そればかりか、避難中の人達に襲いかかりでもしたら。

 

考えたくない事になる。

 

兵力を敵が分散させようとしている事は、筅にさえ分かる。

 

しかし、ストームリーダーは、何を考えているのだろう。

 

気付く。

 

残弾数が、かなり危ない。

 

ファイアナイトにも欠点が幾つかある。その一つが、この搭載弾数だとは聞いていたけれど。

 

困った。どうしよう。

 

下がりながら、敵を薙ぎ払う。逃げ腰になったのは、敵も気付いたようだった。

 

しかし、その巨大生物の群れを、中空からの掃射が薙ぎ払う。

 

ネレイド。

 

戻ってきたのか。

 

「中空と地上から、連携して敵をたたく。 筅一等兵、ヒドラから弾薬パックを投下して貰うよう要請した。 少し下がって、受け取り次第戻ってくる様に」

 

「イエッサ!」

 

ネレイドの対地制圧力は圧倒的だ。

 

だけれども、それでも弾数には限りがある。

 

此処で敵を殲滅するためにも。

 

筅も、谷山も。

 

ドジを踏むわけには行かなかった。

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