地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
壊滅的なダメージを受けていたEDFは新兵器の数々を開発し、人員を増やし、地球の統一軍隊としての力を高めていました。
それこそ、いつかフォーリナーが戻ってくる事を、知っているかのように……
西暦2025年。
フォーリナーの残した技術により、地球では急速に復興が進んでいた。異星からもたらされた技術力は、当然のことながら地球のそれを遙かに凌いでおり、世界の主要都市は急ピッチで復旧を成し遂げつつある。
皮肉なことに、地球の彼方此方に残されている、フォーリナーの機械群の残骸も、その復旧には一役買っている。
資材にしても技術にしても、地球のあらゆるものを凌いでいたからだ。
復旧が進む街を見下ろす丘を横切るようにして、一団の兵士訓練生達が、ジョギングしていた。体力を付けるためだ。
地球を守り抜いた統一軍。
EDF所属の新兵達である。
走りながら、彼らは歌う。
軍の士気を高めるために、幾つもの歌が作られている。こういった歌は簡単で、歌いやすく、覚えやすいものが好まれる。
「あーおい地球をまもるためー」
「EDFの出動だー」
野太い声と、甲高い声が混じり合う。
先頭を走っているのは、二十代後半の引率。昔は、二十代後半というと、前線に立つには厳しい年齢になっていたけれど。
今は技術の革新的な進歩によって、充分現役でやっていける。
三十代以上の兵士になると、極端に数が減る。
理由は言うまでも無い。
2017年の絶滅回避戦争を生き残ることが出来た者は、特にEDFの古参兵では、ほとんどいなかったのだ。
「きらめく正義の稲光ー」
「うちゅーじんども撃滅だ」
楽しそうに、ひときわ若々しい声が応える。
女も男も。長身の者も短躯のものも。ジョギングをする兵士達には混じっていた。
皆、若々しいけれど。
ハードなトレーニングをするには、体力が必要だと言う事に、変わりは無いのだ。
現在、EDFは全世界で30万。かっての馬鹿馬鹿しいほどの、各国が抱えていた軍事力から考えると、非常にささやかな数だ。
アリゾナでの最終戦が終わってから、ようやく此処まで数を回復できたとも言える。
今、このEDFの兵力を、100万にまで増やすべく、計画が進んでいる。
世界の人口は、様々な手段で、現在ようやく20億まで回復した。これ以降の戦力増強は、状態を見ながらになるだろう。
訓練を続ける新兵を見守っていた私は。
支給されたばかりのスーツの耳元に手をやった。
「何か」
「ようやく捕まえましたよ、嵐さん」
「ああ、そうだったな、回線をオフにしていた」
このスーツは、全身を包むもの。
フェンサーと呼ばれる試験編成された部隊に、いずれ正式配備されることになる。私はこのフェンサースーツをずっと試験運用していた。
外から見ると、まるで等身大の戦闘ロボット。
黒金の装甲に全身を覆い、背中にはブースター。複数の巨大な武器を同時に扱うことが出来る、戦闘用パワードスーツ。
それがEDFに新規配備されることが決まった、このフェンサースーツである。
勿論今は任務中では無いから、攻撃用の装備は外している。
ただし、動き回るには、問題ない。
「今日から新兵達の教官をして貰うんです。 そんなところで遊んでいないで、すぐにEDFの支部に来てください」
「ああ、分かってる」
「すぐに迎えのジープを行かせますから。 其処から動かないでくださいね」
きゃんきゃん言いながら、三島が通信を切る。
相変わらず五月蠅い奴だ。
彼奴も、2017年の戦争のころには、まだ小さな子供だったのだ。それなのに、助けてやったらにょきにょき大きくなって、今では。
まあ、それはどうでもいい。
ジョギングしていた新兵達は、支部へ戻っていった。
まだ、彼奴らが戦場に出なくて良いといいのだけれど。だが、分かっているのだ。フォーリナーは、いつか戻ってくる。
だから、戦場に投入することを承知の上で、兵士達を鍛えなければならないのだ。
ジープが、乱暴に河川敷を走ってくる。
サングラスをしている彼奴は。
面倒な奴が来たものだ。最近日本に戻ってきたと聞いていたけれど。まさか此奴が来るとは。
ジープが凄まじい音を出しながらドリフトして、眼前に止まる。
乗っているのは、長身、巨乳の。目つきがヤクザの情婦みたいな、凄まじい威圧感を全身から放っている女だ。
そのくせ、涼川朝之なんて、大和撫子っぽい名だから。名前を聞く度に、違和感が凄まじい。
「よーお、久しぶりだな。 そのけったいな戦闘用スーツ越しでも、あんただってすぐに分かったぜ」
「日本に戻ってきていたか」
「ああ。 まあ乗れや。 何だか知らないが、ガキ共の面倒を見ることになったんだって?」
「私は前からそうだ。 お前も知っているだろう」
違いないと笑いながら、涼川は煙草に火を付ける。
かなりニコチンが強い煙草だけれど。最近はニコチンの除去技術が完成して、肺がんになる可能性は著しく減っている。
そもそも人間の数が著しく少ないので。
喫煙所なんて施設も、ほとんど見られなくなった。
屋内で無ければ、何処でも煙草を吸える時代だ。
灰皿に煙草を押しつけると、ジープを乱暴に発車させる涼川。
「巨大生物どもがいないからなあ。 スタンピートぶっ放せなくて、ストレスがたまるぜ、なあ」
「お前は戦争が大好きだな。 昔から」
「おうよ」
涼川朝之。
古参兵の一人で、完全破壊者とか殺戮マシーンとか言われて周囲から怖れられた女だ。敵兵の群れを単独で殲滅したという武勇伝を幾つも持っており、弟でさえ一目置く最強の兵士の一人である。
ジープを乱暴に走らせながら、右手の街を見る。
昔から、実のところ街での生活には、縁が無い。
今は復旧が進んでいるし。
この街を守ったといわれればそうなのだけれど。何というか、実感が無いというのが、事実だ。
「旦那は」
「知っているだろう」
「ちっ。 まあしょうがねえよなあ」
何しろ、古いつきあいだ。
最初に出会ったのは、8年前の戦争初期。凄まじい戦闘適正を見いだされ、当時最新鋭の火器を優先的に廻されていた涼川は。私に当然のように出会うことになった。
当時から涼川は弟にぞっこんだったけれど。
それは今も変わっていないだろう。
乱暴な運転だが、ジープには人間を轢かないようにAIが組み込まれている。時々信号を無視しそうにさえなるけれど。
それが涼川の味だ。
迷惑さえ掛けなければ、どうでもいい。
「それにしても私を直に出迎えとは、どういうことだ」
「司令部も怖いんだろうよ、あんたを野放しにしておくのはな。 危険人物同士、近くにまとめて置いた方が良いって事だろうよ」
「……」
EDF極東支部東京基地が見えてきた。
街の郊外に作られているそれは。今のところ、土地の問題はクリアしている。
世界の人口が七分の一になった大戦である。この辺りもフォーリナーに蹂躙されて、元の住民は殆ど生き残れなかった。
だから、EDFの基地を作ると言う話が出たとき。
反対意見は無かったと聞いている。
無人地帯がたくさんある現状。むしろEDFの基地の近くに、街が発展していくという逆転現象さえ起きている。
皆、あの悲惨な戦いを覚えているのだ。
だから、以前の地球のように、無造作に都市を拡大はしない。EDFが側にいないと、安心できないという側面もあるだろう。
入り口の検問を抜けると、中は広大な基地の敷地が広がっている。
此処は航空基地では無いけれど、攻撃ヘリが三十機ほどいるので、ポートは存在している。
その中でも異彩を放っているのが、特大の輸送ヘリであるヒドラだ。
現状であらゆる戦闘用兵器を輸送できると豪語しているだけのことはあり、力強いローターと実に頑丈そうな構造で、遠くからも存在感を見せつけている。
幾つかの建物の間に、若干ぞんざいなプレハブがある。
彼処が、有事は本部になる。
理由は私を含めて、少数の人間しか知らない。
幾つかの格納庫には、人型歩行兵器ベガルタM2をはじめとする陸上戦闘兵器が格納されており、幾つかは訓練のため、実際に外に出され動かされていた。
戦車であるギガンテスが、ジープとすれ違う。
今の時代、戦車は一人で動かす事が可能な兵器になっている。様々なサポートが戦闘装備の兵士に行われるからだ。
20世紀後半には、既に兵士は正式な訓練を受けなければこなせない専門職になっていたが。
EDFで新兵を徹底的に鍛えるのは、これら戦闘装備を扱うのが、どれだけサポートされていても難しいからだ。
駐車場に乱暴に停めると、涼川は別の用事があると、自分一人で行ってしまった。
私は通信を入れると、新兵達の教室の場所を聞いて。其処へ、黙々と向かう事にする。流石に、背中にあるスラスターを使って移動するわけにはいかない。今は平時なのだ。
基地の中では、既に正式に兵士となっている者達が、訓練をしている。ジョギングだけではない。
簡単な射撃訓練や、格闘訓練もしていた。
人間相手の戦いのためでは無い。単純に格闘技をして、体を鍛えるためだ。
歩いていると、彼らとすれ違う。
敬礼をされたので、応じた。
「あれ、噂の新型戦闘用スーツだろ」
「使ってるという事は、最精鋭だって事だろうな。 何者だろ」
「オメガチームか、ストームチームか、それとも出向のストライクフォースライトニングチームか?」
「いずれにしても、歴戦の精鋭だな。 どんな奴が中に入ってるんだろうな」
兵士達の声が聞こえてくる。
歴戦の精鋭か。
私は弟と違って、殆ど歴史の表舞台には出ていない。私の任務は、主に兵器の試験運用だった。
現在実用に移されている航空兵ウイングダイバーも、私が戦場で試験装備をためした。当時はペイルウイングと言われていたが、最初の頃は本当に苦労の連続だった。
そして私が実戦から生きて戻る度に、データが蓄積されていった。駄目な武器も使える武器もあった。使えると判断した武器は、優先的に弟に廻された。フォーリナーの首魁を潰した決戦兵器、ライサンダーZはその最たるものだ。
私自身は、劣悪な武器で、常に凶悪な敵と戦い続けてきたけれど。しかしそれは、私の出自を考えれば当然かも知れない。
最悪だったのは香港だ。
フォーリナーの最強地上兵器、四つ足歩行要塞を三機同時に相手にしなければならなくなったのである。
撃破は求められていなかったけれど。
気を引き、逃げ回るだけで精一杯だった。民間人を可能な限り逃がすために、必要な作戦だったのだ。
それでも一機は潰した。
もっとも、弟が前に倒して弱点を聞かされていたから、出来た事だったが。あの戦いのことは、正直思い出したくない。
新兵達の教育棟につく。
何だか学校みたいでほほえましい。校庭に校舎。ここに来る者達は、EDFの参加資格を満たした16歳以上の人間。およそ半年の訓練を経て新兵となる。殆どはレンジャーだが、適正に応じて、今は様々な兵種に別れる。戦時を考えて、短縮プログラムも用意されている。
迎えに来たのは、見覚えがある老兵だ。周囲からは親父と呼ばれていると聞いている。
本名は親城浩介という。そこから、親父と呼ばれているようだった。
「これはお久しぶりです、嵐殿。 それはまた、ごついアーマーですな」
「久しぶり。 壮健なようで何よりだ」
彼は古参兵の一人で、8年前の戦いを生き残った者である。それほど優れた戦士では無いが、状況判断が確かで、今はレンジャー部隊の隊長をしている。
老兵というと、今は東北の方で隠棲している秀爺を思い出す。
夫婦で静かに暮らしているという事だが。
上手くやれているだろうか。
親城に案内されて、新兵達の教室に。大学の講堂を思わせる広さだ。中には二十代の大人から、年齢規定を満たしたばかりの子供も見受けられた。
だんだんに並んでいる机には、それぞれ端末が置かれている。指紋認証で、自分の専用画面を呼び出して、それを元に勉強が出来る仕組みだ。
教室に入った私を見て、驚く新兵の卵達。
中には、とても卵とは言えないような、ごつい体つきの人間もいたが。
「これより君達の教官を務めさせていただく嵐はじめだ。 よろしく」
反応は、それほど芳しくない。
だが別にそれで良い。
多少は反抗的なくらいが、若者は丁度良いのだと思う。私のような若造が、そんな事をいうのもおかしな話だが。
「この嵐殿は、特務部隊ストームに所属している、先の大戦の生き残りだ。 多くの実戦を経て生き延びている強者中の強者である」
親城がそう説明してくれると、若者達がおおと小さく声を上げた。
ものを教えるのはあまり得意では無いけれど。
これも、EDF上層部を安心させるためだ。
私も、上手く上とやっていかなければ、生きていけないのである。多少は相手を安心させるくらいのことは、しなければならない。
それに、だ。
教室を見回すと、数人いる。
EDFと言わず、減った人間を補うため、社会全土で始まっているのだ。フォーリナーの技術を用いた、優秀な遺伝子を使った強化人間の普及が。8年前の大戦では、子供も多く死んだ。
子供を失った家庭の多くで、強化人間の育成が行われている。
まだ問題は多くあるけれど。
EDFの戦士としては、今後これ以上も無いくらい、活躍してくれるはずだ。
「それでは、授業をはじめる。 各自、教科書の4ページを開くように」
新兵の卵達が、めいめい動き始める。
ものを教えるのはあまり上手じゃ無いけれど。
実戦で簡単に死なないよう、鍛えていくのは。私としても、やっておきたい事だ。
弟と私と。
選ばれた一部の超人だけで、世界を救うことは出来ない。
少しでも、仕事を分担できる若者達が育ってくれなければ、未来は無いのだ。
立体映像に浮かび上がってくるのは、アリによく似た生き物である。
ただし、全長はおよそ10m。
通称巨大生物。フォーリナーが尖兵として用いたとされる。正確には、正体がよく分かっていない、地球を襲った生物たちのなかで、もっともメジャーな存在だ。
「これが通称黒蟻。 全長はおよそ十メートル。 走る速度はおよそ時速五十から六十キロで、膨大な量の酸を腹部から発射する。 酸は王水に近い強烈なもので、しかも射程距離は二百五十メートルに達する。 当時の戦車の装甲では酸を防げず、クリームのように溶けてしまった」
とんでも無い怪物だが、それだけではない。
この蟻は、装甲も機動力も凄まじいのだ。
まず装甲だが、地球の生物の装甲ならどれでも貫けるような大型砲でも、死ぬとは限らない。
フォーリナーによる地球攻撃が開始されてから、EDFも各国の軍隊も水際で食い止めることが出来ず、大きな被害を出した。それは人間を殺すために作られた武器が、この黒蟻を一とする巨大生物たちには、まるで通用しなかったからである。
かろうじてRPGなどのロケット兵器や、戦車砲は効果を示したけれど。
つまりそれは、この巨大な生き物たちが、戦車と同等の戦力を持っている、という事を意味している。
それだけ頑丈ならば、さぞや重いだろうと考えるのが普通だが。
それも間違っている。
とにかく此奴らは体が軽く、軽快に機動するのだ。
幾つかの写真を見せると、新兵達がどよめきの声を上げる。一番前の席にいた、小柄すぎて心配になってくる女の兵士が、挙手する。
「あ、あの、これは合成映像ですか?」
見たところ、年齢規定はどうにか満たしているようだが。本当に兵士になるつもりで此奴は来たのか。
戦場では、弱い奴から死んでいく。
敵は此方を、餌としかみていないのだ。
「残念ながら、実際の写真だ。 古参の兵士に聞けば、これが本当だとすぐに分かる」
写真には、ビルをまるで地上と変わらず這い回る巨大な蟻たちの姿が映し出されている。中には、逆さにぶら下がっている個体までいた。
勿論足が頑強だと言う事もある。
だが十メートルの巨体が、このような軽快な機動を見せるなんて、あり得る事では無い。
更に、紅い蟻の映像が出る。
此方は、装甲強化型の蟻だ。通称赤蟻。
大戦初期には姿が見られなかったのだが。黒蟻に対する抵抗力をEDFが身につけはじめた辺りから、姿を見せた。
此方はとにかくタフで、動きが鈍重だが、その分凄まじいまでに強固な装甲を誇っている。
戦車砲がはじき返されたという報告さえあるこの赤蟻は。
黒蟻に中から遠距離の攻撃を任せ。自分たちはそれこそ紅い壁となって前線を押し広げて来た。顎の力も凄まじく、どれだけ撃っても倒れない此奴に、どれだけ味方が目の前で捕食されたことか。
紅い大波。
そうこの蟻どもを評する者もいた。
「次はこれだ」
映像に映し出されるのは、ハエトリグモによく似た、巨大な生物。
かっては凶蟲と呼ばれていた。
これも蟻とほぼ同じ体格を誇り、素早い動きでビルの間を飛び回りながら、人間に膨大な糸を浴びせ、捕食するという戦術を採った。
跳躍力が凄まじく、攻撃機やヘリが此奴に捕まえられ、落ちたことが一度や二度では無い。
更に、である。
この蜘蛛たちが放つ糸は、強い酸を帯びていて、当時の衝撃吸収アーマーでは、とても防ぎきれなかった。
糸に巻かれて死んでいく味方を見て、発狂。笑いながら喰われてしまった兵士も、目の前で見た事がある。
これら三種が、もっとも一般的な、巨大生物だ。
このほかにも、目撃例がある巨大生物はかなりの種類がいる。ただその中の殆どは実験的な生物らしく、戦場で主力となったのは、これら蟻と蜘蛛だ。
兵士達には、まずこれらの対処法を頭に叩き込んで貰う。
何しろこれら三種が、圧倒的な数を有していた、フォーリナーの尖兵だからである。
7年の平和とは言え。
巨大生物は、文字通り世界中のあらゆる場所を席巻した。此処にいる新兵達も、クローンとして生を受けた者達を除けば、殆ど全員が、その恐るべき姿を目にしたことがある筈だ。
だが、何しろ逃げ惑う中での事である。
戦いの中で、的確に対処した訳では無い。
どうしても、知識は断片的になったり、噂の中で聞いただけ、という事もあるだろう。以前の戦いで蓄積された知識を正確に叩き込み。実戦が起きたときには。確実に対処をして貰わなければならないのだ。
チャイムが鳴る。今日の授業は、此処までだ。
教官によって担当授業が別れている。
シミュレーターを使って、巨大生物たちとの戦闘を新兵に行わせる教官。
実戦訓練を担当するもの。
支給される装備の使い方を教える者。
体力作りを担当する人間。
分業が行われていて。私がやれといわれた、巨大生物の知識を教える教官についても、他にいるはずだ。
教官達の殆どは、前大戦の生き残りだけれど。
その面子も様々である。
大戦の中期以降、完全崩壊した各国の軍の残存兵力は、EDFに吸収された。もはや焼け石に水だったけれど、それでも兵力にはなった。
この軍崩れの兵士も、生き残りの中には多くいる。弟が信頼している兵器の専門家、谷山もその一人だ。
彼はかって、自衛隊と呼ばれていた組織に所属していた。
いずれにしても、私のような元からEDFにいた人間を、快く思っていない軍崩れも多くいる。
あまり周囲と軋轢を増やすわけには行かなかった。
司令部からも、釘を刺されている。
私はあまりコミュニケーションは得意では無いけれど。それでも、やっておかなければならない。
与えられた職員室に出向くと、教官達が敬礼で出迎えてくれる。ある程度の事務作業も任された。
私の仕事は、このスーツで、細かい作業が出来る事も実験すること。
フェンサースーツの精度を確認するためにも、重要な仕事だ。
事務専門の者もいる。
彼ら彼女らは、殆どが訓練の結果戦闘適正が低いと見なされたり、或いは後方支援の方に適正があると判断された者達だ。
だから、壁がある。
普段は能なしの軍人より、自分たちの方が役に立っている。
そう堂々と口にする者もいるようだった。
自席に着く。
フェンサースーツの重量に耐えられる、特注の椅子だ。事務仕事も、初めてでは無い。さくさくと進めながら、生徒達の顔と名前を頭に入れていく。
現在この基地では、百五十名ほどの新兵を訓練しているけれど。
その全てに、同じ授業をするようにと、上層部には言われている。多少面倒くさいけれど。
これも戦いを生き残り、知識を蓄えた人間の責務だ。
フォーリナーはいずれ戻ってくる。
誰もが、その意識は共有していたのだから。