地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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2、降り注ぐ魔

輸送船が、日本海から迫っている。

 

そう聞かされて、私は舌打ちする。既に十隻以上は潰してやったのに、懲りない奴らである。

 

周囲には相当数の巨大生物の残骸。

 

一日間ぶっ通しで、駆逐作業を続けている。既に戦闘地域は、瓦礫の山だ。京都は前大戦で更地になるほどの敵の攻撃を受けて、多くの文化遺産が失われた。まだわずかに残っている文化遺産も、今回の大戦を生き延びられるかどうか。

 

南の地区で、此方に迫っていた数百匹の巨大生物を潰し終えたと、涼川から連絡が来る。

 

少し前は、弟から、味方レンジャー部隊と連携して、三百五十を超える飛行ドローンを撃墜し終えたとの連絡もあった。

 

後は、此処での戦いさえ終われば、一段落だ。

 

しかし、房総沖では、今EDFの第十六艦隊が、敵の大軍勢と交戦中。

 

無理に敵の上陸を防がず、側面と後方から削れという指示を出されていることもあって、両日中の敵上陸はほぼ確実とみられている。京都での戦いが一段落したら、すぐにヒドラで房総に向かわなければならないだろう。

 

ブースターを噴かして、跳躍。

 

上空にいる輸送船に、ガリア砲を叩き込む。

 

爆裂した砲弾が輸送船を滅茶苦茶に傷つけ、内側から打ち砕いた。火を噴きながら落ちてくる輸送船。

 

これで、皆が落とした分も合わせて。

 

最初から展開していた十五隻は全滅だ。

 

ストームチームだけで落としたわけではない。既に前大戦の時点で輸送船に対するマニュアルは整備されており、周辺に展開しているレンジャーチームも、スティングレイなどのミサイル兵器を用いて、輸送船の撃破に成功している。

 

着地すると、ダメージを確認。巨大生物の群れと戦いながら、輸送船を落としていたのだから、此方も無傷では無い。

 

しかも味方は広域に拡散せざるを得ない状況だったのだ。

 

「一旦集結する」

 

弟の指示が来た。

 

指定された座標へ急ぎながら、レーダーを確認。要救助者や敵がいる可能性を、否定出来ないからだ。

 

辺りは屍の山。

 

輸送船が落として来た巨大生物は、この近辺だけで数百はいた。世界各地で見ると、おそらく対処できない地域もある筈だ。

 

今回も厳しい戦いになる。

 

それは分かっているけれど。

 

この現実を見ると、嘆息したくなる。

 

今の時点では、ストームがいる地点では優位に戦闘を運べている。しかしこのまま殴り合えば、力尽きるのはおそらく人類だ。

 

間もなく、弟が見えてきた。

 

「姉貴、無事か」

 

「どうにかな」

 

「ならば、すぐに大阪基地に向かう準備を。 向こうで人員の合流と、整備を行うと、連絡があった」

 

私にはそんな連絡は来ていないから、多分日高からの直接通信だろう。

 

頷くと、空を見上げる。

 

谷山のネレイドが来る。かなり傷ついていた。途中で、飛行ドローンと交戦したのだろう。

 

移動しながら、合流地点を指定。途中でぼろぼろのキャリバンと、ファイアナイトも姿を見せる。

 

最後にイプシロンが到着して、全員が揃った。

 

「次は東京か?」

 

「ああ。 房総沖に、近く敵の主力が上陸するらしい。 それを迎撃する前に、千葉に飛来している輸送船を落として欲しいそうだ」

 

「敵の先遣隊か」

 

「そうなるな」

 

なるほど、敵も上陸部隊を通すために、後方攪乱を積極的にしている、というわけだ。

 

海上に展開している艦隊と、桐川航空基地のファイターは、おそらく進軍中の主力との交戦で戦力をほぼ裂かれているはず。

 

敵の数は圧倒的で、それを生かすことを躊躇しない。

 

制空権は今だ味方にあるけれど。

 

それもいつまでもつのだろうか。

 

いずれにしても、ストームがやるのは、行く先々の敵を殲滅すること。

 

大阪基地が見えてきた。

 

途中の道路はかなり手酷くやられていたが、既に近畿地方での大勢は現時点では決した。心配せず、残りの部隊に状況を任せて、房総へ向かう事が出来る。

 

大阪基地へ到着。

 

ヒドラは、既に準備が整っていた。中には、まだ整備が完全では無いグレイプRZが乗せられている。

 

他のビークルも即座にヒドラに搭載。

 

整備班も一緒に乗り込んで、東京基地までの途中で、出来るところまで修復するのだそうだ。

 

私のフェンサースーツに関しても同様。

 

一旦着替えて戻ると、新規の人員が、弟に敬礼しているのが見えた。非常に小柄な女性兵士だ。

 

いや、これは。

 

少し前から噂に聞いている。

 

戦闘特化の強化クローンを、各地の基地に配備していると。他の強化クローンと違い、家庭に配備して人間的な感情を持たせたりすることもないらしい。

 

まだ負傷しているようだけれど。

 

戦闘には支障がない、という事だろう。

 

多分第三世代のクローンで。

 

或いは私の遺伝子を、組み込んでいるかも知れない。顔立ちとか雰囲気とかに、何となく似通ったものを感じるのだ。

 

話によると、弟の遺伝子は、組み込みさえ出来ないという事である。成功例がないのだそうだ。

 

それを考えると、私の遺伝子を使って、優れた戦闘用強化クローンを作るのは、間違っていないのだろう。

 

別にそれに関して、どうこうは思わない。

 

勝つためなら、手段を選んでいられないからである。前大戦の悲惨な戦況を知っている私には、勝つための手段を選ばない行動を、止める気は無い。

 

「ナナコ一等兵であります。 本日付をもってストームに配備されました。 以降よろしくお願いいたします」

 

「日高玲奈軍曹です。 本日付をもってストームに配備されました。 以降よろしくお願いいたします」

 

もう一人は、負傷が酷くて、即座には戦闘参加できそうにないが。

 

名前からぴんときた。

 

日高中将の娘御だ。此処で参加することになったか。

 

東京の三川の様子が気になる。確か九州で負傷した原田は、もう東京へ戻っているはず。これで戦闘要員は二人追加となる。

 

「ストームは他の部隊と同じく人員不足でな。 ヒドラで移動中に、出来るだけ体力を回復して貰いたい。 東京基地に到着し次第、すぐに戦地に向かう事になるだろう」

 

「イエッサ!」

 

二人の声が揃う。

 

日高の威を借る狐、ということは無さそうで、少しだけ安心した。

 

ヒドラの発進準備が整ったので、即座に大型輸送ヘリに乗り込む。このヒドラは、プロテウスさえ輸送できる大型機だ。内部には補修機構や簡単な医療設備も整っている。

 

内部で、皆の治療を進める。

 

回復用のカプセルもあるので、私は遠慮無く使わせて貰う事にした。個室は流石にないので、女性兵士用のカプセルを、それぞれ順番を決めて使う事になるが。

 

まあ、移動の途中で、全員がカプセルに入りきれるだろう。

 

「ええと、はじめ特務少佐」

 

「何かな」

 

そういえば、日高の娘は顔立ちが妙に整っている。

 

日高は別に美形というわけでもない、普通の男だから。それを考えると、アイドルとでも結婚したのだろうか。

 

「ベガルタの操縦手はどなたですか?」

 

「筅一等兵だ」

 

「はい、何でしょうか」

 

手当を受けていた筅が振り返る。

 

ヒドラが発進シークエンスに入った。揺れているが、これくらいなら、医療に影響は無い。

 

「貴方が、シェルターを救ってくれたパイロットですね?」

 

「え、はい。 作戦上で……」

 

「助かりました! 有り難うございます!」

 

大げさに大喜びする日高娘。

 

面倒な奴だと私は思ったけれど。それ以上、何も言わずに、きゃっきゃっとはしゃぐ若者達に任せる。

 

涼川はと言うと、奧で回復用の活性薬だけのむと、すぐに戻ってきた。

 

後は食事を腹にかっこみ、カプセルに入る。

 

途中、一切口を利かなかったのは。

 

流石の魔神も、連戦で疲弊していたからだろう。

 

休めるうちに、休めるだけ休んでおいた方が良いのは、自明の理だ。

 

ほのかが笑顔で手を叩いて、若者達をたしなめる。

 

「はいはい、おしゃべりは後で。 筅ちゃん、貴方はカプセルにね」

 

「はい。 日高軍曹、すみません。 私がお先に休ませていただきます」

 

「うん、後でお話し色々しようね」

 

すっかり仲良くなった様で何よりである。

 

私もカプセルに入って、目を閉じる。

 

すぐに眠れるのは、カプセルに色々と睡眠導入用の工夫が取り入れられているからだ。

 

目が覚めると、空路は半分をこなしていた。

 

カプセルには、バイタルを確認し、調整する機能もついている。悪く言えば馬車馬の様にこき使われる。良く言えば、寝ている間に、健康診断までしてくれる。

 

乗っていた女医は、三島と違って私の体をいじくり廻す様なことはないが。起き出してまだ頭がはっきりしていない私に、小言をくれた。

 

「かなり無理をしていますね。 カプセルに頼らず、しっかり眠ってください。 食事も取ってください」

 

「何、このくらいは平気だ」

 

「こちらを」

 

見せられたデータ。

 

私は弟と違って、老化はしない。

 

だが、それは体が痛まない事を、意味はしていないのだ。

 

内臓や筋肉への負担が大きい。

 

今後は戦闘が激化するから、手足がもげたり、内臓に直撃が来る可能性もある。その場合は生体部品を取り替える事になるが、負担は更に大きくなる。

 

今回も、少し前に肋骨をやられている。

 

以前に比べて、体が弱くなった、という事だろうか。可能性は、否定出来ない所だ。

 

「とにかく、他のメンバーにも負荷を分担してください。 貴方はストームチームのサブリーダーなのですよ」

 

「分かっている」

 

他のメンバーについても、確認はしておく。

 

香坂ほのかについては、全く問題ない。既に老境に入っているが、近年のナノマシン医療技術の進歩によって、病巣の類はないそうだ。昔はこの年になると、多かれ少なかれ体内に病巣を抱えていたものだが。

 

これだけは、フォーリナーの技術に、感謝しなければならないだろう。

 

SFの産物だったナノマシンを実用化できたのは、フォーリナーから回収した技術があってのことなのだから。

 

カプセルから出た後は、他のメンバーも休ませる。

 

池口は京都での戦闘では、キャリバンを繰って、逃げ遅れた人々を見事に救出して見せた。

 

最近はレンジャーとしての技量も上がってきているし、操縦についてもみるべき所がある。

 

最初から優秀だった筅と違って、かなり伸びてきているのが面白い。

 

このまま伸びれば、ストームの中核に、いずれなれるかもしれない。最初からそつなく何でも出来た黒沢と比べると、伸びが早いのが印象的だ。

 

白衣を着せられ、ベッドに転がった私は。他のメンバーの、近況についても確認しておく。

 

一緒に戦って来た秀爺や谷山、涼川の状態もチェック。

 

ジョンソンやエミリーについては、閲覧できないようにブロックされていた。これはおそらく、本部の意向によるものだろう。

 

今の時点では、皆問題が無い。

 

弟も、私と同じか、それ以上に無理をしているらしい。

 

フェンサースーツを今更着てうろつくこともないかと思ったけれど。一応、医療スタッフとメンバー以外には、姿は見せない方が良いだろう。フェンサースーツを着込むと、医務室を出る。

 

ふと窓から外を見ると、大型万能機、ホエールが見えた。

 

どうやら、ヒドラを護衛してくれているらしい。

 

ホエールは近年実用化に移された万能機で、多彩な攻撃能力を持つ空の要塞だ。攻撃機としては他にもミッドナイトやアルテミスがあるが、これらはファイターの護衛がないと運用が難しいのに対し、ホエールは巨体に相応しい自衛能力があり、生半可な飛行ドローン程度は寄せ付けもしない。

 

ホエールは確か、各支部に一機か二機程度しか配備されていないはず。

 

来ていると言うことは、恐らくは大阪支部から、東京支部の支援に向かう、とみて良いだろう。

 

つまり、極東司令部は、房総の戦闘に本腰を入れていると言うことだ。

 

弟が男性用の部屋から出てきた。

 

バイザーを付けて、軽く話し合いをしておく。弟の方だけに、行っている情報もあるからだ。

 

「房総に向かっている敵戦力は、更に増強されているそうだ。 巡航ミサイルで相当数を破壊してはいるが、水際での殲滅を狙って大規模な戦いになる事は避けられないだろう」

 

「今回の戦いで、初めての大規模決戦だな」

 

「レンジャーチームだけで百三十を動員するらしい。 今、東北からも、かなりの人員を動員しているそうだ」

 

嫌な予感がする。

 

フォーリナーも、飛行ドローンを彼方此方にはなっている。EDFの動きくらいは把握していてもおかしくはない。

 

一旦日本海に抜けたマザーシップも、数日中には主砲の修復を終わらせるはず。

 

奴の動き次第では、対処が難しいかも知れない。

 

東京支部に到着。

 

ヒドラが着陸するやいなや、すぐに日高から、支部に来る様に指示が来た。新人達には、少しでも休むように言うと、ジョンソンと一緒に、三人で支部に顔を出す。

 

日高司令はかなり疲れている様だった。

 

戦線図を見せられる。

 

地上に展開した巨大生物は、広域に散らばりはじめている。

 

戦線が錯綜し、簡単にはどちらも動けない状況だ。

 

其処に、敵輸送船の到来である。

 

「おそらくこれから、房総に敵の大攻勢があると同時に、関東全域に散らばった巨大生物が、一斉に活性化するだろう。 東京基地の戦力は、動かす事が出来ない」

 

「分かっています」

 

弟の返事は淡々としている。

 

頷くと、日高は輸送船が点在している地域について説明してくれる。

 

やはり、房総の防衛網の背後を脅かす様にして、展開している。現在の敵数は十二隻。現地のレンジャー部隊も手をこまねいていたわけでは無い。今までの戦いで既に数隻を撃沈したそうだが、巨大生物の投下量が多く、これ以上支えるのは難しいと悲鳴が出ているそうだ。

 

「房総に向かうヘクトルの群れは、此方の動きを完全に見透かしている。 防衛網から戦力を裂けば、確実に移動速度をあげて、海岸線を直撃してくるだろう。 それだけではない」

 

マザーシップについても情報を出してくる。

 

この間撃退した一隻は、ユーラシアに上陸。旧中国の無人地帯を通り抜け、東南アジアから再び海上に抜けたという。

 

その代わり、また一隻が房総に向かっているというのだ。

 

「ジェノサイドキャノンをうち込まれると、陸上部隊は壊滅する。 また、君達に対処を頼むことになるだろう」

 

「分かりました」

 

これは、またしばらくまともに休息は取れそうにないな。

 

角を生やす医者の顔を思い出すとげんなりしたが。

 

しかし、どうにもならない。敵が休ませてくれないのだから。体がぼろぼろになっていくのが、目に見える様だった。

 

他にも軽く情報交換。

 

最後に、日高は、ジョンソンに聞く。

 

「総司令部の意向は何かあるかね」

 

「今の時点では、これといった話は聞いていません。 北米ではまだマザーシップが到来していない事もあり、隙を見てストライクフォースライトニングが、ニューヨークの敵巣穴を攻略に向かうそうですが、それくらいです」

 

「北米でも動くか。 問題はシドニーだな」

 

現在、オーストラリアの支部が、かなり危険な状態にある。

 

調査によると、シドニーの巨大生物の巣穴が予想以上の規模らしく。現時点では手も足も出ないそうなのだ。

 

其処へマザーシップから飛来した飛行ドローンが大挙して押し寄せており、ひっきりなしに救援を求める連絡が来ているとか。

 

「状況を見て、ストームに攻略の依頼が来るかも知れません」

 

「心しておこう」

 

弟が、不満げに声をとがらせた。

 

普段と殆ど変わっていない声色だけれど、私には分かる。弟は、ジョンソンがそれを黙っていたことを、相当不満に感じている。

 

もっとも、ジョンソンは総司令部から派遣されている目付役だ。エミリーも同じである。

 

だから、あまり文句を言うのは酷だが。

 

東京支部の司令部を出ると、すぐに現地に向かう。今は大戦前には網の目の様だった高速道路が整備されていて、房総まではさほど時間も掛からない。

 

敵輸送船が点在している地域を、バイザーには既に貰っている。

 

移動しながら、何処をどう叩くか、ブリーフィングを行う。やはり、手を分けないと、厳しい状態だ。

 

「本当なら一丸になって動くのが一番なのだがな」

 

元々、少人数のチームなのだ。

 

しかも新人は怪我を押して出てきている。日高軍曹もナナコも、後方支援だけさせるようにと医師に釘を刺されている。黒沢も池口も、連戦での疲弊が隠せていない。

 

唯一筅は怪我をしていないけれど。かといって疲弊していないわけではないのだ。

 

「ジョンソン。 涼川。 二人は新人達を連れて、南部地区の輸送船を担当してくれるだろうか。 エミリーと香坂夫妻も、これに同道して欲しい」

 

「イエッサ」

 

そうなると、北部にいる六隻は、私と弟、それに谷山だけでの対処か。

 

ただ谷山には、今回対空戦を想定して、バゼラートが支給されている。

 

バゼラート。

 

対地攻撃特化型のネレイドと違い、対空戦もこなせる戦闘ヘリだ。昔空で無敵を誇ったアパッチを近代改修し、フォーリナーの技術を積極的に取り入れて、新しく生まれ変わらせた強力なヘリである。

 

形状はアパッチによく似ているが、武装や戦闘力は段違いだ。

 

連発型のエネルギービームであるヴァルチャーを装備しており、誘導ミサイルの破壊力も大きい。

 

バゼラートは、谷山がもっとも得意とするヘリだ。

 

前大戦では、アパッチや、それを少しだけ改修したヘリで、対空戦力に守られたフォーリナーと、谷山は渡り合い続けた。それで夥しい戦果を上げて来たのだから、その技量の凄まじさがよく分かる。

 

また、今回は大阪支部からもってきたおんぼろのキャリバンを、日高軍曹が使用する。

 

移動する際に利用できること、状況次第ではヒールタンクとして機能することが、持ち込んだ理由だ。

 

ただし戦闘力はないので、日高軍曹には後方をキープする様に念を入れている。

 

日高中将は、娘については何も言わなかった。

 

信頼していると言うよりも。余計な事を口に出せば、決意が揺らぐから、だろう。ストームに娘を入れたのは、色々と思う事があっての末だろうから。

 

「日高軍曹は二チームの間で距離を保ち、要請次第ですぐに救援に向かって欲しい」

 

「イエッサ!」

 

「くれぐれも無理はするな。 そのキャリバンは、かなり古い型式だ。 最新鋭のキャリバンならMBTをもしのぐ装甲を持つが、そのタイプは其処までの性能を期待出来まい」

 

高速道路を抜ける。

 

途中ネグリング自走ロケット砲の集団が、房総へ向かうのが見えた。

 

強力な誘導ミサイルを積んだネグリングは、前大戦で敵に対して大きな戦果を上げたMLRSの改良型。フォーリナーの技術を利用して、ミサイルを基地から転送する事で、圧倒的多数の攻撃で敵を制圧する事を想定している。

 

破壊力が大きい分建物や味方への被害も懸念されるため、今までは前線に投入はされてこなかったのだが。

 

今回の総力戦で、どうあっても必要と日高中将が判断したのだろう。

 

空では、時々ファイターが飛んでいるのが見えた。

 

この近辺の制空権はいまだ保たれている。ファイターが活躍している故だ。ただパイロット達は、かなり過重労働に苦しんでいるかも知れない。

 

間もなく、戦地に着く。

 

日高軍曹が運転するキャリバンから降りると、バゼラートに弟と一緒に乗る。他の戦闘車両は、全て南下していった。

 

バゼラートが再び空に舞い上がる。

 

谷山の操縦は、とにかく丁寧だ。浮き上がるときなどに、ほとんど浮遊感を感じないほどである。

 

「房総北部に展開しているレンジャーチームから、出来るだけ急いで欲しいと救援要請が来ている。 速度を上げてくれるか」

 

「可能な限りは急ぎますよ」

 

弟は頷いた。

 

やはり、此方の判断で動ける状況が、一番やりやすい。

 

飛行ドローンが来た。数機。

 

だが瞬く間に自動追尾ミサイルがロックオン。発射されたミサイルは、回避運動をしようとした飛行ドローンを、容赦なく叩き落とす。

 

火を噴きながら落ちていく飛行ドローンには一瞥もせず、バゼラートが行く。

 

「やはりこれが私には一番あっています」

 

谷山の声も、心なしか弾んでいる様だった。

 

 

 

戦場に到着すると、弟と私は、すぐにバゼラートから飛び降りた。

 

バゼラートには、制空権の確保と、隙を見て輸送船への攻撃を行って貰う。弟はライサンダーをかついで、手にはアサルト。アサルトは本部から新型のAF20を渡されている。前大戦でも使われたモデルだが、大規模な改修が施されて、間もなく歩兵用の武器として正式採用される予定だった。

 

その直前にフォーリナーが来たことで、まだあまり多くは普及しておらず。今でも多くの歩兵がAF14を用いているのが現状だ。

 

このAF20はそもそも弾丸に鉛玉を用いず、フォーリナーから鹵獲した技術によって、光の弾を撃ち込む。一種のビーム兵器だ。

 

しかもエネルギーは自己生成するので、非常に効率が良い。

 

今後の主力にと、EDFが考えた所以である。

 

私は今回、シールドとハンマー、スピアとガリア砲で出てきている。

 

地上、中空、どちらにも対応する構えである。

 

前衛は私が務める。

 

後方からは、弟が支援。

 

口に出さなくても、わかりきっていることだ。

 

すぐに、空に三隻の輸送船が見えた。

 

この辺りの町並みはまだ戦果に襲われていなかったのに。これからズタズタにしてしまうのは、本当に心が痛む。

 

既に市民の避難は完了済みなのが救いか。

 

巨大生物が、此方を発見。

 

大半が黒蟻だが。

 

いる。

 

赤蟻が、相当数混じっている。

 

ブースターを噴かし、突進。ハンマーを振り上げると、敵の直前に叩き付け、衝撃波で吹き飛ばす。

 

スピアを周囲に乱射しながら、冷静に少しずつ下がる。押し寄せてくる巨大生物たち。輸送船が、それを支援すべく、ハッチを開いた瞬間。弟がライサンダーから、大威力の弾丸を叩き込んだ。

 

更にバゼラートが、支援砲撃を開始。

 

強力なビーム兵器ヴァルチャーが、連続して地上を抉る。

 

一隻目の輸送船が、爆裂。

 

炎を噴き上げながら、落ちていく。

 

「姉貴、狙撃地点を変える。 其処でしばらく暴れていてくれ」

 

「任せろ」

 

とっさに跳躍したのは、赤蟻が態勢を低くして、突進してきたからだ。間一髪、顎に捕らえられるのを防ぐ。

 

奴の頭を蹴って更に跳躍すると、背中にスピアを叩き込んでやる。

 

だが、赤蟻の装甲は、前大戦よりも更に凶悪になっていた。スピアが弾かれたのを見て、私は瞠目。

 

ハンマーに切り替えると、群がってきている蟻を、まとめて吹き飛ばした。

 

だが、中空にいる間に、周囲の黒蟻から散々酸は浴びる。

 

こればかりはどうしようもない。

 

またハンマーで、周囲にいる蟻を吹き飛ばす。今度は真正面から襲ってきた赤蟻。避けている暇は無い。スピアを顔面に叩き込み、わずかに怯んだところで、ハンマーを振りかぶって、直接叩き付ける。

 

流石にこれにはひとたまりもない。

 

赤蟻が顔面を打ち砕かれ、大量の体液をぶちまけながら、ばらばらに吹っ飛んだ。アーマーが限界を超えたのだ。

 

至近。

 

後ろにいた赤蟻が、背中から撃ち抜かれて、その場で胴体と頭が泣き別れになる。

 

弟がビルの非常階段を上がりながら、ライサンダーで打ち抜いたのだ。

 

無言のまま、私はスピアをうち込み、黒蟻を薙ぎ払いながら、スラスターを噴かして下がる。下がりながらハンマーを振るい、周囲を爆砕する。

 

迫る蟻の数は減らない。

 

地形を上手く使いながら、弟が輸送船を落としてくれるのを待つ。

 

再びバゼラートが来た。誘導ミサイルを放ち、支援のために飛んできたらしい飛行ドローンを撃墜していく。

 

「姉貴」

 

「どうした」

 

「北の方で、レンジャー19が支援を求めている。 赤蟻を含む敵集団に攻撃を受けているそうだ」

 

「谷山に行って貰おう」

 

そうするしかないだろう。

 

しばらくは苦しい戦いになるが、他に手がない。

 

振り向きざまに、迫っていた赤蟻の横っ面をハンマーで吹き飛ばす。足が止まった瞬間を狙って、すかさず黒蟻共が酸をぶち込んでくる。連携は悔しいが、敵の方が一枚上手かも知れない。

 

だが、それでもだ。

 

此方にも、歴戦の経験がある。

 

赤蟻を弟と一緒に集中駆除。敵輸送船が、支援を狙ってハッチを開いたところを、弟が狙撃。

 

爆発した輸送船が、また落ちてくる。

 

スピアを叩き込んで機動戦を行いながら、黒蟻を落下地点に追い詰めていく。

 

爆裂。

 

巻き込まれた黒蟻が、悲鳴を上げてバラバラに吹っ飛んでいく。いい気味だが、しかし。既にこの辺りは、壊滅状態だ。

 

三隻目を弟が落とす。

 

後半分。

 

残党を片付けながら、私は、スーツの負荷が深刻である事に気付いたけれど。今更、どうしようもない。

 

ビルから降りてきた弟が、アサルトで敵の掃射をはじめる。

 

二人で連携して、間もなく敵の駆除を完了。

 

「日高軍曹、来てくれるか」

 

「はい、直ちに」

 

「おい、私は」

 

「アーマーを変えた方が良いだろう。 姉貴も、無理をするな。 今回は前衛なのだから、多少はな」

 

キャリバンはすぐにきた。

 

その間、弟は南部戦線の戦況を確認。既に輸送船二隻を撃墜して、三隻目を攻撃しているという。

 

秀爺の狙撃は正確無比だ。

 

対空戦闘は秀爺に全て任せて、地上に他メンバーが注力できるのは大きい。

 

キャリバンが来た。

 

若干運転が荒いが、かなり早い。急いで乗り込むと、武装のチェックを実施。アーマーを取り替えた。

 

弟も、ライサンダーの状態チェック。

 

そのまま、まだ戦闘が続いている北部へ移動。

 

「私も、手伝いましょうか」

 

「不要。 キャリバンはいざというときの生命線になる。 すぐに所定位置に戻ってくれ」

 

「イエッサ」

 

少し不満そうに、日高軍曹が口をとがらせる。

 

側面ドアを開けると、弟がライサンダーをぶっ放す。上空にいた飛行ドローンが打ち抜かれ、火を噴いて落ちていった。

 

「すご……今の一瞬で」

 

素直に驚く日高軍曹。

 

まもなく、戦地に着く。この辺りは、先ほど谷山が救援に向かった地域だ。レンジャー19は。

 

いた。

 

バリケードを作って、必死に敵の侵攻を食い止めている。上空から谷山が支援をしているが、これは長くは保たないだろう。

 

弟が通信をはじめる。

 

「レンジャー19、状況を。 此方ストームチーム」

 

「ストームチームか、助かった。 負傷者が四名いて、身動きが取れない!」

 

「分かった。 今、すぐに救援が行く」

 

何も確認の必要はない。

 

私と弟は、同時にキャリバンの左右から飛び出す。弟は走りながらライサンダーをぶっ放し、アサルトの猛射に平然と耐えている赤蟻をこの世から消し飛ばした。

 

私も走りながらハンマーに切り替える。

 

「日高軍曹は血路を切り開いたら突入。 負傷者を救援後、所定位置に戻れ」

 

「イエッサ!」

 

突撃しながら、ハンマーを振るう。

 

数体の黒蟻が吹っ飛ぶ。

 

上空の谷山も支援を開始。敵の目が此方に向いたのを確認しつつ、スピアを乱射。敵を確実に仕留めながら、前線を押し上げる。

 

だが、その時である。

 

不意に上空にいた三隻の輸送船が。

 

同時にハッチを開き、あらん限りの勢いで、蟻をばらまきはじめたのである。

 

即応した弟が、一隻を即座に撃墜するが、二隻は無事。

 

いきなり三倍に増えた黒蟻が、一斉に囲まれているレンジャー19に襲いかかる。その勢いは正に猛然たるというに相応しかった。

 

まずいな。

 

舌打ちしながらも、ハンマーを振るって周囲を爆砕し、敵を薙ぎ払う。

 

弟もアサルトに切り替えて、迫る敵を片端から打ち抜く。

 

だが、レンジャー19は、そうもいかない。

 

一気に迫ってくる前線に、悲鳴を上げたレンジャー19の一兵士が、フレンドリファイヤを起こすのが見えた。

 

ブースターを噴かし、敵中に踊り込む。

 

ハンマーを振るって周囲を蹴散らす。強引に割って入って、バリケードの中に。無理矢理作った隙間を、キャリバンが疾走。

 

バリケードを蹴散らし、中に割り込んだ。

 

装甲にダメージもあったが、この判断は悪くない。日高軍曹、かなり有能な人材かも知れない。

 

思うに、日高中将も、或いは前線で活躍する方が力を発揮できるタイプなのかも知れなかった。

 

キャリバンの側面ドアを開けると、日高軍曹が顔を出した。

 

「救援に来ました! すぐに負傷者を乗せてください!」

 

「わ、分かった!」

 

投げ込む様にして、呻いている負傷者達を、キャリバンに入れる。

 

私はキャリバンの上に飛び乗ると、そのままブースターを噴かし跳躍。大量の酸を浴びながらも敵に突進し、当たるを幸いに蹴散らす。

 

退路は弟が確保してくれている。

 

また、ミサイルを谷山が叩き込んで、血路を広げる。

 

「キャリバンにタンクデサンド! 一気に血路から脱出しろ!」

 

「き、君達は」

 

「此方は問題ない。 この程度の数は、いつも相手にしている」

 

振り向きざまに、赤蟻にスピアをぶち込む。

 

更に旋回しながらハンマーで吹っ飛ばした。遠くのビルまで飛んでいった赤蟻は、其処で粉々に吹っ飛んだ。

 

また、輸送船がハッチを開くが、対処している暇は無い。

 

退路をキャリバンが無理矢理抜けていく。途中、黒蟻が退路を塞ごうとしたが、弟がライサンダーで吹っ飛ばした。

 

だが、周囲を囲まれている状況。

 

キャリバンがレンジャー19の戦士達を乗せて包囲を抜けると、もう後は包囲という事実だけが残る。

 

弟が飛び込んできて、背中合わせに立つ。

 

「さっきよりかなり多いな」

 

「行けるか、姉貴」

 

「問題ない」

 

二人、同時に飛び退く。

 

ビルに張り付いている彼奴は、よりにもよってレタリウスだ。

 

あんなものまで、輸送船は投下してきたのか。

 

いや、何処かで回収したレタリウスを、ここぞと落として来たのだろう。状況から考えて、あれは地球で進化した巨大生物だからだ。

 

アーマーの負荷が見る間に上がっていく中。

 

私は敵の中に突貫。

 

上空にいるバゼラートは、レタリウスへターゲットを絞り、ミサイルをうち込みはじめるが。

 

それは、地上支援がその間出来ない事も意味している。

 

血戦がしばらく続き。

 

ようやく巨大生物を掃討し、上空にいる輸送船も落とした時には、私も弟も、満身創痍だった。

 

どうにか辺りにいる巨大生物は全滅させたが。

 

南にいる皆も、散々だった様子だ。涼川が負傷したと聞いて、流石にひやりとさせられるが。

 

実際に合流してみると、アーマーの負荷が超えて、酸が多少肌を焼いたくらいだと、本人は平然としていた。

 

すぐに房総にある、臨時指揮所へ移動。

 

其処で負傷の手当を進めながら、損害を確認する。

 

ベガルタは南部の戦いで、大活躍していたという。ただし筅自身は、集中力を使い切ったか、ぬれタオルを被って横たわっていた。かなり負担が大きい様で、今も熱を出した子供みたいに喘いでいる。元々頑丈とは言えない筅だ。これくらいは、仕方が無いかも知れない。ベガルタで活躍はしているのだから、あまり多くを求めるのは酷だ。

 

皆の損害を確認すると、弟は日高司令と話すといって、その場を後にした。私はビークルの補修を整備班に頼み、更にフェンサースーツのメンテナンスを頼む。いやだけれど三島がいたから、メンテナンスはすぐにしてくれた。

 

アーマーも取り替え。

 

対多数の乱戦も想定した武器を持ち込んで。後は新人達の状況を確認。

 

筅はカプセルに移して、戦闘開始まで寝かせることにした。他の新人達も、同じように休ませる。

 

涼川は手当を終えると、此方に来た。

 

「ちいと痛むがな、どうにかなるぜ」

 

「そうか」

 

バイタルチェックの状況を確認。とりあえず、致命的なダメージは、体には出ていない様だ。

 

香坂夫妻には、前線から少し下がった場所に、イプシロンで陣取って貰う。

 

後は、直前のブリーフィングだ。弟が戻ってきてから、する事になるだろう。

 

指揮所にいた指揮官が来る。

 

親城である。

 

久しぶりに会った親城は、社交辞令の挨拶を交わすと、すぐに本題に入った。

 

「この間、准将に昇進しましてな。 城川大佐と一緒に、此処での迎撃作戦を採ることになりました」

 

「城川もいるのか」

 

「ええ。 あなた方もいてくれる。 勝ったも同然ですな」

 

海岸線には、既に前衛となるMBTギガンテスが、砲列の壁を作っている。

 

その後ろにネグリング自走ロケット砲とイプシロンレールガンの車列。

 

海岸には、既に多くのレンジャー部隊が展開していた。更に、新設されたばかりのフェンサー隊と、ウィングダイバー隊もかなりの数が見受けられる。

 

総力戦だ。

 

空軍も、この戦いには、かなりの兵力を動員する。

 

既に先遣隊になる飛行ドローンが相当数海上に出てきていて、ファイターと迎撃ミサイルが、次々と落としている様だ。

 

それでも、ヘクトルの侵攻は止まっていない。

 

海軍が使えるだけのテンペストを叩き込んで相当数を削ってもいる様だけれど。それでも、敵の数は圧倒的なのだ。

 

「ヘクトルはいつ頃来るだろうか」

 

「敵の先発隊は、数時間以内に現れるかと思います。 本隊はおそらくそれからでしょうね」

 

頷く。

 

一応、予報として聞いておく。敵の動きはいつも悪辣だ。此方の予想を凌駕しても、不思議では無い。

 

ビークルのメンテナンスをするように、後方支援部隊に頼む。

 

私はと言うと、一旦席を外して、医療スタッフの所へ行くことにした。データベースから、三川や原田の状況を確認。

 

三川は治療を進めていて、多分近い内に出られる。ウィングダイバーとして出られるかは分からない。あれは繊細な操縦が必要になるからだ。しばらくはレンジャーとしてならして、ウィングダイバーとして復帰する形だろうか。

 

原田は単純に怪我が治っていない。

 

今回復を急ピッチで進めている様だが、もっと重症な人間がいくらでもいる状況だ。

 

爆音が響いた。

 

空を見上げると、飛来したファイターが、飛行ドローンを叩いている。十機ほどの飛行ドローンは、ファイターが放った誘導ミサイルにやられて、ひとたまりもなく落ちていった。

 

今の時点で、制空権は此方にある。

 

だがあのようなものが来ると言う事は。

 

嫌な予感は、直後に現実になった。

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