地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
その主砲は水爆並みの火力を誇り、八年前の大戦では都市ごと消し飛ばす恐ろしさを見せつけました。
既に撃破報告があるとは言え、強大な敵です。
ストームチームが中心となって、首都に向かおうとするこの絶望の魔獣を迎え撃ちます。
序、絶望の魔獣
静岡の海岸線からSOS通信が届いたのは。房総の敵軍勢を撃退している最中のことだったと、弟が言う。
静岡のEDF部隊は損害を避けるために後退。
民間人の避難だけを行うと、援軍の到来を待つべく、敵からの距離を取った。
ヒドラが急ぐ。静岡の浜松基地まで、全速力である。
新人達は疲れ切っているが、こればかりはどうしようもない。ヒドラは大型輸送機だが、巡航速度は時速980キロを超える。流石に超音速とは行かないが、この辺りも、やはりフォーリナーからの鹵獲技術を採用している。このサイズの大型輸送ヘリでは、考えられない速度である。
具体的にはよく分からないのだけれど。概要だけは知っている。
フォーリナーの飛行ドローンが使っている、一種の反重力浮遊装置を用いて、飛行の負担を軽減、加速へ力を振り分けられる様にしているそうだ。この装置はほかのビークルも用いていて、今までの航空力学に縛られた形状とは全く違う飛行機類を作るのにも成功している。
一例がホエールだ。
ホエールはずんぐりした形状で、本来だったら空に浮き上がることさえ出来ない。浮き上がることが出来ても、燃料を膨大に消費する。
「嵐特務少佐」
話しかけてきたのは、筅だ。
巨大なヒドラの格納庫でも、ベガルタを格納するのは少し窮屈になる。ベガルタファイアナイトはかなり修復が進んでいるが、静岡に着くまでには間に合わないだろう。
一方でグレイプRZは、もう前線に投入できると言われている。
大規模な修復チームが、突貫作業で仕上げてくれたのだ。
房総からは、今頃ヒドラが次々に部隊を送り戻している筈。
皆疲れているのは同じだけれど。筅は特に疲弊が酷い様に見えた。
「戦いは、いつまで続くんでしょうか」
「マザーシップを全て叩き落とすまでは終わらないだろうな」
「……どうして、こんな戦争になったんでしょう」
理不尽な侵略を今、地球は受けているわけだが。
地球人は必ずしも、この経験と無縁ではない。
たとえば大航海時代、武力に物を言わせて西欧の人間達は、それこそ暴虐の限りを世界中で尽くした。
その侵略は、理不尽というレベルでは無かった。
現地の住民を奴隷以下の存在に落として虐殺の限りを尽くし、徹底的な略奪の末、絶望と破滅のどん底に叩き落とした。
今フォーリナーから受けている侵略は、その時のものより更に酷いが。
「ストームのサブリーダーである嵐特務少佐は、何か知りませんか」
「知らない。 知っていても、口外できる様な問題では無いな」
「そうですか……」
嘘は言っていない。
彼奴が地下にいて。多くの干渉を世界にして。それでようやく人類が足並みを揃え、EDFを設立できて。フォーリナーの攻撃に対して、かろうじて耐え抜いたのは事実だ。それについては、知っている。
だがフォーリナーの正体や具体的な目的、彼奴が何者で、どうしてフォーリナーの襲撃を予知できたのかについては分からない。
いずれ聞く事があるかも知れないが。
少なくともそれは、当分先になるだろう。
静岡が見えてきた。
流石にこの巡航速度であれば、房総から静岡まではすぐだ。ヒドラは自衛能力も備えていて、飛行ドローン相手であれば、簡単には撃墜もされない。
前大戦で浜松城は文字通り灰燼と帰し、今でも再建はされていない。
それは大阪城も同じだ。
EDFの浜松基地は今の時点では健在だが。見た感じでは、既に相当数の飛行ドローンが、周辺を荒らし回っているようである。
EDFの部隊が住民の救助をいち早く済ませたから、多少は戦いやすいか。
元々この辺りは要塞都市と言われていて、災害にも相当に強い場所だったとは聞いている。
そのアドバンテージもあって、民も避難がしやすかったのだろう。
「九時方向、飛行ドローン3!」
「迎撃は、ファイターに任せます」
意に介さない様に、ヒドラが降下を開始。
基地の滑走路に着地したころには、既に来ていたファイターが、飛行ドローンを叩き落としていた。
三体くらいの飛行ドローンなんて、ファイターの敵にはならない。ただし、今の時点では、だ。
前大戦でも、フォーリナーは新手の兵器を次々に繰り出してきた。
ファイターの攻撃が通用しない新型も、いずれ出てくるかも知れない。その時に備えて、改良を施し続けないとならないだろう。
ヒドラが着地すると、すぐにビークルを出撃させる。
辺りは非常にものものしいが、地上部分にビークルはほぼ出ていない。四足はまだ動いていないようなのだけれど、それは橋頭堡確保のためだろう。ただ、四足が背中に装備している二連砲を動かしはじめたら、一発で都市が消し飛ぶ。あれの破壊力は、マザーシップのジェノサイドキャノンと同等なのだ。
勿論、この浜松基地だって、ひとたまりもないだろう。
ヒドラを最後に弟が出てくる。基地司令官が来たので、敬礼。かなり髭が白い、もう武器も持てそうにない老人だった。
「今は時間がありませんでな。 この場でブリーフィングを行いたいが、よろしいか」
「分かりました」
相手がストームだからか。
准将の階級章を付けている老人は、物腰が柔らかかった。
ただこれは、浜松基地が、中部の司令部から見て枝葉の場所に過ぎないから、かも知れない。基地の規模は小さく、准将が指揮官でも不思議なくらいだ。大佐が指揮官として入っていても、不思議では無かったかも知れない。
中部司令部は、多分今頃、四足撃退のための戦力をかき集めているはずだ。
「ストームチームには、まずは露払いをしていただきたくてな。 四足の側に、敵が前線基地を作っておる。 これをたたいていただきたい」
「ふむ……」
バイザーに、情報が出てくる。
なるほど、レタリウスによる堅固な基地だ。問題は露骨なほどに、巨大生物の数が多いという事だろう。
分厚くレタリウスに守られた網の中。
かなり大きな穴が、姿を見せている。巨大生物がそのままでは、繁殖をはじめかねない。いずれにしても、攻撃をしなければならないだろう。
「制空権の確保はしていただけますか」
「分かった。 それくらいなら手配しよう」
「お願いします」
弟は一礼すると、皆を整列させる。
作戦については、いつもと同じだが。今回は時間がない。また、巨大生物の巣穴を叩くにしても、ヘクトルが邪魔をしに現れる可能性が高い。
「谷山、我等が射線を確保したら、ネレイドからバンカーバスターを。 今回はコンクリで塞がないで、内部も調査する」
「繁殖の可能性を考慮、ですか」
「そうだ。 短時間で女王が出現するとは思えないが、念には念を入れる」
そのためには、短時間での作戦遂行が第一だ。
そうなると、フュージョンブラスターによる一撃必殺。前回かなり危なかった、あの作戦でいくしかないか。
ただ、今回は作戦に変更を加えるという。
弟も、フュージョンブラスターを、2丁持って出るというのだ。
危険だなと私は思ったけれど。
確かにそれが良いかもしれないと思い直す。私は同じ武器で出撃だ。
「幸い、輸送船が運んできた巨大生物は、一カ所に集中している。 敵の増援で警戒する必要があるのは、ヘクトルと飛行ドローン。 このうち飛行ドローンに関しては、中部基地のファイターに任せれば問題ない」
「質問が一つ」
黒沢が挙手。
弟が頷くと、わずかに眼鏡のずれを直す。
「もしも四足が支援に現れたら、どうしますか」
「その場合は後退する」
「……判断が早いですね」
「まずその可能性はないとは思うがな。 彼奴はフォーリナーの兵器の中でも、別格の存在だ。 倒すには相応の準備がいる。 行き当たりばったりの作戦では、損害を増やすだけだ」
誰もそれに反論はしない。
確かに前大戦で何機かは撃破して、その戦術についても確立はされているが。それでも、生半可な戦力で、相手に出来る兵器では無い。
全長も今回確認されている奴は二百メートルと、他のフォーリナー兵器とは規格外のサイズだ。
戦う事を慎重になるのは、決して臆病なことでは無い。
むしろ無闇に突入するのは、命を無駄にするだけのことだ。
そう弟がとくと、みなしんとした。特に新人達は、青ざめている。
誰もが分かっているのだ。
そんな怪物と、これから戦わなければならない。そしてストームがやらなければ、大きな大きな被害を出すのだ。
すぐにビークルに分乗して、出る。
谷山は今回はネレイドに乗って出撃。対空戦を考慮しなくて良いと言う、弟の言葉を信用しての選択だ。
一応、念のために聞いてみる。
「サテライトブラスターは使用許可が下りているか?」
「いいえ。 あれは本当に、試験運用代わりだったようですね、ストームリーダー姉」
「その呼び方はやめい。 いずれにしても、一瞬で勝負を付けなければ、死人が出るな」
私としても、かなりしんどい。
特殊アーマーで身を包んで、盾を用いて弟と涼川の支援をする。他のメンバーは、全員が中から遠距離を保って、敵に支援砲撃。
近づいてくる、銀糸の敵陣。
規模は、かなり大きい。
レタリウスの数は、四十を超えていると見て良さそうだ。そして、更に悪条件がある事が分かった。
グレイプを降りた弟が舌打ちする。
地面にまで、レタリウスの糸が張られている。つまり強烈な鳥もちと同じだ。要するに考え無しに突入すれば、足を取られることになる。
まず、地面を焼き払って、レタリウスの糸を排除しなければならないと言うわけだ。
これは厄介だ。
私が呟くと、となりで黒沢が呻く。
「フォーリナーの巨大生物は、知能があるとしか思えません。 それも、人類よりも優れた」
「一説によると、フォーリナーというのは巨大生物の集合的意識だそうだ。 私は支持していない説だが」
「なるほど、あれだけの文明は、巨大生物が作り上げたものだと。 そうなると、誰も見ていない筈のフォーリナーは、誰もの目の前にいたと言うことになりますね」
「そうなるな」
このまま、遠距離での攻撃を開始。
一旦敵陣に攻撃を浴びせて、反応を見る。分厚く張られた銀糸の陣地の奧から、今の時点では敵は出てこない。
イプシロンの砲撃が、銀糸の間を縫って、巧妙に隠れていたレタリウスを打ち抜く。
吹っ飛んだレタリウスは、バラバラになりながら、味方の糸にひっついて散らばった。おぞましい光景だが。
死んだ同胞の肉に、レタリウスは見向きもしない。
私もガリア砲で、射撃を開始。
新兵達にも、ロケットランチャーで、攻撃を開始させた。
一枚、二枚。
確実に、敵の防御を剥いでいく。間もなく、ネレイドが来た。長距離から、ナパームを撒きはじめる。
地面の糸を焼き払うのが目的だ。
かなりしぶとく地面に食いついていた糸だけれど。
流石に特殊ガソリンの炎には抗し得ないはずだ。突入路さえ確保できれば、それでいい。スカウトから連絡が入ったのは、直後のことだった。
「ヘクトルおよそ二十、其方に接近しています!」
「四足が運んできたか、或いは一緒に来た連中だな」
弟のライサンダーが、また敵を一匹撃ち抜く。
さて、地面の様子はどうか。そろそろ炎も収まってきたし、突撃するならば、今だろう。
弟が指示を出す。
「ようやく出番だな」
前はいやだと言っていたけれど。
それでも、他に扱える人員がいないのだ。涼川がフュージョンブラスターを両手に持ち、前に進み出る。
今回は弟も同様の装備だ。
更に、ジョンソンも、同じようにフュージョンブラスターを両手に持って、進み出る。新人達の指揮は、エミリーに任せての前線進出。更に私も盾を構えて、突入の瞬間を待った。
「全員、突入を援護! 火力を集中!」
新人達が、エミリーの指示で、一番手近な巣に集中攻撃を開始する。
同時に、全員で、突撃。
殆ど間を置かず、わっと巨大生物が、銀糸の陣地から躍り出てきた。相当な数だ。これは、かなり酷い戦いになるな。
ハンマーを振りかぶって跳躍しながら、私はそう思った。