地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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四足歩行要塞は、水爆並みの火力を連打できる移動型要塞です。

食い止めなければ日本の司令部に当たる東京基地が壊滅します。それどころか、八年前のように、射程範囲内の全ての都市が灰燼と帰すでしょう。

ストームチームが対応に向かいます。


1、四足進撃

結局、二時間ほどで、勝負はついた。

 

息を整えながら、涼川が辺りを見回す。既に敵の残党は無し。焼き払われた銀糸の陣地は、さながら地獄。ビル街もすすけていて、悪夢がそのまま人間の街を覆ったかの様だった。

 

街の真ん中には、大穴が空いている。

 

バンカーバスターで粉々にした、敵の掘っていた穴だ。既にスカウトが来ていて、内部を調査している。

 

どうやらこれから繁殖しようとしていたところらしい。ただ、未然に防ぐことは出来ていた様だった。

 

黒蟻のいずれかが女王に変異するのか、或いは輸送船が女王を運んでくるのかは分からないが。

 

増援に向かっていたヘクトルは、途中で停止。

 

間に合わないと判断したのだろう。そのまま、四足が橋頭堡として確保している地域へと、後退していった。

 

通信が入る。

 

三島からだ。

 

試験運用していたフェンサー隊が、本格的に動き出すという事だ。前回の房総での戦いでも、試験運用フェンサー隊が活動していて、それなりの戦果を上げていた。被害も大きかったが、どうにか実用の目処がついたらしい。

 

私がストックしていた矢島も、其方の方で動いていたのだけれど。いよいよ、こっちに来るとの事だ。

 

まだフェンサースーツは未検証の部分が大きく、特に普通の人間の身体能力で何処まで使いこなせるかは大きな課題になっていた。せっかくストックしていた矢島も、そう言う意味ではフル稼働できていなかったのだが。

 

恐らくは、次の戦いから、一緒に戦線に加わってくれる筈だと言う事だった。

 

ただ、流石に四足との戦いには間に合わないだろう。

 

それに、フェンサースーツをいきなり使いこなせるとは思えない。しばらくはガリア砲を渡して、中距離から敵を狙撃する作業に掛かって貰うかも知れない。そのガリア砲も、敵に当たるかどうかとなると、かなり問題が多い。私はそれなりに当てられているが、普通の人間の身体能力では、やはりかなり無理がある。

 

しばらくフェンサー隊は、苦労を重ねることだろう。

 

弟が来た。

 

「六時間ほど余裕が出来た。 皆を休憩させよう」

 

「四足は動きを見せていないのか」

 

「後続の部隊を呼び集めているようだな。 確保した橋頭堡を使って、勢力を出来るだけ広げるつもりなのだろう」

 

面倒な事をする。

 

いずれにしても、攻撃準備が整わなければ、ただの特攻になってしまう。今回はグラインドバスターによる一挙撃破が目的とは言え、四足の前に無意味に立ちふさがることは、すなわち死を意味する。

 

それは私や弟でも、同じ事だ。

 

弟が全員を呼び集め、六時間の休憩を指示。

 

近くに前線基地がある。

 

カプセルも用意されているので、其処で休む事となった。

 

勿論、いきなり四足が砲撃してくる可能性もあるけれど。もともと四足が背中に装備している二連砲は、長距離兵器だ。この位置だと近すぎて、恐らくは狙っては来ないだろう。もし狙ってきた場合は、運が悪いと思って諦めるしか無い。

 

一旦前線基地に移動。

 

珍しく秀爺が、弟に話しかけていた。

 

「リーダー。 四足と正面からやりあうなら、儂に考えがある」

 

「何か策が?」

 

「ああ。 以前は試せなかったのだが」

 

秀爺は、前大戦での四足戦で、大きな役割を果たしている。最初に交戦したとき、四足は文字通り鉄の魔獣であって、撃破などどうやってすればいいのか、想像も出来ない相手だった。

 

犠牲ばかりを増やしていく中。

 

弟が大きな犠牲を出しながらも、肉弾攻撃を敢行し、敵の撃破を果たしたのだ。

 

その際に香坂夫妻は、大きな戦果を上げることに成功している。

 

話す内容を聞く限り、確かに試しても良さそうな戦術だ。

 

後の事は弟に任せて、私は一旦カプセルで休む。二時間ほどの休憩で、充分に体力を回復は出来る。

 

回復できないのは体のダメージ。

 

やはり、カプセルから出ると、バイタルに問題があると、レポートが幾つか表示されていた。

 

フェンサースーツを着込んで、外に出ると。

 

弟が炊き出しをしていた。

 

軍用にレーションは勿論支給されているのだが。今回は、民間の協力要員が、ある程度の食材を持ち込んできていたのだ。

 

弟の密かな趣味は、料理である。

 

外で行うのは珍しい。ここのところ戦いが続いていたし、たまにはこういうのも良いだろう。

 

時間もないし、それほど複雑な料理は作らない。

 

ざっと炒飯と卵をベースにしたスープ、それにサラダを作っておしまいだ。

 

量もそれほど多くは無いが。

 

ストームチームに行き渡るには充分だった。

 

長机を一つ占領して、ストームチームで食事にする。フェンサースーツは口の部分を開けて、食事を取ることが出来るように、少し前から改良されている。だから、私も、一緒に食事にする事が出来ていた。

 

「おお、腕を上げましたね」

 

「そうだな」

 

谷山がそんな事をいう。

 

奴の話によると、以前食べたときは、とても食えたものではなかったそうである。ただし七年前の、終戦間近の話らしいから、まあそれはさもありなんとしか言いようが無い。元々弟は、軟禁状態での気分転換にと、料理をはじめたのだ。私も最初の頃は、弟が決して料理が上手では無かった事を、よく知っている。

 

ちなみに私は、料理は苦手なので、食べるの専門だ。私の料理当番の時は、大体出来合いで済ませてしまっている。

 

勿論、弟が料理上手と言っても、プロほどでは無い。

 

香坂ほのかが、幾つかアドバイスをしていたので、弟が頷いてメモを取っていた。もっと上手になりたいという意欲は、良いことだ。

 

しばらく黙々と食事。

 

皆が食べ終えるのを見終わると、弟はカプセルに入って休むべく、テントの方に戻っていった。

 

私はと言うと、医師に呼ばれて、診察を受ける。

 

バイタルについてはもう仕方が無いと、半ば諦めているけれど。医師は脅かすようなことをいった。

 

「このままだと、内臓が機能不全を起こす可能性があります」

 

「そこまで柔じゃない」

 

「ええ、そうでしょう。 ですが、それも今はです。 このまま連戦を重ねて、それこそ自分が盾になって皆を守る様なことばかり続けていたら、どうなるか分かりませんよ」

 

苦笑いしたけれど。

 

結局の所、医師の言うとおりなのだろう。

 

診察を終えると、皆の所に戻る。

 

ナナコが一人でぽつんと立っていた。房総の戦いで有能さを見せてくれたこの娘は、妙に日高軍曹になついているようで。社交的な日高軍曹が誰かと話しているときは、寂しそうに突っ立っていることが多かった。

 

「どうした」

 

「いえ、料理を作る事が出来たらと思いまして」

 

「弟に教わるか?」

 

「よろしいのですか」

 

別に構わない。

 

それに、何かを教えるというのは、楽しい作業だ。そう告げると、ナナコは頷いていた。

 

或いは、先ほど日高軍曹が、おいしいおいしいと人一倍平らげていたから、かも知れないが。

 

私も少しでも体を休めるべく、皆をみて回った後は、もう一度カプセルに入っておく。

 

休めるうちに、少しでも。

 

ただでさえ、今後はいつ休む事が出来るか、分からないのだから。

 

 

 

黒沢一等兵に声を掛けられたので、言われるまま筅はついていく。

 

何か良くない探り事をしていることは、何となく筅も勘付いてはいた。ストームリーダーにも、はじめ特務少佐にも釘を刺されていたのに。黒沢は引く気が無いようだった。

 

ついていった先には、以前見かけた記者がいた。

 

確か従軍記者の柊だ。

 

現在、EDFは専属契約のニュースを抱えているが、これはあまり評判が良くない。というのも、EDFに都合が良いニュースしか流さないとよく言われているからである。故に、市民の間からも、EDFニュースは当てにするなと陰口をたたかれているそうだ。

 

一方で、専属契約していない一部の情報企業は、それなりにEDFの裏情報をすっぱ抜いたりする。

 

不満に対処するために、ある程度こういったすっぱ抜き記事を、国連もEDFも容認しているのは、皮肉と言うほか無いだろう。

 

「彼女が筅一等兵。 最近はストームに配備されたベガルタM3ファイアナイトの専属パイロットをしています」

 

「柊です。 よろしく」

 

握手を交わす。

 

それにしても、完璧なほどの作り笑いだ。営業スマイルで、本心を丁寧に隠している。

 

彼女とは何度か少しだけ話した事がある。だから、わざわざ黒沢に紹介されなくても、此方は知っている筈だが。

 

それでも多分、取材するのは初めてだろうから、礼儀を守っているのだと、私は判断した。

 

幾つかの取材をされる。受け答えは別に悩むようなものでもなかった。

 

出身だとか好きなものだとか。

 

だが、不意に、質問が切り込んできたものとなる。

 

「フォーリナーについて、どう思いますか?」

 

「ええと、それは」

 

「何者だと貴方は考えていますか?」

 

筅としても、それは知りたい事だけれど。記者はあくまで営業スマイルを崩していない。ひょっとしてこれは。

 

筅が何かを知っていると、思っているのか。

 

残念だけれど、何も知らない。

 

巨大生物とはかなりの回数交戦してきたし。飛行ドローンもヘクトルも間近で見た。怖いとは思ったけれど、中身がどうとかにまでは、やはり考えが及ばない。というよりも、だ。

 

そんな事を考えていたら死ぬと、何度か戦場に立ってみて、よく理解できたのだ。

 

たとえばストームリーダーや嵐特務少佐、他の熟練兵の様な怪物じみた使い手達なら、悩む暇もあるのかも知れない。

 

だけれども。

 

強化クローンとはいえ、筅はあの人達とは力の差がありすぎる。

 

悩んでいたら死ぬ。

 

それは初陣の時から、散々に思い知らされている事だ。

 

「あの、黒沢一等兵?」

 

「特に他意はありませんよ。 思うところを応えて貰えれば」

 

「……強いていうなら」

 

正面で戦って見て感じたのは、極めて効率的に動いている、という事だ。多分だけれども、組織戦の手腕に関しては、地球人類を明らかに超えている。昔はどうだったか分からないけれど、少なくとも現在、フォーリナーは戦略的な行動をするし、戦術的にも人間より先に行っている様に見える。

 

ストームリーダーをはじめとする常識外の精鋭達がいるから、人類はどうにか戦えているけれど。

 

そうでなければ、とっくに。

 

そう、前大戦の時点で。人類は、フォーリナーに絶滅させられていたのでは無いかと思うのだ。

 

ただ分かるのはそれだけだ。

 

人類に対する圧倒的な殺意と敵意を感じるのは事実だけれど。彼らの事情とか、侵略の理由とかは分からない。

 

或いは、人間が先に手を出したから、という事であっても、不思議では無いように思える。EDFの背後事情が妙にきな臭いことは、筅だって理解はしているのだ。

 

それらを全て正直に話す気は無いけれど。とりあえず、適当に誤魔化しながら、四苦八苦して応える。

 

記者は満足はしていなかった様だけれど。

 

黒沢に礼を言って、他のEDF隊員の所へ、話しに行った。

 

記者に偏見はないけれど。

 

あの人は苦手だ。もの凄い勢いで食いついてくる、毒蛇みたいな印象がある。黒沢に、ため息を付きながら、聞いてみる。

 

「黒沢一等兵、どうしてあの人とつるんでいるんですか?」

 

「僕も知りたいんですよ。 この戦争の裏の事情と、フォーリナーが何者かという根本的な事をね」

 

「……」

 

「貴方もそうですが、僕は地球人類が造り出した戦闘生物兵器の一種です。 でも不幸にというべきか幸運にと言うべきか、感情を持っている。 あのナナコでさえそうです」

 

後輩として入ってきた愛くるしいナナコのことを思うと、確かに胸が痛い。

 

EDFが試験的に投入した、戦闘目的だけの強化クローン。家庭の生活も知らず、目を覚ましてから戦う事だけを教え込まれて、戦場に送られてきた可哀想な子。日高軍曹を随分と慕っているようで、それだけが救いに思えてくる。

 

「だったら、この腐った運命を作った輩が何者か、知りたいと思いませんか。 ただ叩き殺すだけでは、気が晴れませんしね。 せめて僕は、奴らが何者か知った上で、戦って、納得して死にたいんです。 それが生物兵器として作られても、人権は与えられて人間として生きている、僕の矜恃です」

 

そうか。

 

黒沢は冷静で知的なイメージがあったけれど。

 

そんなに激しい所があったのか。

 

何だか考えさせられる。漠然と生きてきて、地球のためにと思ってEDFに入った筅とは、根本的に違う。

 

みんなも、こんな風に色々考えているのだろうか。

 

「何か分かったら、知らせてください。 気が向いたらで構いませんので」

 

「……はい」

 

ストームチームであげてきた戦果は、ほかの部隊とは比較にならない。

 

四足を首尾良く倒せたら、池口も合わせて、皆で軍曹になる事が決まっている。その後は昇進試験を受けて、尉官になる事も出来るかも知れない。

 

家への仕送りも、増やせる。

 

今は避難をしているだろう家族のことを思い出す。あまり長い事は一緒にいなかったけれど。

 

それでも優しくしてくれた、大事な家族だ。

 

黒沢は違ったのだろうか。

 

四足との血戦は、刻一刻と近づいている。

 

 

 

戦闘開始予定時刻の三十分前から、ブリーフィングを行う。弟が主導してのもので、私は側で見ているだけだ。

 

以前救出した記者がなにやら新兵達の間を嗅ぎ廻っていた様だけれど、私にはあまり関係がない。

 

あの記者は、そういえば。

 

ブリーフィングを取材はせずに、そのまま帰って行った。理由はよく分からないけれど、まあそれは私にはどうでも良いことだった。

 

各自のバイザーに、まず四足のデータを送信。

 

これはEDFから公式に配布されているデータよりも、さらに突っ込んだものだ。直接交戦した私や弟が精査しているので、当然だろう。

 

「四足は全長二百メートル強の大型歩行要塞。 前大戦ではこの怪物の装甲を貫く手段がなく、弱点を見つけるまではあらゆる攻撃が無効化された。 核でさえ例外ではなかった」

 

戦術核を用いた攻撃が行われたのは、北米戦線での事だ。

 

上陸して猛威を振るっていた四足の一機に対して、残っていたICBMを用いて、戦術核弾頭を叩き込んだのである。

 

この作戦が行われた時期、既にEDFは半壊状態で、指揮系統もまともに機能していなかった。

 

後々批判されたこの愚策は。

 

結局、四足が戦術核にも耐えるという事実のみを、残しただけだった。

 

「結局の所、四足を倒すのには、当時は此処を狙うしかなかった」

 

指定したのは、四足の、人間で言えば頭部の下辺りにあるハッチ。

 

此処から四足は、飛行ドローン、巨大生物、ヘクトルなどの直衛戦力を、無尽蔵に投下してくる。

 

しかも四足は前面に強力なシールドを張っており、体の下部には強力な掃射砲が多数装備されている。つまり直衛戦力を叩き潰しながら接近し、掃射砲を根こそぎ潰した上で、人間より遙かに早く進む四足に側面および後方から近づいて、ハッチへ攻撃を叩き込まなければならないのだ。

 

流石にハッチの内部に大威力の攻撃を叩き込まれれば、四足とてひとたまりもない。

 

事実弟はこの方法で二機。

 

私は一機を、撃破している。

 

「関節部分を狙うのは、戦術的には有効では無いのですか?」

 

「それなら試した」

 

不意に渋い声がしたので、皆が振り返る。

 

腕組みしたままの秀爺だ。

 

対戦時、ライサンダーを渡されていた秀爺は、長距離から二十発近い弾丸を、同じ左後ろ足の関節部分に叩き込んだ。

 

それでも倒れなかったのだ。

 

「地雷などによる足止めも効果がありませんか」

 

「ないな。 四足は後に解析したところによると、一種の反重力装置によって体のバランスを保っている。 極端な地形などでは、足跡に偏りがある。 噂によると、北米戦線では大威力の地雷を用いたり、落とし穴まで使ったそうだが、いずれもが効果を示さなかったそうだ」

 

黒沢が呻く。

 

この四足で最大の脅威は、防御力では無い。

 

背中に装備している、二連長距離砲だ。水爆並みの破壊力を持つ長距離攻撃を、無尽蔵に放つことができる。

 

此奴のせいで、極東の主要都市は、前大戦で壊滅する事になった。

 

「今回は、EDFの技術力も進歩している。 戦術爆撃機ミッドナイトを用いて、グラインドバスターにより、四足を一挙に葬る」

 

その間ストームは、浜松基地から支援に出るレンジャー6、10、それにウィングダイバー13とともに、足止めの作戦を行う。

 

現時点で、四足が確保している橋頭堡近辺には、50隻の輸送船、300を超えるヘクトルがおり、これらに迂闊に手出しは出来ない。

 

今回は、四足だけを狙う。

 

四足を放置すると、EDFの基地が、一瞬で灰燼に帰する可能性もある。それどころか、二連砲による射撃が、シェルターに直撃でもしたら最悪だ。万単位の市民が、一瞬で命を落とす事になるのである。

 

「足止めと言われますが、具体的な策は」

 

「四足の動きを見ながら、奴が投下した直衛戦力を排除。 更に掃射砲も、できる限り片付ける」

 

「ミッドナイトによる爆撃が、通じなかった場合は」

 

「その時は私が奴を葬る」

 

黒沢の質問に、私が答える。

 

まあ、その時は。私だけでは無く、弟にも手伝ってもらうが。

 

以前の大戦では、空軍による援護もなく、味方の戦力も枯渇しかけていた。私も弟も、悲惨な負傷を抱え、劣悪なアーマーを着込んで、戦わざるを得なかった。その時とは、状況が根本的に違う。

 

今回は涼川や秀爺、谷山も側にいる。ジョンソンやエミリーも、心強い戦力だ。

 

勿論新人達も育って来ているし、簡単に負ける事はない。

 

緊急通信が入った。

 

ついに、四足が動き始めた、という事だった。

 

「最後に。 絶対に、四足の前には出るな。 奴は動きが鈍いように見えて、人間よりは遙かに早く移動する。 奴に踏みつぶされると、アーマーなんぞ役に立たない」

 

「イエッサ!」

 

作戦地点へ移動する。

 

修理が終わったばかりのグレイプRZは、日高軍曹に運転して貰う。

 

今の時点で、四足はほぼ予定通りに動いている。関東地方を射程範囲に捕らえるべく、まずは山梨へ向かうというのは、推察されていたとおりだ。

 

EDFの予測は当たらないことの方が多いが。

 

今回は適中した。

 

移動速度も、予想通りである。これは前大戦のデータと、今回スカウトが観測した四足の動きから、割り出した数値である。

 

此処からは機動戦だ。

 

見えてきた。

 

四足は、体高だけで五十メートル近くある。

 

つまり、生半可なビルよりも、遙かに大きいという事だ。直衛についているヘクトルは、今の時点では六機。だが戦闘が開始されれば、更に増えることは、間違いない。

 

数が少ないのは、此方を釣るための餌だ。

 

しかしそれについても、今回は対策を練ってある。

 

「海上にて、第六、第九艦隊が配備完了!」

 

「敵橋頭堡を牽制する! 支援砲撃開始!」

 

敵の主力部隊は、これより雨霰と降り注ぐ砲弾の対処に追われることになる。勿論空軍戦力が向こうに向かえば、思うつぼだ。

 

そして、四足自体は。

 

ストームが肉薄して足止めする。

 

「こちら香坂夫妻。 イプシロン、配置につきました」

 

「よし、以降は判断を任せる」

 

「イエッサ」

 

香坂ほのかが、通信を切る。

 

これより敵は、最強の狙撃手により、一方的に叩かれることになる。

 

更に中空からは、谷山が通信を入れてくる。今回は飛行ドローンが多数迎撃に出てくる事が想定されるので、バゼラートでの出撃だ。つまり対空戦に、桐川から来るファイター部隊とともに、対処して貰う事になる。

 

「降車!」

 

弟が指示。

 

グレイプRZから、皆が降りる。

 

新兵達の指揮は、いつものようにジョンソンにして貰う。私と弟は、涼川と一緒に敵との近距離戦だ。中距離から新兵達が支援。

 

エミリーはさっそくプラズマジェネレーターをふかして、大きく敵側面へと回り込む。

 

更に、レンジャーチーム2つ、ウィングダイバーチーム1つが、配置についた。

 

四足が足を止める。

 

しかしそれも一瞬のこと。また、すぐに。ヘクトルを従え、我が物顔に歩き始める。

 

「前面のシールドが、以前より更に強力になっているな」

 

「いずれにしても関係無い。 セオリー通りに行くぞ」

 

「どっちにしろ、木偶人形共をぶっ潰せばいいんだろ? さっさとやらせてくれよ」

 

「もう少し近づいてからだ」

 

戦意が疼いて仕方が無いらしい涼川を、弟がやんわりとたしなめた。

 

涼川はまるで中学生の様な食欲を発揮して、さっき三杯もおかわりをしていたが。しかし戦場での暴れっぷりを見る限り、三杯でよく足りるなと、感心してしまう。むしろ小食なのかも知れない。

 

ヘクトルの一機が、長距離砲を持ち上げる。

 

しかしその瞬間。

 

その胸部に、大穴が空いていた。

 

秀爺からの支援砲撃だ。流石に正確極まりない。

 

「攻撃開始!」

 

弟が叫ぶと同時に、私はブースターを全開に、地を蹴った。

 

中距離から、弟がライサンダーで支援してくれる。涼川はU-MAXを使って、グレネードを敵の足下へと、ドカドカ放り込みはじめた。

 

直衛ヘクトルのガトリングが、回転をはじめる。だが、それより先に、ブースターをふかして跳躍した私が、至近距離からガリア砲を突きつける方が早い。

 

発射。

 

至近距離からの一撃だ。

 

流石にヘクトルでも、ひとたまりもない。

 

胸から尾てい骨の辺りに抜けた弾丸が、ヘクトルの巨体を、瞬時に打ち砕いていた。

 

続いて、右旋回しながら、ガトリングを放つ。

 

丁度弟のライサンダーを受けて揺らいでいたヘクトルが、乱射を浴びて、下手なダンスを踊る。更にとどめとなった涼川のグレネードが、頭部を砕く。

 

爆裂して吹っ飛ぶ。

 

瞬時に三機のヘクトルを失っても、敵は全く動じない。

 

機械だから、当然かも知れないが。

 

着地した私は、盾をかざしながら、スラスターで横移動。生き残ったヘクトルが、ガトリングを叩き込んできたのだ。地面が盛大に吹っ飛び、盾への負荷も大きい。更に近づいてくる四足が、増援を続々と繰り出してくる。

 

「ヘクトル、4、5、7! 更に増えます!」

 

「相変わらず、どうやって格納しているのやらよく分からん構造だな」

 

戦術士官の声に、私はぼやく。

 

四足とともに行進を開始するヘクトル。

 

それだけではない。

 

ハッチから続々と出撃してくるのは、飛行ドローンの大群だ。即応した谷山がミサイルを叩き込むが、全部倒せるはずもない。

 

「ミッドナイト到着まで、十分。 なんとしても耐え抜いてください!」

 

戦術士官が、勝手な事をいう。

 

此方としては想定の範囲内だが。しかし、わらわら出てくる敵の数は、想定を遙かに超えていた。

 

既に二十機以上のヘクトルが、まるで王の周囲を固める近衛の様に、進んできている。

 

飛行ドローンは、二百機を超えていた。

 

弟のライサンダーを浴びたヘクトルの顔面近くまで浮上し、ガトリングを叩き込む。乱打を浴びたヘクトルが爆裂四散。爆発を突き破って更に飛び、旋回しながらガリア砲をぶっ放す。

 

丁度四足から出撃しようとしていたばかりのヘクトルを直撃。

 

爆裂して、四足が傾いた。

 

わずかに時間は稼げたか。

 

スラスターをふかしたのは、斜め後方にいたヘクトルが、恐るべき正確さで狙っているのに気付いたから。

 

無理矢理地面に着地すると、ブースターを使って加速。長距離榴弾砲の着弾点から逃れる。

 

しかし、爆風まではどうにもならない。

 

フェンサースーツの負荷が、上がっている。

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