地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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フェンサーという兵科は、平和だった七年の間に創設された新兵科です。

戦闘車両並みの火力と装甲を持った歩兵。

その創設には、兵器のテスターだったもう一人のストーム1。その存在が大きく貢献していました。


3、機甲兵二人

最初、私がデータを集めて。

 

それから試験部隊が創設され。そして、そのデータを元に、本番運用が始まる。流れとしては、ウィングダイバーと同じ。

 

フェンサーは、そうやって作られた兵科だ。

 

私は弟よりも戦闘力が劣るけれど。新しい武器を使いこなすことに関してだけは、負けてはいない。

 

それに関しては、前大戦のころから、変わっていない強みだ。

 

ヒドラが東京基地に着くころには、皆がカプセルに入り終えて、それなりにリフレッシュしていた。

 

此処から更に、自由時間を丸一日取る。

 

とはいっても、現在巨大生物と一進一退を繰り返している関東全域では、開いている店もない。

 

疲れも溜まっているし、更に言えばいつ緊急出動が掛かるかも分からない状態だ。

 

弟が、特に新人達には、念を押しておく。

 

「診察をしっかり受けた後は、休んでおく様に」

 

「イエッサ!」

 

「よし、一旦解散」

 

全員が、ぞろぞろと散っていく。

 

香坂夫妻が、最後まで残っていた。

 

「はじめちゃん、一郎ちゃん」

 

四人だけの時は、そんな風にほのかは私達姉弟を呼ぶ。香坂ほのかにとって、私達は、孫の様な年であり。

 

何より、実際の孫達と疎遠なこともあって、世話を焼きたい存在らしかった。

 

「後で猪鍋を作るから、是非来てちょうだい」

 

「おお、馳走になります!」

 

弟が珍しく、嬉しげに破顔した。

 

二人はもともとマタギだったのだ。この手の猟師に伝わる料理に関しては、絶品だ。たまにこうして、今までも振る舞ってくれた。

 

ただそれが本部に危険視された。ストーム1リーダーと仲良くしているというのは、それだけで警戒を呼ぶ事だったのだ。

 

故に二人は東北の支部に飛ばされて。

 

其処で新兵の訓練を、続けていたのだ。

 

ちなみに東北の支部では、彼らが育てたスナイパーが何名もいる。あの数字による観測指示と狙撃も、受け継がれている様子だ。流石にこの老練な夫婦ほどに使いこなせる者達は、中々にいないようだが。

 

二人と別れると、司令部に。

 

その後は、病院だ。

 

まず司令部で、日高司令に状況を話し。其処で軽くブリーフィング。その後は、矢島を引き取る。

 

矢島は試験運用されていたフェンサー部隊にずっと出向していたので。此処からようやく合流。まあ、生き残りさえすれば、すぐに他の新人達に追いつくだろう。

 

後は病院で、原田を引き取る。

 

バイオプラントで負傷を穴埋めして、既に退院できると太鼓判も押されているという事なので、ようやくだ。

 

そして、三川の様子も見に行く必要がある。

 

全て終わると、半日は潰れるだろう。その後は香坂夫妻の所でゆっくり出来るとよいのだけれど。

 

まずは司令部に。

 

行く途中、プロテウスがメンテナンスを受けているのを見た。相当に傷が増えている。まあ、歴戦を重ねているのだし、当然だろう。日高司令はこれを移動司令部としても、東京支部の最強戦力としても連日活用している。東京で巨大生物と一進一退の攻防を繰り広げている情報は見ているが。今のところ、流石にプロテウスが出た地区では、必ず勝利しているようだ。

 

司令部ビルに入って、日高司令のオフィスに。

 

日高司令も、かなり疲れきっている様子だった。

 

「少人数での四つ足の撃破、見事だった。 情報が届いているかも知れないが、イギリスでも同じように四つ足の撃破に成功している。 あちらでは、オメガチームが主体となったが」

 

「さすがはオメガですね」

 

「ああ。 ただ、極東ではすぐ次の四足が現れたが。 イギリスでは、一旦敵の攻勢が止まったそうだ。 この機にオメガには、アフリカの巨大生物の巣穴を攻略して貰う」

 

転戦が続いているオメガだが。その戦歴はストームに次ぎ、実験的に強力な兵器を最優先で廻されているだけあって、流石の強さだ。

 

オメガチームの隊長は、中東の出身。あの彫りの深い顔は、印象に残る。ただ彼は色々と出身に恵まれておらず、我々姉弟以上に目の奧に強い渇きを宿しているのが、とても悲しい。

 

北米の巣穴も、ストライクフォースライトニングが、これから攻略するそうだ。

 

どちらも成功すれば、残る巣穴は八つ。

 

中東、印度、オーストラリア、旧ロシア、旧中国に二つ、そして日本と、東南アジア。

 

このうち脅威度が大きいのが、日本のものと、オーストラリアのものとなる。

 

特にオーストラリアでは現地部隊が押されており、出来るだけ早くの攻略をと、現地の司令官が悲鳴を上げているそうだ。

 

少なくとも、四足が上陸したあげく、今でも敵の猛攻に晒され続けている極東から、ストームが離れる事はないだろう。

 

「静岡の四足を攻略する作戦については、いつになる予定ですか」

 

「房総での戦闘以降、マザーシップが太平洋側で睨みを利かせていてな。 しばらくは大兵力を動かせないだろう。 状況を変えるとしたら、君達による東京の敵巣穴攻略をおいて他にない」

 

「分かりました。 出来るだけ急いで、二次攻略作戦を」

 

「うむ」

 

敬礼して、オフィスを出る。

 

私は一言も喋らなかった。この辺りは、下手に口を出すと、しゃしゃりでる事になる。リーダーを弟に任せているのだし、それで良いのだ。

 

「姉貴、どう思う」

 

「そうだな。 フォーリナーの動きは、相変わらず的確だ。 以前ほど本部は無能では無いが、それでもやはり相手の方が一枚上手に思えるな」

 

「どうする、彼奴に会っていくか」

 

「いや、いい。 今日は用事を済ませたら、猪鍋を食べて休もう。 医師にがみがみ言われている状態だ」

 

弟は私よりはましだけれど。

 

それでも、老化が普通の人間の倍というマイナス要素は変わっていないのだ。

 

一階に、矢島はいた。

 

矢島は果敢な戦闘ぶりとは裏腹に、大きくて素朴な青年だ。体格に関してはジョンソンに匹敵するか、それ以上。いわゆる、気は優しくて力持ち、というタイプである。喋るときに強いなまりがあり、純真な人柄をそれが後押ししていた。

 

「お久しぶりです、はじめ特務大尉」

 

「今は特務少佐だ」

 

「失礼しましたっ! 矢島一等兵、フェンサー部隊からただいま着任いたしました」

 

「私がストームリーダーだ。 以降よろしく頼む」

 

弟ががっしりと矢島と握手を交わした。私も、フェンサースーツのまま、握手する。これで、このチームにはフェンサーが二人。

 

今日は顔見せだけだ。矢島には自由時間を告げる。

 

故郷の弟と妹に、手紙を書くのだと矢島は嬉しそうにしていた。何でも矢島は、新潟から出てきているとかで。大家族の長男であるらしい。何よりも、家族思いなのは、結構なことだ。

 

東京支部の病院へ行く。

 

病院は増設されて、プレハブが二棟増えていた。戦時にはこうやって、すぐに増設できるように手配されているのだ。

 

今、東京地区の市民は、シェルターに移っている。

 

シェルターの中にも病院があり、市民は其方で治療を受けて貰う事になっているのだけれど。

 

巨大生物が出現した直後に大けがをした市民の中には、まだ基地の中の病院から離れられない者もいる。

 

今回の戦闘では、今の時点でシェルターが破られたという報告はない。

 

勿論巨大生物がシェルターを狙ってきたという報告はあるが。いずれも現地部隊の尽力で、撃退に成功している状況だ。

 

増設されている棟に、三川は移されていた。

 

今治療中という事だけれど。面会は大丈夫だった。ただ、医師が側についていたが。

 

白衣を着て、ベッドに横たわっている三川は。

 

弟と私に気付くと、本当に申し訳なさそうにした。

 

「あ、すみません……」

 

もともと大人しかった三川は、前の一件以来、更に萎縮してしまったかのようだ。気の毒だけれども、PTSDは治療できる。

 

治療後は、出来るだけ復帰して欲しい。

 

「今は治療に専念しろ。 その後は頼むぞ」

 

「ストームリーダー」

 

「分かっている」

 

急かす様な言葉は厳禁と、医師にも言われているのだ。

 

病室を出た後、医師に状況を聞く。もうそろそろ、投薬を止めても良いころだそうだ。その後リハビリをして、状況を見て原隊復帰をして貰う事になるそうである。

 

三川は優秀なウィングダイバーになる素質がある。

 

訓練の時に私はそう見込んだ。

 

そして今、優秀な戦士は一人でも多く必要なのだ。

 

三川は医師に任せる。

 

原田は、既に退院して、病院の待合室で待っていた。原田は元々矢島ほど筋肉質では無くて、入院で更に痩せた様だった。

 

待合室で敬礼して、原隊復帰の意思を確認。

 

是非戻りたいと原田は言ってくれた。

 

弟は嬉しいと言うと、原田の肩を叩いた。

 

 

 

宿舎に戻ると、香坂夫妻が猪鍋をもう準備し終えていた。

 

東北の弟子の一人が、冷凍した猪肉を送ってくれていたのだという。たまに飛行ドローンは来るが、まだ東北は激戦地区では無い。余暇を見て、猪狩りをする余裕くらいはあるというわけだ。

 

ただ、四人水入らずだと思ったのだが。

 

ナナコがいる。

 

恐縮した体で座っているナナコは。

 

そもそもこういう席に出るのは、初めてらしかった。

 

テーブルのコンロに火を付けて、鍋を温めはじめる。香坂家の鍋にはルールがあり、ほのかが良いと言うまでは誰も手を付けてはならない。秀爺もそれに対して、口を出す事はない。

 

むっつりと黙り込んでいる秀爺だが。

 

ほのかが良いと言うと、おもむろに箸を鍋に入れた。

 

皆で肉や野菜を分けて食べ始める。

 

「うむ、美味しいな」

 

「食用の豚では無くて、どうして猪を」

 

「増えすぎると山が荒れる。 だから、時々駆除をする」

 

ナナコの問いに、必要なだけ秀爺が応える。社交的なほのかと、この老スナイパーは性格的にも対極的だ。

 

一通り肉を食べ終えると、追加を投入。

 

「まだまだあるから、どんどん食べていってね」

 

「いただきます」

 

「その……」

 

「遠慮はいらん。 どうせ夫婦では食べ切れん」

 

遠慮している様子のナナコに、秀爺が言う。

 

困っているナナコだが。何度かほのかが助け船を入れて、肉を取り分けてやったりしていた。

 

ナナコを引き取ることにしたのは、弟だ。

 

強化クローンとして。戦場に投入することだけを想定して、突貫で作られた戦士がかなりいると聞いている。

 

極東だけでは無く、全世界のEDFで、合計で二千人ほど。

 

遺伝子データはやはり私をサンプルにして、優秀な戦果を上げた男性戦士の遺伝子と組み合わせ、大量生産したそうだ。

 

現在似た様な境遇の子が七名、オメガチームに。14名が、ストライクフォースライトニングに。

 

ライトニングの隊長は知っているが、荒々しいようでいて面倒見の良い男だ。子供達の面倒も、しっかりみてくれているだろう。

 

一方オメガの隊長はと言うと、多分部下の教育にも面倒を見ることにも興味が無い。

 

一戦士として戦い抜くことだけが彼の本分だ。

 

少し心配だが、何人も優秀な戦士がオメガにはいる。きっと、悪い様にはならないだろう。

 

極東支部でも、各地の支部に、何名かずつナナコと同じような子が配備されているらしい。

 

ただ、あまり受けは善くない様子だ。戦闘力は高くて周囲から信頼されているという事なのだけれど。

 

昔から、極東にはそういう悪い風潮があったのも事実。

 

今に始まった事では無いし。

 

これからも、容易には消えないだろう。

 

いずれにしても、ナナコの技量については、実戦で確認している。今のところ不安はないし。

 

足りないところは、チームで補っていけば良い。

 

「ところで一郎」

 

「はい」

 

「まだ増員はするのか」

 

「状況を見て決める予定です。 バックアップスタッフについても、三島が統括しているだけでは不安ですし、或いはオペレーターを専任で入れるかも」

 

ナナコが驚いた様に、弟と秀爺のやりとりをみている。

 

プライベートでは、秀爺は弟を名前で呼び。弟も、秀爺に対して、敬語で接している。この関係は、不遜では無い。

 

とても温かいものだと、私は思っている。

 

「さ、もっと食べて。 大きくなるのよ」

 

「そうだな。 私の様に、育たないという事はないらしいと聞いている。 遠慮無く喰って、モデルより大きくなれ」

 

「……」

 

困惑しながらも、ナナコは食事を続けて。

 

昼過ぎに、鍋は解散になった。

 

弟はまだ少し作業があると言うので、任せて私は宿舎に戻る。

 

後はシャワーを浴びて、睡眠薬を飲んで眠ることにする。医師に散々がみがみ言われているのだ。

 

休んでおくに越したことはない。

 

いざ横になると、やはり疲れが溜まっていたらしく。

 

睡眠薬は、飲む必要もなかった。こてんと、そのまま落ちてしまう。目が覚めると、夜中。

 

少し、体が軽くなった気がした。

 

弟も隣の部屋で眠っているらしい。バイザーを確認して、戦況を見ておく。

 

静岡にいる敵は、まだ動いていない。

 

だが戦力は確実に増強されており、いずれ山梨へ進撃を開始するだろう。その際は、迎え撃つしかない。

 

九州、近畿は散発的な攻撃を受けており、交戦中。

 

北海道でも、上陸したヘクトルの部隊と、現地の機甲師団が交戦していた。

 

一つ、ストームへの攻略指示が来ている場所がある。

 

北海道のある谷川で、輸送船が停泊しているというのだ。谷川の地形を利用しており、上空からの攻撃は受け付けない。凶蟲を今のところ投下し続けていて、地下に潜る恐れはないそうだが。

 

いずれにしても、現地の部隊はお手上げだ。地形を上手く利用しての低空からの防御は、確かに攻略しづらい。

 

日高軍曹から、メールが入っていた。

 

今日はゆっくり休めて、大変有意義でした。筅ちゃんとも一杯お話しできて、とても楽しかったです。

 

そんな事が書かれている。

 

初々しくて結構なことだ。

 

今度こそ、睡眠薬が必要かもしれない。

 

体を少しでも回復させるために。私は睡眠薬を飲んで、また数時間、無理矢理眠った。

 

 

 

ヒドラで戦地に飛ぶ。

 

今の時点では極東戦域だけだが。いずれヒドラを使って、海外の戦場で戦う必要も生じる可能性があった。

 

いずれにしても、まだオメガやストライクフォースライトニングと共同するほどの作戦はない。

 

各地で大規模な戦いは起きている様だが。

 

EDFが決定的な敗北をしたという報告も、なかった。

 

現地近くの基地に到着。

 

司令官に挨拶した後、すぐに現場に。長く続く谷川に、相当数の巨大生物がいる。

 

爆撃はしているが、埒があかないそうである。現時点で数百匹は凶蟲がいて、放っておくと転戦している基地の部隊が、奇襲を受ける可能性もあるとか。

 

今の時点で、確認されている輸送船は二隻。

 

しかも地面すれすれに浮いており、川の両岸から狙撃するのは難しい。ハッチが非常に低い位置にあるためだ。

 

或いは出来るかも知れないが。

 

今回は戦力を生かして、そうするべきではないと、弟は判断した。

 

「涼川」

 

「あいよ」

 

「下流のこの地点に布陣。 敵を攻撃しながら、浸透を防いでくれ」

 

「イエッサ」

 

ジョンソンとエミリーは、谷川の両岸上に位置。新人達を連れて、涼川の上に回り込もうとする敵をたたく。

 

谷山はネレイドで、上空から全域を支援。

 

そして私と弟は。矢島を連れて、上流から敵を押し込む。

 

秀爺達は、今回はネレイドから、狙撃をして貰う。

 

揺れるヘリからの狙撃だが。

 

二人なら、なんら問題は無い。今までも、似た様なミッションで、幾つもの実績を残しているのだ。

 

「今回、本命のアタッカーは旦那か。 あたしは敵をできる限り引きつければいいんだよな」

 

「可能なら殲滅してくれ」

 

「了解、と」

 

躊躇なく大威力の爆発物を持ち出す涼川。

 

ただ今回は、狭い場所で戦う。それなら、当然の判断だ。

 

右側の谷上には、筅のベガルタファイアナイトと、念のためのキャリバンが待機。川には大きめの鉄橋があり、それを利用して救助を行う。

 

左側の谷上には、グレイプRZが待機。

 

戦闘に備えて、ジョンソンとエミリーも。其方にいて貰う。他の新人達も、皆此方に配置だ。

 

ファイアナイトの戦闘力を考慮すると、妥当な布陣である。

 

全員が配置につくのを見届けると、谷川に降りる。今回は、弟はアサルトにスティングレイというオーソドックスな装備。

 

矢島は、シールドにガトリング。スピアにハンマーと、私が使っているものと、あまりかわらない。

 

今回は他のフェンサーがどれだけ動けるのか、確認する意味もある。

 

谷川に降りて、少しして。

 

下流の部隊が、交戦を開始した。

 

「此処からは速攻だ」

 

「はい!」

 

矢島もフェンサースーツを着ているから、声がかなり籠もる。

 

敵が一気に下流へと動き始めたのを確認。私はブースターを噴かし、前に出る。矢島は、ついてくるけれど。あまり速くは無い。

 

一隻目の輸送船が見えてきた。ハッチは開いたままだ。

 

凶蟲がかなりの数、周囲にいる。散らせ。私は叫ぶと、ガリア砲に切り替える。弟と矢島が、後ろから援護射撃をしてきてくれている。ガトリングの射撃音が追って来る中、私は輸送船の下に飛び込み、ガリア砲をぶっ放していた。

 

至近からの、ガリア砲である。

 

輸送船はひとたまりもない。ハッチの内側から、外殻を貫通して、弾は外へ抜けた。

 

急いでスラスターを噴かし、バック。慌てて盾をかざしたのは、真右から、凶蟲が糸を叩き付けてきたからである。はじき返しはしたが、直撃を喰らっていたら、かなり危なかったかもしれない。

 

殲滅はどうなっている。

 

弟は的確に敵を削っているが。

 

ガトリングを、矢島は上手く動かせていない。輸送船の爆発に巻き込まれ、相当数の凶蟲が消し飛ぶ。当然、下流に殺到している部隊も、気付いたはずだ。

 

掃討戦に参加。スピアを使って敵を刺し貫きながら、辺りの凶蟲を駆逐。

 

下流にいる涼川から通信が入った。

 

「こっちに、スゲエ数の蜘蛛が来てる! 急いで輸送船を落として貰えるか? あたしは良いが、新人達が死ぬぞ」

 

「分かっている」

 

ベガルタファイアナイトが奮戦している様だが、確かに数百が一度に殺到したら、ひとたまりもないだろう。

 

敵がこれほど大胆な攻勢に出ることは、想定してはいたが。

 

矢島の動きが予想以上に鈍い。

 

だが、矢島が下手だとは思えない。おそらく、技術がフィードバックされているフェンサースーツの問題だ。

 

「矢島、急げるか」

 

「オス! ま、任せてください!」

 

周囲の敵を、弟と私で殲滅。

 

私と弟で数十の凶蟲を片付ける間に。矢島はガトリングに振り回され、三匹しか凶蟲を倒せなかった。

 

今は、怒る必要もないし、意味もない。

 

むしろ、これくらい動ける、というのを把握しておければ充分だ。最初から、まともに戦える方がおかしいのだから。

 

下流へ急ぐ。其方にいる輸送船を落としておかないと、涼川達が圧殺されてしまう。

 

その時、通信が入る。

 

「ストームリーダー」

 

「どうした」

 

「上流より機影。 これは輸送船ね。 おそらく二隻はいるわ」

 

支援のため来たとみるべきだろうか、或いは。

 

いずれにしても、これはまずい。矢島はブースターを使っているが、弟が走るのと大して速度は変わらない。

 

「先行する」

 

矢島のことは任せて、私は速度を上げた。

 

下流の方にいる輸送船が、間もなく見えてくる。上流の方にいたもう一隻が落とされていることには、既に気付いているらしい。旺盛に凶蟲を落として、此方に向けて反撃の体勢を取りつつあった。

 

まっすぐ、其処へ突っ込む。

 

殲滅が遅れれば、今度は此方が挟み撃ちにされるのだ。

 

既に下流で敵を受け止めている部隊の戦闘音が聞こえてきている。相当な激しさで、あまり長くは持ちこたえられないだろう。

 

凶蟲が一斉に糸を放つ。

 

盾ではじき返しながら、私は跳躍。

 

ハンマーを振りかぶって、地面に叩き付けた。

 

谷川の細かい石が、盛大に吹き上がる。

 

石がそれぞれ殺傷力の高い殺戮の塊となって、凶蟲たちを真下から撃ち据える。だが、谷川の左右に陣取った凶蟲にまでは届かない。

 

四方八方から飛んでくる糸は。

 

容赦なくアーマーを削り取っていった。

 

叫びながら私は、更に前に。

 

至近。

 

真正面に凶蟲。糸を放つ寸前。

 

スピアを叩き込む。頑強とは言えない凶蟲が至近からのスピアで串刺しになる。凶蟲の顔面を蹴って、飛ぶ。

 

上に、輸送船。

 

ガリア砲を叩き込み、着地。

 

爆裂を背に、振り返りつつ、盾を構えるが。

 

既に容赦なくアーマーは削られていた。

 

「後続は断った」

 

「サンキュ。 無理しただろ」

 

「多少は、な」

 

ガトリングを振り回し、以降は乱打戦に持ち込む。

 

弟たちが追いついてきたことで、輸送船の護衛をしていた凶蟲たちは、程なく殲滅。更に弟は態勢を低くしたまま、走り抜けていく。

 

矢島が追いついてきた。

 

「どうしてそんなに速く動けるんですか」

 

「その質問は逆に返したい。 私はフェンサースーツでの機動戦を、散々データとして送っているはずだ」

 

弟を追う。

 

アーマーの消耗が手酷い。急いで下流の部隊と合流して、上流から追撃してくる敵を迎え撃ちたい。

 

そうしないと色々まずい。

 

今度は弟が前衛になり、アサルトで敵集団の後尾を叩きはじめた。数体が振り返ろうとするが、其処へ崖上に上がった私が、ガトリングの猛射を浴びせる。

 

敵が追いついてくるまでに、可能な限り、敵を減らす。

 

さもないと、敵の大群に、飲み込まれることになる。

 

「緊急事態です」

 

不意に、通信が割り込んできた。

 

東京支部からだ。戦術士官が、淡々と情報を読み上げている。

 

「ヘクトル二百機が、海上より関東へ接近中。 港湾地帯に迫っています」

 

「迎撃部隊は」

 

「同時に、静岡から、四つ足要塞が投下したヘクトルの部隊が、山梨へ向け進軍を開始したため、一部が向かっています。 数は、ほぼ同数」

 

なるほど、片側は引き受けないといけないか。

 

おそらく接敵が早いのは静岡戦線とみた。東京基地から出ているベガルタの部隊が、迎撃に向かうだろう。

 

矢島がやっと崖上に上がってきた。

 

よく観察すると、何となく分かってくる。

 

このフェンサースーツには、機動戦を想定した装備が投入されていない。固定砲台として動く様に機能が制限されている。勿論ブースターもスラスターもあるのだけれど。それらは、あくまで移動用のものだ。

 

上空のネレイドが、見えてきた。

 

ガトリングで敵を掃討しながら、秀爺達に通信を入れる。

 

「其方はどうだ」

 

「もう終わる。 だが、消耗が大きい」

 

「……まずいな」

 

この戦いも、楽にはこなせそうには無い。

 

振り返る。

 

今度は此方の番だと言わんばかりに。輸送船二隻が、ほぼ同数の凶蟲を従えて。迫りつつあった。

 

 

 

ヒドラに、直接戦場に来て貰う。

 

基地まで戻っている時間的余裕が無いと判断したからだ。港湾地帯に展開している迎撃部隊は、房総に集った戦力のごく一部。元々あれは決戦のために、相当無理をして各地から裂いた戦力だったのだ。

 

ヒドラは輸送ヘリだが、故に平らな場所であったら、大体着地できるのが強みだ。

 

降りてきたスタッフが、此方の消耗ぶりを見て驚く。

 

「一体何と戦ったんですか」

 

「凶蟲と輸送船。 凶蟲は合計700を超えていた」

 

「そ、そんなに」

 

すぐにヒドラに、ビークルを乗せる。

 

戦地へそのまま向かって貰うのだけれど。その途中で、通信が、幾つも入ってきた。

 

まず静岡に向かったベガルタM2の部隊だが、接敵。

 

空軍の支援も受けながら、ヘクトルの部隊と交戦を開始。前衛を蹴散らしつつある。巨大生物もかなりの数が出てきているようだが、それでも優位は動いていない。

 

嫌な予感がする。

 

整備班に、ビークルを修理して貰う。

 

戦地に着くまで、可能な限り、だ。

 

その間に、矢島のフェンサースーツを調査。やはり、相当な機能が、オミットされていた。

 

「これは、正式採用されているフェンサースーツか?」

 

「はい。 この間の戦いでも、これで皆、固定砲台として戦ったんです」

 

そう言うことか。

 

すぐに三島に連絡を入れて、確認。三島はそれがどうしたのと言わんばかりの口調で、返してきた。

 

「言ってなかったっけ?」

 

「知るか。 どうして此処まで機能をオミットしている」

 

「使い切れないから」

 

「……何!?」

 

平然と三島は言う。

 

今までも何名かの優秀な兵士に実験させたらしいのだが。機動戦を想定した機能については、それこそ精鋭の中の精鋭でないと、そもそも作動させることが命に関わるというのだ。

 

「処理しなければならない情報が多すぎるの。 もしやるとしたら、バイザーの機能を拡張して、脳波を直接受信し、それで動くくらいはしないとね。 そうそう、中の人間も耐えられないから、アーマーを着用もさせないと」

 

「出来ないのか」

 

「今開発中だけれど、まだ二ヶ月はかかるわよ」

 

何てことだ。

 

ウィングダイバーの実用化でも、似た様な苦労があったけれど。私が使うことが前提になっていたフェンサースーツから、此処まで機能がオミットされていたとは。

 

しかし、矢島を責めることは出来ない。

 

そもそも、弟ほどでは無いけれど。強化クローンの中でも特別製の私だからこそ、使いこなせていた、という部分はあったのだろう。

 

弟が来た。

 

矢島を一旦下がらせる。彼に責任はない。

 

「三島の通信は聞いた。 これは、少しまずいかも知れないな」

 

「いや、活用法はある。 固定砲台としての運用をすれば良い」

 

たとえば、高高度強襲ミサイル。

 

あれは元々、フェンサーを固定砲台として用いるための武装だ。考えて見れば、おかしかったのである。

 

どうして本部が、あれの試用を急げと促してきていたのか。

 

矢島には、次の戦いで、用いて貰おう。

 

「皆、負傷の様子は」

 

「人員の損耗は幸いない。 ただ問題は、ビークルだな」

 

キャリバンが特に酷い。

 

元々だましだまし使っていたおんぼろだ。多分次の戦いで、敵の攻撃を浴びたら、それで終わりだろう。

 

ヒドラが南下している。戦地まで

 

皆には交代でカプセルに入って貰うが。私は弟と、決めておかなければならないことが、幾つもあった。

 

整備は突貫でやって貰う。

 

ヒドラの人員には、既に噂が流れているらしい。ストームチームを輸送するときは激務になると。

 

それは全くの事実なので、彼らには申し訳がなかった。

 

戦況報道が来た。

 

「各地で、激しい戦闘が続いています。 優勢なのは南米、極東、北米、欧州。 一方、オーストラリア、東南アジアでは、苦戦が続いています。 アフリカと中東では、互角の戦況ですが、ほどなくEDFは、アフリカの巨大生物を駆逐する大規模作戦に出ると宣言しています。 いずれにしても、各地での戦闘で消耗は大きく、新兵の大々的募集が掛けられている現状、余裕があるとは言えないでしょう」

 

全くその通りだ。

 

これについては、EDFの御用新聞では無くて、中立を標榜している新聞社の報道を聞いている。

 

「中々的確だな」

 

「それより姉貴、体の方は、大丈夫か」

 

「今の時点ではどうにかな」

 

「少し休んでいてくれ。 後は俺がどうにかしておく」

 

頷くと、女子達の部屋に入る。

 

最初にカプセルに入った組は、もう出てきている。ベガルタで大活躍した筅は、だいぶそれでさっぱりしたようだった。

 

「あ、はじめ特務少佐」

 

「どうした」

 

「あの、ヘクトルと戦えるベガルタはありませんか? M2タイプでも、重武装の型があると聞いているのですけど」

 

「あるにはあるが、まだ配備は難しい」

 

それに、池口用に、何かビークルを見繕ってやりたい。

 

いつも支援で良い仕事をしているのだ。何かしらを見繕うことで、更に戦力を伸ばしておきたいのだ。

 

フェンサースーツを解除。

 

アーマーも外して、カプセルにもぞもぞと入り込む。

 

あれほど寝た後だ。

 

疲れが溜まる前に、寝て休んでおきたい。そうすれば、多少は体の負担も、緩和されるはずである。

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