地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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前哨戦をどうにかクリアし、大規模決戦でのしんがりに残ったプロテウスの救出作戦が開始されます。

相手はシールドを発生させ移動する新兵器。

傷ついたプロテウスと司令を救出するために、ストームチームがアンノウンとの交戦に挑みます。


1、山の邪神

街の殲滅作戦が終わって、一旦兵を引く。

 

アウトレンジからの攻撃に加えて、一体ずつの集中攻撃だ。前の大敗を埋めるほどでは無いにしても、それなりの成果は出す事が出来た。街に展開していたヘクトルは全滅。此方に向かっていた敵の増援も、一時足を止めていると、スカウトから連絡が来ていた。恐らくは、シールドベアラーが破壊されたことを把握したためだろう。足並みを揃えて、大兵力での制圧行動に出るつもりか、或いは。

 

いずれにしても、時間は稼ぐことが出来た。

 

ただ、大きな問題が生じていた。

 

撤退作戦に移ろうとしたプロテウス移動司令部から、通信が入ったのである。

 

「輸送船四隻が確認された。 山中にシールドベアラーを投下していった模様だ」

 

「すぐにその場から移動を」

 

「それが、退路を塞ぐようにして、巨大生物の群れが展開している。 その上、シールドベアラーの護衛付きでな」

 

なるほど、立て続けの突破作戦を図らなければならない、という事か。

 

最終防衛ラインを構築していた戦車部隊は動かせない。今の戦いでの疲弊が酷いフェンサー隊も、出来ればこの作戦には参加しない方が良いだろう。

 

他の地域からの援軍は間に合わない。

 

時間を稼ぐことが出来たといっても、敵のヘクトル部隊が迫っているのは事実なのだ。そしてシールドベアラーは、足が遅いと言っても、確実に此方に迫ってきている。

 

制空権を完全に把握できていない現状。

 

ヒドラを用いて、無理矢理プロテウスを輸送する手も使えない。

 

結局、ストームチームが敵の軍勢に穴を開けて、プロテウスの退路を作るしかないのだ。

 

いずれにしても、シールドベアラーを撃破する必要がある。

 

矢島と、私。

 

それにストームチームだけで、作戦に対応する。

 

「プロテウスは一旦放棄するべきでは」

 

そう言ったのは、ナナコだ。

 

だが、弟は、ナナコの意見を却下した。

 

「今、世界中で戦況が悪化している。 極東のシンボルともなっているプロテウスが、戦いに敗れ放棄されたとなれば、あまり兵士達の士気に良い影響を与えない」

 

「しかし、中破したプロテウスの救援のため、大きな被害を出しては本末転倒に思えます」

 

正論だが。

 

しかし、人間の社会は、正論だけでは動かないのだ。

 

幸いにも、一両だけ、ビークルを貸し出してくれた。おんぼろのキャリバンと、速射砲が使えないグレイプだけでは心許なかった状況だ。今回貸し出してくれたのは、少し型式が古いネグリング自走ロケット砲。

 

型式が古いといっても、旧時代のMLRSなどよりも余程高い制圧力を持っている。シールドベアラーさえ潰せば、多少の巨大生物くらいは、どうにでもなる。

 

即座に移動開始。

 

キャリバンに乗り込むと、弟がオンリー回線を開いた。

 

「姉貴、やられただろう」

 

「ああ。 少し体の中を痛めた様子だ」

 

「いけるか?」

 

「どうにかする」

 

フェンサースーツについても、応急処置は済ませてある。アーマーを重ねて、次の戦いに備える。

 

幸い今度の相手はヘクトルでは無いから、多少は平気。

 

シールドベアラーさえ破壊できれば、後はいつものように、皆で片付ければ良いだけである。

 

幸い、まだ敵の数は殲滅可能なレベルだと報告もある。

 

レンジャーの一部隊くらいは割きたいところだったのだけれど。最終防衛ラインに迫っている敵の数、先ほどのシールドベアラー撃破の戦術についての検証作業などを考えると、とても割ける兵力はない。

 

戦術士官が、連絡を入れてくる。

 

「シールドベアラーの撃破映像、各国支部に送信。 解析を進めて貰っています」

 

「それだけではないな。 何があった」

 

「世界各国で、シールドベアラーが出現しはじめています。 今まで成果を上げてきた空爆による制圧が、上手く行かなくなりつつあります」

 

まあ、そうだろうな。

 

おそらくシールドベアラーが出現する切っ掛けになったのは、グラインドバスターだろう。

 

四足さえ葬った、強力な特化型爆弾。

 

実際戦場に投入され、輸送船を次々に落としているとも聞いている。

 

フォーリナーの適応速度は速い。

 

弟の言う事を、そのまま当てはめるなら。

 

人類の文明規模を、フォーリナーが判断修正したのだ。其処で、シールドベアラーという新型を、投入してきた。

 

「出来るだけ、今回もデータを取得してください。 シールドベアラーに対する戦術の構築は急務です」

 

「分かっている」

 

弟が通信を切る。

 

グレイプは悪路をものともしない。

 

昔作られた、今は殆ど整備もされていない県道を行く。途中倒木や落石があっても、そのまま蹴散らして行けるほどだ。

 

キャリバンも後に続く。

 

ネレイドに乗っている谷山が、嘆く。上空を抑えてくれている谷山だけれど。シールドベアラーの防御は、空爆を防ぎ抜くのだ。ネレイドの攻撃だって、通用しない。

 

「これでは、私に出来る事が限られていますね」

 

「シールドベアラーさえ潰してしまえば、お前の独壇場だ」

 

「そうだと良いんですが」

 

少し後ろに、ベガルタM3ファイアナイト。

 

ダメージが少し蓄積しているが、まだ行ける。今回は巨大生物が敵の主力になるので、活躍できるはず。

 

筅は先ほどから、ずっと黙りこくっている。

 

黒沢でさえ、時々周囲の新兵と話しているのに。ベガルタのコックピットで一人になっていると言っても、リンクバイザーで周囲と通信は出来るのだ。

 

作戦地点が、見えてきた。

 

山の斜面に、巨大生物が集まっている。穴を掘り返しているのを見て、呻く。これは、一刻も早くバンカーバスターを叩き込む必要があるだろう。

 

更にその周囲に、シールドベアラーが四機。

 

いずれも、既にシールドを展開して、巨大生物を護衛していた。

 

これだけみても、フォーリナーにとって、巨大生物はペットやら使い捨ての道具やらではないことが分かる。

 

手厚い保護。

 

強いていうならば、その言葉が正しい。

 

「此方小原。 シールドベアラーについて、情報を転送して貰った。 既に解析を開始している」

 

小原が通信を入れてくる。

 

部隊が展開。

 

秀爺が、狙撃地点を探しに、ジョンソンとほのかをつれて、ふらっと山の中に入っていった。

 

焦りは禁物だ。

 

見ると、少し開けた場所を占領する様にして、巨大生物が群れている。

 

小川が見えた。

 

巨大生物は、水を好む。事実黒蟻の中には、水に口を付けて、飲んでいる者も見受けられる。

 

地球は水の星だから、フォーリナーが侵略してきた。

 

そんな事をいう輩も昔はいたが、今は明確に否定されている。宇宙的に見ても、水が豊富な惑星なんて、珍しくもないのだ。

 

私はと言うと、突入地点を探して、崖上を徘徊する。

 

斥候らしい巨大生物がいるので、時々処理。弟が側についてくれているので、心配はない。

 

矢島はキャリバンに残してきた。

 

作戦開始まで、休んで貰うつもりだ。

 

「はじめ特務少佐。 戦ってみて、どう思った」

 

「どう、とは」

 

「シールドベアラーの投入は、あまりにもタイミングが良すぎる。 何故にあのようなものを、このタイミングで投入してきたのだろう」

 

「地球側の抵抗が、予想以上に激しいから、ではないだろうか」

 

現状、EDFはフォーリナーに対して、互角以上の戦闘を展開している。少し押されてはいる地域もあるけれど、前回の大戦と比べれば、天地の差だ。

 

巨大生物に対しても、空軍やウィングダイバーが持っているアドバンテージが大きい。戦車やヘリでさえも、以前の戦いとは、根本的に別物なのだ。

 

大戦を経て、人類は武器を変えた。

 

かって人類を殺すために特化していた武器は。

 

フォーリナーを殺すためのものに変わった。

 

この変化が、人類にとっての、一番大きなブレークスルーだろう。十倍の兵力を揃えて再侵攻してきたフォーリナーだが。

 

戦闘を五分に保たれているのは、それが理由だ。

 

少なくとも、表向きはそう判断できる。

 

「確かにそうだが、何か妙だと思わないか。 幾らフォーリナーでも、そうも簡単に新兵器を開発できるとは思えない」

 

「最初から有していたと考えれば、不思議では無い」

 

「つまりフォーリナーは、本気を出していなかったという事だろうか」

 

「あくまで私見だが」

 

小原は黙る。

 

相手の実力は、どれだけ高く見積もってもおかしくは無い。何しろ、星の海を渡って地球に来たほどの侵略者なのだ。

 

攻撃開始に、丁度良い地点を発見。

 

敵は黒蟻が主体だが、赤蟻もかなりの数がいる。凶蟲も、少数ながら確認できた。

 

正面から攻撃するのは分が悪い。

 

「複雑な地形だから、引き撃ちが出来ないな」

 

「立体的な地形は、奴らの独壇場だ。 攻め方としては、どうする」

 

「一方向から敵を削りつつ、引きつける。 その間に姉貴と矢島が、シールドベアラーを潰して行く」

 

「……時間がない。 いい手がある」

 

弟に提案するが、一端は却下される。

 

危険だ、というのである。

 

だが、危険は承知の上だ。今はむしろ、時間がない。プロテウスには既に連絡を入れていて、此方に向かって貰っている。ヘクトルが時々来ると言っていたし、想像以上に状況は悪い。

 

最終防衛ラインに合流さえ出来れば。

 

後は、ある程度どうにでもなる部分はある。シールドベアラーについても、攻略は可能だと、目星はついているのだ。

 

「今は時間がない。 此処にヘクトルが出現したら、手に負えなくなるぞ」

 

「しかし、姉貴。 大丈夫か」

 

「どうにかする」

 

「……分かった。 無理だけはするな」

 

弟の心配ももっともだ。

 

私のバイタルデータは、弟も見ているのだから。

 

すぐにそれぞれが配置につく。

 

作戦開始まで、わずか。敵はまだ、此方には気付いていない。

 

 

 

巨大生物は、音には案外鈍感だ。

 

故に、気付かれない。

 

最初に気付いたのは、赤蟻だったけれど。それも、私が目標地点に到達したときに、ようやく、だった。

 

私は。

 

ネレイドに乗って、シールドベアラーの真上に移動。

 

其処から飛び降りたのだ。

 

既に途中で、ガリア砲の充填は済ませている。

 

シールドを抜ける。

 

落ちる程度の速度では、反応しないと言うことも分かった。これも貴重なデータになる事だろう。

 

シールドを抜けた瞬間、真下にガリア砲をぶっ放す。

 

吹っ飛んだシールドベアラー。

 

巨大生物たちが、一斉に反応した。だが着地した私は、ブースターを全開に走る。後ろから、膨大な酸が飛んでくるが。何しろ不意打ちを掛けたのだ。その全てが、私に殺到するわけではない。

 

更に、である。

 

飛来したスティングレイロケットランチャーの弾幕。それにエメロードから撃ち出された小型ミサイルの群れが、巨大生物共に襲いかかる。

 

少し離れた岡に布陣した新兵達の部隊が、攻撃を開始。

 

更に、姿を見せたファイアナイトが、榴弾砲を撃ち込む。

 

巨大生物たちが混乱する中を、一気に私は逃れ出た。

 

これで、一つ。

 

あと三つだが。シールドベアラーは、即座の反応をした。

 

ドーム状のシールドが、巨大化する。

 

巨大生物、全てを守るように。

 

はじき返されるミサイル。アサルトも。火炎放射器の熱さえも、防ぎ抜かれる。下がるファイアナイトの足下を抜けた私は、振り返り。可変性の高い敵シールドに、少し呆れた。

 

何だこれは。

 

「都合良くバリアー出しやがって!」

 

涼川が通信に入り込んでくる。

 

シールドベアラーはシールドを大きくしたり小さくしたりして、的確に此方の攻撃を防いでくる。

 

涼川はそのせいで近づけない。

 

爆発物にとって、シールドベアラーの防御は天敵に等しい。幾ら涼川でも、撃った瞬間シールドが接触したら、自爆からは逃れられないのだ。

 

「MONSTER効果無し!」

 

エミリーが呻く。

 

下がりながら敵を引きつけようとするが、巨大生物共はシールドから出ようとしない。凶蟲が前衛に出てくると、糸を次々はなってくる。射程内に完全に入っているため、ファイアナイトが見る間に消耗していくのが分かった。

 

此処で、私が動きを変える。

 

反転して、突貫。

 

ぎゅっと、シールドベアラーが、シールドを縮める。巨大生物共が、周囲に対して展開して、あらゆる方向を守りに入る。

 

だが。

 

それこそ、待っていた瞬間だ。

 

シールドの麓。

 

集中的な爆撃を仕掛けて、煙幕を作る。

 

即座に煙幕を突き破って、凶蟲が糸の弾幕を放ってくるけれど。

 

其処を貫いても、誰もいない。

 

私はその時。

 

既に、上空に躍り出ていた。

 

凶蟲が気付く。糸を放ってくるが、此方もシールドを使って、弾く。無理矢理飛びつく様にして距離をゼロにすると、至近からガリア砲を、シールドベアラーに叩き込む。爆裂。シールドが消え去る。

 

着地。

 

また、ブースターをふかして、逃げる。

 

分かる。

 

見る間に体の負担が大きくなっていく。

 

残り二機のシールドベアラーが、ぐっとシールドを巨大化させるが、その時。降下したネレイドが、シールドの内側に潜り込んだ。そして、機関砲をシールドベアラーに叩き込む。

 

瞬時に爆裂するシールドベアラー。

 

だが、谷山も無事では済まない。

 

低高度まで降りてきていた谷山を、巨大生物が集中砲火。凶蟲の糸が多数叩き付けられ、酸も浴びせかけられる。

 

ネレイドの負荷が、見る間に上がっていくのが見えた。だが、かろうじて、撃墜寸前に逃れた。

 

ファイアナイトが前進。

 

榴弾砲を浴びせかける。

 

新人達も、崖上のスペースを利用して、一方的な攻撃を続けるが。シールドベアラーの可変性が高いシールドが、必ずしも有効打を作らない。それどころか、一部の巨大生物は、崖の隙間を通って、新人達に肉薄。

 

即応したジョンソンとエミリーが対応するが、数が多い。

 

前線が混乱する中。

 

私もハンマーを振り回してその場に留まり、群がってくる巨大生物を片端から打ち砕く。後ろに回ろうとした赤蟻を、秀爺の狙撃が貫いた。秀爺は山中で一人、確実な仕事をしてくれる。

 

更に、ネグリングが攻撃を開始。

 

池口に任せておいたネグリングは、完璧なタイミングで砲火をうち込みはじめた。敵の群れが、見る間に飛来するミサイルによって、吹き飛ばされていく。形勢は、逆転した。だが。

 

不意に、脇腹に鋭い痛み。

 

いや、脇腹と言うよりも。

 

これはもっと、体の奥深くだ。

 

しかし、これでお膳立ては整った。敵の大半が引きつけられている隙に、涼川と矢島が、最後のシールドベアラーに特攻。

 

涼川が、嫌いだと言っていたフュージョンブラスターで敵を焼き払いながら、矢島の路を作る。

 

そして矢島が、ガリア砲で。

 

最後のシールドベアラーを、打ち砕いていた。

 

守りがなくなったことを知ると、巨大生物は脱兎のごとく逃げ出す。追う余裕は無い。敵は静岡の、四足が制圧している地域へ逃げていった。あの辺りに、敵が巣を作り始めても、此方にはどうにも出来ない。

 

呼吸を整える。

 

片膝を突きそうになるが、耐え抜く。此処で、弱みを見せるわけには、いかないのだ。

 

「姉貴、無事か」

 

「アーマーは限界だが、どうにかな」

 

「後は俺がやっておく。 休め」

 

「そうさせて、もらうか」

 

キャリバンが来た。

 

敵の残党を薙ぎ払っているファイアナイトを横目に、乗り込む。

 

操縦していたのは日高だ。

 

新人の何名かが、負傷している。ナナコが、特に酷くやられている様だった。意識がない。赤蟻に噛みつかれ、振り回されて地面に叩き付けられたという。バイタルは安定しているが、まだ目を覚まさない。

 

日高は穏やかでは無いだろうに。運転していて、泣き言一つ漏らしていない。

 

黒沢も派手に酸を浴びていた。アーマーが限界値近い。赤蟻からナナコを救うために、至近からアサルトで敵を撃ち続け、その間敵の攻撃を浴びていたというのだ。

 

原田もかなり打撃を受けている。

 

アサルトライフルを失ってしまっていた。浸透しようとする敵の群れに立ちふさがり、アサルトが酸でやられてしまうまで、戦い抜いたのだ。

 

最後の敵の反撃が、それだけ新人達に肉薄した、という事である。

 

「死者が出なくて、何より、だ」

 

アーマーを解除。

 

フェンサースーツも。

 

横になって、バイタルの確認。どうやら、やはり内臓に、かなり大きな負担が掛かっているようだ。

 

ジョンソンが入ってくる。

 

黙々と、自分で治療を進めている私を横に、新人達の状態を確認。かくいうジョンソンも、アーマーは限界寸前。

 

新人達を庇いながら、全力で戦闘を続けていたのだから、当然だろう。

 

「プロテウスが向かっている。 合流し次第、山梨の最終防衛ラインに戻る」

 

「キャリバンの防御は、ファイアナイトにやって貰う感じか」

 

「そうなるな。 ネレイドは先に戻す。 プロテウスは武装を使い尽くして、ほぼ無力な状況だ。 帰路で敵に襲われたら、どうにもならん」

 

涼川が来る。

 

肩を貸して歩いている。肩を貸されているのは、矢島だ。フェンサースーツは、半壊していた。

 

「おう、此奴のフェンサースーツ脱がすの、手伝ってくれや。 解除機能までやられちまっててな」

 

「派手にやられたな」

 

「あんたほどじゃないさ。 無理しやがって」

 

怒られる。

 

涼川に無理をするなと言われたのは、実は初めてだ。

 

負傷者の収容が終わると、そのまま撤退。グレイプには秀爺夫妻と、無事だった者達が乗る。

 

キャリバンはおんぼろだが、戦闘での被害も受けなかった。どうにかなるだろう。

 

大きな足音が近づいてくる。

 

多分プロテウスだ。と思ったら、窓からその姿が見えた。鳥が吃驚して逃げていく。そして近くで見ると、その悲惨な姿が、よく分かった。

 

左腕は失われている。

 

武装の大半は、消し炭も同じ。装甲の殆どは焼け焦げ、彼方此方から内部の機械類まで露出していた。

 

ベガルタM2の部隊を率いて、ヘクトルの大軍勢を迎え撃ったときから、今まで。ずっと補修も修繕もしていなかったのだから、当然か。

 

最後尾で撤退支援を行い、最後まで味方のために命を張り続けたのだ。これだけのダメージで済んだのなら、まだマシなのかも知れない。

 

日高司令が通信を入れてくる。

 

「すまない。 非常な苦労を掛けた。 その上、シールドベアラーの撃破にまで成功したとは。 君達には感謝の言葉もない」

 

「今は兎も角、体勢を立て直しましょう。 此方も被害甚大で、死者が出なかったことが奇蹟のような有様です」

 

「うむ……」

 

弟は出来るだけ声を抑えているが。

 

内心は穏やかでは無いはずだ。

 

確保した撤退路を急ぐ。

 

途中、飛行ドローンが何度か姿を見せたが、いずれも秀爺が即応して、瞬時に撃墜した。

 

最終防衛ラインに到着したのは、夕刻。

 

既に整備班も到着していたので、プロテウスは任せられる。簡易宿舎には、休息用のカプセルと、医療班も来ていた。

 

すぐに診てもらう。

 

やはり、相当な負担が掛かっていた様だ。

 

幾つか治療薬を処方して貰った。その後、寝るように言われる。もう戦うなとは言われなかった。

 

それならば、休めるときに、出来るだけ休めというのだろう。

 

弟に任せてしまうのは心苦しいが。

 

いつ敵が侵攻をまた始めるか分からない状況は続いている。

 

しかしそれでも、とにかく眠るように言われた。自分でも無理が掛かっていることは分かっているし、言葉に甘えて眠ることにする。

 

確かに、体の負荷が、限界近い。内臓のダメージも、露骨に体への負担となっていた。話によると幾つかの臓器が相当にやられているらしい。あまりにも激しく動きすぎたのが、原因だそうだ。

 

途中、目が覚めるが。

 

起きようとして、全身に走った激痛で愕然とした。

 

多分、ようやく本来のあるべき痛みが、来たのだろう。

 

もう一度ベッドに横になると、ぼんやり天井を見つめる。まだ、戦いが始まってから、一月も経っていない。

 

これで此処まで傷ついてしまっているというのは。

 

前回の大戦と、あまり変わらない。

 

何だか悲しいなと、私は思った。

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