地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
しかし東京近郊にある巨大生物の巣穴は健在。
再度の攻略作戦に参加することになります。
翌朝、ベッドに載ったまま、ヒドラに担ぎ込まれる。
ナナコはもう目を覚ましたようだが。他の負傷者は、まだ完治とは言いがたい様子だ。
「移動と言う事は、次の作戦か」
「ああ」
リンクバイザーのオンリー回線で、弟と話をする。
話を聞くと、先送りにされていた東京の巨大生物巣穴に、ついに攻撃を仕掛けるらしい。そうなると、次も激戦になる。
「日高司令は」
「多少の負傷はしていたが、すでに東京に戻った様だな。 プロテウスは一旦東京基地にヒドラで運び、其処でオーバーホールするそうだ。 その代わり、最終防衛ラインには、戦力を多めに廻すとか」
「場当たり的な指揮だな」
「やむをえんさ」
フォーリナーの対応が、早すぎるのだ。
七年間の準備が、無駄になるような、新兵器の投入。特に今回のシールドベアラーは、戦場の歴史を変えかねない兵器である。
地上でEDFと交戦している巨大生物の数も増える一方。
マザーシップに随伴して地球に来た輸送船が落としているのだから、当然だ。
今は、まだ互角だが。
その優位は、すぐにでも覆されかねない。シールドベアラーは、下手をすると空軍を無力化しかねないほどの、危険な兵器なのだ。
最新鋭戦闘機ファイターの登場によって、EDFは前大戦と違って、制空権を手に入れた。これにより、フォーリナーに対する優位を手に入れたと思ったのに。その優位は、既に揺らぎつつある。
ウィングダイバーが、あっという間に巨大生物に対する優位を失った経緯と、それはよく似ていた。
東京支部に到着。
途中、一眠りだけは出来た。疲れはまだ取れていないし、体の痛みも酷いが、動かざるを得ない。
EDF本部に顔を出す。
医者は良い顔をしなかったが、これでも私は特務少佐だ。大佐と同格の扱いを受ける、幹部の一人。
重要な作戦には、顔を出さないわけにはいかない。
ただし、フェンサースーツの着用は認められなかった。懐かしいEDFの軍服を着る。念のためにアーマーも付けて、本部ビルに出向いた。
司令部は、慌ただしく動いていた。
既に戻っていた日高司令は、包帯を頭に巻いたままデスクについていた。敬礼して、軽く話をした後、作戦会議に。
戦術士官が、スクリーンに現在の戦況を、まず投影した。
かなり戦線が拡大しているのが分かった。関東全域が、既に戦場になっている。赤蟻も既に多く姿を見せていて、戦線は飛び火する一方だ。最重要地点では精鋭が敵を撃退しているが。
敵の集中速度が速く、レンジャーチームが敵の大群に飲み込まれる事件も、何度となく起きている様子である。
「現時点では五分以上の戦況を保ってはいます。 しかし静岡に出現したシールドベアラーはすぐに世界中で姿を見せ始め、各地のEDFでは対応に躍起です。 ストームチームの攻略データをすぐに配布はしましたが、確実に再現できるかどうかは難しい所でしょう」
シールドベアラーの脅威は、単純にシールドが頑強、という事に留まらない。
シールドの可変性もあるが、移動式の中型マシンが、敵に随伴できるという点にある。複数体が来た場合、面制圧が極めて困難になるのだ。
「全世界の戦況は」
「表示します」
日高の指示で、今度はオペレーターが動く。
まだ若い娘で、どうにも落ち着きがない。臆病で、時々戦況の説明に、私情が入る事があった。
兵士達の間では、チキンオペレーターと揶揄されている有様である。
言い方は厳しいが、私も適正がないと思う。
「以前報道がありましたが、北米、欧州、極東、それにいち早く巨大生物の巣を排除した南米近辺は優位を保っています。 アフリカ、中東はかろうじて互角。 苦戦しているのは、東南アジアとオーストラリアです」
「オーストラリアは、まずいな」
既に、半分近くが失陥している。
元々オーストラリアは、前大戦で敵が大規模な基地を構えた地域である。早々に陥落した事もあって、前大戦の最後に、EDFの部隊が上陸したほどだった。
そしてその時は。
地下に潜った巨大生物を、発見できなかった。
思えば勢力を殆ど保ったまま、巨大生物は地下に潜ったのだ。一体今頃、どれだけ増えていることか。
ただ、オーストラリアはシドニー近辺に強力な基地を構えていて、その辺りの戦力は極めて安定している。
簡単には敵の浸透も許してはいない。
さらに、である。
朗報も、あるにはあった。
「北米、アフリカで、それぞれ巨大生物の巣の駆除作戦が実施されました。 北米は新型の地底攻略マシンを投入。 被害は出したものの、巣穴の駆除に成功。 中にいた女王四体、蜘蛛王二体の駆逐にも成功したそうです」
「さすがはストライクフォースライトニングだな」
周囲の声に、安堵が籠もる。
極東でも、機甲師団が敗退するという大きな事件があったばかりである。朗報があるのは、良いことだ。
「アフリカですが」
オメガチームは、これで三つ目の巣の攻略となる。
欧州の巣の時も被害を出し、人員を補充して出向いたはずだが。戦術士官の口調は、明るいとは言いがたかった。
「攻略にはどうにか成功しましたが、相当な被害を出しました。 近辺の巨大生物の駆逐作戦でも大きな損害を出し、アフリカのEDF支部はすぐには立て直せない状態に陥っています。 オメガチームも、大半の戦力を喪失したという事です」
どよめきが漏れる。
どうやら、アフリカの巣穴は、予想を遙かに超える戦力を有していたらしいのだ。中には女王だけで六体。蜘蛛王も五体。
実に三万近い巨大生物が、ひしめいてもいたそうなのである。
流石のオメガチームも、これには容易には勝てなかったか。無理もない話だ。私が挙手して、質問する。
「隊長は無事か」
「どうにか帰還しています。 しかし、歴戦の隊員も何名か鬼籍に入っており、しばらくは立て直しが必要になる、とのことです。 巣は駆逐しましたが、アフリカの戦線は無理をした事もあり、兵力の立て直しに掛かる事が予定されています。 しばらく、アフリカの敵を駆逐する事は出来ないでしょう」
ため息が漏れる。
オメガチームは、各地の巣穴を攻略する切り札として期待されていた。事実、三つ目の巣穴の攻略にも成功した。
しかし、今後は同じようにはいかないだろう。此処で巣穴の駆除策戦は、事実上の躓きを見せてしまった。
各地の戦線が表示される。
北米の戦線も、かなり広がっていた。
前大戦では、北米の西海岸はほぼ全滅という大きな被害を受けた。ニューヨークに到っては文字通り消滅。
現在も、マザーシップから出現した四足が数機、海岸線に駐留して、攻略の橋頭堡を作っている。
北米支部はカーキソンが直接指揮を執って迎撃を行っているが、簡単には撃退は出来ないだろう。
「マザーシップの動きは」
「一隻が極東に向かっていますが、他は海上や、人口密集地域から離れた地点にいます」
「何をしているのだろうか」
「分かりませんが、調査作業のようなことをしているらしいと、スカウトから報告が来ています」
調査、か。
巨大生物が、フォーリナーにとって非常に重要な存在である事は、分かっていた。
だがそれにしても妙だ。
前回の大戦で、奴らは散々地球を調査したはず。今更、何が必要だというのだろうか。
苦戦している地域についても、説明を受ける。
東南アジアも、前大戦で大きな被害を受けた。人口の大半は失われ、今でも復興が成し遂げられていない。
其処へフォーリナーの襲撃を受けたのである。幾つかの支部が必死の抵抗を続けているが、劣勢は覆せていない。巨大生物の巣穴が多いのも、劣勢が継続している理由の一つだ。
一通り戦況の確認が終わった。
全体的に、まだ破滅的な状況では無い。しかし、可能な限り迅速に、状況の改善を図りたいところだ。
「ストームチーム」
日高司令から声を掛けられて、私は。
弟と、ジョンソンとともに立ち上がる。
「以前小原博士から提案があった、東京巣穴の攻略作戦に向かって欲しい。 今度は以前よりも準備を整えてある。 多少は、危険も緩和できるはずだ」
危険が緩和できるとはとうてい思えないが。
いずれにしても、必要な作戦だ。
実に七万を超える巨大生物がいる巣穴である。一度で無理な攻略をするのでは、一体どれだけの被害が出るか分からない。
きちんと巣穴の全容を把握するためにも。
今回の作戦は、必要なのだ。
「一日後、作戦を開始する。 それまでに、突入する巣穴の近辺での制圧作戦を行っておく。 君達はレンジャーチーム2、フェンサーチーム1、スカウトチーム1とともに、目的地点への到達を行って欲しい」
「イエッサ!」
会議が、解散になる。
一日余暇が出来たのは嬉しい。
だが、私は病院に直行。弟も、病院に呼ばれていた。激務が祟って、バイタルの状態が良くないと言う事だ。
病院に出向くと、すぐに白衣に着替えさせられる。三島が来て、色々調べていった。フェンサースーツのデータも回収していく。
「できる限り急いで、データのフィードバックをしてくれ。 他のフェンサーが、移動砲台に過ぎない状態は、可能な限り改善したい」
「分かってるわよ。 私達も突貫作業でやってるんだから」
「頼む」
矢島の苦労を見ていると、本当に気の毒でならないのだ。
後は、医師に釘を刺されて、眠った。点滴も入れられたけれど。目が覚めたときには、外されていた。
これでも快復力には自信があるのだ。
バイタルもかなり回復はしていた。だが医師は、出来ればもう一日は眠らせたいと言う。せっかくの休みだが、仕方が無い。
弟は、作戦の細部を詰めるのに、忙しい。
私は白衣を着たままベッドでバイザーを付けて、ブリーフィングに参加した。ちなみに隣のベッドでは、同じような状態のナナコが。全く同じようにして、バイザーを付けてブリーフィングに参加している。
「今回の作戦の骨子は、この地点まで潜ることだ。 此処でスカウトチームが、探査用の器具を設置して、強化コンクリートで固定作業を行う」
地図が表示されるが。
実に深い。おそらく、深度は七百メートルを更に超えるだろう。
地底も、三千から六千メートル以上潜るとマントルに突入する。この近辺では、およそ五千メートル以上潜ると、マントルになる。
ただ、熱の問題もある。
おそらく巨大生物の女王や王は、二千メートル付近の深度にいると、推察はされていた。その位置を、確定させ。
なおかつ、東京の地下に我が物顔に広がっている巣穴の全容を解明するのが、今回の目的だ。
黒沢が慎重論を口にする。
私も、実のところ同じ意見だ。ただ、今回はあくまで中間地点までの到達が目的で、敵の殲滅が目的では無い。
広域に拡がっている敵の巣は。
逆に言えば、密度も薄いのだ。
一カ所に兵力の全てが集中しているわけではない。
ただし、不安要素も大きい。味方のチームはそれぞれが二十名編成の、標準チームである。
現在各地の戦闘で、死傷者が続出している事もあって、チーム編成については可変。戦闘の際には、複数チームがまとめられ、四十名や五十名の大型チームが編成されることもある。
だが今回は、基本的な編成の二十名チームが四つ。特にスカウトは戦闘力が高いチームでは決してない。これをストームが、護衛しながら戦う事になる。
「ストームも入れて百名弱。 兵力が足りますか?」
「前回の失敗を考慮し、拠点をコンクリでガチガチに堅めながら進む。 それについても装備を得ている」
更に、フェンサーチームの援護もある。
フェンサーには、主にシールドを用いて、防御壁を構築してもらう。幾つかの大きめの空間を経由して、目的地まで潜れば。
後はスカウトによる敷設作業を終えて、帰還。
理論上は不可能な任務では無い。あくまで、理論上では、だが。
各チームのリーダーも、ブリーフィングには参加して貰う。とはいっても、一次会議が終わってからだ。
レンジャー4は、再編成されたチームであると、資料に出ている。少し前にレンジャー4は敵の大群に飲み込まれ、メンバーの大半が戦死。その中には、チームリーダーも含まれていた。殆どの兵は、損耗が激しい他のチームから来た者達で、PTSDを煩っていても不思議では無い。
レンジャー9は、新設部隊。ベテランは隊長の一人だけで、後は短期プログラムを終えた新兵達。それをいきなりこんな作戦に参加させるのかと思ったが。考えて見れば、今は人手不足が酷いのだ。
ようやくかき集めた兵力の中に、新兵ばかりの部隊が混じっていた。その方が、現実の表現には正しいのだろう。
ただ、新兵の中には、ナナコと同じ戦闘特化強化クローンが一人混じっている。
二千名ほど生産されて、各地の基地に配備されたと言うから、新兵の中にいてもおかしくはない。
データを見ると、男の子だ。
フェンサー1は、そこそこの精鋭が揃っている。今回は敵陣突破を目的としていないし、防御と戦線維持を目的としている。装備については、全員にシールドを持って貰う。後は同士討ちを避け、足を止めての殴り合いを想定して、ガトリング。とりあえず、これでいいだろう。
スカウトは、以前と同じ。スカウト6だ。
今回はアサルトの他に、大規模なコンクリ配布装置、敵の巣穴の構造を測るための中継装置をそれぞれ持ち込む。コンクリ配布装置はかなり大がかりな装備である。更に、重機もある。
多脚型のブルドーザーで、北米戦線でこの間巣穴に投入されたものの、前世代機になる。地中を潜って、立体的に工事を行う事を想定している。自衛用の兵器はついていないため、護衛が必要だが。
医師が来た。
ブリーフィングは弟に任せて、寝るようにと言われたので、そうする。重要な話は全て済ませてあるので、もう良いと言えばもう良い。
バイザーを外して、寝る。
作戦開始まで、あと半日ほどある。今のうちに休んでおくのも、重要だ。
あくびをしながら、ふらりと病室を出て。
シャワーを浴びて、フェンサースーツを着込む。くれぐれも無理をしないようにと、医師に言われているけれど。
今回ばかりは、そうもいかない。
直前まで休んでいたし、多分ある程度は大丈夫だろう。
他のチームメンバーと合流し、移動開始。
作戦開始地点は、前回巨大生物どもの巣穴に潜ったのと、同じ地点だ。此処から、現在判明している地底七百メートルの、大型空洞を目指して潜る。
ビークル類は今回役に立たないので、全員が徒歩。
秀爺とほのかについては、最後尾にフェンサーチームと一緒に残って、指揮を担当して貰う事になる。
本領がスナイパーであるし、地底での混戦に、年老いた二人は向かない。
フェンサー1リーダーは、当初最後尾と聞いて、不満そうにしたが。今回の作戦では最後尾を守り、退路を作ることが最も重要と聞いて、納得はしてくれた。
入り口付近に、斥候らしい巨大生物が少しいたが。
弟が軽く散らすと、すぐに逃げていった。とはいっても、前回の状況を考えると、単に此方を引き込もうとしているだけ。そして損害を減らすための行動だ。
入り口付近は、前回とほぼ同じ状況。
広域にまず地上付近を探索。
辺りにある敵の出入りに使っている穴を確認。
やはり、数カ所が存在していた。このままだと背後を塞がれる可能性が大きい。まず速乾コンクリートで、これらの穴を塞ぐ。
そして地下鉄の廃路に、セントリーガンを多数設置。
自動迎撃モードに設定。これで、どれだけ敵が大回りして攻めこんできても、簡単に退路は塞がれない。
最初の空洞に、まずストームが入る。
敵影は無し。
コンクリで塞がれた穴は、以前と同じままだ。スカウトを招き入れて、奧へ侵攻する穴以外は、全て丁寧に舗装してしまう。レーダーには、既に敵影がある。此方の出方を、うかがっていると見て良いだろう。
「舗装作業、終了しました」
「よし、次だ」
前回は、この先にある空洞まで行くのが精一杯だった。
まずフェンサー部隊に、この地点を確保して貰う。場合によっては、奧の空洞に援軍として来て貰うが、それはまだ後の話だ。
曲がりくねった洞窟を、地下へと降りていく。
通信の中継装置はまだ生きているから、東京支部との通信は、密接にリンクが確保できている。
「ストームチーム、入り口付近は確保できたか」
「今の時点では問題なし。 敵の抵抗も、まだ激しくはない」
「前回のこともある。 気をつけて進んでくれ」
「イエッサ」
日高司令はと言うと、今重戦車であるタイタンに乗って、前線で指揮を執っているという。
通常の戦車の倍以上の巨体を誇るタイタンは、指揮車両として開発されていて、面制圧に関しては生半可なベガルタにも劣らない。ただし機動性が極めて劣悪で、現状では戦闘指揮にしか使えないとも言われていた。
とにかく、現時点では。
地上の安全は、確保は出来ている。
第二の空洞に到達。
弟が、手招きしてくる。涼川と私が壁に沿って歩き、空洞を確認すると、いる。
かなりの数だ。
それも、今回は凶蟲がいない。黒蟻と、何より多数の赤蟻が、空洞にひしめいていた。
「こりゃ、最初から骨が折れそうだな」
涼川はそう言いつつも、楽しそうだ。
幸いにもと言うべきか、今回は後方支援の体制がしっかり出来ている。地上に控えているレンジャー部隊二つも、何時でも突入できる状況だ。フェンサー1はしっかり退路を守ってくれているし、不安は今の時点では、ない。
スカウト6の隊長に、少し下がるように指示。
一応中途の経路も舗装はしてきているが。喰い破られた時のことを考えて、途中にジョンソン達を残しておく。
敵の密集地帯に、涼川がDNG9を放り込み。
そして爆発と同時に、弟がアサルトを敵陣にうち込みはじめた。爆裂して、吹っ飛ぶ巨大生物の群れ。
狭い地底空間だから、なおさら爆発は威力を増す。本来なら落盤の危険もあるが、巨大生物がガチガチに固めているため、それも平気だ。
私もガトリングを敵陣に浴びせかけ、殲滅作業を進める。
時々涼川が放り込むDNGが、圧倒的な破壊効率を示し、敵を次々蹂躙していくのが分かったが。
ほどなく、敵は姿を見せなくなる。
正面突撃では無理と判断したのだろう。
まず私と弟が入り。
入り口付近を、ジョンソンとエミリーが固める。秀爺に通信を入れるが、今の時点で、其方に問題は無いという。
谷山が、新人数名と、空間に入ってきた。
セントリーガンを配置しているのは、奇襲に備えるためだ。慎重すぎるほどの行動だが、前回の苦戦を考えると、これくらいは当然である。
ここからが、本番だ。
ストームチーム全員が空洞に入ったころから、スカウトが舗装作業を開始。
天井も床も、コンクリで固めていく。
空気が悪くなってくるが、それについても対策がされている。排気装置が、既に持ち込まれているのだ。
敵は今の時点では、仕掛けてこない。
戦力から考えて、怖れているはずがない。何かしらのチャンスを狙っていると見て良いだろう。
奧へ通じている穴は数カ所。
順番に潜ることにする。涼川に残って貰うのは、最悪の場合、ヴォルカニックナパームで塞いで貰うためだ。
弟は、地上の戦力と密接に通信をしている。
今の時点では問題が無いことを把握しておかなければならないからだ。
「舗装終了しました!」
「よし……!」
次だ。
穴の一つへ、私が先頭になって入り込む。
中継装置による測量で、ある程度のマップは出来てはいるが。小さな通路の詳細までは、把握できていないのが実情だ。
ただし、いま進んでいる穴が、一番更に奧の空洞へ通じている可能性が高い。
だが。
先端部分が、露骨な土砂崩れで塞がれていた。
巨大生物が嘲笑っているかのようである。勿論、この土砂を押しのけて、奇襲を仕掛けてくる可能性もある。
慎重に下がる。
次の穴だ。
一つずつ、可能性を潰して行く。
広い空間に戻ると、レンジャー9が来ていた。どうして新人ばかりのレンジャー9を先に入れたのか。いぶかしいが、どうやら弟がオンリー回線で教えてくれたところに寄ると、ここの指揮官が、日高司令にコネがあるくせ者で、どうしても実績を作りたいのだという。
「ボーイスカウト集団をこんな所に入れるなよ」
噛み煙草を吐き捨てると、涼川はぼやく。
涼川も佐官で、レンジャー9の指揮官とは同格だ。だから相手も、涼川を過剰に敵視しているようだった。
ましてやレンジャー9の指揮官は、前大戦を生き残った、珍しい女性レンジャーだ。既に三十路近いが、自分の判断力には自信もあるのだろう。涼川には、複雑な思いを抱いているに違いない。
幸い、弟が率先して釘を刺し、この地点の死守に指示をまとめた。
無意味に兵を展開したら、死ぬ。
それくらいは、誰でも分かる事だからだ。
「敵が攻撃してきた場合、反撃しても構いませんね」
「構わないが、この空間からは絶対に出るな。 確実に死ぬぞ」
「分かっています」
弟の口調はむしろ柔らかいが。
レンジャー9の指揮官が、納得している様には見えない。これは何かあるかも知れない。
次の穴の偵察を済ませる。
此方も塞がれていた。或いは、何処かの落盤を崩さないとならなくなる可能性がある。他の穴も、調査する必要がある。此処を落とされると危険すぎるので、涼川は残した方が良い。レンジャー9の隊長と喧嘩しない様に釘を刺してから、次へ行く。
順番に調査を進めていく。
容赦なく時間が過ぎていくが。敵の動きは、今の時点でもない。一体何をもくろんでいるのか。
四つ目の穴に入り込む。
かなり短い通路で、すぐに次の空洞につながっていた。表示されている地図とは、違う空洞だ。
これは電波妨害を起こす物質を用いて、意図的に混乱させているのか。
嫌な予感がする。
中には敵はいないけれど。立体的に表示されるマップを見る限り、どうにもおかしい。目的地の空洞と、あまりにも近すぎるのだ。
「どう思う?」
側にいる弟と、スカウト6の隊長に聞いてみる。
スカウト6隊長は、暗視装置を使って、空洞を念入りに確認している。中継装置を撒くことも忘れない。
「中央部が、大きな穴状の空洞になっています。 おそらく、目的地とつながっているかと」
「巨大な縦穴か」
待ち伏せに絶好の地点だ。
しかもこの場所、四方八方に穴が開けている。
今の時点で、敵影は確認できないが。
だがレーダーには、先ほどからずっと此方をうかがっている巨大生物の姿がある。しかもこの空洞を突破しない限り、先へは進めないのである。
「エミリーに頼もう」
弟は少し悩んだ後、エミリーを此方に呼ぶ。
同時に、前の空間の、邪魔な通路を全て塞ぐようにも指示。スカウト6隊長は戻って、作業を始めた。
危険な偵察任務だが、他の誰にも頼めない。
せめて三川が復帰していたら、ツーマンセルで多少は負担を減らせたのかも知れないけれど。
「私も行く。 ブースターとスラスターを用いて、短時間の飛行は可能だ。 この縦穴くらいなら、脱出は出来る」
「無理だけはするな」
「分かっているさ」
この、空洞を覗く入り口は、なんとしても死守する必要がある。ジョンソンにも来て貰う。
ジョンソンはナナコと黒沢を連れていた。
私が聞くと、ジョンソンはこともなげに応えた。
「ナナコも連れてきたのか」
「今の時点で、うちのチームで一番戦闘力が高いのは、ベテランを除くと此奴だ。 あと、矢島。 お前はシールドを用いて、ストームリーダーを守れ」
奧から申し訳なさそうに顔を出したのは、矢島である。
なるほど、この地点を一種の中継地点として、死守するわけだ。
念のため、コンクリの敷設工事を続けて貰う。この通路の途中を塞がれると致命的だ。前回の攻略戦で、同じ手を使われて、死ぬ思いを味わった。
出来れば、この空洞も、完全にコンクリで固めたいくらいだが。
危険が大きすぎる。
エミリーが、嘆息する私の肩を叩く。
この陽気な北米出身のウィングダイバーは、今日は洞窟内で乱反射するサンダースナイパーを持ち込んでいた。
多数の雷撃に似たビームを放ち、乱反射するそれが敵を焼き払う強力な武器である。洞窟内での制圧力は、今までに幾つかの部隊が絶大だと報告してきている。ただしウィングダイバーが最前線に出なければならないという欠点もまた有していた。
まず、エミリーが、空間内に降りる。
ゆっくり縦穴を下降していく姿は、すぐに見えなくなった。
通信を入れてくる。
「ワオ、周囲は真っ暗よ。 底はまだ見えないわ」
「OK。 私も続く」
「もう少し待って」
プラズマジェネレーターで落下速度を落としながら、エミリーがゆっくり地底へと降りていく。
ライトも付けているはずだから、奇襲は受けづらいと思うが。
周囲のレーダーから、敵の反応は消えていない。隣では、ナナコが、油断なくスティングレイを構えている。
「オーケー、底についたわ」
「状況は」
「あまりよくないわねえ。 底に降りるまでに、かなりの数の横穴があったし。 それにこれは、底にも複数の横穴があるわよ。 多分何処の穴も、手ぐすね引いて巨大生物が待っているとみて良さそうね」
「まるで迷宮だな」
蟻の巣は、基本的に一本の縦穴から分岐していくけれど。その過程で枝分かれもする。そして枝の端々に、植物で言う葉のように小さな育児室が作られる。
縦穴はそもそも、人間が行き来できるように、作られていない。
現在のアーマーなら、一気に飛び降りることは可能だが、今度は上がれなくなる。地獄行きの一本道だ。
今回スカウトが持ち込んでいる重機を用いれば、回収は可能だが。
しかし敵も壁を縦に這い上がることが出来るのだ。途中で酸を浴びて、破壊されるのが目に見えている。
一度エミリーが戻ってきた。可能な限り撮影したデータを、司令部に送る。そこで立体マップを作成して貰う。
敵はまだ仕掛けてこない。
タイミングを見計らっているのだ。それ以外には、考えられない。
「コンクリ弾をうち込んで一つずつ通路をつぶせないか」
「多分横穴開けて出てくると思うわよ」
此処は、先ほどまでの空間とは状況が違う。
敵はおそらく、此方を誘い込む目的で、これだけ大規模な縦穴を作ってきているのだ。
しかしながら、敵の包囲を怖れていても、どうにもならない。
更に言うと。
今この空間を覗いている横穴からも、上方向にかなり縦穴は伸びているのだ。天井も塞いでおいた方が良いだろう。
迂回は出来ないだろうか。
そう言う意見も出たが、弟が却下。この複雑極まりない構造の巣で、下手に迂回ルートを作っていたら、確実に迷う。
何より、敵は文字通り手ぐすね引いて待っているのだ。此方が下手な動きを見せれば、即座に圧倒的大軍勢で仕掛けてくるだろう。
「地獄の縦穴だな」
私がぼやくと、エミリーが苦笑いした。