地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
フォーリナーの巨大生物は用兵を理解しています。
人間の弱点を知っている猛獣はそれだけで脅威になりますが。
そもそもこの巨大生物たちは、人間を戦略で上回ってくるのです。
よくない通信が来る。
地上で戦闘中の、司令部からだ。
「ヘクトルの大部隊が、静岡北部の戦線に接触。 現在激しく戦闘中だ。 シールドベアラーはまだ姿を見せていないが、このままだと大きな被害が出る」
「増援部隊はどうなっていますか」
「現在、派遣を検討中だが。 そうなると、東京での戦闘がかなり厳しいものとなるだろうな。 君達も、急いで攻略を済ませて欲しい」
どうやら、もう急ぐほかないようだった。
何度かエミリーには、縦穴を上下に行き来して貰い、マップは仕上げた。しかし途中に無数にある横穴から、膨大な敵が出てくるのは、ほぼ止める事が出来ないだろう。もしやるとしたら。
完全な隠密作戦か、それとも。
「細い通路がある」
弟が、マップの一角を指す。
頼りない出っ張りが、穴の底へ続いていた。幅は二メートルもない。
確かに其処からなら、歩いて地下へと降りられる、かも知れない。
しかし敵の猛攻に晒されることはほぼ確定だ。
弟と私、それにエミリーで地下へと降りる。
そして一気に横穴を調査。幾つかある横穴の中で、有望そうなものが一つある。其処を強引に突破出来れば。
「危険です。 命の保証が出来かねます」
黒沢が眼鏡にわずかに手をやった。
私だってそれくらいは分かっているが。しかし、東京での戦線に問題が出ると、退路が脅かされる。
他に、方法がないのだ。
「せめて、私も」
スカウト6リーダーが挙手したが、首を横に振る。
誰も、庇っている余裕が、ここから先は無い。時間も、ないのだ。
作戦開始。
エミリーと一緒に、暗い穴の底へと降りていく。
既にスカウトから、中継装置の使い方は聞いているが。これを持っていくだけで、かなりの手間になる。
弟はと言うと、ロープを引っかけて、途中まで降り。
一旦其処で手を離して落下距離を減らす。
そうすることで、アーマーで充分に緩和できるからだ。
穴の底へ、着地。
ひんやりとした空気が、周囲に充満していた。そして、殺気が、至る所から此方に向いているのが分かる。
いる。
動くのを、待っている。
それも相当な数が、だ。
弟が着地。周囲を睥睨した。とっくの昔に、弟も気付いている。
「まずはあの穴から、だな」
出来る事なら、敵の数を可能な限り減らしたいけれど。そうもいかないだろう。おそらく、撤退戦は地獄になる。
秀爺から、通信。
「よくない情報だ」
「何があった」
「地上の戦線が近づいてきている。 タイタンが展開している地区から少し離れた地域に、相当数の巨大生物が沸いた様子だ。 レンジャー部隊は撤退を開始。 南下を開始した巨大生物は、千を超えている。 二千を超えるかも知れない」
「千以上、か」
なるほど、いっそのこと、地上から回り込んで迎撃に来るか。
すぐに、地上に展開したままのレンジャー4に、最初のホールへ入る様指示。其処はレンジャー4に任せて、代わりにフェンサー部隊が、突入口の方へと展開して貰う。其処で、敵を確実に防ぎ抜いて貰うためだ。
まず、最初の穴。
敵はおそらく、徹底的に引きずり込んでから迎撃をするつもりだ。だが、此処からは、それを逆利用する。
陽気なエミリーさえ、何も言わない。
深く、深く。
穴を降っていく。
暑くなってきた。地底が暑いのは知識としてはあった。当然のことだ。
地球の深部はドロドロの溶岩で、更にその奧は超高温。溶岩は対流していて、地上はそれによって大陸さえ移動している。
結局の所、地球は熱い星なのだ。
ほんの少しの薄皮が冷えているに過ぎないのである。
曲がりくねった穴を抜けると、空洞に出るが。マップを見ると、かなり外れている。どうやら此処は違ったか。空洞はかなり広く、相当数の巨大生物がいる。此方に気付いているかどうかは、見た目では分からないが。
多分気付いているだろう。
仕掛けたら、即座に全てが反応して、反撃してくるはずだ。
次を試す。
時間が過ぎる中、エミリーがバイザーで通信を入れてくる。
「手分けする?」
「しかし、流石にこの数だ。 分散はまずい」
「そうね。 でも、正直な話、地上がかなりきな臭い状況ヨ?」
巨大生物の大群の続報が、先ほど入ってきた。
タイタンによる面制圧砲撃が開始され、それなりの数が沈黙したが、しかしなおも千を超える数が進撃中だという。タイタンは制圧地域から動けず、幾らかのベガルタが機動戦を行っているが、数が多すぎて食い止めるのは難しいそうだ。
二つ目の穴を潜ると、小さな空洞に出た。
此処も、外れか。
時間ばかりが過ぎていく。しかし、三つ目の空洞で、どうやら当たりを引いた。更に奥深くへ伸びている縦穴。
此処だ。間違いない。
「此方小原。 君達の、目的地点到達を確認した。 中継装置を散布して、すぐにその場から離れて欲しい」
「分かった。 エミリー、頼めるか。 退路は確保する」
「OK」
退路と言っても、この通路に入るものだけだが。
空洞には、巨大な橋ににた出っ張りがある。その下には、すり鉢状の空間。四方八方に、横穴。これは、此処で待ち伏せられたら、大軍でも全滅しかねない。
エミリーが、音もなく着地。
敷設を開始。
同時に、敵が動き始めた。
レーダーが瞬時に真っ赤になる。四方八方から、巨大生物が此方に向かって動き始めたのだ。
「算定不能。 凄まじい数だぞ」
「エミリー、急げ!」
「もう少し」
冷静にエミリーは装置を展開。
ドリルで自動的に埋まっていく中継装置。一つ目。二つ目。
横穴の一つから、蟻が姿を見せる。雄叫び。獰猛なまでの数が、怒濤のごとく、空洞に乱入してきた。
エミリーに、見る間に迫っていく。
まだか。
声を掛けるが、エミリーは作業を続けている。弟がスティングレイをぶっ放し、先頭集団を吹き飛ばすが。
此方にも、巨大生物共は向かっているのだ。
勿論、退路にも、である。
「此方ジョンソン。 敵が空洞に溢れはじめた! 数は千を超える!」
「迎撃を開始」
「此方ほのか。 どうやら地上も、そろそろ敵が来るようよ」
完全に囲まれた。
エミリーが、コンクリ弾を地面に叩き込む。これで、どうにか中継装置の固定が出来た。一気に周囲のマップがクリアになる。
赤蟻が、エミリーに向け突進。
ほんの紙一重の差で。
エミリーが飛んだ。わずかに掠めたが、空中で体勢を立て直そうとする。そのエミリーを狙う凶蟲。弟がスティングレイから、ロケット弾をうち込む。爆破。しかし、猛毒と高い運動エネルギーを秘めた糸が、エミリーを掠めていた。
此方に来るエミリー。
あまり、余裕は無い様子だ。
「アーマーがかなり削られたわ。 ダメージゾーンイエロー」
「急いでこい。 退路もかなり怪しい」
弟がアサルトをうち込み続ける。膨大な糸と酸が飛んできたので、シールドを私が展開して、跳ね返す。巨大生物に丸ごと返る。悲鳴が上がるが、シールドだっていつまでもはもたない。
穴にエミリーが飛び込んでくる。
バックバックバック。
弟が叫びながら、撤退を開始。
皮肉な話だが。中継装置で、周辺マップがクリアになって、よく分かる。此処以外にも、下のすり鉢空間への通路はあった。それも、幾つも、である。
狭い中でロケットランチャーをぶっ放す弟。
私も誤爆は怖れていない。
吹っ飛んだ巨大生物の死骸が、敵の視界を防ぐ。ガトリングをぶっ放し、更にそれに追い打ち。
時々反撃が飛んでくるが、今の時点ではどうにでもなる。回避し、アーマーで受け止め。浸透を防ぎながら下がる。
エミリーが、退路に向けてサンダースナイパーの雷撃を放つ。乱反射しながら飛ぶエネルギービームが、巨大生物を貫き、焼き払っていく。じりじりと、下がる。エミリーも、サンダースナイパーを連射しては、プラズマジェネレーターを冷却。その間は弟か、私が血路を開く役を肩代わり。
通路を、抜ける。
縦穴に到着。辺りはまるで、巨大生物の展覧会場だ。
後方から来る巨大生物だって馬鹿にならないのに。縦穴を抜けるのは、文字通り翼があっても難しい。
遙か上の方で、光が瞬いている。
ジョンソン達が、敵に向けて反撃しているのだ。
「此方ストームリーダー。 これより縦穴を上に逃れる」
「此方ジョンソン、了解。 敵の数が多すぎる。 減る様子も無い」
「どうにか突破する」
「正気か」
まず、エミリーが飛び出す。敵は一旦無視して上昇。ジョンソン達と合流。
その後、複数の敵を同時ロックオンし、一気に殲滅するミラージュで、敵の殲滅に掛かるのだ。
エース格にしか渡されていないミラージュだが、破壊力は絶大。
見る間に、空から光の矢が降り注ぎはじめる。こういう環境でのミラージュは、まさに最強の兵器だ。
しかし、である。
それでも、数が多すぎることに、変わりはない。
「此方ほのか。 地上に敵が到達。 セントリーガンの迎撃網を突破し、フェンサー部隊が対応中」
「持ちこたえてくれ」
「此方涼川」
嫌な予感がする。
涼川から連絡が来たと言うことは。ろくでもない事が起きたと見て良いだろう。
「さっきからコンクリで舗装した一角から、がりがり音がするんだが」
「スカウトに補填させろ」
「もうやってるが、ひょっとすると喰い破られるぜ」
速乾式の強化コンクリートを無理矢理喰い破りに来たとなると、敵は本気だ。
前後の敵を弟と分担してたたく私達だが、アーマーがいつまでも保つわけでもない。敵はそれに対して、文字通り無尽蔵と言って良い物量を投入してきている。
「行くぞ!」
わずかな隙を見て、弟が飛び出す。
走りながらロケットランチャーを乱射。近くにいる敵を爆破しながら、らせん状に上へ伸びている、細い通路に飛び込む。
そして走る。
「姉貴は、一旦上に。 エミリー達と一緒に支援してくれ」
「いや、私もお前と走る」
「何かあったか」
「ブースターの調子が悪い。 多分上まで飛べない」
弟が呻く。
乱戦の中で、糸が掠ったのだ。幸い、武器類は全て無事。上も下も右も左も、全て敵。ミラージュの援護があるが、見る間にアーマーが削られていく。赤蟻が来た。壁を垂直に飛び降りるようにして、襲いかかってくる。
真上にガリア砲をぶっ放し、赤蟻を消し飛ばすが。
それだけ、遅れる。
ブースターは死んでいるが、スラスターは生きている。盾を使って敵の攻撃をはじき返すのも、限界近い。
アサルトを乱射しながら、弟が舌打ち。
前の方に、かなりの数が集まっている。あれを力尽くで突破するのは、無理かも知れない。
エミリーの放っている光が、次々敵を打ち抜いているが。
それでも、敵の数が、あまりにもあまりにも多すぎるのだ。
「ストームリーダー、まだか」
「今、半分という所だ」
「光が目視できた」
ジョンソンが言うと、おそらく零式レーザーをうち込んできたのだろう。
一息に、辺りにいた巨大生物が、赤い熱線に焼き払われた。今のうち。二人、全力で走る。
だが、追いすがってくる巨大生物ども。特に数十匹の赤蟻が、態勢を低くして、壁を垂直に這い上がってくる。
其処へ、ロケットランチャーから、正確無比な一撃が着弾。
如何に頑強な赤蟻でも、壁を昇っているときに、ロケットランチャーからの一撃を受けてはひとたまりもない。
吹っ飛び、ばらばらと落ちていく。
死なないだろう。
しかし、下から上がり直しだ。
危機はまだまだ続く。
至近。
音もなく近づいてきていた凶蟲が、糸をぶち込んできた。
弟が即応し、アサルトで蜂の巣にするが。
二人とも、盛大に糸を浴びた。舌打ちして、アーマーの状態が、レッドになっている事を確認すると。乾いた笑いが漏れる。
「これは、上までたどり着けるかわからんな」
「諦めるな」
私の弱音に、弟が厳しく言う。
確かにその通り。この程度の苦境、二人は散々乗り切ってきたのだ。追いすがってくる敵を、上から来る敵を、迎撃。
撃ちおとし、払いのけ、走る。
ついにアーマーが切れた。
弟は、まだ少し余裕があるが、私は厳しい。ジョンソン達が支援してくれているが、間に合うか。
もう少し。
見えてきた。後縦穴の壁を一周すれば、一息付ける。しかし、下からもの凄い数の巨大生物の気配がある。
文字通り、面をそのまま全て埋め尽くす数で、一気に蹂躙しようというのだろう。
追いつかれたら、終わりだ。
真後ろに来ていた赤蟻を、ガリア砲で吹っ飛ばす。ガリア砲の負荷もうなぎ登り。そろそろクールダウンさせないと、壊れてしまうかも知れない。
更に言えば。
現在、地上側の出口を、完全に塞がれてしまっているのだ。その上下手をすると、途中の通路を、横から喰い破られる可能性さえ出てきている。
ついに、指呼の距離。
だが、下から迫っている敵の大群が、もう見えるほどだ。
弟が、先に飛び込む。
私は。
スラスターのエネルギーが、此処で切れてしまう。
体力も、もう限界だ。
だが、それでも。
無理矢理に、横穴に飛び込む。鈍重なフェンサースーツのエネルギーが、此処で切れた。ジョンソンが、腕を引いて、奧に。数人で弾幕を展開して、入り口に分厚く密集している敵に乱打を浴びせる。浴びせながら下がる。
フェンサースーツを解除。
呼吸を整えながら、DNG9を受け取る。
「下がれ!」
全員下がったところに、凶悪な手榴弾のピンを抜いて、放り投げた。
密集していた巨大生物たちが、根こそぎ吹っ飛ばされる。爆風は此方も容赦なく襲い、破片が皮膚を切り裂いた。
右の鼓膜をやられたらしく、音がよく聞こえない。
「下がれ! 急いで!」
前線を下げる。
敵は追いすがってこようとするが、数が却って邪魔になって、一度にたくさんは入ってこられない。其処を、時々手榴弾を転がしてやり、効果的に爆殺。何度か同じ事をすると、追撃速度が目だって落ちた。
その代わり、赤蟻が主体になって、傲然と進んでくる。
火力を集中して一体ずつ潰して行くが、何しろ頑強な赤蟻だ。此方が下がる分、相手も前線をあげてくる。
DNG9手榴弾でも、殺しきれない。
私を抱えると、弟が走り出す。此処は任せる。そう言って。
前の空間にまで戻る。
スカウトが、必死になってコンクリの敷設作業を続けていた。どうにか、まだ喰い破られてはいないようだ。
秀爺達の方は。
「涼川、此方はもう大丈夫だ。 秀爺達の方を手伝いに行ってくれるか」
「分かった。 死ぬなよ」
傷だらけの私を見て、涼川も。それだけ言うと、すぐに飛び出していった。
エミリーが代わりに前に出て、敵に向けてサンダースナイパーの雷撃を連続して叩き付ける。
さしもの赤蟻も怯んだところに、集中射撃を浴びせて、潰す。元々狭苦しい穴だ。一匹が崩れると、どんどんなし崩しに潰れていく。
其処へ、ナナコがDNG9を放り入れる。
悲鳴が上がった。赤蟻の頭部が吹っ飛んで、此方に飛んできた。
私は呼吸を整えながら立ち上がろうとしたが、上手く行かない。思った以上に、ダメージが大きいらしい。
「はじめ特務少佐! 無理はしないでください!」
「無念だ」
この程度で動けなくなるなんて。
内臓のダメージが、かなり体を拘束しているのが分かる。痛みが酷いのでは無い。体が、単純に動かないのだ。
入り口から押し入ろうとしている巨大生物たちが、一旦下がる。
だが、油断せず、エミリーが雷撃を連射して、穴の奥の方まで焼き払う。乱反射する稲妻が、敵の群れを焼いていくのが分かる。
だが、エミリーのプラズマジェネレーターも、焼き付きそうだ。
「すぐに次が来る! 体勢を立て直せ!」
ジョンソンが叫び、DNG9を持ってこさせる。
入り口の方はどうなっている。私は顔を上げてもう一度立ち上がろうとしたが、無理矢理横にされ、酸素吸入器を口に当てられた。流石に此処まで酷い状態ではない。抗議しようと思ったが。
体が動かないので、実は此方の予想より、状態が悪いのかも知れない。
「ヴォルカニックナパームは」
「入り口の敵を焼くので精一杯です」
「セントリーガンは」
「入り口に全て配置してしまっています! それでも敵を防ぐのが精一杯で」
誰もが、分かっている。
入り口と此処の空洞。どちらかに押し入られたら、その時点で全滅確定だ。ストームリーダーがいてもどうにもならない。
暴力的な数の差と、地の利。
どちらもが敵に備わっているのだ。例え地球最強の男がいても、どうにもならない。
奧から、また敵が押し寄せてくる気配。
また赤蟻を前衛に押し立てて、無理矢理の突破を測ろうというのだろう。
谷山が来た。
「ストームリーダー、状況改善の手が」
「何か案があるか」
「空爆と砲撃」
「……そう、だな」
話を聞いていて、私にもすぐにぴんと来た。念のために、この空間は放棄した方が良いだろう。
弟が、すぐに声を張り上げた。
「総員、入り口付近の空洞まで撤退! 最後尾は俺とジョンソン、エミリーが務める!」
「ナナコも残ります」
「好きにしろ」
ジョンソンが舌打ちした。
子供の兵士を見る彼の目は、とても厳しい。確か西欧では、子供を戦わせることは最大の恥という考え方があったはず。
強化クローンで、生半可な大人の戦士より強い事は、ジョンソンも認めている。だから、先ほど縦穴の防衛線で連れてきた。
しかし、この決死の撤退支援に、子供を使うのは、どうしても気分が悪いのだろう。
黒沢と日高軍曹が、担架の前後を担いで走り出す。
私の内臓のダメージは、其処まで酷かったのか。敵の第二波を凌いだら、一気に最初の空洞まで戻るつもりらしいが。上手く行くだろうか。
スカウト達は、既に先に行かせた。
レンジャー部隊は二つとも残りたいと言うが。あまり多く残っても、邪魔になるだけだ。それよりも、セントリーガンを多数配置しても守りきれない入り口の方を、対処するべきだ。
ましてやレンジャー9は練度に著しく問題がある。
今も、入り口から時々顔を覗かせる巨大生物に、まだ若い者が多い新兵達は、すくみ上がっているではないか。
「レンジャーの部隊は飾りではありません。 参戦させてください」
「間もなく、入り口の敵が総崩れになる。 その時こそ、追撃戦で力を発揮してくれるか」
「それは一体いつですか!」
ヒステリックに、レンジャー9リーダーが、弟に突っかかるのが、運ばれて行く途中で見えた。
まだ戦闘が断続的に続いている中、味方と一緒に、曲がりくねった洞窟を退避していく。途中、筅が話しかけてきた。
「お医者様に言われていました。 絶対に無理はさせないようにって。 普通の人だったら、とっくに悶絶してるくらいの痛みだって」
「この程度の傷で、私も弱くなったものだ」
「ごめんなさい。 私達が、もっと強かったから、こんなに無理はさせなかったのに」
筅が泣いているのが分かる。
何故だ。
むしろ、私は自分が弱くなったことを嘆きたいのに。
最初の空洞に到着。
セントリーガンが放射状に並べられ、その外側に盾を構えたフェンサー部隊。レンジャー4と秀爺、涼川、残りの新兵達が、半包囲の状態から敵に乱射を浴びせているが、何しろ数が多すぎる。
フェンサーの防壁が崩れたら、一瞬でなだれ込まれて、ジエンドだ。
動きがよい敵は、片っ端から秀爺が仕留めてくれているけれど。負傷者が、次々出ているのが分かる。
「フェンサー1-8、シールド損傷! 下がります!」
「フェンサー1-4、こっちももうもたない! 撤退許可を請う!」
「撤退って、何処に逃げろって言うんだよ……」
フェンサー1リーダーがぼやく。
谷山が、不意に、此方に手を振ってきた。
「揺れが来ます! 備えて!」
どしんと、もの凄い揺れが連続してきた。
巨大生物たちが動揺するが。それは此方も同じだ。弟が最後尾になって、この部屋まで撤退してきた。これで、全戦力がこの部屋に集まったことになる。
また、強烈な揺れ。
「な、何が!?」
「分からないか」
動揺する様子の日高に、説明しようとすると、黒沢が代わりに言ってくれた。
筅は黙って、天井を見ている。
崩落だけを心配している様だ。コンクリで固めているし、滅多な事では崩れない。だから、大胆な策に出られたのである。
「砲兵隊と空軍に、おそらくこの近辺への無差別攻撃を指示したんでしょう」
群れている巨大生物共は、これで壊滅的な打撃を受けた。
勿論近くの街も同じような被害だが。大多数の巨大生物に蹂躙されている時点で壊滅だ。砲撃を躊躇う理由はない。
一気に、入り口からの敵の圧力が薄れる。
そして、恐らくは、だが。
奧の敵も、これ以上は損傷を誘えないと判断したのだろう。まるで潮が引く様にして、逃げていった。
後は、入り口から外に出て、残った敵を掃討する。
その過程でかなりの数の負傷者が出たが。
死者を出すことだけは、避けられた。