地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
とても後ろ暗い理由が。
フォーリナーが来る前から、その暗い戦いは始まっていて。
それが八年前に、成果を出しただけに過ぎないのです。
序、遠い日の思い出
最初の記憶は。こうやって、培養槽の中に浮かんでいたこと。
私の実際の年齢は。
普通に人間として生きてきて。新兵になった連中と、あまり変わらない。違うのは、戦闘に特化した遺伝子を、弟とともにもらった事。
特化しているから、強い。
当たり前の話だ。
ただし、体のバランスは、奇蹟の上に成り立っている。元々、無理な遺伝子を、体に埋め込んだのだ。
だから生き残ることが出来たのは、私と弟だけ。そして弟は、ストーム1リーダーとして、世界を救い。
私は。
弟のお膳立てをした。
任されたのは、新しい兵器の実験。実地試験。
ろくでもない武器ばかり、実戦で試してきた気がする。ウィングダイバーも、最初は私が試験運用をした。
私は結局の所、何なのだろう。
意識が、覚醒しはじめる。
体につながれているコードが煩わしい。培養液の水位が下がっていくのが分かった。口に当てられた呼吸器を外す。目を擦って、生臭い培養液を払う。
少しずつ、思い出しはじめる。
滅茶苦茶にダメージを受けて、培養槽に突っ込まれたのだ。勿論全裸だが、幼児体型なんぞ晒したところで別に恥ずかしくもない。それに、こうやって治療されるのは、慣れていた。
腕を吹っ飛ばされたときも。
足の踝から先を引きちぎられたときも。
こうやって、根本治療されたのだ。
培養槽がせり上がって、外に出る。多少ふらつくが、これで少しはマシになったはずだ。白衣を貰ったが、そのままシャワールームに直行。べたつく培養液を洗い流すと、すぐに服を着て、バイタルの状態を確認。
内臓は回復しているが。
前より回復速度が遅い。
バイザーを付けると、幾つかのメールが来ていた。
新人達の何名かが、ジョンソンに銃火器の扱いについて、講義を受けているとかある。なるほど、実戦で覚えるだけではなく、せっかくの休日を使って座学をしている訳だ。特に筅と日高が熱心だという。
一方でナナコは、EDFの武器リストを見て、欲しいものを申請しているという。
特に、AF100に興味を示しているそうだ。
AF100はまだ量産に到っていない新型アサルト。強力な制圧力と射程が、次世代アサルトライフル候補として注目されている。フォーリナーからの鹵獲技術もふんだんに用いており、弟も前大戦の末期で使っていた。
ただ、これはまだ生産がラインに乗っておらず、少数しか生産されていない。
弟が、バイザーに通信を入れてきた。
「姉貴、調子はどうだ」
「まあまあだ」
「此方は一つ朗報がある」
ネグリング自走ロケット砲の新型を、配備して貰えるらしい。これで秀爺のレールガンによる長距離狙撃と、制圧射撃を同時に運用できる。
配備するのは池口に。
元々池口は、優秀なビークル使いになる素養があった。ただし若干性格が雑なところがあるので、ネグリングは最適だ。
キャリバンも出来れば最新型が欲しいのだが。
戦況が苦しい現状だ。流石に、其処までは要求できないだろう。
多少、体は軽くなっているが。
まだ全快とは言いがたい。
次の戦いは、後方に下がって貰う。弟には、そう言われた。今回ばかりはやむを得ないと、私も思うが。
しかし、戦況が、それを許してくれるのか。
ヒドラにすぐ移動する。
軍服のまま来た私を出迎えたのは。ヒドラに乗り込んでいた、三島だった。此奴が直接来ているのは、珍しい。
「あらあ。 よかった、流石に復活が早いわ」
「まだ本調子じゃない。 次の戦いは、出ないようにとも弟に言われている」
「……」
三島が、目を細める。
そういえば、聞いたことがある。
此奴は確か、前大戦で家族を失っている。それ自体は、別に珍しい事でもなんでもない。世界の人口が七分の一になったほどなのだ。
三島が失った家族の中には、弟もいるとか。
それでだろうか。私が弟の事を口にすると、目を細めたりするのは。
纏わり付かれるのも面倒だ。さっさとその場を離れる。三島は追ってこなかった。
軽くメディカルチェックを受ける。ヒドラに同乗している医師には、弟同様次の戦いには出ないようにと言われているが。
それも戦況次第だ。
ストームが投入されるのは、厳しい戦場ばかりである。しかも、現状を鑑みるに、優秀なベテランの力があって、どうにか死者が出るのを防いでいる。最強の戦士は弟だが、私だって、その一翼を担っていたはず。
「メディカルチェックではバイタルに問題は出ていません。 驚異的な回復力ですが、恐らくはからだそのものにも大きな負担が掛かっています。 前大戦の時のデータを見ましたが、同じ状態ですね」
「次の戦いは後方で指揮を執るとして。 その次からは出られそうか」
「何とも言えませんが。 ただ、前大戦の時の、似たようにして何度も何度も培養槽を出入りして、死にかけてはまた無理矢理直してと言う行為を繰り返した結果、おそらく貴方の体は内部から無茶が掛かりすぎています。 七年の時を経ても、その無茶は埋まりきっていなかった」
医師の表情は厳しい。
本当なら、二度と戦いには出したくない。
そう言っているかの様子だった。
「恐らくは、ストームリーダーもそうでしょうね。 ただ彼は、貴方以上の戦闘特化型のようだし、それでどうにかしているのでしょう。 しかし、それでも無理が出ているとしか思えない」
常人の倍速での老化。
それが頭に浮かぶが、追い払う。
弟は、私の誇りだ。
時々悔しくもなるけれど。
弟がいることを、いつも嬉しくなることに、変わりはないのだ。
確かに時々、嫉妬で胸が苦しくなることもある。弟の方が、何もかも優れているのでは無いかと考えてしまうときもある。
しかし私の方が、兵器の試用については上だ。だから、前の大戦でも、あれだけの武器を実用化に移すことが出来た。
私が欠点と長所を洗い出し、使えると判断した武器を。
弟は使いこなして、フォーリナー共を叩き潰してきたのだ。
「出来れば本部に掛け合ってください。 ただでさえ、ストームチームは、過酷すぎる労働をしているのですから」
医師は、そう言う。
私は特務少佐。大佐と同格の発言権と地位を持っている。だから、ストームを休ませろと、主張することは出来る。
だがその分、普通の人間が、過酷な任務に投入されて。
当然のように、死者も出す。
ただでさえ三十万しか人員がいないEDFだ。無理矢理新兵を鍛えて、予備役を呼び戻しても、限界がある。
急いでマザーシップを撃墜するしか、路は無いのかも知れない。
弟が来た。
私はと言うと、丁度ベッドに腰掛けて、たまには本でも読もうかと思っていたところだ。静岡戦線に出向く間、少しだけ無駄な時間がある。その間に、前から読みたいと思っていた電子書籍を、バイザーに写して、ぼんやり過ごそうと考えていた。
「姉貴、体は大丈夫だな」
「ああ、どうにかな」
「次の戦いでは、ジョンソンと交代してくれ。 新人達の指揮を執って欲しい」
「分かっている。 任せてくれ」
後方に下がるとなると、それが一番良いだろう。
ただ、機動戦が出来るメンバーがいなくなる。それについては、エミリーに代わりに前に出て貰うという。
確かに多少形態は違うが、機動戦という点では、ウィングダイバーは適任だ。
弟が戻る。
医務室で一人、ぽつんと電子書籍をバイザーで読みつつ、戦況を確認。
静岡戦線は一進一退。どうにか間に合った援軍と協力して、迫り来るヘクトルの大群を押し返している。
幾つか、ストームに対応して欲しい案件があると言う。
それを片付けたら。
私も、フェンサースーツを着込んで、前線に復帰だ。
ストームリーダーが、普段から無口なことは知っている。でも、筅には、何となく分かる。
普段より、若干不安そうにしていると。
きっとはじめ特務少佐の事だ。
多分、世界で唯一、本当の意味で頼りにしている家族。はじめ特務少佐は、いつも厳しい口調だけれど。雑談しているとき、ストームリーダーのことになると、少しだけ嬉しそうにする。
ストームリーダーも同じ。
前に、一度話してくれた事がある。
姉貴が試用して、問題点を洗い出してくれたおかげで、使えるようになった武器が。使わない方が良いと判断できた武器が。たくさんあると。
あまり露骨にそうだとは見せないけれど。
二人は、きっと姉弟としては、理想的な関係にあるのだ。
ヒドラで移動中に、皆が呼ばれる。
ストームリーダーの表情は、今日も厳しい。
意を決して、筅は話しかけてみる。
「ストームリーダー」
既にブリーフィングは終わっているからか。ストームリーダーは、無言のまま、顔を上げた。
「はじめ特務少佐に、負担が大きく掛かっていると思います。 私達が、少しは、その、負担を軽減できたらなあと思うんです」
「お前達はやれる範囲で、よくやっている。 お前やナナコは特に成長も早い。 ベガルタファイアナイトの操縦も、問題なくこなせている」
「……」
そうなのだけれど。
しかし、不安なのだ。このままでは、はじめ特務少佐は。
口をつぐんでいると、ストームリーダーは言う。
「古い話になるが、前大戦で俺とはじめ特務少佐は、基本的に違う戦場にいた。 違う大陸で戦う事も多かった。 だから、いつも聞かされたし、聞かせていたはずだ。 怪我をしたという話ばかりをな」
前大戦では、劣悪な性能のアーマーもあって、EDFの隊員はそれこそ草でも刈る様に、フォーリナーになぎ倒されていったという。
そんな中、二人もやはり。
無事ではすまなかった、ということなのだろう。
「俺もあの時に比べて体が弱くなったが、はじめ特務少佐は俺以上に衰えている気がするのだ。 だから、だろう。 はじめ特務少佐は、いつも焦っている」
何となく、理由は分かる。
この人達は、おそらく最初の世代の強化クローンだ。人間離れした動きも、そしてどこか人間性に欠ける言動も。
自分の同類だとすぐに分かった。そして前大戦での英雄で、現在のストームのトップとサブリーダーをするほどの人材だと言う事からも。消去法で、そういう結論が出てくる。
だが、それが。
感情がないという結論には、結びつかない。
「お前達にやって欲しいのは、はじめ特務少佐が、体を張ってまで守ろうと思わなくて良いほど、腕を上げることだ」
「分かりました。 必ず」
「うむ……」
はじめて、ストームリーダーが、わずかに表情を和らげた。
ヒドラが間もなく、山梨の最終防衛ラインに着く。静岡との県境では、まだ激しい戦闘が継続されている。
通信が来た。
ストームリーダーの表情が険しくなる。
どうやら、早速ハードな仕事が、舞い込んできた様子だ。
「全員、着陸後、すぐに展開する準備を」
「何があったんだ、旦那」
「シールドベアラーを駆除しに出たレンジャーチームが、ヘクトルの軍勢に包囲された」
なるほど、今度は救助戦か。
幸い、東京支部でのメンテナンスのおかげで、ビークル類は全てが稼働可能。更に池口には、新型のネグリング自走ロケット砲も配備されている。これなら、勝てる。と、思いたい所だ。
新しい噛み煙草の包み紙を剥きながら、涼川がいう。
「なあ旦那。 今回は新人達は、全部特務少佐に任せるんだろ」
「ああ。 だが、何しろ急行することになるだろう。 戦闘は乱戦になる可能性が高い」
「あたしは望むところだがな」
「分かっている。 無理はさせないさ」
ストームリーダーはそういうが。
乱戦では何が起こるか分からない。
ベガルタファイアナイトなんて過分な装備を貰っていて何なのだけれど。筅は、もっともっと強くなりたいと、願いはじめていた。