地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
赤蟻との激烈な戦いを終えて、休む暇も無かった。新兵達には声は掛けなかったし、教えもしなかったが。
本部から、緊急ですぐ来るように通達があったのだ。
だから心配させないように、寮へ向かうフリをして、途中で緊急用の通路に入った。松葉杖のジョンソンも、途中で合流する。
「涼川は中佐に昇格だそうだ」
「まあ、倒している数ならワールドレコードを争えるからな。 当然だろう」
弟とジョンソンは、歩きながらそんな事を話している。
私は。
また帰り道のヒドラで、医師にがみがみ言われて。正直戦闘よりも、それで疲れた。更に言えば、これからろくでもない事が知らされると、わかりきっている。
本部のビルに到着。
会議室についたのは、早い方だった。日高司令はいない。デスピナの艦長が先に来ていたが、これはホログラフだ。つまり、ホログラフ発生装置のある部屋に来る暇も無いほど、皆忙しいという事である。
ストームチームだけが忙しいわけではない。
「ストームチーム、東南アジアで十以上の戦場を連戦し、その悉くで勝利してきたそうだな」
デスピナの艦長は野太い声の、見るからに威厳ある提督である。
前大戦を生き抜いたこの男は、重厚な人柄から人望も篤い。前大戦で左腕を失い、義手を使っているのだけれど。敢えて義手だと分かるように見せている事で、威圧感を作るなど、少ししたたかな所もある。
弟とはあまり接点がないのだけれど、私とは何度か共同戦線を張ったこともあって、一応の交遊がある。わずかだけだが。
まあ、たまに個人的に飲みに行ったりする仲だ。ただし私は酒がだめなので、いつもジュースだけ口にしている。
ちなみにデスピナ艦長も酒にはかなり弱くて、あっという間に伸びてしまう。ある意味、見かけとは一致しない弱点である。いかにもな海の男が酒に弱いというのは、不思議な話だ。
「優れた部下達に恵まれ、運も良かっただけだ。 ビークルはどれも手酷くやられたし、戦いはきわどい場面も多かった」
「それでも見事な戦いぶりだ。 この間の戦いで壊滅状態にまで陥ったオメガチームや、元々北米を縄張りにして他での戦闘経験が浅いストライクフォースライトニングと比べても、今や君達が頭一つ抜けている」
「そうだと良いが……」
弟の懸念は、間もなく当たる。
何名かの幹部が入ってくると、戦術士官が部屋にきた。間もなく、日高司令のホログラフと、殆ど同時にカーキソン元帥のホログラフが会議室に現れた。
「良いニュースと、悪いニュースがある。 まず悪いニュースだが、前大戦でも大きな被害を出した赤い飛行ドローンが姿を見せた。 極東に数機が向かっている」
「精鋭か……!」
何名かの中将が、戦慄に声を震わせた。
精鋭。
赤い飛行ドローン。見かけはただの赤い飛行ドローンだが、その戦闘力は生半可な代物では無い。尋常では無い火力に機動力、防御力を兼ね備え、圧倒的な殲滅力で飛行ドローンの撃墜になれた多くの戦士を屠ってきた難敵だ。
倒せない相手では、ない。
ストームチームでも、前大戦を通じて三十六機を撃墜している。そのうち、弟が五機、私が四機。残りは秀爺の戦果だ。
ちなみに秀爺は、精鋭を倒した数では、ワールドレコードの持ち主である。飛行ドローンに関しても同じ。此方は桁一つ違うが。冗談のような戦果を上げているから、秀爺にはいまだ引退の声が掛からないのだ。
ストームチームに香坂夫妻あり。
おそらく、二人は世界最強の老夫婦だろう。
「性能は明らかに前大戦の精鋭を凌いでおり、迂闊に手が出せない。 下手をすると、ファイターを凌いでいる可能性もある」
「なるほど、それでストームチームに撃墜を命じると」
「そうなる。 君達なら、必ずや良いデータを取ってきてくれるはずだ」
期待の目が集まる。
確かに、普通の部隊に任せるには危険すぎる相手だ。
咳払いすると、日高司令が続きを促す。
「良いニュースとは」
「欧州、北米、アフリカ、南米、これらの巨大生物の巣穴を潰したことで、ようやく体勢を整え直すことに成功した。 近いうちに、フォーリナーが戦力を集めている箇所に、各支部の総力を挙げて、攻撃を行う計画だ。 名付けてブルートフォース作戦。 この作戦でマザーシップの直衛戦力を半減させ、一気に奴らを叩き落とす!」
おおと、声が上がる。
悪辣な戦術と巧緻を極める戦略を駆使するフォーリナーに対し、どうにかここまで持ってくることに成功したか。
極東でも戦線は決して安定していない。
たとえば、この間の赤蟻の群れだが。アレは明らかに陽動だった。静岡にいる敵の大部隊が、その間に山梨の最終防衛ラインに猛攻を加え、陥落寸前まで追い詰めていたことが分かったからだ。
幸い増援が間に合ったが、次の攻撃に間に合うかは分からない。
タチが悪いことに、敵の精鋭は、静岡に向かっている。
四足と合流されると極めて危険だ。合流の前に叩かなければならない。
地図が表示される。
戦力を再編成したオメガチームと、ストライクフォースライトニング、ストームチームは、それぞれ別の戦域を担当する。
ストームチームの主戦場は静岡だ。
四足まで迫れるかは分からないが。山梨の戦線が危険である以上、此処に集結している敵をこれ以上野放しには出来ない。
他の二つの戦域では、兵力を多めに出して対応。
一気に敵主力を屠り去ることを、作戦の目的としていた。
地下の彼奴は。
ボイスオンリーで会議に参加しているが、ずっと黙っていた。
此奴には聞きたいことが幾つもある。そろそろ、全て話して貰いたいところだ。
「今までは押しつ押されつの戦況だったが、それも此処までだ。 一気に敵を叩き潰し、フォーリナーを地球からたたき出す!」
景気の良いことを言う。
私は、高揚に陶酔するカーキソンの禿頭を見ながら、そう思った。
会議が終わって、部屋を出る。
歩きながら、弟に目配せ。本部ビルを出てからは、ジョンソンとも別れた。今日はもう戻って休むようにと言うと、寡黙な黒人士官は頷いて、寮に戻っていった。
それを見届けてから、弟と、オンリー回線を開いた。
「どう思う?」
「この辺りで、総攻撃を仕掛けるのは、確かに手だ。 どうにもフォーリナーには、まだまだ手札が多数残っているように思えてならない。 余力がある内に、敵の勢力を可能な限り削ぎ、巨大生物を駆逐するのは、戦略としては間違っていない」
「そうだな……」
「いずれにしても、次の相手はあの精鋭ドローンだ。 油断だけはするなよ」
何か、とてつもなく嫌な予感がする。
巨大な蜂の巣を、突こうとしていないだろうか。
私は、まだ本調子では無い。赤蟻の群れと戦った後も、やはり体の不調を感じた。出来るだけ早く休んだ方が良い。
寮に戻ると、シャワーを浴びて、さっさと眠る。
新人達には、過酷な相手になる。
疲れを残しておくと、死者を出す可能性も上がる。ただでさえ不調が続いているのだ。これ以上、無様はさらせない。
目を閉じると、無理矢理にでも眠ることにした。
疲れた。
しかし、何度も何度も倒れるわけにはいかない。この地球の未来を担う若者達を、死なせるわけには行かないのだ。
それにしても、地下の彼奴だ。
そろそろ、本格的に、何を知っているのか、問い詰めておきたい。
今度の大規模攻撃作戦が終わったら。
そのタイミングで、話を聞きに行こう。
私は、薄れ行く意識のなかで、そう考えていた。
(続)
戦略的な作戦行動を続けるフォーリナー。
ここでEDFも、対策のための作戦を始動させます。
それが上手く行くかは別の話ではあるのですが。
何もしないで、すり潰されるよりはマシなのです……