地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
4のブルートフォース作戦はその嚆矢だったように思います。
以降5や6における激突する平原ミッションなどに、その魂は引き継がれて行ったように思えます。
既に、廃墟と化した街には、集結した部隊が展開していた。
EDFの制度では、基本的に基地ごと、場合によっては司令部単位ごとに、レンジャーチームなどのチームは番号を振り分けられる。
だから東京支部のレンジャー9と、九州支部のレンジャー9は、別の組織になるわけだ。
大規模な会戦に発展する場合、作戦に参加するチームに関しても、同じような番号振り分けが行われる。
ストームなどの特殊部隊に関してだけは例外。
ただし、これに関しては、前大戦が終わった後の話だ。
前大戦では、ストームは1チームでは無かったし、多くの人員が補強されては、片端から散っていった。
最終戦ではとにかく悲惨で、今ストームを構成している主力メンバー以外の殆どが、戦死した。
レンジャーチームが点呼している。
今回、レンジャーチームは1から202まで番号が割り振られた。
参戦するウィングダイバーチーム16、フェンサーチーム13についても、同じように番号が振り分けられている。
房総半島での防衛戦でも同じような番号割り振りが行われているが。
つまり、それだけ戦闘が大規模で、激しくなるという事だ。
ストームチームは、最前衛の少し後ろ。
ベガルタファイアナイトが敵を見据える肩に、弟は乗っている。構えているのはライサンダーである。
少し離れた後ろに、池口のネグリング。
その更に少し後ろに、秀爺のイプシロンが待機。
敵の前衛部隊、ヘクトル60機ほど。まずは戦車部隊による砲撃を浴びせ、その後接近戦でシールドベアラーを撃破する。
その後、空爆で接近するヘクトルを牽制。
もし四足が前に出てくるようなら、集中攻撃を浴びせる。勿論、グラインドバスターも、攻撃機は装備しているのだ。
「近づいてくるな」
「あれはほんの一部だ。 後方には千機以上のヘクトルがいるって話だぜ」
「ぞっとしねえなあ」
周りのレンジャーが話しているのが聞こえる。
不安ももっともだ。私はガリア砲の準備を確認すると、弟に通信を入れる。
「攻撃合図はまだか」
「まだだ。 どうも前衛のヘクトル部隊の後方に、相当数のヘクトルが接近しているらしい。 此方の総攻撃を見抜いたという事だろう」
「それならば、なおさら各個撃破するべきだろうに」
「空軍が揉めているのだろう」
空軍はシールドベアラー出現以降、肩身が狭い思いをしている。
ついに出現した敵精鋭の手により、ファイターが撃墜されるという事件も起きているようで、名誉回復のため躍起なのだろう。
程なく、連絡が来る。
まず空軍の攻撃機が、敵の前衛に空爆。打撃を受けたところに、総攻撃をするように、という事だ。
作戦が少し違う。
それに、こんな戦いの序盤で、そのように弾薬を浪費してしまって、構わないものなのか。
不安が募るが、弟が咳払いした。
ほどなく、アルテミスの編隊が来る。護衛のファイター数機も見えた。
ヘクトルが上空に向き直るが、その時には。
既に無数のクラスター弾が、敵に投下されていた。
爆裂。
轟音。
凄まじい熱に晒されたヘクトルが、悲鳴のような軋みを挙げる。中には今の爆撃で、木っ端みじんに消し飛んだ機体もあるようだ。
更に、第二波が容赦のない爆撃を浴びせていく。
レンジャー部隊が、喚声を挙げた。
「EDFの力を見たか!」
「ざまあみろ、木偶人形ども!」
「空爆万歳だぜ!」
脳天気に喜んでいるレンジャー達に冷や水をぶっかけるように。
今の爆撃を生き延びたヘクトルが、炎をものともせず、前進を開始する。戦車隊が、攻撃を開始。
弟も、声を張り上げた。
「各自、長距離攻撃開始! 可能な限り、ヘクトルを集中攻撃して、各個撃破しろ!」
今まで、防衛ラインに張り付いていた鬱憤を晴らすように、熱狂的な攻撃を仕掛ける戦車隊を横目に。
ガリア砲を叩き込みながら、私はここからが大変だなと、内心ぼやいていた。
戦線が開かれて、すぐに戦況は変わる。
半壊状態にまで痛めつけられたヘクトルの部隊を支援するように、すぐにシールドベアラーが姿を見せたのである。
可変式のシールドが、砲撃もスナイパーライフルでの一撃も防ぎ抜く。更に、である。
「巨大生物出現!」
スカウトが声を張り上げる。
黒蟻が中心だが、赤蟻も相当な数がいる。遠目に見ても、二千はくだらないだろう。シールドベアラーがいる以上、非常な苦戦は免れない。
ジョンソンが観測し、指示を出してきた。
「これより指示する地点の敵を集中攻撃。 ストームリーダー、指示するシールドベアラーの撃破に向かって欲しい」
「任せろ」
ベガルタから飛び降りると、弟が走り出す。
勿論、私もそれに続いた。
敵との距離が、見る間に縮まっていく。レンジャー部隊も、フェンサー部隊も、ウィングダイバー部隊も。
喚声を挙げながら、敵との距離を詰めていった。
「突撃! GOGOGO!」
日高司令の声がバイザーに轟く。
プロテウスも、前進を開始。発射された無数のミサイルが空を突き抜けて、敵陣に降り注ぐ。
流石の破壊力だ。大型ミサイルが直撃したヘクトルは大きく傾ぎ、味方の集中砲火を浴びて爆散していく。
だが、敵はシールドベアラーに守られながら、傲然と前進を開始。
見る間に前線が接触した。
肉弾戦が始まる。
ハンマーを振るって、巨大生物を吹き飛ばしながら、弟の路を作る。後ろは既に阿鼻叫喚。一瞬でも早く、路を作らないと、それだけ多くの被害が出る。
目の前に飛び込んできた赤蟻をハンマーで吹き飛ばすと、通信が来る。
「ヘクトルの大部隊、飛行ドローン部隊、ともに接近! 飛行ドローン部隊は、数百に達しています!」
「主力のお出迎えだな」
「シールドベアラーを急いで倒してください! 前線がもちません!」
レンジャー部隊の悲鳴が上がる。
威勢良く突入はしてみたが、何しろ敵の数が数だ。その上、今回の戦いが初めてという新兵も多いのである。
弟が、飛び出す。
そして、シールドベアラーに、ライサンダーから至近距離の砲撃を浴びせていた。
爆裂する悪夢の塔。
まずは一つ。
シールドが消えたことで、敵の空白地点が出来る。其処へ戦車隊が集中砲撃を浴びせ、一気に敵を制圧していく。
ヘクトルが、ガトリングから猛射して、足下のEDF隊員を薙ぎはらうなか、盾を構えて突進。
ヘクトルのガトリングを無理矢理にはじき飛ばしながら、突撃。
二つ目のシールドベアラーに肉薄。ガリア砲を至近からぶっ放し、打ち砕いた。これで、二つ目。
乱戦が続く。
敵のシールドが消えた地点に、集中攻撃を行い、一気に敵を制圧していくが。しかし、シールドベアラーは次から次へ来る。
六機目のシールドベアラーを潰したころ。
敵の主力が、前衛と接触した。
無論空軍は、飛行ドローンの対処に大わらわ。三十機以上のファイターが出撃して、飛行ドローンと交戦。かなりの速度で殲滅しているが、それでも間に合わないほどのとんでもない数だ。
前線が、入り乱れていく。
戦車隊もヘクトルによる猛攻を受けているのが、通信で分かった。
「此方タンク4! 被害甚大、一旦後退する!」
「応急措置班、対処を急げ!」
「後方に敵! 巨大生物が中心です! 数は数百!」
「ネグリング部隊、弾幕を浴びせろ! ウィングダイバー隊が急行して、押さえ込め!」
乱戦が加速していく。
既に前衛は、ヘクトルの大軍と総力戦の真っ最中である。其処へ幾つかのグループに別れた敵が、側面後方から波状攻撃を行って来ている。
その都度迎撃はしているが。
何しろ、敵の方が総兵力は大きいのだ。
敵の群れのなかを突っ切り、目についたヘクトルに、ブースターを吹かせて躍りかかる。至近からガリア砲をぶち込んで、腹に大穴を開けてやる。穴を抜けて、更に加速。後ろで爆発するのを完全に放置して、シールドベアラーの至近に。
ガリア砲で、消し飛ばす。
呼吸を整える。
空は無数の飛行ドローンで真っ黒だ。
当然、此方にも攻撃が飛んでくる。
前は巨大生物の大軍勢とヘクトルの群れで、まるで壁のよう。この兵力では、少し足りなかったかも知れない。
「此方レンジャー14、包囲されている!」
「此方ストーム、救援に向かう」
「頼む!」
猪突したレンジャー部隊の一つが、敵に囲まれて、袋だたきにされているのが見えた。
弟がライサンダーを連射しながら突貫。私はハンマーを振るって、それに続いた。ジョンソンが、通信を入れてくる。
「離れろ。 支援砲撃を入れる」
「ん」
スラスターで横っ飛び。
前にいた巨大生物の群れに、スティングレイの弾幕が直撃。連鎖する爆発が、敵を容赦なく吹き飛ばす。しかし、それに耐え抜いた赤蟻が、雄叫びを上げて突貫してくる。其処へ私が再度飛びかかり、ハンマーで殴り潰した。
ぐしゃぐしゃに潰れた赤蟻が、飛散する。
先行していた弟が、アサルトを乱射しながら、救助した部隊に後退を促している。舌打ち。
戦いが始まってからまだ少ししか経っていないのに。
これは完全に、敵の術中に落ちていると見て良い。数を生かしての、大規模殲滅戦。敵がもくろんでいたのは、それ以上でも以下でもない。
数に物を言わせて叩き潰すのは、立派な戦略だ。
敵は兵力を逐次投入すると見せて、乱戦状態を継続。その間に主力を呼び集めて、総力戦に無理矢理持ち込んだのだ。
やはり、単純な駆け引きの面では、敵が一枚上手か。
上空で、ファイターが落とされるのが見えた。
この大乱戦だ。
無理もない。一対百の戦いでも互角以上に戦えるという事をコンセプトにしているファイターでも、何しろ敵がこの数だ。
「空爆は!」
「出来る訳が無い! 空を見ろ!」
兵士達が絶叫しているのが分かった。
更に、敵が出現。
もう包囲も何も必要ない。ヘクトルの大部隊は、まるで狩りをするかのように、真正面から悠然と、戦略的意図を隠す気も無く進んできていた。
圧倒的大軍で、正面から小細工無しに叩き潰す。それが一番危険が少ない。奇策をこねくり回すのでは無く、数にものをいわせた正統派戦略が、一番勝率が高い。
戦略の基本はそれだ。
敵は戦略を理解している。
味方が、崩れつつある。
戦車部隊も、近距離でのゼロ距離砲撃戦、移動しながらの長距離砲撃を応酬していく中で、次々と撃破されていた。
ネグリングの部隊にまで、砲撃が及びはじめている。
「ストームリーダー、一旦距離を取るべきでは」
「いや、シールドベアラーを潰さないと、一方的な戦いになる。 涼川」
「へいへい」
爆裂。シールドベアラーが一機、吹っ飛ぶのが見えた。
今回の戦いでは、最初から乱戦になるのがわかりきっていた。だから新人達は中距離からの支援に限定。
私と弟、エミリーと涼川が、シールドベアラーを潰して廻ることに決めていた。
涼川も先ほどから、既に六機のシールドベアラーを潰している。私が十一機、弟が八機。エミリーが十六機。
これは機動力の問題だ。
「涼川、シールドベアラーは無視して、敵を引きつけて貰えるか。 私も同じ作業に入る」
「いいけど、どうすんだよ。 前線喰い破られるぞ」
「エミリー。 シールドベアラーの各個撃破にだけ集中してくれるか」
「良いけど、効率が却って悪くならない?」
弟が通信を入れて、図を見せてくる。
なるほど、そう言うことか。
「ならば私も、敵を引きつける。 ジョンソン! 味方の誘導を頼めるか!」
「イエッサ」
味方が、一斉に動き始める。突貫したエミリーが、シールドベアラーの至近に潜り込むと、閃光を浴びせた。
レイピアと呼ばれる、ウィングダイバー用の近距離武器だ。
元々ヒットアンドアウェイを主体とするウィングダイバーの近距離武器だけあって、破壊力は絶大。一瞬でシールドベアラーをたいまつへと換える。
涼川が、味方部隊が放置していったジープに乗ると、スタンピートをぶっ放しはじめた。炸裂するグレネードの雨。
敵が、これ以上好き勝手をさせるかと、涼川に集まりはじめる。
其処へ、ジョンソンが、味方へ指示。
火力を集中させ、追撃を仕掛けようとした黒蟻数十匹を、ロケットランチャーとエメロードの弾幕で、一息に粉砕した。
その間も、弟は細かい指示を出し。
そして、ついにお膳立てが整った。
「制圧攻撃機アルテミス、これより戦場に突入する!」
「馬鹿な、シールドベアラーがいるし、ドローンの餌食に……」
日高司令が口をつぐむ。
気付いたのだろう。
シールドベアラーが、殆ど護衛の役を果たせていないことに。
敵が集中しているのは、涼川がいる方面。一方シールドベアラーは、ぽつんと孤独に突っ立っている機体が多い。
ヘクトルも、守れていない。
意図的に造り出した火力の粗と密で、敵を分断するのに成功したのだ。
更に、シールドベアラーは足が遅い。火力の粗にともなって移動するヘクトルに、ついていけなくなったのである。
更に上空での戦闘でも、ファイターを意図的に偏らせることで、制圧空域に、路を作ったのだ。
その道を通って乱入したアルテミスが。
地上に、クラスター弾の雨霰をばらまいていた。
爆裂。
ヘクトル十機以上が、瞬時に木っ端みじんになる。
巨大生物も、空に舞いあげられ、粉々に吹き飛んでいった。
瞬時に敵の一部が瓦解。
喚声を挙げながら、味方が反撃に出る。勿論、孤立したシールドベアラーにも躍りかかり、よってたかって爆破していく。
形勢が逆転した。
上空のドローンにも、地上部隊から攻撃を開始。エメロードは対空攻撃も可能なのだ。無数の小型ミサイルが飛行ドローンに襲いかかり、次々爆破していく。傾いた形勢は、簡単には戻せない。
その、はずだった。
攻勢に出たレンジャーチームが、横殴りの射撃を浴びて、吹っ飛ぶ。
長距離からの砲撃だ。
劣勢になったフォーリナーの部隊が、体勢を立て直し、合流しはじめる先には。無傷の、まるで鉄の壁のような、ヘクトルの壁が立ちふさがっていた。
「敵の新手です!」
「調子に乗りすぎたな」
弟が、ぼそりと、悔しさを含ませて言う。
まだまだ敵の戦力は、それだけ残っているという事だ。
しかもシールドベアラーも多数いる。飛行ドローンも、劣勢の味方を救うべく、大挙して戦場に乱入してきていた。
アルテミスの一部が、退路を塞がれて。
地上に強制着陸する。必死に地面を走って逃れるが、擱座する機体も多かった。
ジョンソンが味方の再編成を進める中、陣形を立て直す。
此方に向かってくる敵の戦力は、おそらく本隊。
隙が無い陣形で、中距離射撃の間合いに此方を引きずり込み、圧倒的優位を保ったまま砲撃を仕掛け続けている。
戦車隊が割り込んで、わずかに時間を作る。
負傷者を後送しながら、長距離攻撃で敵を圧迫。シールドベアラーの防御範囲から逃れた敵を、優先的に打ち抜きながら、距離を詰めていく。
前線に、プロテウスが躍り出てきた。
「宇宙人共! 鉄の巨神の力、見せてやる!」
無茶は承知の上なのだろう。
プロテウスなら、多少の攻撃を受けるくらい、どうにでもなる。味方と連携して火力の網を作りながら、再編成の時間を稼ぐ。
敵は此方の損害を見て取っているのだろう。
気にさえせず、ゆうゆうと陣を勧めてくる。敵の中には、多数の巨大生物も、混じっているのが見て取れた。
横殴りの射撃を浴びたヘクトルが、頭を吹き飛ばされる。
秀爺らのイプシロンが、間合いに入り込んだ敵を撃ち始めたのだ。
わずかに、敵の陣形が崩れる。
其処へ、突入を開始。
先陣を切ったのは、膨大な粒子砲の直撃を浴びつつも、不動の体勢を保っているプロテウスだ。
日高司令は、やはりこういう作戦の方が、得意なのかも知れない。
入り乱れての乱戦が続く。
敵本隊と本格的に戦い始めてからも、なおもその凄まじい殺し合いは、終わる気配も見えなかった。
弟がライサンダーでゼロ距離射撃。シールドベアラーを吹き飛ばす。
巨大生物がよってたかって酸を浴びせてこようとするが、飛び込んできたバゼラートが、ミサイルを叩き込んで蹴散らす。
谷山だ。
先ほどからひっきりなしに砲撃支援をしてくれているが。
それでも、敵が多すぎて、どうにもならない状況だ。
「此方谷山、補給のため下がります」
「了解!」
「此方三川! 味方が苦戦しています!」
新人達はジョンソンと一緒に、グレイプRZを中心に戦っているが、とっくのむかしに乱戦に巻き込まれている。
今のところ敵に対処は出来ているが。
長距離砲はもう喰らっているようで、負傷してはキャリバンからはいだし、また負傷してキャリバンに戻る繰り返しの様子だ。
此方だって、限界が近い。
ハンマーを振るって、敵をどれだけ吹き飛ばしただろう。
大地を埋め尽くす敵は。
いなくなる気配もない。
上空の飛行ドローンに向けて、ずっとミラージュを叩き込み続けていた三川が通信してくるくらいだ。
かなり、後方はまずいのかも知れない。
「近距離装備に切り替えろ。 前線は此方でどうにかする!」
「此方ホエール!」
今度は何だ。
ゼロ距離射撃で、また一機シールドベアラーを叩き潰す。
前衛は一進一退。
体勢を立て直した敵味方は、完全に互角の攻防を続けているが。スカウトからは、ひっきりなしに敵増援の報告が上がっている。主に関東からなだれ込んできている巨大生物が、増援の主だ。
途中高空戦力でかなりの数を削っているが、それでも戦場に乱入してくる。
奴らは、自動車以上の速度で、走り回るのである。
「支援を続けてきたが、そろそろ装甲がもたない!」
「応急処置でしのげないか」
「厳しいかも知れない! おそらく、後一回。 敵に強襲を仕掛けられれば、それで良い方だろう」
なるほど。
敵の狙いは、おそらくそれだ。
無尽蔵とも言える飛行ドローンを投入してきているのは、空軍の消耗を狙っての事。事実半数近くのアルテミスとミッドナイトが、既に航行不能に陥っている。
ファイターもありったけの数が対応しているが、それでも手がとても足りないのだ。
弟が、通信を入れる。
「デスピナ、応答して欲しい」
「此方、デスピナ艦長だ」
「現在の戦況図は見ているか」
「もちろんだ。 敵の密度が高い地点に、巡航ミサイルを撃ち込み続けている」
主に今デスピナが狙っているのは、敵の前線後方。
そうすることで、少しでも敵の増援を防いでいるのだ。現状、凸陣の味方と、凹陣の敵が、均衡を崩せないでいる。
敵は空軍の消耗を狙ってじり貧に陥らせるつもりだし。
味方は、決定的な攻撃に、出られずにいる状況だ。
涼川がスタンピートで、一度に数十の巨大生物を爆破したが、噛みついてきた赤蟻に、ジープを横転させられる。至近から赤蟻にアサルトの弾を浴びせて、舌打ちしているのが見えた。
そろそろ、味方の戦力は消耗がきつい。
戦車隊の損耗は、一割を超えている。レンジャー部隊もだ。フェンサー部隊は盾の消耗が厳しく、そろそろ危険。
空軍が満足に動けないから。
陸軍も、消耗が酷くなってきているのだ。
敵の戦略に、味方が押されているのである。
「対空ミサイルはどれだけ残っている」
「地上支援はいいのか」
「構わない。 対空ミサイルを、艦隊全てで、ありったけ敵に叩き込んで欲しい」
「知らないぞ。 大丈夫なんだな」
デスピナ艦長が、通信を切る。
狙いは読めたが、少しばかり戦況が厳しくなる。弟が、声を張り上げた。
「陣形を再編する! 各自バイザーに転送した地点に向け動け!」
「イエッサ!」
味方が下がりはじめる。
ギガンテス戦車が、ヘクトルに踏みにじられて、爆散するのが見えた。ネグリングは既にミサイルを撃ち尽くしそうな勢いで、支援をし続けているが。シールドベアラーが半減している現状でも、かなり戦況は厳しい。
「姉貴、シールドベアラーを全滅させる。 エミリーも、頼めるか」
「ワオ、相変わらず無茶を言うわね」
「……医者にまた怒られるな」
私は舌打ちすると。
アーマーの状態がよろしくないことを理解した上で、敵に突入する。
矢島がシールドで敵を押し返し、更にガリア砲で吹っ飛ばす。
乱戦が続く中、矢島は確実に、敵の突入を防いでくれていた。近づく相手は、片っ端からナナコが射すくめてくれる。
乱戦の中、グレイプの速射砲も、確実に敵を撃ち続けてくれていた。
三川仙は、ようやく任せて貰ったミラージュから、忸怩たる思いで武器を切り替える。味方ウィングダイバー隊は、危険を承知で巨大生物たちの中に飛び込み、果敢に戦っているのに。
自分は中距離、長距離の武器を中心で。
安全な場所から、敵を撃っているように思えてならなかったのだ。
グレイプに併走している原田が、警告の声を飛ばしてくる。
「三時方向にヘクトル! 味方を狙っている!」
「三川!」
ジョンソン中佐の声。
切り替えた武器は、MONSTER。ウィングダイバーに支給されている、強力な狙撃武器だ。
狙いを定める。
ヘクトルはガトリングを回転させて、今巨大生物の群れを射すくめているレンジャー隊を撃とうとしていた。
焦るな。
怖がるな。
恐怖を飲み込む。
そして、撃つ。
MONSTERの大火力が解放されて、一気にヘクトルを打ち抜いた。数秒の抵抗の後、熱線に装甲を焼かれたヘクトルが、爆裂四散。多分、今までの戦闘で、相当に消耗が溜まっていたのだろう。
呼吸を整えながら、もらったお薬を。錠剤を飲む。水がなくても飲めるお薬だ。
PTSDは回復したけれど。戦場の恐怖で、またぶり返す恐れがある。
だから中距離から長距離で、可能な限り戦うように。
そう、お医者様に言われて、お薬だってもらった。
強化クローンが何名もいるストームで、あまり多くない普通の人間。他にも普通の人間はいるけれど。
勇気があったり、強かったり。
三川は、どうしてこんな強い部隊にいるのか、分からない。
ジョンソンが、声を張り上げる。
「少し下がる! 味方の支援を続けろ!」
「イエッサ!」
「三川、大物を確実に狙っていけ!」
「い、イエッサ!」
充電されたMONSTERを構える。一射ごとに大量のエネルギーを消耗するこの武器は、大物を射すくめるには最高だけれど。外してしまうと、悲惨極まりない。スコープを覗いて、ヘクトルを探す。赤蟻を見つける。味方を噛んで、振り回している。躊躇無く、撃つ。
赤蟻が吹っ飛んで、味方が中空に放り出された。
しまったと思ったけれど。
もう、時間は戻らない。あれは、他の味方に任せるべきだった。
バックするグレイプに飛び乗る。呼吸を整えながら、呟く。落ち着け。此処には、彼奴は、いない。
彼奴は、あの蜘蛛の化け物は。
こういう移動する戦場には、ついてこられないからだ。
「味方が押されていますね」
「いや、そろそろ来るころだ」
ナナコに、ジョンソンが淡々と応える。
次の瞬間だった。
飛来した膨大なミサイルが、中空で一斉に炸裂。爆散して、多数の飛行ドローンを、瞬時に花火に変えたのである。
更に第二波。
飛行ドローンが、見る間に消し飛んでいく。
地上では、味方が押されているのが見える。
戦車隊の消耗も激しいし、プロテウスも装甲が見る間に抉り取られている。しかし、ストームリーダー達最精鋭が踏みとどまって、敵の浸透を防いでいる。
しかし、だ。
三川にも見える。
敵が増えている。
増援が、今まで削られていた巡航ミサイルの雨を気にせず集まりはじめているのである。前線の負荷が、見る間に増していくのが、目に見えて分かりはじめた。
いつの間にか凸字陣と凹字陣の対決が。
横一線の陣同士がぶつかっている。
シールドベアラーは既に全滅したようだけれど。このまま押されれば、中央突破される。
多数のヘクトルが、一斉に長距離砲を放った。
あっと思った時には、至近に着弾。
必死に伏せたが、原田は直撃を貰ったはずだ。見ると、かなり遠くに転がっていた。必死に立ち上がろうとする原田。だが、敵は更に、長距離砲撃を、続ける体勢に入っている。
再び、空に無数の花火が咲く。
飛行ドローンが、気付いたときには。
綺麗に、消え去っていた。
「此方空軍! 地上部隊、よく持ちこたえてくれた! しかも敵が密集している上、シールドベアラーがいない! これより、敵陣に、破壊と殺戮の雨をお見舞いしてやる!」
「あ……」
やっと、三川にも分かった。
これが、狙いだったのか。
残っていた空軍の飛行機が、ありったけ飛んでくる。わずかに残った飛行ドローンを、ファイターが蹴散らす。そればかりか、ファイターまで対地ミサイルを放って、敵陣に猛攻を加えはじめる。
ロケット砲。大威力砲。機関砲。
飛来した大型攻撃機ホエールが、空の要塞の名に恥じない多彩な武器で、敵陣を打ち据える。
更にミッドナイトとアルテミスが、膨大な爆弾とクラスター弾を投下。
爆発が連鎖。
吹っ飛ぶ敵の破片。巨大生物もヘクトルも、粉みじんになった。
一気に、敵勢力を示す赤が、レーダーから消えていく。
まだ残っている巨大生物が、敗走を開始した。ヘクトルは敗走しようとせず、その場に踏みとどまる。
巨大生物を守ろうとしているんだ。
それが、何となく分かった。
「よし、今だ! 敵の残党を叩き潰せ! 決定的な打撃を、敵に与えろ!」
「スカウトより通信! 集結しつつあった巨大生物が、静岡、エリア2戦場から離れていきます! 形勢不利とみた模様!」
「このまま、敵を叩き潰せ! 敗走する敵は構わなくて良い! この戦場にいる敵主力は、生かして返すな!」
日高司令が、残ったありったけのミサイルを、プロテウスから放つ。
兵士達は勝利を確信し、EDFの名を叫びながら、敵に突進していった。
そんな中。
私がしたのは、原田軍曹の所に降りたって、肩を貸して、グレイプの所へ行くことだった。
「俺は良いから、一匹でも多く、敵を打ち抜いてくれよ」
「もう、私は、充分殺しましたから」
既に、形勢は完全に決まっている。
ありったけの爆弾を降らされた敵は、文字通り壊滅状態。ストームリーダーをはじめとする前線の勇者達が、逃げ腰になった巨大生物と、必死に立ちふさがろうとするヘクトルを、根こそぎ叩き潰して廻っている。
追撃戦も始まっていた。
ネグリングが前進し、バラバラに逃げる敵にミサイルの雨を降らせはじめている。この様子だと、逃げ腰になった巨大生物も、半分も残らないだろう。
グレイプに原田を収容。
自分は外に出ると、熱狂的な追撃戦をする味方を、茫洋と見つめた。
勝ったのだ。
多分、開戦以来、此処まで画期的な大規模勝利は初めてだろう。
通信が入ってくる。
他のエリアでも、EDFは快勝。エリア3に到っては、援護のために出てきた四足歩行要塞を撃破までしたという。
三川は周囲を見た。
味方の死体。
敵の残骸。
既に荒野と化している静岡の東を、埋め尽くす命無き塊の群れ。
どうして、皆嬉しいのだろう。
味方だって、こんなに死んだ。
仕返しをしたかったからだろうか。確かに、敵を殺せば、仇は討てるかも知れないけれど。
とてもではないが、三川は嬉しいとは、思えなかった。