地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
この機に、東京基地近郊の巨大生物の巨大巣穴への猛攻を開始します。
二度にわたって失敗した作戦を、今度こそ成功させるのです。
のど元に突きつけられた刃を、取り除くときが来ました。
私が自軍の陣地に戻ると、既に祝杯が挙げられていた。
特務少佐と、声を掛けてきたのは原田だ。ほろ苦い表情である。
「勝利、したんですよね」
「ああ」
傷だらけの原田は、酒を飲む気にはなれないようだった。
私には、何となく、その理由が分かる。
確かに決定的な勝利だが。
完勝とは言いがたかったからである。
四時間にわたる追撃戦で、ブルートフォース作戦は終了。エリア2の戦闘に参加したヘクトルと飛行ドローンは、その全てを撃破。推定される参加した巨大生物およそ一万一千の内、八千以上の撃破にも成功した。
エリア2の戦闘に参加した人員の内、戦死者とMIAは合計で四百七十三名。これは決して少ないとは言えない数だ。この戦死者の中には、エリア2の戦闘には直接参加しなかったスカウトも多く含まれている。
また、ビークル類の破損も多い。
特に戦闘に参加した攻撃機の半数近くが撃墜ないし行動不能に陥っていて、空軍の体勢を立て直すには、時間が掛かりそうだった。
静岡の東部はほぼ奪回に成功。
ただし、体勢を立て直した敵が四足周辺に展開。
大きな被害を出していたEDFには、堅固な守りを固めたこれを追撃する余裕は無く。結局、橋頭堡としての四足を打ち倒すことは出来なかった。
ブルートフォース作戦は成功したが。
完勝とはいかず。
敵の戦力を多く削り取ることのみに留まった。
5エリアの戦闘で、EDFの合計戦死者は千九百七十名に達し、ビークル類の破損も相当数に昇る。
完勝とは言えないし。
今後の戦況が楽になるとも断言は出来なかったけれど。
ただ、これでマザーシップの周囲を固めている戦力の大半を敵が喪失したのは、事実だった。
既に戦場となった地域には、回収部隊が展開。
巨大生物、ヘクトル、飛行ドローンの残骸を集め始めている。同時にスカウトも散らばって、味方の亡骸を回収しはじめていた。
死体袋に入れられた亡骸が、運ばれて行く。
殆どは悲惨な有様で、肉塊と化しているものは珍しくもない。
内臓が飛び出しているとか。
顔が潰れている、程度の死体は。むしろ、状態が良い方だ。アーマーが切れてしまうと、もう敵の猛攻に、人体では耐え抜けないのだ。
かくいう私も、フェンサースーツは既に限界が近い。
祝杯の挙げられるパーティ会場を離れる。
医師に、こっぴどくしかられるのを、覚悟しなければならなかった。
「姉貴、状態は」
「良くないな」
今回は総力戦だった事もあって、久々に全力を出した。
その結果、もう全身が酷く痛んでいる。多分体中で内出血している筈だ。あれだけの機動戦を行い、多数の巨大生物を殺して。シールドベアラーもヘクトルも破壊したからである。
「後は俺がやっておく。 姉貴は、ゆっくり休んでくれ」
「ああ、そうさせてもらう。 新人共は」
「原田は祝賀パーティに軽く出た後、病院に行かせる。 後はジョンソンもだな。 他のメンバーは、特に怪我もしてない。 涼川は元気すぎるほどだ」
全く、涼川については、心配さえしなくてよいほどだ。
一体どうすれば、あれだけ頑丈になるのか、理解できない。
パーティ会場を抜けると、野戦病院が拡大されている。野戦病院といっても、テントやプレハブだけではない。フォーリナーからの鹵獲技術を使って、相当人数を一度に治療できる設備を、短時間で作れるのだ。
医師も看護師も、かなりの数が働いている。
其処は、まだ戦闘が継続しているような有様。いや、むしろ、此処からが本番かも知れない。
てんやわんやだ。
フェンサースーツを解除すると、医師の所に行く。
此処では無理と判断された状態の患者が、次々とヒドラで、東京支部などの設備が整った軍病院に運ばれて行っている。
キャリバンはフル稼働中。
負傷者がまだ、かなり取り残されているのだ。ブルートフォース作戦は、極東に限っても、主戦場であるエリア2、静岡東だけで行われたのでは無い。各地で敵を観測し、状態を味方に伝え続けたスカウトや、主力以外の敵と戦っていた部隊も少なくはなかったのだ。それらの部隊にも、戦死者、負傷者は多いのである。
そういえば、日高少尉はパーティに参加せず、しばらくはキャリバンで負傷者の救助に当たるとか、バイザーの通信で言ってきていた。
わいわいと騒ぐ声が、パーティ会場から聞こえるが。
私にも弟にも、関係がないこと。
弟は今頃、後処理で忙しい。
私はこれから、医者にしかられる時間が待っている。
医者には、案の定。散々絞られた。白衣に着替えて検査を受けると、バイタルが凄まじい低下を示していた。
肌は内出血で青く鬱血しているし。
気がついてみれば、呼吸も苦しいような気がする。
「貴方一人で、一体何人分戦ったんですか。 どうして他の人間に、負担を分担できないのですか!」
医師は角を生やしそうな勢いだった。
酸素吸入器を当てられて、点滴までされる。
そこまで酷い状態だったのかと、自分でもむしろ驚いてしまった。
しばらく医師は何名かで相談していたが、培養槽へは放り込まないことで、意見を一致させたらしい。
ただし、絶対安静と言われた。
どのみち数日は、ストームは動かない。
しばらくは今回戦闘に参加しなかったチームが、敵の追撃戦を行う。特に関東全域に散らばっていた巨大生物は、今回で半減した。東京の巣穴にいる巨大生物どもも、いい加減相当に数を減らしているはずだ。如何に女王が中にいるといっても、そこまで簡単に巨大生物は増えないのである。
追撃戦が一段落してから、ストームが手強い抵抗を続けている敵をたたくことになる。
眠るように言われて、従う。
軍病院でも、兵士達には楽天的なものが多い。
パーティに参加できなくて残念だとか、敵を何匹殺したとか、楽しそうに話している声は。
寝込んでいる私の所にも、届いていた。
楽しそうだなと思うけれど。
羨ましいとは思わない。
むしろ、これからが心配でならない。今回の件で、確かに地球上に展開しているフォーリナーは、相当な打撃を受けた。EDFも打撃を受けたが、それ以上の決定的な損害を受けたのだ。
四足が展開した長距離掃射砲や。
満を持して姿を見せた精鋭。
それに何より、レタリウスやシールドベアラー。
これらのことを考えると。
フォーリナーは、まだ本気を出していないとしか、思えないのだ。
睡眠薬が効いて、しばらくすると眠っていた。バイザーを付けて、状況を確認。関東全域で戦闘が行われて、EDFは一気に優位に立っている。敵が守りに入ったのは明白である。
これは、攻め時だと、EDFが判断するのは、間違いない所だろう。
通信が入る。
弟からだ。
「姉貴、目が覚めたか」
「ああ。 次の作戦か」
「そうだ。 いよいよ、東京巣穴の攻略作戦に入る事に決まった。 ストライクフォースライトニングが、ロシアの敵巣穴を。 オメガチームを中心としたチームが、中東の巣穴を攻略しに掛かる事も決まっている」
なるほど、根本的な対策か。ストライクフォースライトニングを北米から出すくらいだ。EDFは本気とみて良いだろう。
もしもこれらの作戦が上手く行けば、敵の巣穴は半減以下。残りは中国、東南アジアの三つと、インド、オーストラリア。
マザーシップ攻略に、弾みを付けることが出来る。
ただ、かなり数を減らしているといっても、何しろ東京巣穴は最大規模。敵の数は、まだ数万に達しているはず。
作戦について、良いものはあるのだろうか。
「二度の作戦で、敵の戦力は確認できているはずだ。 何かしらの秘策はあるのか」
「女王の位置は判明している。 女王を叩いた後、残った巨大生物を分断し、各個撃破するつもりらしい」
「上手く行くのか」
「やってみるしかないな」
何とも頼りない答えだ。
医師が頭に角を生やして様子を見ていたので、適当に話を終えて、通信を切る。
栄養の点滴を足された。
医師ががみがみいう。謝りながら、回復の状態を自分でも確認。
肌に浮かんでいる内出血は治まってきているが、どうにも体がだるい。それだけ内臓に負担が掛かっているという事だ。
普通の人間だったら、何ヶ月もかかる回復が。現在のフォーリナーの鹵獲技術から得られた最新治療でも、一週間は掛かる回復が。
無理矢理に、超短時間で行われている。
これも、私の中に流れている。地下の彼奴が持ち込んだ、不可解な遺伝子の力だろう。強すぎる回復力。
その分、私の寿命は。
味けのない病院食を食べさせられる。しばらくすると、見舞いがきた。戦闘で世話になったという兵士達だ。
彼らは一様に礼を述べてきたけれど。
私には、素直に応えることが出来なかった。結局多くの被害を出したことに変わりは無いし。
それに、弟のように、無傷ともいかなかった。
毎度戦闘の度に大けがをして、人外の快復力で無理矢理直して。それで戦っているだけ。こういうとき、思う。私は弟と違って、きっと英雄では無い。だから感謝の言葉を受けると、忸怩たるものがある。
それに、ある程度の規模の戦いまでなら、味方を守りながら戦えるが。
ブルートフォース作戦規模になってくると、もう誰も守る余裕は無い。
ヘクトルを倒し、巨大生物を薙ぎ払い、シールドベアラーを打ち砕いて、荒れ狂っていただけ。
誰も、守れなんてしなかった。
昔も今も、それは同じ。
だから、ありがとうと言われると。むしろ、心が締め付けられるのだ。
翌日、バイタルの改善が見えたという事で、点滴を外された。
バイザーを付けて戦況を見る。各地で攻勢に出ているEDFは、勝利を続けている。被害も出ているが、それでも明確に有利と言える状態だ。
今のところ、ストームに出番は無い。
関東全域での駆逐作戦が軌道に乗り、少なくとも現時点で、東京からの駆逐は完遂した。
ただし東京地下には、今だ世界最大の巨大生物の巣がある事実には変わりが無い。ブルートフォース作戦をはじめとする戦いで、相当数の駆除には成功したが。フォーリナーが運んできた巨大生物もいる。
現時点で、まだ四万を超える数が、地下にいる。
その推定が、為されていた。
医師がにらむ中、退院した私も、幹部会議に参加する。
ブルートフォース作戦が終わってから四日。
戦いは、次の局面に入りつつあった。
会議で、日高が立ち上がり、拳を振り上げる。
ブルートフォース作戦で、プロテウスを中破させながらも、前線で阿修羅のごとく暴れ狂った日高は、ついに大将へ昇進という話が出ている。EDFでも三人しかいない大将に、四人目が登場することとなる。
勿論、それを良く想わない者もいるだろう。
だが、私としては、歓迎だ。
動きやすくなるからである。
「いよいよ、極東にとって、のど元に突きつけられた剣となっている、巨大生物の巣を叩く」
身じろぎしたのは、つい昨日大佐に昇進したジョンソンだ。
長年の活躍が認められ、ついに大佐昇進である。ただし、これ以上ストームでの出世は無理だろうとも言われていた。
ストライクフォースライトニングの現隊長は、弟と同じく准将待遇の特務中佐。寡黙なジョンソンが、実際には非常に強い名誉欲を持つ事を、私は知っている。
その内、自分の隊を持ちたいと言い出すかも知れない。
弟は、それも良いだろうと言っている。
ストーム、オメガ、ストライクフォースライトニングに次ぐ、四つ目の最強チーム。地球にとって、その出現は心強くはあるだろう。
事実、ジョンソンは涼川や秀爺と比べても、戦闘力に遜色がない。良いことというのは分かっているのだが。
どうにも嫌な予感がする。
「ストームチームには、前二回、危険な任務に従事して貰った。 三度目の今回も、危険な作戦の先駆けとなって貰いたい。 敵の女王の位置は判明した。 其処までの最短通路を、なんとしても押し通すのだ」
各地の巨大生物を駆逐したことで、相当数の兵力を集結することが可能になったと、日高司令は言う。
ブルートフォース作戦ほどでは無いが。
およそ四千のレンジャーとウィングダイバー、フェンサーチームを集められるという。
四千対四万。
巨大生物を各個撃破できるなら、この数の差にも、勝利は生まれるかも知れない。
だが今までの巨大生物の巣穴攻略作戦では、例外なく大きな被害を出している。しかもEDFの目算は、外れる事も多い。
五万以上の敵が出てくると、見るべきでは無いだろうか。
しかも敵には地の利がある。
各個撃破されるのは、果たして巨大生物なのだろうか。
小原博士がきた。
中佐待遇になり、今回から会議に参加している涼川と秀爺が、あまり良い視線を向けない。二人とも、小原に対する不満は日頃から口にしているのだ。二人とも徹底的な現場主義者だから、というのもあるだろう。
「敵の巣穴についての解析は進んでいる。 君達が戦闘している間も、スーパーコンピュータによっての解析を進めていたのだ。 その結果、敵の巣についての、詳細な地図も、ほぼできあがった」
立体的に表示される、巨大な巣は。
地底およそ三千五百メートルまで続いている。
その辺りは、地殻の性質によってはマントルになっている。当然凄まじい地熱で、熱くなっているだろう。
「今まで撃破した巨大生物の巣を調査確認した所、幾つか面白い事が分かった。 奴らは水と同時に、地熱も好むのだ。 ひょっとすると、繁殖に地熱を利用しているのかも知れない。 今までにも提唱された異端の説だが、この状況を鑑み得るに可能性はある」
「ほう……?」
「まだ研究資料が少ないので、何とも言えない。 だが、どちらにしても、長時間を掛けての解析を行った結果、編み出されたこの地図は信頼して良い。 ストームチームが地底に進撃するサポートを、各部隊にして貰い。 最深部にいる女王を撃破したあとは、卵を焼き払い。 以降は、敵を各個にたたく」
確かに、入念な準備の結果。
だが、本当に上手く行くのだろうか。
前二回の努力を無駄にはしたくない。それは私にもある気持ちだ。しかし。
不安要素が、多すぎる。
幾つかの地点を中間拠点にして、敵の攻撃を叩き潰しながら、地下へと進撃する。具体的なルートについても説明。前回と同じルートを使い、時に大威力の重機を用いて、縦穴さえ掘り、一気に敵の巣穴を蹂躙する。
「もう少し、兵力を動員できないだろうか」
挙手したのは、弟だ。
ストームチームのリーダーは、滅多な事では会議で発言しない。そういう説が定着していることもあり。周りはわずかにざわめいた。
「ストームリーダー、四千の味方では不足か」
「二度の攻略戦で、この巣穴が並ならぬ要塞だと言う事はわかっているはず。 できれば、ブルートフォース作戦と同規模の戦力を揃えたい」
「……ふむ」
「前二回とは、状況が違う。 敵の戦力は関東全域で守りに入っていて、巣穴の兵力そのものも削り取られている。 後方を取られることや、敵が積極的に反撃に出てくることは、ないとは言えないが、可能性は小さい」
そう言ったのは、日高司令の参謀をしている少将だ。禿頭だが、まだ若く、三十代である。
髪が元々薄いこともあって、いっそのこと威圧感を出すために、禿頭にしているそうだ。見かけでも相手を上回る事を目指す。
実際の軍人よりは、政治闘争の段階に入ってしまっている計算が見えて、気の毒に感じる。
ちなみに彼の軍人としての能力は。
できれば、別の職について欲しいと、私と弟は、時々話題にする。
典型的な、前大戦を生き残っただけの男である。此奴が参謀をするくらいなら、親城辺りが参謀をしてくれた方が、ずっとよい。
問題は親城准将に、その気が全く見られないことだ。
「今が好機というのは事実だ。 敵が再度力を蓄える前に、最大戦力である東京の地下巣穴を撃滅したい」
そう述べたのは、日高司令である。
気持ちは分かる。
実際、東京の地下に巣穴があると言う事は。EDF極東司令部が、いつ地下から襲われてもおかしくないということなのだ。
それに、関東には多数のシェルターもある。
これらシェルターは頑強に作られているが。巨大生物の巣穴が伸びてきて、本気で地下から攻撃されたら、破られるかも知れない。
そう怖れている住民は、決して少なくない。
「可能な限りの兵力を、更に集める。 ストームチーム、攻略に全力を尽くして欲しい」
妥協案で、日高司令が、会議を占めた。
私は席を立つと、ストームチームの皆と一緒に、ヒドラへと歩く。ヒドラには、いつでも出撃できるように、ビークル類が積み込まれていて。場合によっては、内部で改修もされるのだ。
今回はビークル類を持ち込めない。
勿論戦略的に活用する重機は幾つか地下へ持ち込むが、それはあくまで戦闘用のものではない。
逆に言えば。
歴戦で傷ついているビークル類に、大幅な改修を加えられる事も意味している。
イプシロンは火力を上げる改修が行われる。今まではMD4とよばれる型式だったのだが、幾つかのパーツを近代化改修してバージョンを上げ、ブラストと呼ばれる型式へ換える。
このブラストは凄まじい火力を持つ実験機体で、秀爺の実力でならフルに生かせると期待されていた。
ベガルタファイアナイトも、改装が始まっている。
これについては、二回の根本的改装を行い、バージョンを上げることが決定している。だから次は少し武装が増すだけだが。
その次は、新鋭の最新機に生まれ変わるはずだ。
このほかに、日高少尉が欲しがっていた、最新鋭のキャリバンが配備される。
もはや戦闘用救急車というだけではない。圧倒的な装甲を誇る、陸の要塞だ。鉄の亀などという呼び名もあるほどである。もっとも、亀と違って、きちんと速度も出る。多少は足回りが遅いが、相応の実力を持つ機体だ。
これも後方支援の四名が頑張ってくれているからだ。
秀爺がイプシロンを見上げて、面白そうだと言う。ほのかは黙っている。彼女は実際に使ってみるまで、感想を言う気は無いのだろう。
日高少尉は、新型キャリバンのカタログを見て、きゃっきゃっと喜んでいる。
いずれにしても、今回の地底攻略戦で、敵巣穴への攻撃は最後にしたいものだ。
弟が皆を集めて、咳払いした。
「次はおそらく、今までで一番厳しい地底攻略戦になる。 我々は群れなす巨大生物を薙ぎ払いながら、地底の最深部で手ぐすね引いている女王を倒さなければならない」
女王のデータが、全員に送信される。
女王蟻。
全長はおよそ六十メートル。背中に羽があり、短距離ながら飛ぶことが出来る数少ない巨大生物だ。
四足に比べれば小さいし、戦闘力も抑えめだが。
それでも巨大生物としては、蜘蛛王と並ぶ最強の存在である。
データが少ないので、シミュレーションでは戦闘が出来ない。私や弟は交戦経験があるが、地上に出てきた女王を、EDFが倒した例は数件しか無いのだ。このため、シミュレーションのデータを作るには、情報が足りないのである。
勿論今回の大戦が始まってから、地底での戦闘が何度か起きているが。
それでも、バイザーなどから取得できるデータでは、戦闘用のシミュレーションを作るには、足りていない。
「此奴が少なくとも、二匹いる。 現在東京の地下にある巨大生物の巣の敵勢力は半減していて、討つ好機ではあるが。 逆に言うと、巣穴にいる巨大生物は、まだ半分が残っている。 敵の抵抗は、相当に凄まじいものになることが予想される」
ストームチームは、前二回の戦いで通った道筋を使って、敵巣穴の最深部へと潜る。
この際、敵の激しい抵抗があると思われる箇所に関しては、幾つかの重機を用いて、ショートカットルートを作る。
コンクリで壁を固めながら、敵の襲撃を一方向に限定。
一気に深部へと、直線的に潜ることになる。
口で言うと簡単だが。
重機の作業中、それを護衛しなければならないし。
敵は地の利を生かして、あらゆる罠を使ってくるはずだ。油断など、微塵も出来るわけがない。
幾つかの注意事項を話した後、解散とする。
作戦決行は明日。
前二回の地底攻略戦も悲惨極まりなかったが。
今回は、おそらく数日は地下から出てこられない上に、前二回とは比較にならないほどの、敵の抵抗がある筈だ。
弟と一緒に、香坂夫妻の寮に行く。
今日は四人だけで、ほのかが作ってくれたすき焼きを食べることにした。これも、東北支部の香坂夫妻の弟子が、送ってくれた材料で作ったものだ。
贅沢かもしれない。
しかし、これから赴くのは地獄だ。
少しだけでも。
贅沢は、させて欲しかった。