地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
敵巣穴の周囲に展開した戦力は、壮観でさえあった。
ブルートフォース作戦の戦力が、ほぼ再現されたほどの数。弟が言ったことで、日高司令がさらに可能な限り集めてくれたのである。
此処で巣穴を叩くことに成功すれば。
極東支部が受けている圧力は、一気に減る。
静岡に上陸している四足も、ブルートフォース作戦以降は守勢に回っていて、ヘクトルの部隊も動きを見せていない。
巣穴を叩くならば。
今をおいて、他にないのだ。
今回はいわゆるシールドマシンを護衛しながら、地下に潜る。
古い時代のシールドマシンは、一日辺り数メートル進めば良い方という鈍重な代物だったが。
フォーリナーの鹵獲技術で強化されている、現在のシールドマシンは、地下方向に限定すればそれより遙かに早く進むことも出来るし、柔軟性も高い。
入り口付近の斥候に攻撃を浴びせて、追い払い。
最初の広間。次の広間へと進む。
その時点では、ほぼ敵影は無し。
前回の戦いでうち込んだ速乾コンクリートも、そのままにされていた。問題は、此処からである。
曲がりくねった通路を抜けると。
其処に拡がっているのは、前回地獄を見せられた。悪夢の縦穴だ。
勿論、敵は手ぐすね引いて待っている。大群がいる証拠に、レーダーは真っ赤に染まっていた。
此処を力尽くで占拠していたら、おそらく味方の被害はどれだけあっても足りないほどだろう。
そこで、此処から通路を少し戻り。
シールドマシンで、直線的に穴を掘るのだ。
スカウトチームが作業を開始。
まずは速乾性コンクリートを除去。これについては、特殊な薬剤を使った後、砕く。激しい破砕音が響く中、ストームチームは、敵が仕掛けてきたときに備えて、通路の前後を塞ぐ。
拠点となる広間については、既に味方がかなりの数入って、守備を開始している。
敵がコンクリを喰い破って側面攻撃をしてきたとしても。
生半可な数では、返り討ちだ。
「今の時点では、敵影無し」
「我らに恐れをなしたか!」
調子が良いことをほざいているのは、日高司令の参謀だ。
ため息も出ない。
奧まで引きずり込んで、地の利を生かして一斉反撃。
敵がもくろんでいる手は明らかだけれども。
分からない奴には分からない。
それに、巨大生物は高度な戦略に基づいて、緻密な戦術を使う。シールドマシンを、集中攻撃してくる可能性は、決して低くない。
コンクリをスカウトが剥がしおえた。
シールドマシンを投入。縦穴を掘り始める。このまま掘り進めていくと、敵の通路にはぶつからず、一気に下の空間。
以前エミリーが中継装置を敷設した、あの奈落の底へと直行できる。
周囲は相変わらず、真っ赤になるほど敵が蠢いている。
じっと此方の戦術を観察して、どう反撃するかをうかがっていると判断して良いだろう。
シールド装置が回転をはじめ、膨大な土が出始める。
土については、ベルトコンベアで最初は外へと出す。最終的には、出した土は全てこの巣穴を埋め立てるのに使うのだけれど。
それはいずれにしても、フォーリナーを地球からたたき出してから、になるだろう。
円筒状のシールドマシンがまっすぐ掘り進めていく縦穴。
スカウトチームが先攻し、途中で降りられるように、足場を幾つも設置していく。縦穴の壁には、即座にコンクリを敷設。
側面からの、敵の奇襲を防ぐのだ。
今の時点では、上手く行っているが。どこまで上手く行くか。
シールドマシンが、止まる。
此処で一旦方向転換。今度は縦方向から、横方向へと掘り進めるのだ。そうすることで、以前エミリーが中継装置を敷設した空間へと、横からつなげる事が出来る。
縦方向からつなげると、味方はどうしても一方通行になるし、待ち構えている敵の真ん中に飛び出すことになる。
敵は立体的に動けるのに対し、此方は著しく動きが制限される。
故に、横方向から広間につなげる事で、不利を緩和するのだ。
ベルトコンベアから運び出される土を横目に、弟が縦穴を降りはじめる。私も、それに続く。
途中にある足場は、階段状になっていて、コンクリも打設されている。最深部では円筒形のシールドマシンが、じゃんじゃん土をはき出して。
それを、ベルトコンベアが自動的に、上へと送り出していた。
フォーリナーは嫌いだが。鹵獲技術は凄い。
平和的な交流がもてれば、どれだけ地球に有用だったのだろう。
いや、それは駄目か。
きっと地球内での利権争いが激化して、更に悲惨な状態が到来したかも知れない。どちらにしても。
待っているのは、地獄だけだったか。
横向きに進むシールドマシンを管理しているスカウトが、敬礼してきた。
周囲では、コンクリ工事で大忙しだ。シールドマシンは直径四メートルほど、長さは八メートルほど。
寸胴の蛇みたいな形状だが。
かなり柔軟に動いて、掘り進む速度も中々だ。
「間もなく、広間に抜けます」
「敵の攻撃が予想される。 気をつけろ」
「イエッサ!」
涼川とジョンソンが最初に。黒沢、原田、三川と降りてくる。
今回も秀爺は、後方で指揮担当。
ナナコが担いで降りてきたのは、フュージョンブラスターだ。全部で七本ある。女王蟻と蜘蛛王対策に、多めに持ってきたのである。ジョンソンが一本を。弟が一本を受け取る。弟は、AF100も受け取っていた。
ナナコが注文していたAF100が、ついに届いたのである。
最新最強のアサルト。
この火力があれば、生半可な数など、蹴散らすのは難しくない。
シールドマシンの速度が、鈍化する。
巨大生物の巣は、爆発にも耐える強靱な構造をしている。何かしらの分泌物で、壁を固めているのだ。
しばらくの抵抗の後。
壁が崩れた。
シールドマシンが、全速力でバックする。
飛び出した私と弟が見たのは、どっとなだれ込んでくる巨大生物の群れだ。
「スカウトは下がれ! 此処で敵を掃討後、再び作業に当たって貰う!」
「イエッサ!」
「此方ほのか。 後方にも敵が襲来よ。 残しておいた通路から、大挙して現れたわ」
やはり、予想通り来たか。
私がシールドを構え、蜘蛛糸を防ぐ。凶蟲と黒蟻が、ざっと数百。複数ある通路から、一気になだれ込んできている。
涼川がDNG9を放り込み、爆発でまとめて数十匹を殺傷。
其処へ、皆でアサルトの猛射を浴びせる。私は盾を構えたまま、しばらく防備に徹する。
矢島がきた。
矢島も盾を構えて、これで二枚。簡単には抜かせない。
弟がDNG9のピンを抜きながら、ほのかへと言う。投げたDNG9は、容赦なく敵の密集地点で爆発。涼川ほど巧みでは無いが、弟も爆発物の扱いに関してはワールドレコード級なのだ。
「対処は出来そうか」
「今回は味方も数がいるから、どうにかなりそうよ」
「……よし、其方は任せる」
弟が叫び、AF100から、光弾を敵にばらまいた。
流石最新技術のアサルトライフル。放たれる光弾は凄まじい威力で、見る間に敵を薙ぎ払っていく。
炸裂した光弾が、巨大生物のアーマーを溶かしていくのが、分かるほどだ。
粉々に砕け、吹っ飛ぶ黒蟻。
明らかに敵が怯む。
通路に入ってきていた敵を追いだし、前進。わっと周囲から襲いかかってくる巨大生物だが、完璧にタイミングを見計らって、涼川がDNG9を放り込む。
かえって爆発に自ら飛び込むことになった巨大生物は、多くが一瞬で消し飛んだ。
一進一退の攻防を続けながら、後方の状態を時々確認する。シールドには激しい攻撃が飛んでくるが、味方の火力の方が大きい。
間もなく、前方は静かになった。
敵が引いたのだ。
だが、そのまま引くとは思えない。案の定、後方での戦闘は断続的に続いている。スカウトも、通路を固定するべく、急いでコンクリの打設を進めていた。
「皆、消耗は」
「日高、被弾」
日高少尉が片手をあげた。
アーマーがかなり削られている。弟はそれを一瞥すると、次は後方支援に徹するようにと指示。
苦笑い混じりで、日高少尉は頷いた。
かなり広い空間に出る。
地図を確認。
此処から、更に真下に掘り進む。
念のため、通信中継装置を敷設。コンクリを撒いて、壁を固める。周囲はまだまだ、敵の気配塗れ。時々、広間に通じている通路から、敵の気配もある。
「幾つかの通路に、ナパームぶち込むか?」
「無駄な攻撃は控えろ。 通路は全てコンクリ弾で封印。 スカウトチーム、急いでくれ」
「イエッサ!」
今の時点では、順調。
続々と、後方から支援部隊も来る。断続的に続いている戦闘も、さほど大規模では無いし、押し返すことも難しくない。
秀爺が、広間に来た時には。
既にシールドマシンが、直下へと穴掘りをはじめている所だった。
秀爺が、私と弟の間に、オンリー通信を入れてくる。
「これで三割程度か?」
「何か不安点がありますか?」
「嫌な予感がするんだよ。 明らかに敵は、手を抜いていやがる。 何処かで大きな落とし穴が仕掛けられていても、不思議では無い。 気をつけろ」
どん、と凄い揺れが来る。
どうやら、悪い予感が的中したらしい。
見ると、シールドマシンが大規模崩落に巻き込まれて、埋まっていた。阿鼻叫喚である。
「救出班、生き埋めになったスカウトを救出しろ!」
「急げ! 急げ!」
やられた。
私は、状況を見て、すぐに理解した。
明らかに不自然な空洞がある。巨大生物の巣穴は、基本的に電波を吸収する素材で壁をコーティングしているのだが。それを前提として、マップを作っていたのだ。
此方の認識を逆手に取られた。
相手は、ただの穴を掘ることで。穴を掘り進めてくるシールドマシンを迎撃したのだ。いきなり穴があるとはマップからも考えていなかった此方は、見事に罠にはまったのである。
穴を急いで掘り返すが、そうしていると、赤い点が近づいてくる。
下からだ。
「救出を急げ! 来るぞ!」
これは、シールドマシンの復旧どころでは無いな。
私は舌打ちするが、もう遅い。
赤蟻の群れが、土を蹴散らすようにして、姿を見せる。此奴らにとって、柔らかい土なんて、水も同じ。そのまま進める程度の障害でしかないのだ。
生き埋めになったスカウトチームは絶望だ。
至近距離から姿を見せた敵に、パニックになる味方。
唯一冷静な私と弟が、AF100とガトリングで、大火力の射撃を浴びせかける。柔らかい泥から必死に飛び出してきたスカウトの生存者を庇いながら、原田がAF20で射撃に加わった。
赤蟻が射すくめられながらも、無理矢理に前進してくる。
下がるしかない。
鶴翼に陣形を組み直し、水際殲滅の容量で、赤蟻を十字砲火に誘い込むまで、少なくない犠牲が出た。
赤蟻の群れをどうにか撃砕した後は。
シールドマシンのあった場所に、大きな穴が空いていた。
すぐに別のスカウトチームを呼ぶ。
勿論救助作業も再開させるが。
助かる人間は、出なかった。
拠点となった広間に、新しいシールドマシンを運び込む。
断続的に戦闘が続いているが。少なくとも前回の攻略戦のように、地上を介して背後に回られるような無様だけは、今のところ晒していない。
コンクリを打設して、縦穴を固定して。
簡易エレベーターを作って、下に降りる。
下には、相当数の赤蟻の死骸。
膨大な土砂。
それに窒息死したり、下で待ち構えていた赤蟻に食いちぎられたスカウトチームの亡骸が散見された。
今は、弔いの言葉を掛ける余裕も無い。落ちたシールドマシンは壊れてはいなかったが、運転手の血で操縦席は真っ赤。運転手は落ちてアーマーを全損したところを、赤蟻に引きちぎられたらしかった。
三川が口を押さえている。これが戦場だと分かっていても、どうしてもこみ上げてくるものがあるのだろう。
私は平気だ。弟も。
死体の山なら、見慣れている。
弟が通信を小原に入れた。
「此方ストームリーダー。 小原博士、どう思う」
「一杯食わされたとしか言いようが無い。 巨大生物は戦術を駆使することは知っていたが、これほどまでの事をしてくるとは」
「偶然では無いな。 侵攻計画に、修正を加えるほか無い」
今までは、敵の巣穴の空隙。
つまり、敵の通路がない空間を通って、直線的に敵の巣穴の最深部を目指していた。だがこれほどの短時間で敵が対応してきたという事は、おそらくこのままでの侵攻は無理だろう。
犠牲は大きくなるが、やるしかない。
「シールドマシンを使うのは最小限だ。 敵の巣穴の最短距離を通って、女王蟻の所まで行く」
「しかしそれは、敵の最も激しい抵抗を受ける事になるぞ」
懸念を示したのは日高司令だが。
弟はそれを一蹴。
やれやれと、私は肩をすくめた。
「女王を潰した後は、敵を各個撃破する目的もある。 一つずつ広間を制圧し、その度に余計な通路への出口はコンクリ弾で塞ぐ。 そうして最深部まで、確実に前進していくしかない」
「やむをえんか」
「しかし、当初の計画を安易に変えるのは」
「このまま最短距離で行こうとすると、おそらく同様の事故が何度となく起きる事になるし、下手をすると広間ごと崩落する。 そうなった場合、損害は計り知れん」
反論しようとした参謀を、弟が一蹴。
日高司令が、弟の案を受け入れた。
参謀が、歯ぎしりしているのが見えるようだ。何だか気の毒な男である。戦場に個人的な感情を持ち込むのは、感心しない。
ましてや、政治闘争を戦場に持ち込めば。
待っているのは惨敗だけだ。
少しずつ、司令部を地下へ下ろしていく。その度に通信中継装置を敷設するが。此処からは、迷路を見ながら、進まなければならない。
今の時点では、事前に産出された情報と、ほぼ敵の巣穴は一致している。
不要な通路をコンクリで固めて、次へ。
通路を進んでいきながら、安全を確実に確保。広間に出る度に、戦いが起きる。敵はいわゆる遅滞戦術を行いながら、反撃の好機を待っているように見えた。