地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
前大戦でも猛威を振るった巨大生物の女王……それ自体が圧倒的な戦力を誇る……がいるのは確実。
それでもやらなければなりません。
序、悪夢の洞窟
既に辺りが相当暑くなってきている。地面に触ると、地熱の存在がはっきりと分かるほどだ。
旺盛に活動している巨大生物は。
可能な限り、EDF隊員を道連れにしていく気満々だ。私は全身が痛むのをはっきりと自覚しながらも、装備の残弾を確認していく。
盾は途中からきた増援が持っていた物資を分けて貰って、どうにかある。
ガトリングやハンマー、スピアは問題ない。
問題はアーマーだ。
七回にわたる敵の防御網突破戦によって、既に限界が近い。直線的に敵の女王を目指して来たから、なおさら疲弊は大きい。
ただでさえ、ストームチームの戦力は半減しているのだ。
先ほど、粘っていたジョンソンが、味方に守られながら撤退した。
今、私が立っている広場を確保する戦いで、敵の猛攻を浴びたのである。既に一緒に潜っていたレンジャーチームとフェンサーチームも、合計で七名の戦死者を出している。スカウトも、三名が戦死していた。
コンクリの打設作業を急がせる。
弟は、呼吸を整えながら、武装を確認していた。
既にかなり巣に深く潜ってきている。途中確保してきた拠点は、続いてきた部隊が制圧しているが、断続的な攻撃に晒されており、なかなか援軍が送れずにいる。なおかつ、二万五千に達する巨大生物が、東京巣穴を脱出し、輸送船によって何処かへ去ったことが分かっていて。
その動き次第では、地獄がこの世に顕現する。
一刻の猶予もない。
シールドマシンがきた。
かなり酷く傷ついている。このシールドマシンは、まさか崩落に巻き込まれた機体か。あれで壊れてはいなかったけれど。
運んできたレンジャーチームの隊員には、見覚えがある。
殆ど全滅してしまった、シールドマシンの操作チームの一人だ。
敬礼をかわす。
「このシールドマシンを、どうして」
「これに乗っていたのは、俺の弟でした。 仇を取らせていただきたく。 それにこれから行う事についても、聞いています。 是非、このシールドマシンで、やらせてください」
「……分かった」
掘り進める地点を指定。
スカウトの戦士は、頷くと。
弟の血に塗れたコックピットに入り、操作をはじめた。
固い岩盤を、シールドマシンが掘り始める。此処までどうにか連結されたベルトコンベアで、土が運ばれて行く。
黒沢が小走りで来た。
「まだ開けている通路から、敵影です。 対応を」
「任せとけ」
涼川が向かう。
弟がフュージョンブラスターの状態を確認。
私との、オンリー回線を開いてきた。
「勝負は一瞬だ。 おそらく此処の地下にいる女王は二匹。 どちらも、居留守で残っているという事は、多分女王としては年老いている個体と見て良いだろう。 一瞬で片付け、残っている卵を全滅させる」
「ああ、分かっている」
既に味方の損害は、二百名に達している。
奥の方では、涼川が楽しそうに笑いながら戦っている。激しい火線が、敵に向け飛んでいるのが見えた。レンジャーチームとフェンサーチームも、それに倣っていた。
あちらは、涼川に任せて置いて、問題ない。
シールドマシンが、一気に沈み込む。
崩落が起きたのだ。
前回と同じ。敵が意図的に穴を掘り進めていて、落とし穴にはまったのである。
土砂が崩れていく。
レーダーから見て、敵が一気に殺到してくるのが分かった。
弟が頷く。
そして、スカウトの戦士が、敬礼した。
轟音が、辺りを揺るがす。
床から、炎が噴き出すが。それも、長時間は続かない。
言うまでも無い。
シールドマシンに爆薬を仕掛けておいたのである。前回と同じ手は、通用しない。敵にそう何度も、裏はかかせない。
レーダーの赤点が、一気に消えるのが分かった。
この爆薬は、空爆の時などに用いるものと同一。巨大生物には十二分に効果がある。それに、下は密閉空間だ。
弟が、最初に飛び込む。次に私。
ストームチームの全員が、続いて、地下空間へと、飛び込んだ。数名のレンジャーが続く。
言うまでも無いが。
上がる手段はない。
一気に敵を皆殺しにする他、生還する方法はない。
だが下に女王がいることは確実である以上。これは特攻では無く。必殺の、決定打となる策なのだ。
着地。
まだ、アーマーはもつ。
中空にいる三川が、サンダースナイパーを構える。
「ライト!」
弟が叫び、レンジャー達が、辺りを照らす。
そして、その威容が、露わになった。
女王蟻だ。
全長六十メートル。背中には巨大なはね。
全身についている傷は、今の爆破の影響だろう。一匹は至近。もう一匹は、奧で此方を威嚇している。
「手前のは俺が倒す! 他の皆は、残党の排除と、奧のを頼むぞ!」
「イエッサ!」
飛び別れる。
手前の女王蟻が、腹部を持ち上げた。酸を発射する体勢に入ったのだ。
女王蟻と戦う時は。
懐に潜り込め。
これは、事前にブリーフィングで通達してある。弟も、それに倣う。フュージョンブラスターが、火を噴く。
敵が酸を放つより、一瞬早い。
殺戮の熱線が完全解放。
凄まじい火力が、至近から女王を打ち据える。今の爆発にもその強靱な装甲は耐え抜いていたが。
しかし、この決戦兵器の火力には、流石の女王も悲鳴を上げる。
オメガチームの零式レーザーにも耐えていたという話はあったが。今回はそれに加えて、空爆のダメージがあるのだ。
奧の女王が、酸をばらまきはじめる。
まるで噴水だ。
矢島が盾を構えて、皆を守る中。
私は酸をものともせず、突撃。
ブースターを全開。スラスターさえも補助として使い、敵との間合いを一挙にゼロにする。
かなり大きい女王蟻だ。
至近で見ると、今まで交戦した奴よりも、更に大きい。
これは或いは。
相当な老齢個体ではあるまいか。
顔面にハンマーを叩き込む。
悲鳴を上げた女王がのけぞる。更に一撃。だが、女王も黙っていない。巨大な顎で、噛みつき掛かってくる。
一瞬の差で、上に逃れるが。
振り上げてきた顎が掠り、吹っ飛ばされる。
何しろ桁外れの巨体だ。
わずかに掠るだけで、此方には充分以上な、致命傷になり得るのだ。アーマーは、一瞬で全損。
フェンサースーツも、アラートをはき出している。ダメージレベルレッド。もうもたない。そう機械が叫んでいるようだ。
だが、引くわけには行かない。
まだ、フュージョンブラスターの間合いまで、他メンバーが辿り着いていないのだ。
ガトリングをぶっ放しながら、敵との間合いを詰める。相手が腹部を持ち上げる隙を作らせない。
巨弾に全身を打ち据えられ。
悲鳴を上げながらも、女王はなおも躍りかかってくる。
周囲には、卵が見える。
本能から、必死の抵抗をしているのだ。
だがそれは、此方だって同じ事。
あの卵が全部孵りでもしたら。それだけ、多くの人々が、危険にさらされる。それだけは、避けなければならない。
間一髪、顎を避ける。
至近から、ハンマーを叩き込み、女王がわずかに身じろぐ。
後、二秒。
女王が、意外な行動に出たのは、その時だった。
前足を一本、薙ぎ払うように振るったのである。こんな動きを女王がしたのは、初めてだった。
対応しきれない。
女王との交戦経験が、却って徒となった。
もはや限界のブースターもスラスターも、機能は半減。
吹っ飛ばされた。
地面に叩き付けられ、バウンド。フェンサースーツが機能停止。骨が何本か、砕けるのが分かる。
更に、女王が、此方に顔を近づけてくる。かみ砕くつもりだ。だが、意識が薄れゆく中、私は勝利を確信した。
ナナコと黒沢が、同時にフュージョンブラスターの火力を全解放。
女王が、至近からの膨大な熱を浴びて、絶叫するのが見えた。赤蟻をも砕くハンマーの一撃に耐えていた女王も、この火力の前には、ひとたまりもない。
瞬時に、巨体が火だるまになる。
消し炭になり、倒れ伏す巨大な女王蟻。
弟が、駆け寄ってくるのが見えた。
意識が戻ったとき。
既に最深部には、増援部隊が駆けつけて、掃除を完遂させていた。
辺りにある巨大生物の卵は、全て砕かれて。スカウトが、調査を始めている。驚くのは、小原が直接来ている、という事だ。
担架に乗せられていると、私は気付く。
そうだ。
フュージョンブラスターの間合いに女王が入るまで、時間を稼いだのだ。全身の痛みは、少し和らいでいる。鎮痛剤でも入れられたか。
「はじめ特務少佐」
小原が気付いて、此方に来る。
ばつが悪そうに、私の側に来て、視線を背けた。
「すまない。 調査が不十分だった故、迷惑を掛けた」
「勝ちは勝ちだ。 それに、相手が人間並みの思考能力を持ち、優れた戦略と戦術を駆使してくると分かっただけで充分だろう」
「ああ。 此処での調査は無駄にしない。 必ず人類の勝利に貢献できるように、努力をする」
小原によると、既に掃討戦が始まっているという。
敵の抵抗はそれなりに激しいが、既に巣穴は中枢が落ちている上、各所が分断されている。
今度は、各個撃破されるのは、巨大生物の方だ。
駆除作業は順調に進んでいて。場合によっては、ガソリンを流し込んで火攻めにしたり、或いは水攻めにもしているそうである。
先ほどまでの組織的抵抗が止んだのなら。
おそらく、敵の反撃も、かなり弱まっているだろう。
小原が去り、弟が代わりにきた。
かなり手酷く傷を受けているのは、私と同じだ。
だが、弟は、まだ余裕がある。
「姉貴、悪いが先に病院に行っていてくれ。 俺は此処にしばらく残って、掃討戦の指揮を執る」
「無茶をするなよ」
「姉貴ほどじゃない。 決戦兵器も無いのに、あの大きな女王とやり合ったんだろう?」
分かっている。
今回、ディスラプターは持ち込まなかった。あれさえあれば、女王であれど一瞬であっただろうに。
敵を掃討する装備を優先したのだ。
その点は矢島も同じだった。
「医者は、あまり良くない状態だって言っていた。 培養槽行きだ。 出来るだけ、培養槽の中でゆっくりしてくれ」
「そうする。 どうも先から、意識が定まらなくてな」
「……俺も、今回は流石に培養槽で治療が必要だろう」
真正面から、女王とやりあったのは弟も同じなのだ。
設置された簡易エレベーターで、上層に。
スカウトは彼方此方に展開して、巣穴の内部成分を採取。また、巨大生物の死骸も確認して、連絡を取り合っているようだった。
時々、交戦の音が聞こえる。
夢うつつの内に、地上へ。
どうしたのだろう。全身が酷く寒い。何となくだけれど、今までに無いほど、酷い状態だというのは、分かった。
昔の思い出は、ろくなものじゃない。
嫌なことに、それがどんどん流れてくる。
弟と二人、訓練施設に入れられて。あらゆる銃火器の使い方を覚えさせられた。この頃から、弟と私の差は歴然だった。
弟は単純に強い。
私は、何が強くて、何が駄目か、見極めるのが上手い。
戦闘力は、弟に及ばない。
だからEDFが設立されて、ストームチームが作られたとき。弟は中核精鋭のリーダーとして、最前線に立ち。
私は苛烈を極めていく戦線の中で。新しい武器を使っては、毎度死にかけた。
何か、耳元で医者達が叫んでいる。
強心剤とか、心臓マッサージとか言っている。
ああ。
私の心臓、酷使してきたものな。
今日の戦いだって、並の人間だったら粉みじんになるような攻撃を貰ったのだ。あれは女王の覚悟の一撃だったのだろう。普通だったら動かないところを、無理矢理体を動かしたのだ。
子供達を守ろうとしたのだろうか。
巨大生物は駆逐し、絶滅させなければならないが。
それでも、今なら分かる。
奴らにも、心はある。
無茶な回復で、無理矢理体を治して、何度も戦場に立ってきて。散々殺して、殺されかけて。
その最後は、何だか惨めだ。
存在意義は。戦う事だけ。私なんて、そんなもの。
私が死んだって、悲しむ奴なんて、多分誰もいない。弟はきっと、内心で気付いていたはずだ。
弟の事を、私が。時々、疎ましいと感じていたことを。
どうやったって勝てない相手が、すぐ側にいて。自分より上の階級で。弟なのに、私が欲しいものを全て独占していて。
涼川が弟にラブコールを送っているのを見て、ドス黒い感情がこみ上げてきたことが、一度だけある。
あんな風な感情を送ってくる相手が、私にいたことがあったか。
私をモルモット代わりに遊ぶ三島のような奴はいたけれど、愛情を向けてきた奴なんて、いるか。
香坂夫妻は。
あの二人は、きっと疎遠な孫の代わりに、私と弟を扱っていただけだ。
ごぼりと、口から血が漏れた。
培養槽に入れられているのだと分かったけれど。意識がどうにも定まらない。どうやら超回復力の種が切れたらしい。私はこのまま。
多分、死ぬ。
自業自得だろう。
世界で唯一の弟さえ、時々疎ましいと思っていたような、どうしようもないほどに心が狭い私だ。
多くの命を奪ってきた。
誰かを救うためと言いながら。巨大生物の命を、それ以上に潰してきた。遠くが見える。私は、一体死んだら何処へ行くのだろう。
間違いなく地獄。
どうしてだろう。
地獄と思って、薄ら笑いが、浮かんだ。