地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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もう一人のストーム1、嵐はじめは激戦の末についに限界を迎えてしまいました。

彼女を死なせる訳にはいかない。

そう、EDFの黒幕とも言える存在は判断を下します。

その結末がどうであろうとも。


1、限界の果て

ストームリーダーははじめ特務少佐の状態を聞くと、普段の彼からは考えられない事に、押し黙った。

 

私、エミリーが伝令になったのは。

 

たまたま、近くにいたから。

 

そして私が、はじめ特務少佐の、弟子の一人だったからだろう。

 

更に、一度離脱した後、体勢を立て直して巨大生物の巣に戻ったついででもあった。

 

本来だったら、戦死者が家族であっても、離脱は許されない。しかしこれは本部からの命令だ。

 

悪い意味での特例とも言えるけれど。

 

嵐はじめ特務少佐の実力と戦歴、戦果を考えると、本部が青くなるのも、分かる。ストームリーダーが呼ばれるのも、はじめ特務少佐がスーパーソルジャーレベルの戦士だからだ。

 

「エミリー、後は任せても良いか」

 

「OK。 お姉さんの所に、すぐに行ってあげてネ」

 

「分かっている」

 

すぐに、ストームリーダーは洞窟を出る。

 

後は掃討戦だ。私とジョンソンがいるし、香坂夫妻だっている。もう算を乱して逃げ惑うだけの巨大生物なんて、敵じゃあない。

 

駆逐するだけだ。

 

香坂夫妻から通信が来る。側で谷山も護衛しているはずなので、問題は無い。

 

「G4地点に廻ってくれるか」

 

「分かりました。 すぐに」

 

「ストームリーダーが心配か」

 

「当然よ。 彼はストームチームに欠かせないリーダーだわ。 それにはじめ特務少佐だって」

 

既に、巨大生物の死骸で、巣は埋まろうとしている。

 

容赦ない攻撃で分断され、各個撃破されていく巨大生物は。地の利をもはや喪失していた。

 

或いは此処は。

 

巨大生物を完全に駆逐した後は、地下コロニーとして活用できるかも知れない。

 

それはそれだ。今は、戦闘に集中する。

 

敵の残党が見えた。見えた途端に、サンダースナイパーから雷撃を叩き込む。洞窟の中で乱反射する雷撃が、巨大生物を貫き、見る間に焼き払っていった。

 

ウィングダイバーは、むしろ地底で強い。

 

そうささやかれているそうだが。

 

確かにそれは、事実の一つであった。

 

「此方、三川」

 

「セン、どうしたの?」

 

「通信先に負傷者がいます。 迷ってしまったようで、救助に向かいたいのですが」

 

「側に誰かいる?」

 

三川は、矢島と黒沢と応えてきた。

 

十体くらいの巨大生物なら大丈夫だろう。だが、一応念のため、ナナコに通信をつなげて、向かわせる。

 

ナナコは凄まじいまでに殺気立っている。

 

日高少尉が傷ついたからだ。

 

あの子にとって、親も同然の人間の負傷が。普段は抑えている感情を、爆発させたのだろう。

 

だから戦闘力も、数倍増しになっていた。

 

しばらく、無心で戦闘を続ける。

 

ジョンソンから、通信がきた。英語だ。それもオンリー回線。

 

「どう思う、ハジメ特務少佐の件」

 

「どうも何も、痛ましいことだわ。 彼女は多分今の時点で、フェンサーの第一人者だろうし、多くのフェンサーにデータがフィードバックもされているのよ」

 

「いや、そうじゃない。 どうも生き急いでいるように見えていてな」

 

ジョンソンは野心家だ。

 

野心家の持つスリルに惚れる女もいるというけれど、私はそうじゃない。ジョンソンは何というか、肌が合いそうにないのである。

 

「或いは好機かも知れん。 階級が実質同じでも、俺は結局ハジメ特務少佐の下という認識で、ストームでは扱われてきた。 だがハジメ特務少佐が此処で戦線離脱すれば、ナンバーツーは俺だ」

 

「聞かなかったことにしておくわ」

 

「お前は良いのか? 涼川は出世したのに、据え置きで」

 

良い訳がない。

 

私だって、ペイルチームに所属していた精鋭ウィングダイバーだ。戦歴だって、その辺りの特殊部隊に負けていない。

 

だが、このストームチームには、あまりにも強い戦士が多すぎるのだ。

 

涼川は話してみるととても面白い女だけれど。戦士としては、相手が上だと認めざるを得ない。単純な戦闘力だと、嵐姉弟に、近いレベルにまで到達している。

 

香坂夫妻は、文字通り怪物級のスナイパー。

 

歴史にも残るほどの、とんでもない使い手だ。

 

エミリーは、彼らに比べて、勝てるのか。

 

ジョンソンとの通信を切る。

 

悪魔の囁きを受けているように思えていた。ジョンソンは、野心を持って何が悪いと考える人間だ。

 

勿論組織をいたずらに乱すようなことはしない。

 

今は戦時で、余計な事を考えていれば死ぬからだ。

 

だが、それでも。自分の地位や待遇を求める。そういう人間はいるのだ。

 

また少数の敵がいたので、殲滅する。

 

ほぼ丸一日殲滅戦が続き、一万を超える巨大生物を駆除したと報告があった。最終的には味方の損害は、二百八十名ほどになりそうだとも。

 

ブルートフォース作戦に続く、完勝だ。

 

後はスカウトに任せて、残党を徹底的に倒し、その後は巣を封印するなり地底基地に改装するなり、好きにすれば良い。

 

敵はもはや分断され、数の利を生かせず、各個に潰されていくだけ。

 

上手く行っているのは良いことだけれど。

 

はじめ特務少佐のこともあるし、喜べない。

 

それに何より、巣から逃げていった二万を超える巨大生物は、何処へ行ったのか。中国の方へ輸送船は向かったとかいうけれど。

 

其方は前大戦で、人口の大半が失われた空白地帯だ。EDFの守備隊もいるが、いきなり敵が二万五千も増えたら、対処できないだろう。

 

香坂夫妻が、地底から引き上げると言う。

 

後はジョンソンに任せるそうだ。

 

ジョンソンは張り切って、完全な駆除を行ってみせると言っていた。彼の能力なら、無理ではないだろう。

 

洞窟を出る。

 

まっすぐ病院に向かったのは。

 

はじめ特務少佐が心配だったこともあるけれど。ジョンソンに言われたことが、ずっと引っかかっていたからだ。

 

つまりは、後ろめたかったのである。

 

そして、EDFの東京基地にある軍病院について。

 

面会謝絶と聞いて、流石に愕然とする。状態が著しく悪いと聞いてはいたけれど、まさか此処までとは。

 

現在の医療技術では、死んでさえいなければかなりの確率で治す事が出来る。ましてや、化け物並みの回復力を持つ嵐姉弟だ。

 

何処かで、死ぬはずが無いと、思っていた。

 

現在の医療で、面会謝絶というのは、昔で言う重体。死ぬ危険が大きい、という意味である。

 

呆然と立ち尽くしていると、土気色をした顔のストームリーダーが来る。

 

表情からして、何があったのかは明らかだ。

 

「はじめ特務少佐は」

 

「危険な状態だ。 これから、ある人物に会ってくる」

 

「一緒にいなくていいの?」

 

「姉貴を助けるための行動だ。 ……少し、一人にしてくれ」

 

ストームリーダーが、あんな表情をしているのは、はじめて見た。

 

世界で二人きりの姉弟。

 

二人が特殊な強化人間だという噂はあった。私がペーペーのヒラ兵士だったころには、聞いたことがあった。

 

あまりにも人間離れした実力を、はじめ特務少佐が見せるからである。更に、はじめ特務少佐が、自分より強い弟がいると聞いて、仲間内で顔を見合わせたのだ。

 

当時は強化クローンはもう珍しくなく、第三世代クローン兵士はかなりの数がEDFにいた。

 

だが、はじめ特務少佐の力量は、明らかにその常識を大きく逸脱していた。

 

だから、噂したのだ。

 

第一世代の強化クローンの、更に元になった最強のクローン兵士ではないかと。或いは、伝説のストーム1リーダーではないかという噂さえあった。

 

エミリーは、疑っている。

 

現在のストームリーダーが、かのストーム1リーダーでは無いかと。しかしそうなると、はじめ特務少佐は。

 

頭を振って、悪い思考を追い払う。

 

ストームチームには、待機命令が出ている。いずれにしても、即座に出かけなければならない戦場は、今の時点では存在しない。極東は制空権も抑えているし、不安要素の四つ足要塞も、今は押さえ込まれて動けない状態だ。

 

不安要素の中国に逃げた巨大生物も、今の時点では問題ない。

 

寮に戻ると、エミリーはウィスキーの瓶を開けた。

 

そして、悪い思考を追い払うように。

 

普段とはかけ離れた量の酒を、胃に流し込んだのだった。

 

 

 

忸怩たる思いを抱えたまま、ストームリーダー嵐一郎は、呼び出しに応じた。

 

場所は、地下。

 

EDFの、極秘地下施設の培養槽。

 

いわゆる地下の彼奴の前に、何名かの、極東EDF幹部が集まっていた。日高中将も、当然いる。

 

テレビ電話で、カーキソン元帥さえ参加している状態だ。

 

「ストームリーダーの姉が、危篤状態にある。 彼女は前大戦でも、ストーム1の常勝に貢献したスーパーソルジャーだ」

 

「確かに彼女が得がたい戦士だと言う事は知っている。 しかし、それが私をも呼び出す理由かね」

 

EDF最高司令官であるカーキソンはそんな冷酷なことを言うが。

 

しらけた視線を無数に浴びて黙り込む。彼は当然知る事だ。ストームチーム無ければ、とっくに人類は滅んでいたと。

 

ただし、誰もが、姉のことを心配しているのでは無い。

 

姉がいなくなった後の戦力低下。つまりストームチームの致命的な戦力低下による、人類の敗北への接近を怖れているのだ。

 

どういうわけか分からないが、姉は自己評価が低かった。

 

姉が背中を守ってくれているから。

 

ストームリーダー、嵐一郎は。最強の戦士として、フォーリナーに立ち向かい、勝利していくことが出来たのだ。

 

姉が試用品の武器に対して出すコメントはいちいち的確で。

 

マニュアルを見なくても、すぐに武器を使いこなすことが出来るほどだった。欠陥武器と最初されていたスタンピートやライサンダーが、実用品にまで引き上げられたのは、姉による実験が大きな意味を持っている。

 

今後もそれは、同じ筈だ。

 

フェンサーは、おそらく人類にとって、大きな力になる。

 

今はまだ鈍重で、その力の半分も使いこなせていないが。

 

毎回の戦闘で姉がフルに使いこなしていることで、データも蓄積されている。三島ももう少しデータがあれば、根本的なバージョンアップが可能だと言っていた。フェンサーが本格的に稼働できれば。

 

ウィングダイバーが実用化された時以上のブレークスルーが起きる。

 

フォーリナーだって、撃退に弾みがつくというものだ。

 

「それで、どうして此処に我々を」

 

「もう一つ良くない事がある。 僕もそろそろ寿命が尽きようとしている。 この星にきた時点で、そもそも君達で言う、老衰寸前の体を、ウルトラテクノロジーで無理矢理生かしていた状態だったからね。 其処で、僕は。 彼女に、自分の命を譲渡しようと考えている」

 

何を言っている。

 

此奴が、地球文明とはかけ離れた技術を持つ存在だとは知っているが。

 

いや、しかし。

 

此奴なら、可能なのかもしれない。

 

「そうすると、どうなるのかね」

 

「彼女は生きながらえる。 不死にはならないが、今までの激務で摩耗しきった体は、完全に再生し、多少強くもなるだろう」

 

「貴方は話によると、万年単位で生きていると聞いているが」

 

「空虚な人生だったよ。 だが、僕はこの星に来て、後悔はしていない。 そうそう、彼女は生き延びると同時に、僕の記憶を受け継ぐことになる」

 

なるほど、それが狙いか。

 

さっと青ざめる周囲。

 

此奴の力は、一個人が独占するにはあまりにも強大すぎるものだ。そもそも何故極東にいるのか。

 

それは前大戦末期に、EDFの総司令部が主力決戦に敗れ、マザーシップのジェノサイド砲によって消し飛ばされたからである。必死に脱出した一部の部隊が、制空権もない中太平洋を渡り、極東に逃れてきた。

 

その時、此奴も連れていた、というだけ。

 

それ以降、極東地下に、此奴はずっといた。

 

姉は生き延びることが出来るかも知れないが。

 

しかし、今後は下手をすると、EDFからさえ命を狙われることになるだろう。更に膨大な情報をいきなり頭に詰め込んで、人格に変化が生じる可能性も、決して小さくは無い。だが、それでもだ。

 

姉の体はもう限界だ。

 

分かる。

 

多分、延命だけなら、する事は可能だろう。しかし元々の体が、もはや取り返しがつかないほどに、疲弊してしまっているのである。

 

そんな状態で、生き続けることを、姉は望むだろうか。

 

いずれにしても、生き地獄以外の何物でも無い。

 

それならば、少しでも可能性がある方にかけたい。

 

何より、現実的な理由も一つある。

 

姉は、前々から、このどうしようもない戦争の原因を知りたがっていた。ちなみにストームリーダーである一郎さえ、真相は知らない。カーキソンは知っているという噂があるが、それも本当かどうか。

 

しばらく呻いていた周囲。

 

一気に天秤が、自分たちの安泰から、不安へと傾いたのだろう。

 

姉は相変わらず危篤状態で、もう長くないというのに、である。これが、地球人類という奴だ。

 

ストームリーダーが裏切ったら、人類は負ける。

 

そういう噂が、この世界にはある。

 

その噂が、姉の立場を悪くした。

 

実のところ、一郎は今までの軟禁を、さほど苦にはしていなかった。戦いさえ出来れば良いところがあったからだ。

 

寡黙で重厚というのは、周囲の勝手な評価。

 

一郎にとっては、戦闘こそが生き甲斐。性欲がないことも、そのいびつな生き甲斐に、拍車を掛けている理由の一つだろう。だから軟禁されていても、五感をリンクできる戦闘シミュレータに入って、多数の巨大生物とさえ戦っていれば、それで満足していた。

 

姉はそれをどう思っていたのか分からない。

 

いずれにしても、軟禁されている一郎を見て、不快に感じていたらしいことは、確かだった。

 

姉は、自分を。

 

人間として見て、大事に思ってくれていた。唯一の人間。

 

姉が色々複雑な思いを抱えていただろう事は分かる。姉の戦闘力は図抜けていたとはいえ、最後の最後まで一郎に及ばなかった。地位も、常に一郎より一歩後を行っていた。それで平然としていられるほど、姉は完璧超人ではない。

 

人間は悩むし、苦しみもする。

 

だからこそ、姉は。

 

より人間らしいのだと、一郎は思っていた。

 

故に助けたい。

 

「私は賛成します」

 

だから、一郎は挙手し、そう言った。

 

カーキソンが青ざめて、露骨に狼狽する。

 

「まて、そうなると。 最高の知性が、最強の肉体に同居することになる。 人間が勝てる相手では無くなる」

 

「心配しなくても、僕が入ったところで、別に彼女が最高の知性を得るわけではないし、最強の肉体にもならないよ。 其処の一郎の方が、僕が追加されて、フェンサースーツを着込んだ分をあわせても、まだ上だろうね」

 

「し、しかし」

 

「僕はね。 僕が持ち込んだ技術のせいで、死んでいった一郎とはじめの兄弟姉妹達の事にも、忸怩たる思いを抱えているんだ。 此処で、最後の我が儘くらいは、聞き届けてくれると嬉しいな」

 

「私も賛成だ」

 

日高司令が、頷いた。

 

娘が病院送りになって、一郎を恨んでいてもおかしくはない立場なのに。それでも、はっきり賛成と表明してくれた。

 

三名いる大将も、それで賛成に傾く。

 

カーキソンはしばし悩んでいたが。やがて。肺の息を絞り出すようにして、賛成と言ったのだった。

 

すぐに姉が運ばれてくる。

 

培養槽ごと。

 

培養槽から出してしまうと、もう永くは生きられない状態なのだ。培養槽に入れていても、生命維持が限界。

 

考えて見れば。

 

地下の此奴も、培養槽から出たところは見たことが無かった。

 

状態としては、似たようなものだったのかも知れない。

 

裸のままの姉は、呼吸器を付けられ、カテーテルを入れられて、気の毒でならなかった。

 

老化が酷い一郎が基準になっているから忘れられがちだけれど。年齢は妙齢なのだ。妙齢の女性が、こんな古狸どもに裸を見られて、嬉しいはずも無い。

 

培養槽が二つ、並んだ。

 

改めて、姉の隣の培養槽を見る。

 

地下の此奴。

 

正体を知らないこの存在は、見かけ人間にある程度は近い。しかしその姿は何処か昆虫に似ていなくもない。

 

手足は二本ずつだけれども。

 

何処かで、人と違う雰囲気が感じられるのだ。腰の辺りに巻き付けている布も、或いはひょっとして、体組織の一部だったのかも知れない。顔もマスクのようなものを付けているけれど。

 

それも、体組織の一部だったとしたら。

 

培養槽が泡立ちはじめる。

 

おおと、声が上がるのが分かった。地下の彼奴の体が溶けていく。そして、培養液と、完全に混じり合った。

 

てきぱきと作業が進められていく。

 

進めていくのは、地下の彼奴が身辺を世話させるために使っていたロボットだ。培養槽同士をつなぐと。

 

赤く染まった培養液が、姉の方に流れ込んでいく。

 

一気に培養液の透明度が下がり。

 

姉が身じろぎしたのが分かった。

 

ほどなく、培養槽の透明度が上がっていく。姉の体に、奴が溶けていくのだと、なんと無しに理解できていた。

 

どれほど、時間が経っただろう。

 

姉が目を開ける。

 

それで、理解する。

 

姉はもう、もとの存在ではないと。

 

姉ではあるのだけれど。

 

何処かが違ってしまっていると。

 

 

 

病院に移動して。

 

培養槽から出された姉は、しばし無言だった。ベッドの横についている一郎にも、話しかけてこない。

 

何処かをじっと見つめているようなその瞳には。

 

明らかに、今までの姉には無い、不可思議な光があった。

 

「そうか。 そういう、事だったのか」

 

不意に、姉が呟く。

 

そして、一郎の方を見た。白衣で身を包んでいる姉は。以前は培養槽から出ると、シャワーを浴びたがったものだが。

 

今は。そういった、人間らしい動作を、何処かに置き忘れてしまったかのようだった。

 

「一郎、お前には話しておく」

 

名前を呼ばれて、驚いた。

 

もう、姉では無いことは覚悟していたのに。苦笑いする姉。嵐はじめは、まだ存在しているらしい。

 

「案ずるな。 それよりも、盗聴に対する防御は完璧にしてくれるか」

 

「ああ、任せておけ。 それより、何だ」

 

「フォーリナーとは何者かだ。 そして奴らが何故、地球に侵略してくるかも。 彼奴と融合して、その知識と生命力を貰って、よく理解できた」

 

なるほど、それをずっと考えていたのか。

 

ようやく半身を起こす姉。

 

何だろう。

 

一郎は、知っていた。自分より強い人間は、地球にはいない事を。だからストームチームに所属するメンバーには、必ず目付役がいた。今回はジョンソンがそれにあたる。目付役の仕事は。

 

一郎が余計な事をするようなら、後ろから撃つこと。

 

だが、姉の雰囲気が、それをさせないような空間を、周囲に作っている。これは、何となく理解できる。

 

自分に近い実力者が、今ベッドの上にいるのだと。

 

失礼な話だが、姉でさえ、一郎にとっては、今までは守る対象だと内心で考えていたのだ。

 

それも今。

 

過去の話になった。

 

姉が話し出す。

 

今までの疑念が、一つずつ埋まっていくのが分かった。彼奴の正体についても。そして、何故地球に来たのかも。

 

どうしてフォーリナーが、わざわざこんな方法で、侵略をしてくるのかも。

 

そして、巨大生物が、何者なのかも。

 

「今の話は、他の奴にするべきではない。 もしもする場合は、私に相談しろ。 私の口から話す」

 

「ああ……」

 

なんということだ。

 

悪の侵略者から地球を守る正義の戦士。

 

そう思って戦っているEDFの隊員は多いと聞いている。彼らがこの真実を知ってしまったら。戦えるのだろうか。

 

分かってはいた。内心では、理解はしていたのだ。

 

しかし、悪と正義の戦いなどでは無い事は、これではっきりしてしまった。頭を振る。此処から行わなければならないのは、今までの地球で散々行われてきたこと。つまり、主観的な正義同士の殺し合いだ。

 

「姉貴、体は大丈夫か」

 

「そうだな、今日一日は休みたいが、明日からは出られる」

 

「早速だが、任務が入っている。 新人達も心配している。 出来れば、顔を出して欲しい」

 

「任せておけ」

 

頷くと、一郎は病室を出る。

 

完全防音を解除。

 

大きく嘆息すると。

 

一郎は、部下達と、ブリーフィングをするため、病院を後にした。

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