地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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3、空白都市

一日だけ休日が出た後、ストームチームに仕事が来た。

 

東南アジアだ。ただし、今回は、前回戦った地域とは違う。より、旧中国に近い地域である。

 

この辺りは山岳地となっていて、前大戦時には、巨大生物に追われた多くの人々が、息をひそめて地獄が去るのを待った。

 

皮肉にも、中国を脱出するのを失敗した人々を食い殺すので忙しかったらしく、巨大生物は此処までは来ず。結局、弟がマザーシップを撃墜したこともあって、この辺りに逃げ込んでいた多くの人々が助かった。

 

その後、人々は彼方此方に去って行ったが。

 

助かったことに験を担いで、この辺りに定着した人々もいる。彼らを守るように、比較的大きめのEDF基地も作られ。

 

そして大戦前より発展した、希有な地域となっていたのだが。

 

それが禍してか、今回のフォーリナー襲来では、巨大生物が早くから攻め寄せ。彼方此方の激戦で手を回す余裕が無いEDFを尻目に、巨大生物が跳梁跋扈していた。

 

ストームチームが到着。

 

眼下に広がっているのは、広大な銀糸の海だ。

 

それほどに膨大な巣が、展開されているのである。街は文字通り、レタリウスが作り上げた銀の糸によって、覆い尽くされてしまっている。

 

住民は早期に脱出したが。

 

今回、これ以上敵の拠点を残しておくのも好ましくないという事で、攻撃が決まったのである。

 

しかし、大部隊は、活発に動いているマザーシップに備えるため、動かせない。

 

谷山の操るネレイドが、近くに着陸。

 

起伏の激しい地形だけれど。

 

激しい機動を前提としているベガルタも問題ない。

 

筅には、今回先陣を切って貰う。そのために、ベガルタの前面には、レタリウスの糸を弾く強靱な特殊シールドを装備しているのだ。

 

ヒドラからはイプシロンも降りてくるが。

 

一目見るなり、ほのかが通信を入れてくる。

 

「これは、イプシロンは役に立たないわねえ」

 

「そうですか。 それでは、ライサンダーでの狙撃をお願いします」

 

「矢島君を借りて良い?」

 

「どうぞ」

 

矢島が盾を持ち、香坂夫妻の側でガードする。

 

というのも、ライサンダーの射程は、ほぼレタリウスの糸と同じ程度。事故を防ぐためにも、必要な措置なのだ。

 

糸で守られた敵陣地の奧には、かなりの数の巨大生物もいる。

 

勿論大量の爆弾を降らせれば、レタリウスの駆除も難しくは無いが。今は、その火力が足りないのだ。

 

山の中の都市を占領したレタリウスを、少数部隊で撃破する。

 

勿論味方部隊などつかない。

 

勝っているはずなのに、この扱いである。ストームチームは小間使いだと黒沢がぼやいたことがあるが、私も同感だ。

 

筅がコックピットから顔を出して、見下ろしてくる。

 

「筅、いつでも行けます!」

 

「怖くは無いか?」

 

「大丈夫です!」

 

筅は度胸が突いてきた。

 

それに対してナナコはと言うと。涼川のバイクの助手席で、一秒でも早く巨大生物をブチ殺したいという目をしていた。

 

日高は気にしていないと言っていたのに。

 

そういえば、原田が以前、似たような事で悩んでいたのに。

 

皮肉な話だ。

 

原田が克服した今度は、ナナコが似たような事になるのだから。

 

池口と黒沢は、ジョンソンの指揮下に入り、敵の間合いギリギリから射撃を続ける。スティングレイロケットランチャーの破壊力は大きいし、何より射程はレタリウスよりかなり上だ。

 

三川とエミリーは、長距離からMONSTERで射撃。

 

ある程度敵を削った後、突撃。

 

空爆により敵の注意をそらしながら、ベガルタで路を作り、其処を一気にフュージョンブラスターで焼き払う。

 

作戦に必要な時間は五時間を計上している。

 

このうち四時間は、地道な狙撃戦。

 

残りは突撃が三十分。最後が掃討だ。

 

攻撃を開始。

 

まず、遠距離からカスケードロケットランチャーを連射。作業はナナコに任せる。涼川は今の時点では出番がない。山の上に陣取って、ぼんやり敵を見ているだけだ。カスケードは連射型で、一気に極点を貫くことが出来る。こういう重層的な敵陣を焼くには、うってつけだ。

 

事実、他のチームもレタリウスの陣地攻略に向いていると、レポートを出してきている。今回はリスクを減らすために、これである程度敵を削る事を、作戦の第一目標とする。後方には、ヒドラのすぐ側にネグリングも控えさせているが、これは巨大生物が大挙して現れたときの対策だ。

 

更に、ネレイドから、長距離ナパーム弾が撒かれる。

 

白い悪魔の蜘蛛の巣が、燃え上がりはじめた。

 

しばらくは、黙々と攻撃を続ける。

 

妙なことに気付いたのは、直後だった。

 

「なあ、旦那」

 

涼川も、気付いたらしい。

 

私も、同じ事だろうなとは思ったが、敢えて黙っていた。涼川が喋りたいのなら、そうさせてやりたいからだ。

 

「レーダーの敵反応が、妙に少なくないか?」

 

「確かに異様に少ないな」

 

「まさかと思うが、あの街、からっぽってこと無いよな」

 

いきなり、レタリウスの糸が着弾。

 

涼川のバイクの至近だ。

 

ナナコが無言で、カスケードからミサイルを発射。十発のミサイルが、隠れていたレタリウスと、至近を直撃。

 

吹っ飛んだ悪夢の蜘蛛が、ばらばらになって飛び散っていった。

 

いざというときに備えて、日高少尉にはマグマ砲も装備させている。これは、レタリウスの糸を焼き切るためだ。

 

何度かの検証の結果、さしものレタリウスの糸も、高温でなら焼き切れることが分かっている。

 

もっとも、今回はその出番は無かったが。

 

「地下に潜んでいる可能性もある。 当面は、作戦通りに行くぞ」

 

「アイアイ。 ただよ、此処の司令官って彼奴だろ? 前、マザーシップ落とせなかったからって、あたしら散々こき使ったデブ」

 

「そういうな。 東南アジアの戦況が、著しく悪かったのは事実なんだ」

 

「分かってるけれどよ、釈然としねーんだよ。 あのデブ、本当に司令官としての仕事してるんだろうな」

 

結論から言えば、してはいるだろう。

 

長沼の時よりも、涼川はずっと大きな不満を口にしている。何だか弟が愚痴っているのを見ているときのようで楽しい。

 

「少し前進」

 

弟が指示を出す。

 

出しながらも、ライサンダーで射撃。巣から移動しようとしていたレタリウスを打ち抜く。

 

側面、後方の警戒もしっかり続ける。

 

レタリウスが移動しながらの狙撃戦を得意としているのは、散々味わった、周知の事だから、だ。

 

「此方谷山。 ナパームを補給するために一旦戻る」

 

ネレイドが、前線から下がる。

 

何度かネレイドに向けても、レタリウスの糸は襲いかかっていたが。谷山はもう慣れたもので、間合いのギリギリからだったら、確実に避けられるようだ。

 

一時間経過。

 

駆除は順調に進行。

 

レタリウスの駆除数も、十を超えた。

 

不意に、この地区の司令官が、通信を入れてきたのは、その時だった。

 

「ストームチーム、駆除は順調かね」

 

「事前に提出した資料通りに。 何か急用でしょうか」

 

「いやね、作戦の進行過程を見ていて、うちのスタッフが変だって言い出してさ。 その街には、二千ほどの巨大生物が潜んでいる筈なんだよ」

 

流石に、周囲の全員が絶句する。

 

二千は流石に、手に負えない可能性が高いからだ。

 

地下などなら、一方向に戦場を限定すればどうにかなる。しかし此処は平野。囲まれてしまったら、手のうちようがないのである。

 

涼川がぎりぎりと歯を噛むのが分かった。

 

怒るのも当然である。

 

文字通り、ストームチームが全滅しかねない危機だったのだから。

 

「空爆支援も無しに、そんな大規模な敵の群れを、我々に押しつけていたんですか」

 

「悪い悪い。 分かったのは、此方でも最近なんだよ」

 

嘘だなと、私は判断。

 

彼奴と融合してから、分かるようになってきたのだ。人間が嘘をついているか、そうでないかくらいは。

 

思えば、彼奴も。

 

WW2直後から、ずっと人間と接し続けているのだ。

 

人間がどんな風に嘘をついて、エゴの塊となるのかは、熟知しているのだろう。私の中で彼奴は出しゃばることがないけれど。

 

こういう手助けは有り難い。

 

「君達の地域から来た、巨大生物二万五千の一部が、其処へ立ち寄ったのは事実だよ。 その後中国の巣穴に抜けたのだけれど、どうも数が合わないみたいでさ。 其処に立ち寄った後、永住したってスタッフは判断したみたいだけれど」

 

「戦術士官、解析を」

 

「イエッサ。 空爆支援を廻しますか」

 

「出来るなら」

 

多分、出来ないだろう。

 

アルテミスにしてもミッドナイトにしても、ブルートフォース作戦で多大な被害を受けたのだ。

 

アジア地区の戦力に到っては、敵を牽制することが前提。

 

航続距離の問題もあるし、おそらく此処までは空爆出来ない。

 

嘆息すると、弟は作戦続行と周囲に叫ぶ。

 

そして、私にオンリー回線を入れてきた。

 

「姉貴、これはおそらく、マザーシップと同じ時間稼ぎと見て良いだろうな。 一体奴らは何を狙っている。 狙っているもの次第では、極めて危険な結果が生まれるぞ」

 

「そうだな」

 

「宇宙から、奴らの援軍でも来るのか。 マザーシップが、今度は五十隻は来たりしてな」

 

「冗談でも止せ」

 

私はそう言うけれど。

 

どうにもおかしいのである。

 

宇宙からの援軍を待つくらいなら、大事な巨大生物を守って、宇宙に撤退すれば良いのだから。

 

奴らの目的を考えると。

 

背筋に、寒気が走るのが分かった。

 

これはひょっとすると。マザーシップを、可能な限り早く落として、巨大生物も確実に駆除するべきかも知れない。

 

いずれにしても、後三隻程度はマザーシップを落とさなければ、中国、東南アジア、オーストラリアの敵巣穴を攻略するのは困難だ。そして東南アジアの敵戦略拠点である此処も、可能なら落としておくべきである。

 

弟に、可能性については話す。

 

しばらく無言だった弟も。

 

やがて、後で総司令部に打診はしておくと言った。

 

受け入れられるかは、分からないと言うのだろう。

 

確かに、最悪の予想だからだ。

 

敵陣が確実に焼き払われ、後退していく。まるでゴーストタウンと化した街が、顔を覗かせはじめる。

 

フォーリナーからの鹵獲技術で急速復興した街は。

 

一瞬にして廃墟となり。

 

そしてまた、焼き払われようとしている。

 

黙々と続く掃討戦。弟が指示していく目標は、街の真ん中へ、直線的に進んでいた。黒沢が、小首をかしげる。

 

「ストームリーダー。 外堀から埋めていくのが、賢明かと思われるのですが」

 

「今回に関しては、敵が潜んでいる可能性が高い街の中央部を先に暴く。 そうしないと、後で敵大軍が姿を見せた場合、打撃が大きい」

 

「なるほど、了解しました」

 

「意見を言う事は良いことだ。 これからもどしどしと頼むぞ」

 

黒沢が敬礼する。

 

この男、EDFに対する疑念は大きいようだが。

 

弟への忠誠心は篤いようで、其処だけは安心して見ていられる。

 

街の中央部を、三時間ほどで確保。

 

敵の巣穴に相当するものは見当たらない。この町に、敵の大群は潜んでいないと、判断してよさそうだった。

 

弟が立ち上がる。

 

「筅軍曹」

 

「はいっ!」

 

「突撃を開始する! 少し早いが、前倒しで敵陣を焼き払うぞ!」

 

「イエッサ!」

 

ベガルタファイアナイトが、特製のシールドを手に立ち上がった。レタリウスの糸に対する特別製。

 

更に、コンバットバーナーも、何時でも稼働できる。

 

歩き始めるベガルタ。

 

その威容を前に、レタリウスも恐れを成したのか。一斉射撃を開始。無数の糸が、盾に襲いかかり、消耗させていく。

 

姿を見せたレタリウスを、秀爺と弟が狙撃。

 

ジョンソンが、新人達に攻撃させる。

 

エミリーは確実に敵に当てていくが。

 

三川はまだMONSTERを扱い切れておらず、かなり誤射が目だった。これに対しては、怒るつもりはない。

 

三川のPTSDの原因となったのが、そもそもレタリウスだ。

 

今回は三川の意思を尊重して前線に立たせているが、不調なようなら、即座に後方に下げるつもりだったのだから。

 

「キャリバン、前進します!」

 

「慎重に来い」

 

進みながら、日高少尉に弟が指示。

 

確実に敵の抵抗を払いのけながら進むベガルタM3ファイアナイト。ほどなく街に入る。辺りには、レタリウスの残骸が多数。

 

弟が武器を切り替え、フュージョンブラスターを起動。

 

私も、ディスラプターを起動。

 

敵を、一気に焼き払う。

 

掃討戦は、予定よりかなり早く完了した。空爆もしなかったから、街もある程度は無事なままだ。

 

ただし此処は。

 

スカウトで念入りに調べる必要があるだろう。

 

「此方ストームリーダー。 グエン司令、応答してください」

 

「此方グエン。 戦果はどうですかな」

 

「今、掃討作戦が終わりました。 敵の戦力はレタリウスのみ。 巨大生物は、最後まで姿を見せず」

 

「ほう……」

 

罠の可能性がある。

 

すぐにスカウトを送るようにと言い残すと。弟は、返事を待たずに、連絡を切った。

 

撤収。

 

弟が叫ぶと、敵の勢力が消えた街から、全員黙々と引き上げていく。ヒドラに乗り込んだころ、通信がきた。

 

日高司令からだ。

 

「任務が終わったばかりの所、悪いな」

 

「何がありました」

 

「其処から北上してくれ。 どうやらフォーリナーが、妙な地点に戦力を集結させはじめているらしい。 出鼻を挫いて欲しいのだ」

 

「妙とは」

 

香港だと、日高司令が言う。

 

香港。

 

前大戦の更に前。色々な理由から、屈指の港湾都市として、繁栄を誇った場所。ある種の独立国だった都市。

 

前大戦の末期に、三機もの四つ足が上陸。

 

私がその内の一機を撃破し、二機を中破させて時間を稼いだが。住民は逃がせたものの、街そのものは焦土と化した。

 

その後香港は放棄され、現在に到るまで復興の見込みは立っていない。

 

理由は幾つかあるが、フォーリナーからの鹵獲技術で海運も著しく進歩したことや、旧中国地域の無人化が大きい。

 

前大戦での爪痕が、香港を無人都市へと変えたのだ。

 

「分かりました、直ちに」

 

「連戦の疲弊があるとおもう。 無理だけはしないでくれ」

 

「イエッサ」

 

弟が通信を切る。

 

日高少尉が、口中でぼやいているのが聞こえた。

 

「お父様ってば、本当にストームチームをこき使ってるんだから。 後で一言言ってやらないと」

 

前線の勇者である日高司令も、娘の小言には勝てない。

 

多分、多少は、ストームチームへの扱いも、改善するかも知れない。

 

いずれにしても、此処から香港までは、ヒドラを飛ばしても多少時間が掛かる。弟が手を叩いて、周囲に休むよう指示した。

 

私は、フェンサースーツを脱ぐと、診察を受ける。

 

今までは、私を見る度にがみがみ文句を言っていた医師が。

 

診察を終えると、小首をかしげていた。

 

「バイタルに問題なし。 一体どんな治療を施したんですか」

 

「無理をしなくなっただけだ」

 

「それならば良いのですが」

 

疑念の目を、医師が向けてくる。

 

ヒドラ付きの医師は、事情を知らないのだから無理もない。それでも、念のために、現地到着まではカプセルで休む。

 

途中から、ファイターが護衛についてくれた。

 

逆に言うと。

 

途中までは。ファイターさえ、護衛に現れなかった。

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