地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

50 / 120
4、総攻撃の前触れ

ヒドラから降りるころを見計らって、不意に連絡が来る。それも、EDF幹部会議招集のものだ。

 

一旦兵力展開は中止。

 

スカウトから来る情報を整理するように、涼川とエミリーに指示すると。私は弟とジョンソンと一緒に、ヒドラの奧の立体映像投影装置に向かう。此処からなら、立体映像だけを飛ばして、幹部会議に出られるのだ。

 

幹部会議は、もう始まっていた。

 

カーキソンが。かなりの上機嫌で、説明をしている。

 

「マザーシップへの総攻撃の準備は整った。 各支部は、ブルートフォース作戦勝利の余波を駆って、敵を叩き潰す準備を整えて欲しい。 狙うのは、当初の予定通りの三隻だ」

 

弟は黙っている。

 

私も、この作戦そのものは賛成だ。

 

問題は、である。

 

どうにも敵の動きがきな臭い。それよりも、中国とオーストラリアの巣穴を、先に攻略すべきでは無いのだろうか、と思うのだ。

 

ただし、それが不可能なことも分かっている。

 

マザーシップが巧みに戦略的な兵力集中を阻んでいるため、特に中国とオーストラリアの巣穴へは、攻撃が出来ない。大規模部隊を集結させられないのだ。

 

そしてこれらの巣穴は規模も大きく。少数精鋭を投入して、一撃離脱というわけにもいかないのである。

 

「作戦開始は、二週間後を予定している。 それまで、各自勢い衰えている敵を叩き、勝利のために布石を打って欲しい」

 

カーキソンは其処まで言うと、昇進人事を発表。

 

前評判通り、日高司令が大将に昇進した。

 

これで、名実共に、日高司令はEDFの最高幹部だ。今まで三人しかいなかった大将に、四人目として加わる事になる。

 

元帥は当面一人。

 

そして上級大将の階級はないから。日高司令が出世することがあれば、それはカーキソンが引退か戦死した場合だろう。

 

勿論、そんな事がないことを、祈るほか無いが。

 

会議が終了。

 

部屋から出ると、弟に、ジョンソンが言う。

 

「マザーシップの撃墜に成功すれば、ストームチームとしては二隻目になるな」

 

「ああ。 だがそれはいわゆる捕らぬ狸の皮算用だ。 簡単に落とせる相手では無いし、油断は出来ない」

 

「分かっている。 ただ、そうなった場合、皆に何をもって、EDFは報いるのだろう」

 

なるほど。

 

どうやらジョンソンの狙いは、その時期を見計らって独立部隊のボスとなることか。確かにマザーシップを撃墜すれば、戦況は更に好転する。フォーリナーを地球からたたき出す日も、ぐっと近づくだろう。

 

少なくとも、誰が見ても、それは確実だ。そのタイミングで独立部隊の指揮官になるのなら、かども立たない。

 

問題は、その先にある。

 

「しばらく、独立部隊の隊長になるのは諦めて欲しい」

 

「ハジメ特務少佐、どういう意味だ」

 

「中国とオーストラリアの敵巣穴が、どうにもきな臭い。 何かとんでも無い事が、起きようとしているような気がする」

 

「気がするとは、随分曖昧だな。 楽観するつもりはないし、確かにきな臭いことは俺も感じているが。 しかし、俺にとっては、独立精鋭部隊の指揮官になるのは、悲願なんだ」

 

ジョンソンの事情は、知っている。

 

この寡黙な軍人は、スラムの出身者だ。

 

最も平和で安定した時代が地球を覆っていた、前大戦の更に昔。ジョンソンの周囲にあったのは、理不尽だけだった。

 

世界が平和だと言っても、その全てが安定して、幸せというわけでもない。

 

退廃と堕落の街で、ジョンソンはろくでもない少年時代を送り。ろくな教育も受けられず、周囲の人間関係にも恵まれず。

 

EDFに入ったのも、喰うためだった。

 

だからジョンソンは、必死だった。

 

凄まじい戦いぶりが認められて、有名な部隊を転戦。オメガチームに入って、其処で戦い抜いて。終戦を迎えた。

 

ストームに来た時、ジョンソンは嬉しいと言っていたが。

 

表情に、笑顔はなかった。

 

彼にとって、感情は他人に見せるものではない。スラムでの長い地獄が、彼を寡黙な戦闘兵器に変えたのだ。

 

「分かっている。 少なくとも、巣穴を全て駆除するまでは待ってくれ。 ストームチームは、更に人員を拡張するつもりだ。 お前のような精鋭に抜けられると、困る」

 

「俺を高く買ってくれるのは嬉しいがな」

 

「戦況が完全に安定したら、俺からカーキソン元帥に独立部隊の創設を提案しよう。 ジョンソン大佐の経歴なら、ストームやオメガに並ぶ精鋭を任せることも、不可能では無いだろう」

 

弟が助け船を出す。

 

ジョンソンは驚いたように、弟を見て。

 

そして、絶対だぞと、付け加えた。

 

ヒドラを降りる。

 

香港には、各地からの増援部隊が集まっていた。輸送船だけで二十隻以上、ヘクトル百機という戦力だ。

 

流石に、ストームチームだけでの攻略は難しい。

 

巨大生物も、凶蟲、黒蟻、赤蟻と、一通り揃っている。数も、千以上と、相当なものだった。

 

廃墟となっている香港。

 

一角の港湾設備はまだ生きていたのだけれど。

 

敵の襲来とともに機能は凍結。

 

今では、敵が我が物顔に陣地を構築しており、これからの戦いで廃墟となるのは確実だった。

 

レンジャーチームが、現時点で12。

 

フェンサーチームとウィングダイバーチームがそれぞれ1つずつ。

 

後方には、ネグリング四機。

 

ギガンテス戦車も、続々揚陸していた。EDF海軍の輸送船が、極東から運びこんでくれたのだ。

 

かなり戦力としては大判振る舞いである。

 

それだけ、この間のブルートフォース作戦で、自信を付けたと言うことなのだろう。

 

既に敵も此方を認識している。

 

飛行ドローンも少数だがいるので、今回谷山にはバゼラートで出て貰う。

 

チームリーダー達が来たので、弟が軽く作戦を説明。

 

この辺りは何度も激戦区になった。

 

私も弟も、戦った経験がある。

 

だから、戦闘そのものは容易だし。作戦立案も、難しくは無かった。作戦も難しい事は特にない。

 

敵の攻撃を退けながら、前進。

 

輸送船を優先的に落とし、それが終わったら、集中攻撃で敵を確実に仕留めていけばいい。

 

おかしな事はあるけれど。

 

しかし、敵の戦力を削る事そのものには、問題は無いのだ。

 

マザーシップを撃墜する布石にもなる。

 

「待ってください、あれを!」

 

不意に、味方の一人が叫ぶ。

 

作戦説明中の弟も、私も、釣られて其方を見る。

 

敵が、撤退しはじめている。

 

追撃も何も無い。輸送船に兵を収容して、その場を飛び去っているのだ。馬鹿にされている。

 

ぽかんとして立ち尽くすチームリーダー達。

 

「野郎、巫山戯るなよ……!」

 

涼川が、流石に頭に来たらしく、地面に噛み煙草を吐き捨てていた。

 

 

 

とにかく、戦う前に敵がいなくなってしまったのでは、どうしようもない。

 

その上、マザーシップの周辺は、敵がガチガチに固めている。安易に攻撃は仕掛けられないし、その余裕も無い。

 

前大戦で、EDFは場当たり的な指揮を幾つかして。それで敗退した戦闘が、幾つもあった。

 

本部の罠。

 

本部は敵と通じている。

 

兵士達が、そう噂したのも無理はない。

 

集結していた部隊は解散。ストームチームも、一旦極東に戻る事になった。

 

数時間、ヒドラに揺られる。

 

「何をしに行ったのか、分かりませんね」

 

「いーじゃないか。 戦いはしなくてすんだんだしな」

 

黒沢に対して応じているのは矢島だ。

 

矢島は強くなりたいという意思を秘めているようだけれど。その一方で、戦いそのものを好んではいないようだ。

 

この辺りは、本来の性格がうかがえてほほえましい。

 

涼川は完全に怒り心頭。

 

怖がって、誰も近づかない。

 

私が近づいても、機嫌が悪そうにしていた。隣に座ると、不機嫌そうに、低い声を出す。

 

「一人にしていてくれないか」

 

「そういうな。 狭い機内だ」

 

「そうだけどよ」

 

「心配するな。 近いうちに大規模作戦がある。 その時には、思い切り戦えるさ」

 

じろりと、此方を見る涼川。

 

涼川はどうも、彼奴と融合した私に、この間から一歩引いて接している。警戒を崩していないのだ。

 

この辺り、実は人見知りなのでは無いかと思えてくる。

 

面倒見が良い涼川は、新人達にはいつも丁寧な指導をしているが。それでいて、同格の人間との交遊は、どうなのだろう。

 

ひょっとすると、人見知りなのを隠して、行動しているのだろうか。

 

だとすれば、EDF屈指のキリングマシンにも、可愛いところがあるものだ。

 

「なあ、あんた本当に、特務少佐なんだよな」

 

「そうだ。 この間の件で、多少人格に変化は起きたが、私は私だ」

 

「ならいいんだけどよ」

 

元々、厳密には私は、人と言うには無理がある存在だ。弟もそれは同じ。

 

生殖能力がないのは、恐らくは摂理故だろうとも思っている。生物種としてあまりにも強力な存在が野放図に増えたら、絶滅を招くだけだからだ。

 

元々人間ではないのだし。

 

今更、少し変わったところで、何だというのだろう。

 

カプセルに交代で入る。

 

新人達を先に入らせて、涼川は最後まで残っていた。疲れが殆ど無い私も、それにつきあう。

 

「あたしもなあ。 散々男を取っ替えてきたが、やっぱりベッドの上でよろしくやるより、戦闘のが楽しいんだよな。 そう言う意味で、あたしがまともな女じゃなくて、戦闘に特化した一種のイレギュラーだってのは分かってる。 だがな、あたしみたいなイレギュラーから見ても、旦那と今のあんたは普通じゃない。 だから旦那には惚れるし、あんたには、今脅威を感じてるよ」

 

「私はお前を傷つけたりはしない」

 

「分かってる。 わーってる。 そういう意味じゃないんだ。 何というか、自分たちの外敵、みたいな、な。 分かるだろ。 あたしの女の部分が、旦那の危険な部分に心を動かされるし。 一方で人間の部分が、あんたには危機感を刺激させられる。 死線をくぐってきたから、なおさら思うのさ。 今、あたしが側にいるのは、ひょっとしてでかい熊かライオンじゃないかってな」

 

自分より小柄な私に向かって、涼川はそんな事をいう。

 

余程に、鬱屈が溜まっているんだろう。

 

だから、言いたいように、させておいた。

 

「なあ、宇宙人共、何が楽しくてこんな事してるんだ。 黒沢のボーヤじゃなくたって気付く。 彼奴ら、地球で何をしたがっていやがる。 侵略じゃないだろ」

 

「さあな」

 

「……」

 

すっと、目を細める涼川。

 

今まで、同じ応対をしたときとは、違う気配があった。

 

これは或いは。

 

私が答えを得ている事に、きづいたか。

 

嘆息すると、弟を視線で指す。

 

もし知りたければ、弟に許可を得ろ。涼川は現在の地球でも、上位から数えた方が早いほどの使い手だ。仮に真相に辿り着いても、EDF本部がいきなり暗殺、というような手段にはでないだろう。

 

ただし、それもマザーシップを落とすまでの話。

 

勝利を確信した後、EDFが何をするかまでは、責任が持てない。

 

最後に、二人でカプセルに入る。

 

しばらくぼんやりしている内に、ヒドラが東京基地に到着。その場で、ストームチームは一時解散となる。

 

すぐに招集されるのは目に見えている。

 

マザーシップの嫌がらせの活発さは、今までの比では無い。すぐにストームチームが動かなければならない案件が出る筈だ。

 

そしてEDFが振り回されている内に。

 

敵は、準備を整え終えてしまう。

 

或いは、敵が動き出したときこそ。

 

準備が終わった、その時なのかも知れない。

 

 

 

部隊を解散させた後、弟とジョンソンと、涼川と香坂夫妻と会議に出て。その帰り道。

 

ジョンソンの所に、カーキソンから連絡が来る。

 

権力欲が強く、栄達したいと日頃から口にしているジョンソンだが。カーキソンとの連絡時は、それを弟にいちいち説明している。

 

この辺りは、ジョンソンというえぐみの強い男なりの。仁義の通し方なのかも知れなかった。

 

実際問題、仁義を通して行動している人間なんて、殆どいない。

 

そう言う意味で、ジョンソンという男は、筋が通っていて。故に公認スパイでありながら、弟は信頼してもいるのだ。

 

「俺たちは先に上がる」

 

「お休みなさい」

 

香坂夫妻が、先に行く。

 

涼川もエミリーとゲーセンにでも行くと言い残して、その場を後にした。わずかに寂しそうだったのは、何故だろう。

 

「定時連絡か」

 

「……そうだ。 どうやら公式の会議はブラフで、予定よりも遙かに近いうちに、マザーシップを攻撃する例の作戦を遂行するつもりらしい。 囮の部隊を使って引き寄せ、大規模戦力で一気に殲滅する、例の作戦だ。 味方にも兵力配置を悟らせず、実施するつもりらしいな」

 

「上手く行くと良いが」

 

「カーキソン元帥は、味方に裏切り者がいると考えているのかも知れない」

 

弟が腕組みする。

 

世界で唯一、「人間でありながら」マザーシップを落とした英雄。その弟でさえ、次は上手く行くか分からないと言うほどの相手。

 

勿論、前回の戦いの記録はある。

 

マザーシップが本気になれば、機体下部にある大気吸収口を開かざるを得なくなる。其処さえ叩けば、必ず倒せる。

 

ただしマザーシップは、戦闘形態の先に、さらなる最終戦闘形態を有している。

 

あれとは二度とやり合いたくない。

 

弟も、そう何度かぼやいたほどの相手だ。

 

「マザーシップを三隻動時に攻撃し、落とす。 上手く行けば、一気に勝利へ近づくが、問題は誘引と実際の戦闘プランだな」

 

「誘引に関しては問題ない。 おそらくマザーシップは、近々来る」

 

私の言葉に、弟は眉をひそめた。

 

ジョンソンが続きを促す。

 

私の予想は多分当たる。ただしその予想は、直後に絶望を伴うはずだ。奴らが大規模戦略兵器であるマザーシップを、わざわざ決戦に投入してくると言う事は。

 

その先にあるもの。

 

それにフォーリナーの正体と目的を鑑みれば。

 

明らかすぎるほどだからだ。

 

「迎撃作戦はどうするかだな」

 

「東京まで引き込んで、其処で叩くだけだ。 どうせ東京は再建しなければならないし、マザーシップを倒せば弾みもつく」

 

「……そうだな」

 

問題はその先。

 

奴らが目的を達成した後だ。

 

どう動くかが、まだ読めない。最悪の事態も、幾つか考えられる。

 

ジョンソンと別れ、二人で歩く。

 

寮に戻る途中、弟は言う。

 

「姉貴。 あのことは、まだ誰にも黙っていよう」

 

「判断はお前に任せる。 好きなようにするといい」

 

「……姉貴自身は、どう思う」

 

「香坂夫妻にはいずれ機会を見て。 お前の事を好いている涼川にも、いずれ話してやるべきだろうな」

 

これは、そもそも、EDFだけではない。

 

地球全土に関する問題。

 

フォーリナーには、最初から。地球を「侵略」する気など無い。かといって、友好条約など結ぶ気さえ無い。

 

連中にとって、この星は。

 

だから、彼奴は。

 

人間は、その領土を広げる過程で。多くの理不尽を、他の種族に強いてきた。それが淘汰で自然な事だというのなら。

 

今、人間は。

 

自分にされていることに、文句を言う資格は無い。

 

日高司令から通信。

 

「意見が聞きたい。 これより、本部がまた強化クローン兵士を増産する。 おそらく今度は、五千人規模になる予定だそうだ」

 

「かなり多いですね」

 

「投入時期は二ヶ月後。 マザーシップを落とせていれば、攻勢に弾みを付け。 マザーシップへの攻撃作戦が失敗していれば、味方を底支えするための戦力になるというもくろみだろう」

 

反対はしない。

 

この戦いで、命を賭けているのは。生き残るため。

 

最後の一線さえ越えなければ。

 

私は、人類のあがきを、止めようとは思わない。

 

弟は問題ないだろうと言った。

 

私は反対しなかった。

 

日高司令は頷くと、通信を切る。

 

空には、人類の罪業を嘲笑うようにして。満月が、明々と存在感を主張していた。

 

 

 

(続)




激戦の末に戦線を整理し、ついに降下したフォーリナーのマザーシップへの攻撃作戦が開始されます。

前大戦最後の決戦での決定的戦果を再現出来るのでしょうか。

再現出来なければ……人類の負けは確定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。