地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
八年前は、これ一隻に世界が蹂躙され尽くしました。
EDFは非人道的な手段まで用いて戦力を強化し、今日に備えました。
勝つために、です。
一瞬の時間だったはずなのに。
とてもとても、長く感じた。
ナナコにとっては、生きてきた時間そのものが短い。生まれたときには、既に戦闘マシーン扱い。
教育だけ受けて、戦闘に放り出されて。
同じように作られた子達が何人も死んでいく中、戦って戦って。そして、やっと、自分を人として認めてくれる人に出会った。
嬉しかった。
その日は、一人で丸まって、泣いた。
嬉しくても涙が出るなんて、はじめて知った。
だから。
あの人。日高玲奈少尉を傷つけた巨大生物共は皆殺しだ。その元締めであるフォーリナーも。
みんな許さない。
最近ナナコが、鬼気迫る様子だと言う人は多いけれど。
考えて見れば、ナナコは戦闘目的で作られた強化クローン。一種の強化人間だ。それならば、怖れられるのは、ある意味当然。
日高少尉は、こんなナナコにも笑顔で話しかけてくれる。優しくしてくれる。
その度に胸が熱くなるけれど。
同時に、フォーリナーは皆殺しにしなくてはならないという使命感も、より強くなるのだった。
突撃開始。
喚声を挙げながら、皆走り出す。
迎え撃つ星の船。
降り注ぐ殺戮の光。
フェンサーチームが盾をかざして。いにしえのファランクスのように固まりながら、中核の突撃部隊を守る。
同時に、他の部隊は一斉に飛行ドローンと、マザーシップの砲台に攻撃。
敵も味方も。
次々に倒れていく。
EDFの力を見たか。
そう叫びながら、事切れた戦士が、すぐ隣にいた。
化け物共、宇宙に帰れ。
そう叫んだ戦士は、巨大砲台からの光に焼かれて、真っ黒焦げになって地面に叩き付けられて、ばらばらになった。
飛行ドローンが、次々に爆散。
強引に押し通る過程で少なからず被害を出しながらも。ついに、ストームリーダーが、ライサンダーを構える。
発射。
突き刺さる弾丸。マザーシップの大気吸収口が、炎を噴く。内部にまで、ダメージが通っている証拠だ。
最初に、ライサンダー以上に長大なノヴァバスターを構えたのは、黒沢軍曹。
放たれる、灼熱の光。しかし、途中に割り込んだ飛行ドローンに阻害されて、わずかに逸れる。
マザーシップの外壁を爆裂させ、かなり抉ったが。致命傷には遠い。
続けて、日高少尉が放つ。
これは、最初から大気吸収口を狙っていなかった。近づきつつあった巨大砲台を、撃ったのだ。
激戦で傷ついていた砲台が、激烈な熱に晒され、凄まじい光を放ちながら融解していく。ジョンソン大佐も、それに続く。
マザーシップが、大気吸収口を守ろうとして、カバーをせり出すが。
そのカバーそのものが。
ジョンソンの一撃で融解し、爆裂。
轟音で揺れるマザーシップ。
狙う。
飛行ドローンの動きも見ながら、引き金に指を掛ける。
横殴りの一撃。強烈な機動戦を続けながら、ガトリングで次々はじめ特務少佐が、飛行ドローンを落としているのだ。
側に、爆裂。
矢島軍曹が、盾で一撃を防いでくれていた。
ついに、最高の好機が来る。
飛行ドローンの群れに、涼川中佐がスタンピートから膨大なグレネードを叩き込み。一瞬で多数が消し飛んだのだ。
空白地帯が出来る。
引き金を引く。
躊躇う理由は、一つも無かった。
ノヴァバスターの激烈な熱が、マザーシップの大気吸収口に突き刺さった。
装甲を完全にぶち抜く。
そして、内部で滅茶苦茶に乱反射しながら、装甲の彼方此方を内側から破る。
マザーシップが、火を噴く。禍々しい銀色の体の彼方此方から。
巨大砲が、爆裂しながら落ちていく。
浮遊砲台が、コントロールを失って、ふらふらとさまよったあげく、他の浮遊砲台や飛行ドローンとぶつかり、爆散する。
飛行ドローンさえ、算を乱しはじめた。
分かる。
マザーシップのコントロールシステムが、今の一撃で、致命傷を受けたのだ。
「マザーシップ大破! コントロールを失った模様! 間もなく墜落します!」
「総員、マザーシップから出来るだけ離れろ!」
「ほんとにやった!」
オペレーターの声と、怒号が重なる。
早く逃げろ。出来るだけ遠くにだ。
EDFの連呼が重なる。
勝利に酔う兵士達の、ものだった。
マザーシップがぐらつき、高度を下げていく。風に流されるようにして、東に。部品や砲台をばらまきながら、高度が更に下がっていく。
ヘクトル数機が、その巨体に吹き飛ばされて、消し飛ぶ。
進路にいる味方部隊が、慌てて退避する。
大きなビル。
新しい東京のシンボルとして作られる途中だった、新都庁ビルだ。まだ誰も入っていない、建造過程のものだけれど。
其処へ、吸い込まれるように。
マザーシップは、飛び込んだ。
その瞬間。
おそらくマザーシップの内部にある動力炉が、破損したのだろう。
「バイザーの光量調整!」
慌てて、ストームリーダーの声に従う。光の次には、熱と爆風。必死に体を低くして、耐える。
耳がやられたかも知れない。
頭を振りながら、立ち上がる。日高少尉が、自分を庇って、瓦礫を押しのけていた。何か言っているけれど、聞こえない。きっと、大丈夫だったとか、平気、とか。聞いてくれているのだろう。
少しずつ、耳が回復してきた。
日高司令が。敬愛する日高少尉の父が、歓喜を言葉にして爆発させた。
「マザーシップ、撃墜! 極東での戦線は、我々の勝利だ!」
「EDF! EDF! うぉあああああああああーっ!」
兵士達が、一気に残りの敵を撃滅に掛かる。
だが、ナナコにも。
他のストームチーム隊員にも。とても、それに加わる余裕はなかった。
時計を見て、驚く。
突撃開始から、十分も経っていなかった。
ほんの一瞬の間に。
フォーリナーの、悪夢の飛行要塞は、この世から消えて。
じり貧になりつつあった味方は、一気に形勢逆転したのだ。
ストームリーダーが来る。
びっこを引いているのは、アーマーを最後の戦いで抜かれたからだろう。そういえば。ナナコが狙撃する瞬間。
此方を狙っていた飛行ドローンの赤点が消えた。
この人が、やってくれたのか。
最後の一撃を入れたのはナナコだけれど。
これは、きっとストームリーダーがいたからこそ、手に入れることが出来た勝利だったのだ。
そう素直に、ナナコは考える事が出来ていた。
弟と一緒に、戦闘終了後の会議に出る。
数日は療養休暇を貰っているが。
それでも、私と弟、それにジョンソンに関しては、ストームチームのリーダーおよびサブリーダーという事もある。
休みたいところだけれど、そうはいかなかった。
既に戦闘は終了。
戦果としては、勝利である。
マザーシップ撃墜後、巨大生物を回収して輸送船が逃げるが、その大半は追撃を行った海軍と空軍によって落とされた。ヘクトルと飛行ドローンも、熱狂的な攻撃を掛けるEDF隊員達によって、ほぼ全滅させられた。一部が静岡の敵橋頭堡に逃れたが、それだけだ。
ただし、味方の被害も大きかった。
特にビークル類の損害は尋常では無く。
また、敵飛行ドローンとの交戦によって、空軍の打撃も、決して小さくは無かった。今回は開戦以来最大規模の飛行ドローンの群れが、極東に来たからである。これらとの戦いで、流石にファイターも小さくない損害を強いられていた。
好ましい結果では無いなと、私は思う。
というのも、敵の戦略的な目的は、おそらくこれで達成されてしまっているからだ。多少の損害は、もう敵には惜しくないのである。
既に、遅かったかも知れない。
「北米、欧州でも、マザーシップの撃墜に成功しています」
「これで敵の戦力は半減だ。 諸君、敵は顔を青くしているに違いないぞ」
会議に参加しているカーキソンは、そう言って高笑いした。
ただ、オメガチームの隊長と、ストライクフォースライトニングの隊長は、あまり嬉しそうにしていない。
少し前に、弟が話したらしいのである。
敵の目的について、だ。
全てを話してはいないようだが。
弟が、挙手。
「すぐに残りの敵巣穴の攻略を。 手遅れになる可能性があります」
「手遅れとは、どういうことかね」
「マザーシップは、今まで巧妙な機動戦によって、中国とオーストラリアにある敵巣穴を守ってきました。 それが一転して、各地のEDF中枢を叩くべく、主力部隊の残りを結集させてきた。 これは明らかに、戦略を転換するのに足りる出来事があったと言うことです」
「同意です」
オメガチームの隊長が、彫りの深い顔で頷く。
戦闘だけを生き甲斐としていると噂の彼も。今回ばかりは、楽観するわけにはいかないのだろう。
ストライクフォースライトニングの隊長、エルムも、それに賛成と言った。
アメフトの大ファンである彼は、非常に恰幅が良いいわゆる威丈夫である。高い身体能力と、優れた戦術判断力で、アメフトの試合を妨げる全てを粉砕すると広言している男だ。
前大戦でも、北米での悲惨なゲリラ戦の中で活躍し、少ない武器弾薬を活用して、多くの局地戦を勝利に導いた。その結果、夥しい戦果を上げてきている。
見かけはハリウッド映画に出てくるような、四角い顔の特殊部隊のごつい隊長そのもの。
故にリアルムービーヒーローなどと言われる。
うちの弟もごついが、アジア系とは違う屈強さだ。
ストライクフォースライトニングはストームと同じ少数精鋭チームで、一人一人の実力も高い。
普段は殆ど会議で発言しない彼も。
弟から話を聞いて、まずいと感じているのだろう。
「巨大生物が、爆発的に増殖したか、或いはレタリウス以上の新種が出現したか、どちらかだと考えます。 いずれにしても、一刻の猶予もありません」
「しかし各地のEDFは、今回の戦いで、主力に大きな損害を受けました。 特にビークル類の損害は深刻で、多数の戦力は動員できません」
戦術士官が、冷静に指摘する。
実際に図を見せられるが、確かに酷い状況だ。勝ったから良いものの、今回の戦いが如何に大規模な博打だったのかがよく分かる。
「それでは、我々が先行します」
挙手したのは。
ウィングダイバーの精鋭部隊、ペイルチームの隊長。カリンだ。
カリンは日系の北米人であり、私が初代隊長だったペイルチームの、現在三代目の隊長となる。
小柄な女性だが、ペイルチームの隊長としては非常に優秀と呼び名も高く、各地の戦闘ではレタリウスの撃破にも貢献している。天敵であるレタリウスも倒している事から、彼女の実力は本物だと評判だ。
ちなみに私がペイルチームの指揮官だったころは、まだ平の隊員だったが。
その頃から、優秀さは折り紙付きだった。
ルックスに関しては平々凡々で、特に顔立ちは地味そのものな童顔だが、それが却って女性陣には受けが良いらしい。
何度か復興後に作られた女性雑誌で、インタビューが掲載されている。
ルックスに頼らず、能力で立身してきた女性の見本、というわけだ。
私の存在が周囲には露出していないと言う事もあるから、その分カリンは、メディアには丁度良い存在なのだろう。
「主力の到着までに、中国支部の部隊とともに、可能な限り敵を削り取ります」
「うむ……」
「それならば我等は、東南アジアの巣穴を攻略しておこう。 オーストラリアの巣穴は、東京巣穴の次に規模が大きいと聞いている。 攻略には一大決戦をする覚悟が必要だろうし、先に後顧の憂いは断つべきだ」
オメガの隊長、アシャダムが提案。
エルムもそれに乗った。
カーキソンは咳払いする。自分が主導権を握れていないことが、好ましくないと判断したのだろう。
だが、すぐにそれどころではなくなる。
中国支部から、緊急通信が来たのである。
「此方中国支部! 即刻救援を請う!」
「何があった!」
「監視していた敵巣穴から、圧倒的な数の巨大生物が出現! 既に四つの基地が通信途絶しています! この総司令部も、先ほどから敵の猛攻を受けており、支えきれません!」
「分かった、すぐに救援を急行させる」
どうやら、会議どころでは無さそうだ。
カーキソンが、すぐに手配をはじめる。
この辺りは、歴戦の指揮官だけはある。今回も北米でのマザーシップ迎撃戦で、X4に乗って最前線で指揮を執り、敵の大群を食い止め続けたという。この辺りは、老いても太っても、地獄の北米戦線で最後まで粘り強く抵抗を続けた闘将なだけはある。
まずペイルチームが、ヒドラによって、中国へ。また、近くにいる空軍部隊も、支援のため其方に向かう事になる。
機甲部隊も、体制を整え次第、すぐに。
またオメガチームと、ストライクフォースライトニングは、予定通り東南アジアの敵巣穴攻略だ。
後顧の憂いを断つためである。
ストームチームは、今回の戦いでの損害が大きい。
人的被害については、今負傷者全員が病院で治療を受けているが、これについては今の技術であれば、中国支部に向かうころには、戦闘可能なまでに回復できる。
問題はビークル類だ。
秀爺には続けてレールガンを任せたい所だが。
イプシロンは、今回の戦闘でほぼ破壊されてしまった。修繕は間に合わない。
バゼラートも大破。
更に、ネグリングは中破してしまっている。
これらを、中国の巣穴に行くまでに、修復するのはほぼ無理だろう。幸いベガルタファイアナイトとキャリバン、グレイプRZについては、どうにか小破で済んだ。次の戦いでも、活用できるはずだ。
会議が終わった後、日高司令と一緒に歩きながら、私から提案。
「ビークルの供給をお願いできますか。 出来ればすぐに」
「工場から出荷されたばかりのものを、優先的に廻せというのかね」
「そうです。 今回の中国での戦いは、おそらく地獄になります」
弟は黙っている。
それを見て、日高司令も、事の深刻さを理解したらしかった。
「極東はしばらく兵力の立て直しを優先する予定だ。 新型機は、出来れば各地の中核として廻したかったのだが」
「いや、それはおそらく、無理でしょう」
「……?」
「マザーシップを使い捨てにするほどの事態です。 おそらく中国での戦況は、一気に全世界に飛び火するとみています」
絶句した日高司令が、すぐに連絡を入れてくれる。
これで、どうにかビークルは都合がつくか。
ビークルの調達は日高司令に任せて、私は弟と一緒に病院に。香坂ほのかの容態を見に行ったのだ。
何しろ年だし、心配はしていたが。
しかし、病室に行くと、ほのかは平然としていた。弟が、他の患者を見に行くと言って、席を外す。
「大げさねえ。 少し前のはじめちゃんより、ずっと元気なくらいなのに」
「すみません。 すぐに次の戦闘に参加して貰えますか?」
私も、プライベートでは、香坂夫妻には敬語を使う。
色々思うところはあるけれど。
この二人には、やはり思うところがあるからだ。悪い意味ではなく。
「何か、とんでも無い事が起こったみたいねえ」
「ええ。 最悪の事態に発展した可能性があります。 すぐにでも、中国の巣穴に向かわないと、手遅れになる可能性が」
「分かったわ。 それでは、寝ている場合では無さそうね」
頷く。
老病の人間をすぐに戦場にかり出すのは、忸怩たる思いがあるけれど。今回は、本当の意味で、一秒を争うのだ。
弟が来る。
原田は、怪我もたいした事は無いそうだ。
他のメンバーは、急速医療で、怪我をどうにかする。いずれにしても、すぐにヒドラで現地に向かう事になる。
中国の支部からは、今も悲鳴が届き続けている。
各地から増援が向かっているが。あまり戦況は芳しくないと、連絡も来ているそうだ
「あ、あ。 此方小原。 極東支部の幹部に通信を入れている」
来たなと、私は思った。
それはあまりにも、遅すぎた話だった。
「すぐに東京支部司令部に来て欲しい。 とんでも無いものが発見された」
「分かった、すぐに行く」
いずれにしても、ヒドラが飛び立てるまで、まだ時間が掛かる。
東京支部は総力戦の結果、かなり酷く傷ついたのだ。修復系の工場は徹夜でフル稼働だし、病院も満杯。
更に言えば、市民も勝っているならシェルターから出せと、しつこく要望をあげてきている。
まだシェルターからは出られないと説明しても、納得してくれるものは少ない。
勝利が近づいてきたように、恐らくは皆に見えている。だから問題が噴出しているのだ。ヒドラでストームチームが先行するとしても、後方がこのままでは、一体どうなることか。更に言えば、小原の通信からは、悪い予感しかしない。
歩いていると、黒沢がきた。
敬礼の時間さえ惜しいという風情で話し始める。
ヒドラに積み込まれている物資が、明らかに少ないという。
「予定されていた武器が、まだ半分ほどしかありません。 このままでは、中国の戦線で満足に戦えません」
「前の戦いの混乱の影響だな」
「丸腰で敵と戦えというのですか。 出発を遅らせるべきです」
「そうはいかない。 理由については、すぐに話す」
黒沢は納得していない様子だったけれど。
だが、此処は黙って貰うしかない。
何もかも、歯車が軋んでいる。マザーシップを倒したことは、良い結果ばかりを生まなかった。
わかりきってはいたけれど。
皆が、浮ついてしまっているのだ。
司令部に到着。
青ざめた小原が、もう待っていた。他の幹部達は、露骨に不機嫌なものも目だった。先ほど呼び出されて中国の急報を知らされ、またいきなり会議なのだから当然だろう。
「小原博士、緊急のこととは、何かね」
「その前に、まず巨大生物の進化の速さの秘密について、説明しようかと思います。 今までは仮説に過ぎなかったのですが、どうやら巨大生物は全体が進化しているのではなく、女王が進化しているようなのです」
小原が、反論が出る前に、プロジェクターに映像を出す。
それには、複数の、巨大な抜け殻が映っていた。
「東京巣穴の深部で発見された抜け殻です。 調査したところ、驚くべき事が分かりました。 女王は脱皮する度に、変化を生じているようなのです」
「脱皮の度に、変化だと……!」
「良くは分かりませんが、戦闘を行っている巨大生物から、何かしらの形で情報をフィードバックされている可能性があります。 その情報を遺伝子なりに反映し、強化された巨大生物を産んでいるのでしょう」
「なんということだ。 それでは進化の凄まじい速度にも納得できる」
そうか。
この男。
無能だと思ってはいたが、ついに自力で、辿り着いたのか。
「進化を全体で行うのでは無く、中心となる個体。 この場合は女王ですが、其処へ集約することで、加速度的に行う。 これが、レタリウスをはじめとする新種を短時間で奴らが作り出した秘密でしょう」
「情報集約による進化の加速か……」
咳払いする小原。
彼は、更に続ける。
「これらの映像を見てください。 中国支部から届いたものです」
プロジェクターに映し出された映像には。
女王らしき影。
しかし、すぐにおかしい事に気付く。数が多すぎる。更に言えば、女王よりは、普通の黒蟻や赤蟻に近いサイズだ。
「東京巣穴から脱出した女王の映像です。 群馬で撮影されたものですが、見てください」
女王ではあるが。
しかし、これは。
遠影だから、見えにくい場所もある。だが、明らかに、女王とは、形状が違っている。これは、つまり。
「女王は別種に進化したとみるべきです。 中国支部を壊滅に追い込んでいる巨大生物は、従来のものではないと見るべきでは無いかと」
「由々しき事態だ……」
日高司令が、ようやく事の重要さを理解したようだった。
私も、これはそろそろ、彼奴の知識を、EDF幹部にも伝達するべきなのかも知れない。だが、まだ早いかも知れない。
公表のタイミングを間違うと。大変なことになるからだ。
日高司令は何度かハンカチで額を拭うと、此方に向き直る。
「ストームチーム、ありったけの物資を廻す。 中国支部に今すぐに向かい、現地の部隊と協力し、新種の迎撃を行って欲しい」
「イエッサ!」
幸いにも、日高司令が直接言えば、物資は来るだろう。
だが他の部隊は、それだけボトルネックに苦しめられることになる。
決して他はストームチームを良く想わないだろう。それに、私が下手に情報を公開でもしたら。
頭を振る。
ろくでもない想像は後だ。今は、ついに来てしまった敵との戦いに、備えなければならない。
敵がマザーシップ三隻を使い捨ててまで。守り抜いたものだ。
最悪の結末が近づきつつある事を、私は悟っていた。