地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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マザーシップを撃墜して一転。

旧中国北京近郊で大攻勢に出たフォーリナーに対し、ストームチームは籠城戦を強いられることになります。

怒濤の猛攻は、飛来した六隻のマザーシップの半数を失ったとはとても思えない程の苛烈さ。

EDFは勝手などいないと、思い知らされるのです。


1、殲滅からの退避

動けるチームのリーダーを集める。

 

今、ストームチームでさえ負傷者が出ている状況だ。まともに戦える兵士がどれだけいるかは、確認する必要がある。

 

各地からきた援軍も、酷い有様だ。

 

とてもではないが、長期戦には耐え抜けない。

 

各地のEDFも、蜂の対処に大わらわである。

 

援軍を送るにも、戦況が混乱していて、まとまった数は出せない状況だ。まとまった数が出せなければ、蜂に制空権を奪われている中国地区に、援軍など送る事が出来ない。送っても、送るだけ敵に殺されるだけだ。

 

弟が声を掛けて、集まった無事な戦力は。

 

なんと、五十人にも満たなかった。

 

ビークル類も酷い有様で、戦車も殆ど残っていない。セントリーガンも、稼働の限界が近い機体が多かった。

 

悲惨な状況だが。

 

カリンは怪我を押して、出てきている。

 

既にペイルチームも三割近くが戦死して、動ける面子は殆ど残っていないのに、だ。

 

「ストームリーダー。 援軍については、何か聞いていませんか」

 

「今、各地のEDFが必死に調整してるそうだ。 具体的にいつどんな援軍が来るかは、分からない」

 

「次の攻撃が来たら、支えきれません!」

 

悲鳴に近い声を、カリンがあげる。

 

無理もない。

 

この状況下で、冷静を保てる人間が、一体どれだけいるというのか。青ざめているリーダー達の顔を見回しながら、弟が言う。

 

「泣き言を言っても始まらない。 どうにか、この状況を打破する方法を考えなくてはならない」

 

「地下に潜るというのはどうでしょう」

 

冗談めかして言ったのは、此処に増援として来たフェンサー隊の隊長の一人。まだ若い戦士で、恐らくは前大戦末期に加わった義勇兵の生き残りだろう。

 

弟は、冗談めかした、絶望を含んだ言葉にも、冷静に応じる。

 

「此処の地下は、長時間の攻撃には耐えられない。 潜っても追い詰められて皆殺しにされるだけだ」

 

「かといって、このままでは、もう敵の攻撃を防げませんよ」

 

基地の外を見れば。

 

そこにいるのは、巨大生物の群れ。

 

それも、数え切れないほどの。

 

蜂も何度かの襲撃でかなりの数を落としてやったが、それでもまだまだたくさん残っている。

 

奴らは知っているのだ。

 

もうこの辺りは、奴らの領土。

 

後はこの北京基地さえ落とせば、完全に土地を掌握できると。だから攻撃は、凄まじい苛烈さを含んでいた。

 

セントリーガンはどれも焼き付くほどまで稼働していて、これ以上酷使すると多分壊れる。

 

世界最強を謳われるストームチームがいても。

 

この圧倒的な兵力と。それに、高空戦力を抑えられているという状況を覆すのは極めて難しい。

 

ヒドラは四機。

 

ピストン輸送すれば、負傷者を逃がすことは出来るけれど。

 

そもそも蜂が、ヒドラを見逃してくれるはずが無い。

 

途中で叩き落とされるのが関の山だ。

 

私が挙手すると。

 

全員の視線が集中した。私の暴れぶりは、彼らにも印象深い、という事を祈りたい。少なくとも、ストームチームのサブリーダーに相応しい戦闘力は、見せているはずだ。

 

「時間を稼ぐ方法はある」

 

「時間を稼いでどうするんですか?」

 

カリンの声には、冷たい反発が籠もっていた。

 

援軍など来るはずも無い。

 

そういう絶望が、皆の心を覆っている。だから、薬物に手を出そうとする隊員も出始めている。

 

酒を浴びるように飲んで、倒れてしまっているものもいる。

 

彼らを責めることは、出来ない。

 

「援軍は来る。 だが、次の戦いに耐えられないようなら、恐らくは間に合わない」

 

「しかし、次の攻撃を、どう耐えるんですか」

 

「私と弟が主力になって、打って出る」

 

周囲が、しんとした。

 

もう一度、咳払いしてから、説明する。

 

「蜂さえ潰してしまえば、敵の戦力は大幅に低下する。 理由は分かっていると思うが、高空戦力を消せるからだ。 敵は万に近い、いや万を超える数が周囲にいるが、蜂の数は八百程度。 奴らに絞れば、撃滅は可能かも知れない」

 

「しかし、どうやって」

 

「レクイエム砲だ」

 

北京基地にもそうだが、何処の基地にも機甲師団の主力として、重戦車タイタンが配備されている。

 

此処北京基地でも、どうにかタイタンは生き残っていた。

 

これを用いる。

 

タイタンの主砲は、通称レクイエム砲。直撃するまでにレクイエムを奏でられると言うほど、弾速が遅い。

 

ただし破壊力は折り紙付きで、直撃すれば大概の相手は木っ端みじんだ。

 

しかし少し前の戦いで、四足には通用しなかったという報告もある。いずれにしても、使いづらい兵器なのだ。

 

作戦を私が提案。

 

弟が腕組みした。

 

「なるほどな。 今のはじめ特務少佐の実力であれば、長時間巨大生物の群れを引きつけ、攪乱することが出来る。 その間に、敵の高空戦力に、致命打を与えるのか」

 

「そうだ。 その後、ヒドラでピストン輸送を掛けて、此処を脱出する。 その後、体勢を立て直して、再度攻撃を行う」

 

既に、幾つものシェルターが、脱出不可能な状態になっている。

 

容易に巨大生物の侵入を許す造りでは無いが、何年も籠城するのは不可能に近いだろう。ならば、やるしかない。

 

作戦に反対の者は。

 

弟が見回すが、いない。私に反発しているカリンでさえ、この状況を打破できるなら、藁にもすがりたいと考えているのだろう。

 

そのカリンが、挙手。

 

「私も攪乱に参加します」

 

「無理だ。 死ぬぞ」

 

「私はこれでもペイルチームの隊長だ。 如何に元上官とは言え、貴方に遅れは取らないし、負傷くらいは経験と歴戦でカバーしてみせる」

 

「……分かった。 ただし、無理だけはしないように」

 

弟が私に噛みつくカリンをたしなめ、会議を終える。

 

現在、此処の司令官は疲弊が祟って昏倒しており、弟が事実上の指揮官になっている。それに何より、最強の噂も高いストームリーダーだ。弟の活躍は今までの籠城戦でも多数の兵士が目撃しており、つるべ打ちで蜂を叩き落としていく様子を見て、喚声も挙げていた。

 

弟の指揮に、皆はしたがってくれる。

 

それだけが、救いだ。

 

多分カリンは、単純な好意を弟に抱いている可能性が高い。見ていれば、その辺りは分かる。

 

だから、話を素直に聞くという理由もあるだろう。

 

これより実行する作戦は、内容的には簡単だ。

 

現在、蜂どもはまとまって、基地近くの丘陵で休んでいる。此処にレクイエム砲を叩き込む。

 

同時に私が基地から突出して、巨大生物共に全力での肉弾攻撃を実行。

 

混乱している間に、残った兵士達全員で、蜂を狙って狙撃を行う。私の支援は弟とカリンだけ。

 

ストームチームの新兵達も。

 

涼川も秀爺もジョンソンも。エミリーも谷山も。

 

皆全員が、蜂に対する攻撃に注力する。

 

上手く行けば、巨大生物が体勢を立て直す前に、蜂を殲滅できる。そうなれば私と弟、後は涼川だけで、巨大生物をかなりの時間攪乱し、食い止められる。

 

その間にヒドラを飛ばして、負傷者を後送。

 

出来れば増援も、作った時間の間に呼び込む。此処を放棄せずに済めば、それが最上なのだから。

 

タイタンが、兵器倉庫から出てくる。

 

操作は秀爺に任せる。

 

タイタンに関しては、操縦の経験もあるという。どうしようもない駄作兵器だと、いつもぼやいていたが。ただ、レクイエム砲を敵の群れに直撃させられるかと聞いたら、確実にやってみせると言っていた。

 

池口のネグリングも酷い損傷を受けているが、応急処置をして、引っ張り出す。

 

谷山は、砲兵隊と連絡をしているが。此処までの長距離射撃は難しいそうだ。テンペストなら打ち込めるかも知れないと言う事だが。それも、精密な誘導をするには、かかりっきりになる。

 

基地外壁の上に筅はベガルタを操作して上がって貰う。

 

近づく蜂を、コンバットバーナーで焼き尽くすためだ。

 

ストームチームの皆も、既に大なり小なり負傷しているが。それでも、此処でやりきらなければ、全滅が待つだけ。

 

戦わなければ。死ぬのだ。

 

作戦開始は、間もなく。

 

秀爺が、GOサインを求めてきた。

 

私は基地外壁の上に出ると、見渡すばかりの巨大生物の群れを見て、フェンサースーツの中で目を細めていた。

 

あの中に、飛び込むのだ。

 

ぞっとしない。

 

時計を合わせる。

 

弟が、作戦開始を指示。開始時刻は、三分後。隣に、カリンがきた。負傷はしているが、世界でもトップクラスのウィングダイバーだ。エミリーでさえ及ばないと正直に言っているほどの使い手。

 

だが、負傷は、どうひいき目に見ても、酷い。

 

自尊心のために、これほどの戦士を死なせるわけには行かない。

 

「分かっているだろうが、支援を中心に動いてくれ」

 

「元上官とはいえ、私を侮りすぎだ。 確かに貴様は世界最強のフェンサーだが、それでも私にも誇りがある」

 

「今は生きることを優先しろ。 戦況はこれから更に悪くなる。 優秀な戦士は一人でも必要だ」

 

「……何を知っている、貴様」

 

カリンは相変わらずとげとげしい。

 

ただし、時計を見て、舌打ち。

 

時間が来たのだ。

 

秀爺が、砲塔を動かす。そして、次の攻撃に備えて休んでいる蜂の群れに向けて、レクイエム砲をうち込んだ。

 

砲弾が、ゆっくり飛んでいくのが見える。

 

確かに着弾までに、レクイエムを歌い上げることが可能だろう。そして、終わったときには。

 

炸裂。

 

轟音が丘に轟く。一撃で、百匹以上の蜂が爆裂四散した。更に其処へ、生き残った全員が、スナイパーライフル、長距離射撃用のロケットランチャーで攻撃を開始する。爆発が連鎖する中、一斉に巨大生物が反応するが。

 

彼らの頭上には、私が躍り出ていた。

 

「死ね」

 

降り下ろしたハンマーが、周囲の巨大生物を吹き飛ばす。

 

殺す必要は必ずしも無い。

 

徹底的に攪乱して、動きを止めるだけで良い。

 

同時に残ったセントリーガンが全て稼働。更に、私の少し後ろに飛び込んだカリンが、周囲に制圧射撃を開始した。

 

私は、飛ぶ。

 

ハンマーを振り回し、その地面への直撃する圧力さえ利用して、軌道を変える。肉体が痛む感触は無い。

 

殺戮し、移動し、また殺戮。

 

スピアで敵を串刺しにし、像を残して跳躍。上空から、迫撃砲で辺りを爆撃。着地と同時にハンマーを振るう。

 

混乱していた敵が、体勢を立て直そうとするが。

 

其処へ、秀爺がレクイエム砲弾を直撃させる。

 

吹き飛ぶ敵が、小さな山のように見えた。

 

味方は、頑張っているか。

 

蜂は空中で体勢を立て直そうとしているが、無数のエメロードミサイルが弾幕となり、敵を次々襲う。動きを止めたところに、涼川が確実にロケットランチャーの射撃を命中させる。

 

スナイパーライフルは駄目なのに。

 

爆発物なら、長距離射撃でも、完璧だ。

 

赤い閃光が、基地の外壁の上から迸り、巨大生物を焼き払う。

 

ジョンソンの零式レーザーだ。

 

混乱する敵を追い込むように、ネグリングがミサイルを乱射。降り注いだミサイルが、蜂も、黒蟻も、赤蟻も、凶蟲も、手当たり次第に吹き飛ばす。

 

乱戦が続く中、私も酸を浴びる。

 

どれだけ完璧に、冷静に動いても、どうしてもこの敵密度だ。攻撃は浴びてしまう。それでも、逃れるわけにはいかない。

 

手当たり次第にハンマーを振るって敵を薙ぎ払いながら、まだか。そろそろか。呟く。

 

ヒドラが、飛び立つのが見えた。

 

させるかと、追いすがろうとする蜂の群れ。だが、其処はもう、弟の射界。速射に優れた実力を発揮するハーキュリーで、蜂の群れをつるべ打ちにしていく。

 

ヒドラが、安全圏に逃れる。

 

そろそろ、良いころだろう。

 

「カリン、引くぞ!」

 

返事が無い。

 

地面で倒れたカリンを、巨大生物が囲んでいる。どうやら傷口が開いた所を、赤蟻に噛まれ、振り回されて、地面に叩き付けられたらしい。

 

突貫。

 

カリンを掴むと、ブースターをふかして、上空に逃れる。

 

追いすがろうとする巨大生物に、迫撃砲を連射。吹き飛ばし、逃れるが。一度、赤蟻の牙が掠った。

 

激しく揺れる。

 

アーマーも瞬時に全損した。

 

だが、上空には逃れた。蜂の数も、相当に減ってきている。気をつけながら、基地外壁に着地。

 

弟が、ハーキュリーで蜂を落としながら、此方に来る。

 

「流石だな。 見事な首尾だった」

 

「其方の戦果は」

 

「蜂の内七割は落とした。 これなら、かなり時間を稼げる」

 

「そう、だな」

 

負傷者を満載して此処を離れたヒドラが、戻ってくるまでの所要時間は、六時間と推定されている。

 

その時援軍を連れてきてくれるか。

 

過大な期待は禁物だ。通信は入ってきている。彼方此方に飛来した蜂が、大きな被害を与えていると。

 

極東も、既に全域が蜂の攻撃を受けている。

 

奴らは太平洋を渡り、北米にまで進出しているという報告さえあったのだ。極東が攻撃を受けるのは当然と言えた。

 

北京基地を包囲していた巨大生物は、大きな被害を出したが。体勢を立て直し、再び包囲を組み直す。

 

私が幾ら暴れても、単独で一万を潰すのは無理だ。

 

今のも奇襲だから上手く行ったのであって、何度も同じ手は通じるはずが無い。

 

カリンを引き受けにきたペイルチームのウィングダイバーに敬礼される。見たことが無い戦士だが、私がペイルチームにいたのは随分前だ。知らなくても当然である。

 

担架で運ばれて行くカリン。

 

ウィングダイバーは、敬礼した。

 

「姉を助けていただき、有り難うございました」

 

「カリンの妹か」

 

「正確には、義理の妹です。 私も第三世代のクローンで、カリンさんの家でお世話になっていました。 戦場では厳しいですけれど、家ではとても優しい良い姉なんです。 嫌いにならないでください」

 

「ああ、分かっている」

 

人の心は複雑怪奇だ。

 

人としてあまり永く生きていない私も、それはよく分かっていた。

 

 

 

ヒドラが戻ってくる。巨大生物は相変わらず包囲を崩していない上、蜂はまだ二百以上が健在。

 

北京基地に降り立つヒドラは、かなり慎重に飛行しているように見えた。

 

四機のヒドラが、北京基地を脱出したが。

 

戻ってきたのは三機である。

 

すぐに飛び出してきた医療スタッフが、病院から負傷者を引き受けていく。代わりに、補給物資を持ってきてくれた。

 

人員は。

 

そう聞くと、首を横に振られる。

 

やはり世界の全域で蜂が出ており、EDFは対応に大わらわだという。今の時点で、ファイターが撃墜されるほどの戦闘力は発揮していないが、それでも攻撃ヘリの大群が敵に加わったようなものだ。

 

人員に、余裕が出る筈もない。

 

とりあえず、これで病院がパンク寸前、という状況は避けられた。ただ、各地に孤立したシェルターがある状況、この北京基地の人員が足りず、陥落寸前と言う事は変わっていない。

 

ヒドラが戻っていく。

 

基地の外壁に上がり、敵の様子を見て廻っている私に、弟が歩み寄ってきた。

 

「姉貴、敵に隙は」

 

「わざと隙を作っているようにしか見えないな。 今度私が単騎で突出したら、おそらく包まれて袋だたきだろう」

 

前回の奇襲でも、アーマーは限界まで削られた。

 

手練れの中の手練れであるカリンがついていながら、一瞬でも油断したら、ジエンドだっただろう。

 

せめて空爆があれば。

 

谷山が腰をかがめて、セントリーガンの様子を確認している。

 

側には筅もいて、谷山の話を聞いているようだった。

 

二人で歩み寄ると、谷山は顔を上げる。

 

「どうしました、二人で」

 

「見回りをしていただけだ。 其方は何か進展が無いか」

 

「何もありませんね。 敵の総攻撃も、支えられてあと一回と言う所でしょう」

 

急速医療を駆使して、軽傷者は病院から出てきているが、それでも基地を守れる人員は百名を超えていない。

 

もはやこの地区は、完全に敵の手に落ちたと行って良い。

 

東南アジア地区にも、相当数の敵が飛来しているらしく、攻勢に転じるどころではないと通信も入っていた。

 

高速で飛び回り、地上攻撃に特化した巨大生物の出現。

 

更に、オーストラリアの戦況も不安だ。

 

一刻も早くこの地区にある敵の巣穴を撃破しなければならないのに。

 

それどころでは無いのが、何とも悲しいところである。

 

筅が顔を上げる。

 

青ざめている彼女が、指さした。

 

「ストームリーダー! あれを……!」

 

言われるまでも無い。

 

見れば、一目で分かる。

 

蜂がおよそ数百、飛来した。これで敵の高空戦力は復活だ。どのような手段を用いたかは分からないが。

 

呼び寄せたのは、火を見るより明らかである。

 

しかも前回の失敗に懲りてか、蜂は数カ所に分散して着地。オオスズメバチに似た飛行型巨大生物は、他と同様、優れた知能を持っているのは確実だった。

 

更に、である。

 

「此方ヒドラ。 北京基地の寸前で、飛行型巨大生物の群れを発見! 此方の飛行経路を塞ぐようにして滞空しています!」

 

「ファイターは?」

 

「現在空対空ミサイルで攻撃中ですが、数が多く!」

 

なるほど、敵も本腰を入れてきたと言うことだ。

 

ピストン輸送など、させないという事だろう。

 

病院に連絡。できるだけ、処置を急いで欲しいと指示。医師が露骨な不快感を示す。彼らだって、不眠不休で働いているのだ。

 

通信を切ると、またリーダーを集めて会議にする。

 

今度はカリンがいない。

 

隊長が負傷している上、ペイルチームは現状隊員の半数を死傷し失っているのだ。もはや精鋭としては機能しない。

 

ましてや、ウィングダイバーにとって天敵どころか、戦える相手では無い蜂が多数いる状況だ。

 

ウィングダイバーは固定砲台にするしか無いのである。

 

「ヒドラによる補給路が敵によって断たれた。 更に蜂の増援が加わっている。 敵の戦力は、叩く前以上に増えているとみて良いだろう」

 

「そんな、どうすれば」

 

「慌てるな。 時間が稼げた分、病院から復帰している味方も増えている。 ヒドラが新品のセントリーガンも補給してくれたし、まだもつ」

 

弟が不安がる味方にそう言うけれど。

 

実際には。それほど簡単な問題ではない。敵側は此方の反撃が激しいことを見て、本腰を入れてきている。

 

ヒドラからまた通信が入る。

 

蜂の群れとファイターが交戦を続けており、まだまだ此方には来られないという。そうなると、もはや陸路を逃げるしかないかもしれない。ただし、味方には多数の負傷者がいる。包囲している鉄壁の敵陣を突破して、長距離を逃げるのは、極めて難しいのが現状だ。

 

やはり、今は耐え抜いて、時間を稼ぐしか無い。

 

空路は完全に塞がれたわけではないからだ。

 

谷山が来る。

 

どうやら、第五艦隊が日本海に到着。テンペストによる援護射撃の準備を整えてくれたらしい。

 

厳しい戦況で、よくやってくれたとしか言いようが無い。

 

テンペストで精密射撃をするのは不可能に近いけれど。

 

やるしかないのだ。

 

「空爆課の兵士は!?」

 

誰も挙手しない。

 

そうなると、谷山と筅だけで、ミサイルを誘導する他ないという事になる。

 

不幸か幸運か、ミサイル誘導用のレーザー装置はある。二カ所にいる蜂を殲滅するだけで、戦況はかなり変わるはずだが。

 

問題は、今回は敵も奇襲に備えている、という事だ。

 

蜂は現在、十カ所以上に分散していて、数も800に達している。

 

テンペストの爆撃で、二カ所をつぶせたとしても。

 

残り九割近くは、一斉に此方へと反撃を開始する計算だ。そうなると、他の巨大生物に対する押さえのためにも、テンペストは使う必要がある。私が機動戦を仕掛けて、どうにか出来る状態では無い。

 

テンペストで巨大生物を抑え。全員で、蜂を攻撃して。

 

それで、どうにか、敵と渡り合える。

 

逆に言えば。

 

それが上手く行かなければ、一気に敵大群に飲み込まれ、終わりだ。

 

「ウィングダイバーと、フェンサーは組んで欲しい。 ウィングダイバーは今回の戦いで、全員が固定砲台として活動して貰う」

 

顔を見合わせるウィングダイバー達。

 

しかし、彼女らが活躍できるのは、空中では無い。今回の戦いでは、それ以上の機動力を持つ飛行型巨大生物が多数いる。

 

最強のウィングダイバーチームであるペイルチームでさえ、空中戦では歯が立たなかったのだ。

 

それ以下の実力しか無い者達で、どうこうできる筈も無い。

 

作戦が決まる。

 

今度も、作戦はシンプルだ。すぐに動き出す。

 

谷山と筅が誘導装置を構え、テンペストの発射指示を願う。筅は口をぎゅっと結んで、緊張しているのが一目で分かった。

 

蜂は一カ所で五十か六十程度が固まり、それぞれが分散している。

 

秀爺も、タイタンを動かしてくれる。

 

これで、三カ所を首尾良く撃滅できたとして。残り全ての蜂が、攻撃と同時に一斉に来るだろう。

 

全員に、対空戦の準備をさせる。

 

テンペストミサイルが飛来。

 

デスピナから発射されたものとみて良いだろう。見る間に敵に迫り、地面で休んでいる蜂の群れの中に着弾した。

 

爆裂。

 

筅が誘導したミサイルは、わずかに外れた。群れの全てを殲滅できなかった。

 

タイタンのレクイエム砲は直撃。

 

この辺りは、経験の差だろう。

 

「空爆を続けろ!」

 

弟が筅を叱咤。

 

残りの全員は、一斉に空に舞い上がった蜂共へ、集中攻撃を開始。ウィングダイバー部隊は全員がミラージュを装備し、それぞれが蜂へ誘導ビームを放ち続ける。わずかに動きが止まったところを、スナイパーライフルで狙撃。

 

蜂が貫かれ、体液をばらまきながら落ちていく。

 

巨大生物用に作られたスナイパーライフルは、流石の破壊力だ。それに、空を飛ぶことで、強度を犠牲にしてもいるのだろう。蜂は見てくれこそ恐ろしいが、黒蟻よりは若干脆いようだった。冷静に敵を観察すれば、それくらいは分かる。エメロードは基本的に、相手の動きを止める兵器。黒蟻だって、小型ミサイル一発では死なないのだ。

 

先制攻撃成功。

 

それでも、先とは違う。

 

降り注ぐテンペストの中、巨大生物が殺到してくる。

 

外壁の上で、涼川がスタンピートを敵に降らせているが、それもいつまでもつか。それに、対空砲火の網を縫って、蜂が来る。セントリーガンが咆哮するが、それでも落としきれない。

 

ウィングダイバーの側にいるフェンサー達が盾を構えるが、数が足りない。

 

降り注ぐ毒針。

 

悲鳴が上がる。

 

吹き飛ばされるウィングダイバーが出始める。

 

ネグリングは巨大生物の相手で手一杯。谷山と筅は、ミサイル誘導で身動きが取れない。弟は確実に、他の誰よりも高い射撃精度で敵を落としているが。

 

それでも、落としきれる数では無い。

 

大きな犠牲が出る。

 

わかりきっていても、どうしようもない。弟は単独で他の数十人分の活躍を見せているが、それでも限界がある。

 

私もガトリングで敵を次々落とすが。

 

蜂の群れは等距離を保ちながら、効果的に毒針を浴びせてくる。これにやられる兵士は、数多い。

 

既にタイタンはハリネズミのような有様。

 

毒液が固まったものとはいえ、蟻の酸や凶蟲の糸と同様、近代兵器にダメージを与えられる能力があるのだ。

 

「秀爺、まだ行けるか!?」

 

「ダメージが蓄積してきているが、何とかなる。 蜂は」

 

「まだ半数以上が健在だ!」

 

不意に、轟音が降ってくる。

 

ヒドラだ。六機編隊で、強行突入を仕掛けてくる。ファイター四機が護衛についていた。

 

発射される、ファイターの空対空ミサイル。

 

中途で拡散して、蜂の群れに炸裂する。数十匹が瞬時に爆散。死体がばらばらと、雨のように降ってきた。

 

蜂の群れを押し潰すように、ヒドラが北京基地に無理矢理着陸。

 

蜂が攻撃を続行しようとするが、ファイターが更にとどめの空対空ミサイルを叩き込み、残党に致命打を浴びせた。

 

ここぞとばかりに、攻撃を強化する味方を支援するように。

 

ヒドラの横腹が空き、増援の部隊が姿を見せる。

 

「ストームチーム、これよりレンジャー部隊12個が支援作戦を開始する! よく持ちこたえてくれた!」

 

「助かる! まず蜂を潰してくれ! それから周囲の敵部隊に反撃を行う!」

 

「イエッサ!」

 

現れた新手は、ネグリングも有していた。

 

ここぞとばかりに空へ向けて放たれるミサイルが、次々に蜂を落としていく。ファイターの制空力は流石で、ネグリングに負けず、残った蜂を確実に駆除していった。

 

形勢逆転。

 

しかし、ヒドラを見ると、かなり損傷が酷い。おそらく蜂の群れを無理矢理突っ切って、ここまで来たのだろう。

 

此処までと判断したのか。

 

蜂の群れが、撤退を開始。弟が基地外壁に上がって来て、ハーキュリーを連射。数匹を落としたが、それで最後だった。

 

巨大生物たちは包囲を続けたまま。まだまだ、敵が有利だと、分かっているのだろう。

 

すぐに医療チームが展開。

 

重度の負傷者を運び出し始める。倒れている兵士達の救護も開始していた。

 

倒れているメンバーの中に、黒沢がいた。

 

対空戦を続けていたのだが。途中で、蜂の猛攻を浴びたのである。アーマーが破られていた。

 

意識はあるが、かなり負傷が酷い。

 

「すみません、やられました」

 

「少しだけ余裕が出来た。 今は休め」

 

「そうさせて貰います」

 

黒沢が、基地内の病院に運ばれて行く。

 

池口が、ネグリングの前でため息をついている。

 

毒針が溶けて、液体になり始めているのだが。

 

機体の彼方此方に酷い損傷がある。これは根本的な補修や、部品の取り替えが必要になるだろう。

 

谷山が来る。

 

「良い知らせと、悪い知らせが」

 

「悪い知らせから頼む」

 

「テンペストが品切れです。 第五艦隊が、蜂の群れと遭遇。 現在交戦中だとかで、支援の余裕が無いとか」

 

デスピナの戦闘力を持ってしても、いきなり世界中に拡散を開始した蜂の相手は厳しい、ということか。

 

もっとも、デスピナは艦載機として、多数のファイターを積んでいる。

 

簡単に沈められるとは思えない。

 

「良い知らせは」

 

「バゼラートは無事です。 蜂が戻ってくるまで、周辺の巨大生物を徹底的に叩き潰してきます」

 

「そうだな、頼む」

 

敬礼すると、谷山がすぐに格納庫に隠したままのバゼラートの所に向かう。

 

筅も同じように、ベガルタの所へ戻った。

 

負傷者を救助しながらも、すぐに攻勢に出る。

 

今のうちに。

 

敵はできる限り、削り取らなければならないのだ。

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