地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
総力戦を続け、消耗しつつもどうにか抵抗をしていきますが……
二日ほどの掃討戦で、どうにか北京周辺から巨大生物を追い払う事が出来た。
相性が最悪のバゼラートと、ようやく活躍の場が出てきたベガルタファイアロードの戦闘力を持って、北京基地周辺の巨大生物に猛攻を開始。涼川を中心にした味方戦力も効果的に敵を削った。
二度の攻撃で、敵も状況に利あらずと判断したのだろう。
一旦退避して、少なくとも北京基地の周囲から姿を消す。
大海の中の孤島に等しいが。
それでも、この基地だけは、守り抜いたのだ。
問題はこれからである。
敵はこの機会に一気に戦線を押し上げるつもりなのだろう。世界中に蜂を拡散させ、フォーリナーの機械兵団と協力して、EDFに苦戦を強いている。北米でもアフリカでも蜂の出現は確認されており、それと同時にフォーリナーの輸送船も多数の巨大生物を投下。既に安全地帯は無くなり、各地のEDFは等しい乱戦の中にいた。
ようやく押し上げてきた前線が。
たった数日で、地獄の混戦へと逆戻りしてしまったのである。
敵はこの時点で、既にマザーシップ三機を失った分の成果を得ているとも言えた。
基地の状況を見て廻る。
どうにか籠城を成功させたけれど。次の大規模攻撃があった場合、耐えられるかは分からない。
弟はとりあえず、スカウトと一緒に周辺の偵察。
谷山はバゼラートを飛ばして、辺りの偵察中だ。無人の偵察機も、可能な限り飛ばしている。
敵が集まっている地点があれば叩きたいし。
何より、敵の巣へ逆撃も行っておきたい。
中国支部の管轄にある巨大生物の巣は二つ。一つはこの基地から西に二千キロほど行ったところにある。
もう一つは、東南アジア支部の管轄地域と被るところにあって、此処からはかなり遠い。
今まで猛攻をかけて来た敵は、北京基地近郊の巣からきたと見て良いだろう。
日高少尉がきた。
「はじめ特務少佐、今お時間よろしいですか?」
「どうした。 敵でも見つけたか」
「いえ、そうではなくて」
困り果てた様子の日高少尉を見て、大体分かった。柊だ。
こんな所までヒドラに乗って一緒についてきている彼奴は、文字通りスッポンのようなしつこさで、取材を続けてきている。
既に彼奴のいる会社の人間達でさえ、シェルターの中で暮らしているのに。
どれだけ、取材に命を賭けているというのか。
ただ、勇気だけは認める。
北京基地での戦闘でも、殆ど全滅の危機を味わうことになった。柊は泣き言を言いもしなかったし、ヒドラに閉じこもって逃げるようなことも無かった。
また、此奴の報道内容を見たが、一応それなりに中立的な立場を維持している。
勝っているときは素直にそう報じているし。
味方の被害も、過大にも過小にも報告していない。
そういえば、此奴はどんな恐怖に直面しても、顔を歪めることも無い。何処か、致命的に壊れているのかも知れなかった。
「少し取材を良いですか」
「手短にな」
「有り難うございます。 あまりこういうことを言うのは柄ではありませんが、ストームチームの活躍は、シェルターに避難している人々の中でも希望になっています。 その中でも、ストームリーダーと貴方は、チームの主軸となる存在。 貴方に関する取材は、皆の希望を引き出すためにも有効です」
それは、嘘だな。
私は反射的に悟る。
此奴は何というか、本当のことを言っていない。
ただ、此奴の取材がある程度平等だというのは事実だ。黒沢に粉を掛けて余計な事を探り出そうとしているのも、また事実だが。記者として、きちんと仕事もしている。
それならば、応えてやるのも、悪くない。
幾つか取材をされる。
最近の戦況について、どう思うか。そう聞かれたので、素直に応える。
「味方は明らかに戦略面でフォーリナーに遅れを取っている。 敵はマザーシップ三機を使い捨てても大丈夫だと判断したから使い捨てた。 結果が、今の蜂による猛攻だ」
「EDFは無能だという噂もあるようですが、どう思われますか」
「正直な話、過去に存在した何処の軍隊と比べても、EDFが腐敗して無能な組織だとは感じない。 他に比べて特に酷いと言うことは無いだろう。 問題があるとすれば、敵があまりにも強力で、有能で、なおかつ悪辣と言う事だ」
柊はメモを取る。
眼鏡を直したこの女は。典型的な「出来る女」だ。スーツでしっかり身を固め、髪型や化粧までも完璧にこなしている。それによって、仕事をする自分というものを、作ってきている。
一礼すると、柊は戻っていった。
日高少尉が、大きく肩を落とした。
年齢的にはあまり変わらないだろうに。見ていると、日高少尉はとにかく子供っぽい。ナナコをはじめとして、後輩達に慕われるようなリーダーシップとカリスマは備えているが。それと大人っぽいことは、別の問題だ。
「はじめ特務少佐は、敵に勝てると思いますか?」
「分からないとしか応えられない。 何しろ、フォーリナーはまだまだ本気を出していないからだ」
「え……」
「敵は一石で二羽どころか、三羽も四羽も狙ってくるはずだ。 今後はどんどん戦況が厳しくなると見て良いだろうな」
青ざめる日高少尉。
だが、これくらい言っておかないと、今後の戦況悪化には耐えられないはずだ。
弟が戻ってきた。
涼川が運転するジープに乗って、矢島と原田も連れている。ジープには迫撃砲がついていたが、使った形跡は無い。
ぼろぼろの外壁ゲートを開けて、基地内に。
すぐに私を見つけて、外壁に上がって来た。もともと、それほど広大な基地ではないのだ。
「姉貴、敵が集結している地点を見つけた」
「そうか。 どれほどだ」
「巨大生物が黒蟻を中心にざっと六千から七千。 赤蟻と凶蟲もいる。 その中に、蜂が千という所だな。 無人化した都市の水路に沿って、点々と穴を掘って、その中に入り込んでいる。 水辺を好む奴ららしい行動だ」
小原が言っていたことがある。
巨大生物は水を好むと。
しかしながら、奴らは水の無い地下でも、長時間過ごしていたという事実もある。それに私の知識の中にも。
巨大生物は、水を必要とする存在だとはされていない。
一体何をもくろんでいる。
「集結している敵を先にたたけば、北京基地周辺にはかなり余裕が出来る。 幾つかのシェルターの人員を救助も出来るだろう」
「ヒドラの準備は」
「現在、十機ほどを動かせる。 ファイターも護衛に付けるとすると、数日以内に作戦を成功させないと厳しいな」
ならば、行けるか。
基地を守るための戦力として、他のチームは全て残す。
急速医療を行った黒沢が、四日ほどで退院してきたが。しかし、体に負担も掛かっているし、前線に立たせない方が良いか。
弟の足をちらりと見る。
「大丈夫だ。 足の方はもう問題も無い」
「敵の数が数だ。 支援砲撃は必須だが、大丈夫か」
「其方についても、日高司令と帰る途中に話を通しておいた。 ミッドナイトを要請してある。 バンカーバスターの準備は整っている」
作戦について、軽く協議。
なるほど、蜂さえどうにか引きつけられればどうにかなるか。流石のミッドナイトも、蜂の群れに襲われるとかなり厳しい。
奴らは充分に航空機を撃墜できる能力を持っているのだ。
ならば、ストームで、蜂の大群をどうにかすれば良いだけのことだ。
数日の猶予が出来たため、何とかビークル類の補修は終わっている。秀爺には、今回イプシロンでは無く、タイタンを使って貰う。
レクイエム砲による殲滅能力を、今回の戦いの肝とするためだ。
今回は機動戦である。
秀爺には最強の固定砲台になって貰うし。
私は蜂では無くて、地上の巨大生物だけを相手にする。
全員を整列させると、ビークルに分乗。
目的地へと、出立した。
途中。谷山と、通信をつなぐ。弟を交えて話しておくべきだと思ったからだ。フォーリナーの正体と、その目的について。
落ち着いた反応を示した他の面子と違って。
谷山は、露骨に驚いたようだった。
音声は一旦停止して、バイザーについているチャット機能を使う。脳波を読み取って文章変換してくれる優れものだ。勿論通信は周囲を遮断できる。
弟はずっと黙り込んでいる。
この真相についての話の際。立ち会うことはするけれど、いつも弟は、余計な事を一切言わなかった。
「それは、本当ですか」
「意外だな。 飄々としたお前の事だ。 もっと平然としていると思ったが」
「平然としていられませんよ。 まさか、そのような理由で、この星が戦火にさらされていたなんて」
「別に驚くことではないさ」
地球人類は、この星の内部でさえ。今フォーリナーがやっているのと、同じレベルの行動を、散々繰り返してきた。
フォーリナーの文明レベルは、地球人より遙かに進んでいるが。
地下の彼奴の記憶を得た今なら分かる。
知的生命体の精神なんて、あまり変わらないものなのだ。例え銀河系の半分以上を版図に収めたとしても、である。
「それにしても、新人達には話しましたか、その内容」
「まだだが」
「出来るだけ急いで話した方が良いと思います。 今後は戦況が苛烈になりますし、恐らくは戦死者だって出るでしょう。 真相を知らずに死んだら、死んでも死にきれない筈ですから」
そんなものなのか。
だが、無作為に、皆に知らせるわけにはいかない。
柊や黒沢には、喋ったら何をするか分からない。
ナナコもそれは同じだ。
総司令部には、知らせるべきなのだろうか。カーキソンをはじめとする幹部達には、教えておくべきなのか。
弟が口を開く。
「不安なことが一つある」
「何ですか、ストームリーダー」
「真相が分かった場合の、姉貴の安否だ」
「ストームリーダー姉の?」
その言い方は止めろと言おうとしたが、黙る。
弟が、随分と真面目な雰囲気で、話しているからだ。
「俺も七年の平和で、この星の歴史は学んだ。 人間はどちらかと言えば愚かしい生き物だと、今では分かる。 地下の彼奴のおかげで、人類は団結できたが、それも真相が分かったとき、維持できるか不安だ。 それどころか、一部の馬鹿共が、人類のために戦って来た姉貴を、殺そうとするかも知れない。 奴らと系列を同じとする者だから、という理由でな」
「……なるほど」
「そういう理由もあって、あまり話をおおっぴらにはできん。 ただ今度、筅と原田、三川と矢島と日高少尉には、話しておこうと思う。 総司令部には、時期を見て、話しておく事にする」
「分かりました。 リーダーの言う事も最もです。 ただ、彼らがわざわざこの星に住む我々を選んだ理由が、救われませんね」
「戦争なんてそんなものだ。 むしろ資源の収奪や、奴隷化が目的では無いだけ、マシと見るべきなのかも知れないな」
通信を切る。
全員が布陣を完了した。
敵は河川敷に沿って、点々と布陣している。現在進行形で、続々と集結をしている様子だ。
おそらく、敵は。
巣穴で、旺盛に繁殖している。
新しく生まれ出てきた巨大生物を、次々に繰り出しているとみて良いだろう。
いずれにしても、巣穴は叩かなければならない。
蜂の戦闘力は、他の巨大生物とは一線を画するものだ。どうしても地上戦力が主力になっているEDFにとっては、やりづらい相手であることに間違いは無い。ファイターは各地で奮戦してくれているが、それでも空軍の数には限りがあるし。何より、ファイターはとても高級な戦闘機なのである。100対1の戦力差をひっくり返せる戦闘機というだけあって、部品もパイロットもどちらも一級品を使っているのだ。
「作戦は分かっているな。 秀爺によるレクイエム砲の射撃が開始されると同時に、作戦開始だ」
「イエッサ!」
私は弟の作戦支持を聞きながら、グレイプを降りる。
今回は圧倒的な敵の数をどうにかしなければならないが。作戦自体はそれほど複雑なものではない。
筅がベガルタのコックピットを開ける。
レーザー誘導装置を使って、テンペストの着弾指示を開始。
バゼラートに乗ったままの谷山も、同じ事をしている。難しいヘリの操縦をしながら、正確な着弾指示をこなす谷山は、流石だ。
テンペストが飛来するのと。
遙か後方に控えているタイタンのレクイエム砲が発射されるのは、少しタイミングがずれていたが。
着弾は、非情なまでに正確だった。
直撃。
群れていた敵が、木っ端みじんに消し飛ぶ。同時三カ所。
一斉に此方に気付いた巨大生物の大群が、殺到してくる。数千の群れとなると、その迫力は圧巻だ。
「バック!」
弟の声が響き渡る。
引き撃ちする経路も、事前に説明してある。最終的に向かうのは、軍が改装した地下鉄の出口だ。
軍用車両も入れるように、入り口が拡張されている。
既に確認して、防火シャッターが生きている事も把握済み。入り口にあったバリケードも除去してある。
私は筅と一緒に最後尾。
散弾砲とコンバットバーナーを駆使して敵を焼き払う筅の戦いぶりは、既にエースパイロットの名にふさわしいものだ。私も機動戦を駆使して、敵を薙ぎ払いながら、確実に下がる。
問題は、殺到してくる蜂共だ。
中央後方から、バゼラートがミサイルを乱射して、蜂を可能な限り叩き落とすが、それではとても足りない。
キャリバンにタンクデサンドした原田と日高少尉とナナコが、エメロードでミサイルを連射して、確実に蜂を落とす。
オート操縦にしているキャリバンはそれでいい。
黒沢には、今回はグレイプRZの操縦を任せている。部隊の最前列、つまり一番敵から離れているネグリングに、敵を近づけさせてはならない。だからミサイルの撃ちもらしを、積極的に速射砲で叩かせる。
弟とジョンソンと涼川は、グレイプRZにタンクデサンド。
まずハーキュリーで弟が蜂を撃ちおとし。
ジョンソンは火力の網を抜けてきた相手を、零式レーザーで焼いていく。更に、涼川は、スタンピートで追いすがってくる敵を爆破。
機動戦を担当するエミリーと三川は、敵の動きを見ながらミラージュを起動。誘導ビームで、蜂だけを狙う。
そう。
狙いは蜂だけだ。最後尾の私と筅、上空にいる谷山と、対空戦が苦手な涼川だけは地上の巨大生物を狙わせるが、他は全員が蜂を主体的に倒す。
再び、秀爺のレクイエム砲が射撃。
弾速が極めて遅いが、何しろ秀爺とほのかだ。敵の動きを読み切った上で、最大限敵が集中しているところに、確実に着弾させていく。
蜂は私とベガルタも狙ってくるけれど。
それは出来るだけ気にしないようにして、他メンバーに任せる。敵をある程度引きつけるのも、私と筅の役割だ。
確実に下がっていく我々に業を煮やしたか。
敵が陣形を変える。
赤蟻を前面に出し、ファランクスのように一斉突撃を開始したのだ。黒蟻と凶蟲が、左右に分かれ、赤蟻の対処に手間取る此方を、左右から挟む算段だ。
蜂もそれを見て、一斉突撃を開始。
火力の網で、露骨に抑えきれなくなる。
無数の針が、私にもベガルタにも降り注ぐ。赤蟻の数と勢いは凄まじく、此奴らを抑えるだけで精一杯だ。
涼川も敵を潰して牽制してくれるが、それでも火力が足りない。
だが。
左右に回り込もうとしていた黒蟻と凶蟲が、テンペストの直撃を受けて、百匹以上一瞬で消し飛んだ。
谷山のファインプレーだ。
乱戦だろうに、ヘリを操作しながら、敵の動きを先読みして、対処したことになる。
更に赤蟻の群れの中に、レクイエム砲が着弾。
流石に頑強な赤蟻も。
レクイエム砲の直撃を受けてしまうと、ひとたまりも無い。
敵突撃陣が崩壊。
だが、敵の数はとにかく圧倒的だ。すぐに陣形を再編して、突撃を再開する。グレイプは既に蜂によって指呼の距離に捕らえられていて、毒針が降り注ぎ続けていた。車体へのダメージが、見る間に蓄積しているのが分かる。
間に合うか。
ひやりとさせられる。
キャリバンと、グレイプが交代。
二つの車両がすれ違う瞬間、弟とジョンソンが、キャリバンに飛び乗る。新人達は少しもたつきながらも、グレイプに移った。それを見届けてから、涼川がキャリバンに飛びついて、移った。
敵の一部が、何度も側面に回り込もうとするが。
その度に、秀爺と谷山が即応。
的確なテンペストでの支援を要請して、確実に着弾させる。撃ち漏らしは、涼川が確実に消し飛ばした。
ベガルタに乗ったままの筅が、呻く。
「すごい……!」
「彼奴は世界最強のヘリ使いだ。 今回は後退しながらのミサイル射撃という、彼奴にとっては比較的楽な任務だからな。 片手間に戦況を見て、テンペストをうち込むくらいは、朝飯前というわけだ」
私が付け加えると、筅はもう一度、凄いと言った。
だが、冗談を言っている余裕も無い。
ベガルタのダメージも、そろそろイエローゾーンを突破。私は機動戦でとって返しては敵を蹴散らし、また逃げると繰り返しているが。その度にアーマーも消耗していく。いつまでも無事ではいられないだろう。
橋を渡る。
河川敷を抜ける。
敵が群れている川は真っ黒で。ここで平和なときは、人々が暮らしていたとは、とても思えない。
ただし、巨大生物が汚染したわけでは、必ずしも無いだろう。
放棄された工場や。
誰もいなくなった街から垂れ流される汚染物質で、川が汚れているのだ。一体いつになったら綺麗になるかは、分からない。フォーリナーが完全に地球からいなくなったら、その技術を用いて汚染を浄化したいものだ。
至近。
蜂が低空で来て、針を放ってきた。
即座にベガルタのコンバットバーナーが焼き尽くすが、針が私のスーツを直撃した。避けきれるものではなかったのだ。
一気にアーマーの損傷が、極限に。
あと少し喰らったら、フェンサースーツのダメージも、レッドに達するだろう。機械に破損が出始める頃合いだ。
ネグリングが、地下鉄入り口に到着。
「急いで!」
ぼーっとしている事が多い池口も、必死に声をからして皆を招く。それだけ、迫っている敵の数が、圧倒的なのだ。
グレイプが飛び込む。
キャリバンが射撃している間に、ネグリングも。ベガルタと私が来たのを見て、ありったけのミサイルをうち込んで、バゼラートが全力で離脱。
ベガルタが逃げ込むと、弟がグレイプをバックさせる。嫌な音がした。
攻撃に晒され続けたグレイプの車輪が一つ吹っ飛んで、擱座したのだ。
位置的にまずい。シャッターが閉められなくなる。
私がブースターを全開にして、グレイプを押し込む。ベガルタがコンバットバーナーの残りを全て放射して、必死に敵を押さえ込んだが。
それでも、蜂の群れから、膨大な針を浴びることに変わりは無い。
擱座したグレイプを、無理矢理押し込む。
ベガルタも、飛び込んだ。
シャッターを閉める。巨大生物が数匹飛び込んでくるが、新人達が猛射を浴びせて、薙ぎ払う。
シャッターをしめさせないと、飛び込んでくる赤蟻。
挟まる。
がつんがつんと顎を鳴らす赤蟻。十メートルの巨体だ。至近で見ると、顎の大きさは凄まじい。
ジョンソンが零式レーザーを浴びせて、文字通り赤蟻を両断。シャッターが閉まった。
外から凄まじい攻撃音が響き続ける。
「奧へ急げ!」
三川とエミリーから、離脱完了と通信が来ると同時に。筅が、通信装置を手に取った。通信相手は、デスピナの艦長だ。
筅は何度か、シャッターの側で立ちはだかっているベガルタと通信装置を交互に見たけれど。
決意したように言う。
「予定通りの位置に来ました! やってくださいっ!」
「よし! 全員、できるだけ地下に!」
ベガルタに飛び込むと、筅は擱座したグレイプを無理矢理押して、奧へ。
私はフェンサースーツを解除。
ダメージが限界に来ていたからだ。
地上に、テンペストの雨が降り注いだのが、揺れで分かった。天井からアスベストと埃が降ってくる。
更に、ミッドナイトから通信がきた。
「此方ホーク1! さすがはストームチームだ! 予定通り、蜂を引きつけていてくれたな! これから爆撃を開始する! バンカーバスター、クラスター弾、ありったけ投下!」
「此方ファイターα! 蜂の残党を確認! ミッドナイトの護衛がてらに、全て片付けておく! 空対空ミサイル発射!」
轟音。
造りが悪い地下鉄が保つか不安なほどの揺れ。
しばらく続く破壊と殺戮の余波。
黙り込んで、待つしか無い。
通信が、入る。
「此方秀爺」
「戦果は」
「地上にいた巨大生物は壊滅。 地下で潜んでいた連中も、ミッドナイトの爆撃で一掃された。 敵は逃走を開始したから、レクイエム砲で可能な限り削っておく」
「良し!」
思わず、声が出てしまった。勝ちが確定したからだ。
弟が損害を周囲に確認させる。シャッターは完全に歪んでしまっていて、ベガルタで押し広げないと開けられなかった。
辺りは焼け野原だ。
多数のテンペストが着弾し、ミッドナイトが爆撃したのだから当然だろう。
残党が少し残っているので、ネグリングからミサイルを放って、片付けさせる。元々放棄されていた街だったけれど。
今回の戦いで、完全に壊滅してしまった。
ただし、巨大生物数千を一緒に排除できたのだ。生き延びた蜂百匹ほども、算を乱して逃げていった。
ろくでもない戦況が続いていたが。
久々の完全勝利だ。
ヒドラに来て貰う。ビークル類を回収するが、意外なことに。秀爺とほのかが乗っていたタイタンが、かなり傷ついていた。
蜂の一部に纏わり付かれていたのだという。
「何故言ってくれなかった」
「状況から考えて、勝ちは確定していたからな。 それにタイタンの装甲なら、耐えられる自信もあった」
弟にそう答える秀爺だが。
何だか嫌な予感がする。
真相を知って、何か戦いへの心向きが変わったのではあるまいか。
全員の負傷は、先ほどに確認している。
今回は、全員負傷は軽微。
北京基地に戻って、多少療養すれば、すぐに治る。急速医療を使えば、一日少しで充分だろう。
谷山が通信を入れてきた。
「あまり残りの時間は多くないと思います。 北京基地に戻ったら、是非上層部も交えて、限定された人員に情報公開を」
「ふむ。 一郎、どうする」
「そうだな。 姉貴はどうしたい」
「せめて一緒に戦うメンバーとは情報を共有したいな」
北京基地に到着。
途中、妙な通信が入ってきた。
「ハワイ基地から連絡です。 敵の襲撃を受けている。 丸呑みにされる。 急いで退避を命令して欲しい、との事」
「丸呑み……?」
ハワイ基地は、シドニーから相当に離れている。
新種の巨大生物が、人間を飲み込むほどのサイズだったとして。それが精鋭が集まっているシドニーを無視して、いきなりハワイに行くだろうか。
とてつもなく嫌な予感がする。
「ビークルの整備を急げ。 負傷者は病院に。 全員、カプセルに直行。 出来るだけ、休みを取るように」
弟がてきぱきと指示。
私が通信をその間受けるが。日高司令も、小首をかしげながら通信してきた。
「大勝利、ご苦労だった。 流石だな。 だが、すぐに任務をして貰う事になる。 ハワイ基地が少し前に通信途絶した。 何か、とんでもない事が起きたようだ」
「ハワイ基地から脱出できた人員はどうなりました」
「今、第七艦隊が迎えに出ている。 第七艦隊で聴取を行う予定だ。 通信妨害が発生していて、現地の設備が無事かもよく分からない。 しかしハワイ基地には、強力な対空兵備があったのだが」
海から渡って来たのなら、途中艦隊が気付くはず。
何かがいきなり、突然ハワイ基地に出現したとでもいうのだろうか。
弟が来る。
話しておくのなら、いまだろうか。
「日高司令。 カーキソン元帥をはじめ、EDFの最高幹部を集めて貰えますか。 通信網につないで貰うだけで結構です。 ただし、セキュリティは最高レベルで」
「何か、重要なことがわかったのかね」
「地下の彼奴の知識を、この機会に公開します。 おそらく、知っておくべきだろうと思いましたから」
先ほど、戦いの前にあげた新人達も、通信に含める。
流石にただ事では無い状況だと気付いたのだろう。
小原も、通信に加わってくる。まあ、正直な話色々思うところはある相手だが。聞く権利くらいはあるだろう。
カーキソンが通信に入ってくる。
私は弟と一緒に、北京支部の司令部ビルに移動。セキュリティが完璧に施されているから、盗聴の恐れは無い。
全員が揃った。
筅や三川も、通信に加わっている。
カーキソンの許可が出たら、ジョンソンやエミリーにも教えてやるのも良いだろう。ただし、柊はどうするべきか悩む。
下手に情報を拡散されると。
弟が危惧していた事態が、来るかも知れないからだ。
「地下の彼は秘密主義だった。 彼が何者だったのかは、実のところ私も良くは知らないのだ」
カーキソンが言う。
鵜呑みには出来ないが。
フォーリナーが攻めてくる前は、北米の秘密施設に、地下の彼が収容されていたのは事実である。米軍から情報がEDFに譲渡されなかったのなら、或いはそれも事実かも知れない。
地下の彼奴の尽力は大きかった。
WW2後の混乱も最小限にすみ、予想された東西陣営の対立もすぐに収まった。各地での紛争も混乱は小さく、人間の坩堝と化していた地域も、押さえ込みに成功している。
カーキソンも、地下の彼奴が地球に来た時は、まだ生まれていなかったのだ。
歴史の中に、地下の彼奴はいた。
EDF総司令官が知らないと言うのなら。今、全てを話しておくのも、良いだろう。
「話して貰おうか」
「分かりました。 私も地下の彼奴の記憶を全て引き出せているわけでは無いのですが、話しましょう」
私が真相について語り出すと。
周囲の全てが黙り込んだ。
私の中に溶け込んだ、地下の彼奴の意識が表に出てくる。それと同時に、私の口調は、敬語から普段周囲に接している硬い物へと変化していった。